
SaaS企業を中心に「カスタマーサクセス」という業務が注目されています。顧客が自社のサービスを通じて成功体験をすることが、自社の利益に直結するという考え方が浸透しており、カスタマーサクセスがなくては、売上を伸ばすことは難しいとされています。
本記事では、SaaS企業がカスタマーサクセスを重要視する理由を解説します。
カスタマーサクセスについて

カスタマーサクセスとは、直訳すれば顧客の(カスタマー)成功(サクセス)という意味です。最近では顧客が自社のサービスを利用して成功体験をするために必要な業務、部署を指して使われることも多いです。
従来の顧客を成功に導くための役割は「カスタマーサポート」が担っていました。しかし顧客からの問い合わせに対して受動的に問題解決をするカスタマーサポートよりも、企業が積極的に顧客にアプローチし、顧客の抱える問題や不安を自発的に解決するカスタマーサクセスが注目されています。
なぜSaaS企業がカスタマーサクセスに注目するのか

「SaaS」とは、提供者側(サーバー側)で稼働しているソフトウェアをネットワークを介してユーザーが利用する形式のサービスのことをいいます。
こうしたSaaS企業がカスタマーサクセスに注目する理由は、ビジネスモデルのトレンドが従来の「パッケージモデル」から「サブスクリプションモデル」に移行していることが関係しています。簡単にそれぞれのモデルについて簡単に解説をしていきます。
従来のパッケージモデル
パッケージモデルとは、ツールをパッケージソフトとして販売し、導入後はサポート費用を受け取るモデルです。
ツールによって大きく左右されますが、販売価格は数万円〜数十万円、サポート費用は本体価格の数パーセントとされることが多いです。
利用者から見ると、このパッケージモデルの製品は継続コストは抑えられるものの、導入コストが非常に高く、購入のハードルが高いものとなります。何年も使い続けなくては代金を償却することができず、損失につながってしまうためです。
実際に購入に至るユーザーは本当にそのツールを必要とする一部のエキスパートのみでしょう。
そのため、パッケージモデルは1件あたりの単価は高いものの、ユーザー数を伸ばすことが難しいモデルであると言えます。
トレンドのサブスクリプションモデル
サブスクリプションモデルとはツールの使用権を一定期間貸し出すというビジネスモデルです。月額や年額で料金が決まっており、利用者から使用料金を受け取ります。
購入時に数十万円のコストがかかるパッケージモデルに比べて、月額数千円で利用できるサブスクリプションモデルは、ユーザーにとって手の届きやすいサービスとなります。
導入ハードルが下がることで、より多くのユーザーがサービスを利用するようになります。1人あたりの単価は下がってしまうものの、ユーザー数が増えることでパッケージモデル以上の収益を上げることができるため、注目が集まっています。
ただし、サブスクリプションモデルにも欠点はあります。
製品を売り切ってしまうパッケージモデルに比べて、サブスクリプションモデルは常にユーザーに寄り添ったサービスを提供し、離脱を防止しなければ売上は落ちてしまいます。そのため、サブスクリプションビジエス(SaaS)において、顧客に寄り添ったサービスを提供するカスタマーサクセスという考え方が浸透しているのです。
SaaS企業におけるカスタマーサクセスの役割

SaaS企業におけるカスタマーサクセス業務の役割は主に2つです。
- 顧客に声をもとに、顧客にとっての成功を理解する
- 顧客の成功を理解したうえで、サービスを改善する
利用者の声をすいく上げそれをサービスに反映させる、たったのこれだけです。これにより、SaaS企業にもたらされる効果は以下の通りです。
- 顧客の継続契約期間が伸びる(解約率が下がる)
- カスタマーサポートにかかるコストを抑えられる
- 競合他社よりも優れたサービスを提供できる
- 顧客が成功体験を周囲に伝えてくれる
SaaS企業がカスタマーサクセス業務を行うメリット

