マスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違いとは?構造や売り上げ再現性を徹底比較

2024-02-13 コラム

昨今、顕在化してきた様々なマーケティング環境の変化に伴って、従来型のマスマーケティングから、顧客を起点としたマーケティングへの転換が、企業には求められています。

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では、マスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違いとは、どのようなものでしょうか。本記事では、マスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違いについて、それぞれの概要を説明しながら解説します。

マスマーケティングとは

マスマーケティング(Mass marketing)とは、どの様なマーケティングでしょうか。マスマーケティングとは、すべての生活者を対象とした画一的なマーケティング活動です。大量生産、大量販売、大量プロモーションを前提としているため、「ショットガンアプローチ」とも呼ばれています。ここでは、まず初めにマスマーケティングの概要について説明します。次にマスマーケティングのメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。

マスマーケティングの概要

マスマーケティングとは、全ての生活者、いわゆる「不特定多数」をターゲットとしたマーケティング手法です。具体的にはテレビCMや看板広告などが挙げられます。市場や生活者の差別化をせず、あくまで「マス」に対して、大量生産、大量販売、大量プロモーションを積極的に行います。「供給はそれみずからの需要をつくりだす」ことを前提思想に、マスメディアの勃興と共に、マーケティング手法の王道として長らく君臨してきました。

昨今、消費者欲求の多様化や成熟市場の到来によって、画一的なマーケティング手法であるマスマーケティングには、疑問の声が上がり始めました。しかし、生活者を同質的なものとして見做せる商品やサービス、市場においては、なお絶大な効果を発揮します。マスマーケティングを効果的に活用している企業の具体例としては、コカコーラなどが挙げられます。世界中の全ての生活者を対象に、「いつでも、どこでも、だれにでも」というキャッチフレーズとマスマーケティングを通じて、コカカーラの認知とイメージを拡大させ、現在でも多額の売り上げを誇っています。

以上のことからマスマーケティングは、「大衆」と形容される全ての生活者をターゲットにしたマーケティング手法であると言えます。

マスマーケティングのメリット

マスマーケティングは、1920年代のラジオの発明と共に、長らくマーケティング手法の定石として絶大な効果を発揮していました。その実績が指し示すように、マスマーケティングには様々なメリットが存在します。マスマーケティングの代表的なメリットとして、次の二つが挙げられます。一つ目は規格化された手法によるコストダウン、二つ目は認知の拡大性です。それぞれについて解説していきます。

一つ目のマスマーケティングのメリットは、規格化された手法によるコストダウンです。具体的には、商品の大量生産による製造コストダウン、同一製品の大量販売による物流経費の削減、大量マス広告による宣伝の効率化などが挙げられます。全てのマーケティング工程を単一的に、かつ大量に行うことで、結果的にマーケティング活動のコストパフォーマンス向上に大きく繋がります。

* 樫原正勝『マーケティング競争の性格』(慶應義塾大学出版会、2006)

二つ目のマスマーケティングのメリットは、認知の拡大性です。大量生産、大量販売、大量プロモーションによって生活者に圧倒的な物量でアプローチすることができます。そのため商品の未認知層にも多くのアプローチをかけることができ、認知の拡大という面では絶大な効果を発揮します。マスマーケティングを行えば行うほど市場の認知度を高めることができ、市場が大きい場合そのメリットをより多く享受することができます。

以上のことから、マスマーケティングのメリットは、大量生産、大量販売、大量プロモーションによるコストダウンと認知の拡大性であると言えます。

マスマーケティングのデメリット

マスマーケティングにはメリットが存在する一方で、デメリットも存在します。マスマーケティングは次の三点のデメリットが存在します。一つ目は投資対効果が判断しづらいこと、二つ目は自社の商品やサービスのターゲット以外にも、画一的に情報を発信してしまうこと、三つ目は希薄な広告になりやすいことです。それぞれについて説明します。

一つ目のマスマーケティングのデメリットは、投資対効果を判断しづらいことです。マスマーケティングは、全ての生活者へ向けて画一的に情報を発信する手法であることから、どの施策が、どの層に、その程度に効果があったのか、効果計測の難易度が高い場合が多いです。広告そのものでしか投資対効果を判断できず、ミクロでの分析にはやや難があるのが実情です。

二つ目のマスマーケティングのデメリットは、自社の商品やサービスのターゲット以外にも、画一的に情報を発信してしまうことです。潜在顧客以外への情報発信は無意味なものになってしまう場合が多く、一定の広告予算が無に帰してしまうことを認識する必要があります。特に昨今、消費者の欲求が多様化している中で、ニーズと一致しない広告を大量に打つデメリットは、看過できないものがあります。

三つ目のマスマーケティングのデメリットは、希薄な広告になりやすいことです。前述のようにマスマーケティングは、全ての生活者が同質であるという考えのもと行われます。そのため、広告そのものも均一化されて発信されることが多く、多様化する生活者それぞれのニーズを捉え、それに寄り添うことが難しくなってしまいまいます。情報過多の現代において、希薄な広告を発信し続けることの効果には、やや疑問の余地が残ります。

以上のことから、マスマーケティングのデメリットは、画一的に情報を発信してしまうが故の投資対効果の不明瞭性と、非効果的な広告発信の発生、更には広告の希薄化であると言えます。

顧客起点のマーケティングとは

顧客起点のマーケティングとは、ロイヤル顧客を起点に積極的な投資を行うマーケティング手法です。具体的には、ファンコミュニティやCRMなどが挙げられます。投資額に対してレバレッジの聞いた効果を生み出すマーケティング手法であるとも言われています。ここでは、まず初めに顧客起点のマーケティングが着目され始めた時代背景について解説します。次に顧客起点のマーケティングのメリットとデメリットについて解説します。

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顧客起点のマーケティングが着目される背景

顧客起点のマーケティングが着目される背景は、昨今のマーケティング環境の変化です。それに伴い、顧客起点のマーケティングを展開することによって企業と顧客との関係性を強化し、自社ブランドの価値を明確化・最大化する必要性が高まっています。

その理由として、主に三つの背景が挙げられます。一つ目の背景は「パレートの法則」です。パレートの法則とは、「売上げの8割は2割の上位顧客に依存する」ことを示し、ロイヤル顧客の売上貢献の高さが伺えます。二つ目の背景は、人口減少と少子高齢化です。国内の人口が全体的に減少していく中で、消費者の数も必然的に減少し、市場の縮小が引き起こされています。三つ目の背景は、成熟市場への到達です。市場が成熟するにつれて、技術革新が頭打ちになりつつあり、機能面での競争が困難になってきています。これら三つの背景から、自社のブランド”こそ”の価値を高め、企業と顧客との関係性を強化することが、企業の喫緊の課題となっています。

また前述の三つの背景に加え、クッキー規制も大きなマーケティング環境の変化として挙げられます。昨今のGDPR法やクッキーレスによって、サードパーティデータなどの個人情報のデータ取得に制限がかかり、新規顧客を獲得する難易度は依然として高まる一方です。そのため、ファーストパーティデータを積極的に取得し、既存顧客の購買データと顧客データを利用しながら、安定した収益基盤を作っていくことが必須となっています。以上のことから、企業の安定した収益基盤を構築するためには、新規顧客獲得一辺倒のマスマーケティングではなく、既存顧客のロイヤリティを高め、ロイヤル顧客を育成する「顧客起点マーケティング」に注力することが、非常に重要であると言えます。

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顧客起点のマーケティングのメリット

顧客起点のマーケティングは、マスマーケティングにはない二つのメリットが存在します。一つ目は顧客理解を活かした商品開発が可能になること、二つ目は潜在顧客に対して情報を適切に届けられることです。それぞれについて解説します。

顧客起点のマーケティングの一つ目のメリットは、顧客理解を活かした商品開発が可能になることです。顧客起点のマーケティングにおいては、大衆に受け入れられる商品ではなく、顧客のニーズに徹底的に寄り添う商品のプロモーションが求められます。そのため、セグメント分けされた自社のロイヤル顧客の「声」を、直接的に商品開発やマーケティングに活かすことができます。しかしその際には、ロイヤル顧客についてより詳しく知り、積極的にコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。

顧客起点のマーケティングの二つ目のメリットは、潜在顧客に対して適切な情報を届けられることです。自社のロイヤル顧客に限定して情報を発するため、常に一定以上の効果が期待できると言えます。自社のロイヤル顧客のニーズを理解して適切な広告を発信するため、より消費欲求に寄り添った適切な情報を発信することが可能になります。