次に、SaaSモデルにおいてカスタマーサクセスが必要な理由について、3つの項目に分けて解説します。
顧客の継続契約期間が伸びる(解約率が下がる)
カスタマーサクセスには、ユーザーの疑問や不満に対してアクションを取るという役割があります。そのため、カスタマーサクセスを実現することでユーザーの解約率(チャーンレート)を下げることができます。
例えば、ユーザーが提供するツールの機能に気づいていないのであれば周知するための施策を打ちます。使い方がわからなくて困っているならガイド機能やFAQを作成する、料金に不満があるならば、プランを増やすなどアクションを起こします。このように顧客が感じる疑問や不満を1つ1つ解決していくことで、継続利用を促します。
カスタマーサポートのコストを抑えられる
カスタマーサクセスの存在は、企業にとってサポートコストを抑えられるというメリットがあります。
カスタマーサクセスではユーザーの疑問や不満に対して根本的な解決を図ります。ガイド機能を追加したり、プランを追加することで「全てのユーザー」が疑問や不満を解決できるのです。
そのため、同じ疑問に対して複数のユーザーから問い合わせを受けることもなくなるでしょう。
カスタマーサポートだけを運用し続けるよりも、カスタマーサクセスに注力した方が長期的にはコストが抑えられます。
競合他社よりも優れたサービスを提供できる
カスタマーサクセスには、ユーザーからの意見を整理しプロダクトの改善に役立てるという役割があります。そのため、カスタマーサクセス業務を導入することで競合他社のよりも優れた商品・サービスを作り出すことができます。
具体的にはSNSを運用する、ユーザーサイトを運営する、イベントを開催するなど、カスタマーサクセスを実現するための様々な施策を講じて、ユーザーの意見を集めます。
それにより、顧客が自社のサービスに求めるものが何かを常に考えながらプロダクトを改良していくことができます。
顧客が成功体験を周囲に伝えてくれる
カスタマーサクセスが軌道に乗ると、自社サービスに強く関心を持つあなたの企業のファンが現れ始めます。自分の意見が実際にサービスに反映され、どんどんサービスが使いやすいものになっていくと、顧客にはサービスに対する強い愛着や当事者意識が生まれるのです。
こうした企業のファンはサービスを利用した成功体験を周囲に伝達してくれるでしょう。そのために、ユーザーコミュニティなどファンが自由に発言ができる場を設けてあげることが重要となります。
SaaS企業がカスタマーサクセスに取り組むうえでの注意点

最後に、カスタマーサクセスに取り組むうえでの注意点を解説します。実際に施策を行う前にカスタマーサクセスの考え方について理解を深めておきましょう。
顧客ごとにアプローチを変える
カスタマーサクセスに取り組むうえで、全ての顧客に同じアプローチをすることは効率的ではありません。顧客をハイタッチ、ロータッチ、テックタッチに分類して、サポートの手厚さを調整すべきです。分類は顧客生涯価値をもとにするといいでしょう。
自社に大きな利益をもたらす大口顧客に対しては、対面でのサポートやセミナーの開催といったハイタッチな対応を取るべきです。
反対に、自社にもたらす利益が小さい顧客に対しては、メールや動画・Webコンテンツなど、ある程度集団的、かつ自動的なサポートをすべきでしょう。
顧客対応を属人化させない
担当者がそれぞれ独自に動いており、個人だけが顧客の情報を把握していてはカスタマーサクセスは成功しないでしょう。
顧客ごとの分類を定めたうえで、それぞれの層に対し社内で共通の対応方法を決めておくべきです。また、顧客の反応はカスタマーサクセスの担当者同士、別の部署のメンバーに共有するようにしてください。
カスタマーサクセス業務にあたる方は、自身が得た情報を共有し会社のアセットとすることを意識してください。
組織内での理解を深める
カスタマーサクセスを担当する方が、他部署と協力し情報を共有することはもちろん大切ですが、開発や経営陣がカスタマーサクセスへの理解を深め、協力してあげることも重要です。
成果がすぐにでないことを理由に部署を解体してしまったり、リソースを抑え担当者の負担を重くしてしまっては、なかなか効果が得られません。
解約(チャーン)防止や、LTV向上のためには、まずは適切なカスタマーサクセスのやり方を把握し、効率的に課題解決を進めていく必要があります。
CXinでは、カスタマーサクセス体制構築のお手伝いとなるよう、実際のカスタマーサクセス現場の声をもとにした【カスタマーサクセス白書】を無料配布しております。ぜひご活用ください。