以上のことから、顧客起点のマーケティングのメリットは、恣意的なターゲットに投資を行う故の、顧客理解を活かした商品開発と効率的な広告配信であると言えます。

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顧客起点のマーケティングのデメリット

一方で、顧客起点のマーケティングにもデメリットは存在します。顧客起点のマーケティングを行うデメリットは、商品の未認知層を置き去りにしてしまう可能性がある点です。

顧客起点のマーケティングは、新規顧客ではなく自社のロイヤル顧客をターゲットに、プロモーションや商品開発などのマーケティング活動を行っていきます。しかしながら、ロイヤル顧客にのみマーケティング活動を行い続けると、商品の未認知層に対して商品の認知を拡大する機会を失ってしまいかねません。そのためマスマーケティングと顧客起点のマーケティングを並行して行い、バランスの良いマーケティング施策を行う必要があります。

マスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違い

マスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違いは、どの様なものがあるでしょうか。マスマーケティングと顧客起点マーケティングの代表的な差異として、次の三つが挙げられます。一つ目は構造の違い、二つ目は売り上げ再現性の違いです。それぞれについて解説していきます。

構造の違い

一つ目のマスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違いは、マーケティング構造です。以下の図を参照しながら解説していきます。

前者のマスマーケティングは、未認知層、認知検討・離反層から、新規顧客を産む構造をを形成しています。自社の商品やサービスの未認知層に積極的な投資を行い、図の様なパネル型のフローを辿って、最終的に購買のコンバージョンまで落ちていく構造を形成しています。そのため、前述の様に多くの非認知層に面でアプローチできる一方、購買に至る一連のプロセスに対してあまりアプローチすることができないのが現実です。また購買層に対しても非認知層と同一のアプローチを行うため、購買層を維持すること、即ち「ロイヤル顧客を育成する」ことに寄与するとは言えません。

一方で後者の顧客起点のマーケティングは、顧客のロイヤリティを上げてロイヤル顧客を育成することに主眼を置いています。そのため、ロイヤル顧客に積極的な投資を行い、盤石な売上基盤を構築するとともに、UGC発信により新たな顧客をうむ手法となっています。

そのため、大量の生活者に対して一括で広告を配信することはできない一方、自社のロイヤル顧客に対して密度の濃いアプローチを行うことができます。顧客のロイヤリティを高めつつ、発信されたUGCやVOCが拡散され、一般顧客が継続顧客へ、継続顧客が一般顧客へ変化するプロセスに寄与することができます。そのため、非常にレバレッジの効いた構造を形成していると言えます。

売り上げ基盤の安定性の違い

二つ目のマスマーケティングと顧客起点のマーケティングの違いは、売り上げ基盤の安定性です。ここでは一例として、マスマーケティングで獲得する5億円の売り上げの再現性と、顧客起点のマーケティングで獲得した5億円の売り上げの再現性を比較します。

前者のマスマーケティングで獲得する5億円の売り上げは、大量プロモーションによって獲得した5億円であると形容できます。そのため、来期も同じプロモーション施策を行わなければならず、再現性に関しては疑問の余地があります。即ち顧客は獲得したもののリピーターになる保証はどこにも存在せず、大量プロモーションを行い続ける必要性に迫られます。以上のことから、マスマーケティングによる売上基盤の安定性は、少し脆弱であると言わざるを得ません。

一方で、後者の顧客起点のマーケティングで獲得した5億円の売上は、ロイヤル顧客が自発的に購入した結果の売上であると形容することができます。そのため、来季も同額の売り上げを期待することができ、来季以降も高い再現性を誇るともいえます。即ち顧客起点マーケティングで生み出した売上は、外部要因に左右されず、継続的なものであると言えます。以上のことから、顧客起点のマーケティングによる売上基盤の安定性は、非常に頑強なものであると言えます。

以上のことから、マスマーケティングは認知を獲得するための効果的な手法である一方で、企業の安定した収益基盤を創出する上では、顧客起点のマーケティングが必要不可欠であるといえます。

まとめ

本記事では、従来型のマスマーケティングと、顧客起点のマーケティングのそれぞれの概要と特徴について解説しました。

顧客起点のマーケティングを行う上では、ロイヤル顧客の分析は必要不可欠です。弊社のプロダクトであるロイヤル顧客プラットフォームcoorum(コーラム)では、ロイヤル顧客の育成・蓄積・分析でLTV最大化、正確な顧客理解、UGCの醸成を実現します。コミュニティ運営と顧客分析をワンストップで行う機能のほかに、支援企業100社以上のコミュニティの活性化や顧客分析をサポートします。

具体的には、コミュニティやユーザーの分析機能を通じて、消費者のどの様な体験が売上に直結しているか、ロイヤル顧客はコミュニティの中でどの様な活動をしているか、購買データと紐づけをした上で、分析していきます。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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