
ロイヤル顧客を増やし継続した売上の醸成を目指す顧客起点のマーケティングは、有効な手段でありながら、その取り組みには課題もあります。本記事では、顧客起点のマーケティングが持つ課題と、ファンコミュニティが果たす役割についてご説明します。
顧客起点のマーケティングが注目される理由
人口減少やマーケティング手法の多様化を背景に、不特定多数のターゲットに対して企業から一方的に情報発信を行う従来型のマーケティング手法では、十分な顧客獲得ができなくなってきています。
顧客単価を上げ、選ばれるサービスになるためには、顧客の声を収集し、顧客との深い関係を作る顧客起点のマーケティングが必要です。顧客起点のマーケティングが注目される理由をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

コロナや原価高騰など変化しやすい社会情勢に対応が必要
コロナ禍がもたらした生活者行動の変化や、原価高騰による値上げなど社会情勢は大きく変化します。コロナ禍において生活者が出歩かなくなったことにより、飲食店やアパレルなどの店舗が大きな打撃を受けたことは、周知のことでしょう。
飲食店やアパレルなどの店舗には、たまたま目についたから店に入ったというライトな顧客層が多く存在し一定の売上を上げていましたが、こうしたライト顧客が獲得できなくなったことで大きく売上を下げる結果となってしまいました。
顧客起点のマーケティングが目指すのは、このような外部要因の影響を受けるような状況においても変わらず店舗に愛着を持つファンやリピーターを獲得することにあります。
その他、内食、おうち時間関連サービスやコロナ禍に対応したデジタルサービスは生活者の行動がコロナ禍以前に戻るに連れて客離れが発生してしまいました。こちらも同じく顧客との長期的な関係構築ができれていれば、環境の変化に左右されず継続した売上を維持できたものと考えられます。
顧客数ではなく顧客単価・ロイヤリティアップが重要に

パレートの法則として知られるように企業の売上の多くは、ロイヤリティの高い一部の顧客で構成されています。実際にとある企業の売上構成を見てみると、上位14%の顧客で全体の85%の売上を占めています。この上位顧客が離れてしまうと売上に大打撃を与えることになるため、外部環境の変化があっても使い続けてくれる顧客を増やさなければなりません。
また、メニューの開発や広告のクリエイティブ変更など新しい施策を行うときには上位顧客に残念な体験を与えてしまうことがないよう配慮が必要になります。
なお、人口減少や少子高齢化により中長期的には新規顧客の数は減少していきます。新規顧客の獲得は難しくなってくるため、今後も売上を伸ばしていくためには顧客数ではなく、既存顧客のロイヤリティを高め顧客単価の向上に努めるべきだといえます。
購買行動の意思決定は広告だけでなく社会評価が軸になる

広告やSNSなどによる企業からの一方的な情報発信だけで購買喚起を促すことは難しくなってきました。サービスの意思決定軸にはそのサービスが社会的にどのような評価をされているのかという点にも注目されるようになっています。例えば電気料金が10円高くても、環境へ配慮が充実しているサービスを選ぶ顧客がいるのです。
また、顧客が発信するUGCに注目し購入判断をする人も多く、EC・ネットでの購入においてレビューやクチコミをチェックする人の割合は半数を超えています。単なるキャンペーン投稿ではなく良質なUGCを増やすことが鍵となるのです。
顧客起点が必要な場面ってどんな時?
マーケティング業務を行うなかで、顧客を起点にした施策や商品企画のアイデアを形にするには社内調整が必要になる場合が多いのではないでしょうか。売上にどのように貢献するのか、また顧客がどのような反応を示すのかを明確にできれば施策を進行しやすいものの、具体的な顧客の声を収集するのは容易ではありません。
施策を考える際にマーケターが抱く「お客様はどんな反応をするんだろう?」という疑問こそが、顧客起点のマーケティングが必要になるときなのです。
顧客起点はなぜむずかしいのか
顧客起点のマーケティングが難しい理由はさまざまあります。象徴的な4つの理由をご紹介します。
成果証明の問題

顧客起点のマーケティングは、難度が高い取り組みでありながら売上への影響がわかりにくい傾向にあります。どうやって成果を出すのか、またどうやってその成果を自分のものだと証明すればいいのか、そもそも定量的に証明することは可能なのか、顧客起点のマーケティングに取り組もうとするマーケティング担当者にとって、足かせとなりやすい問題です。
運用コストとリソースの問題
リサーチやSNS上でのコミュニケーション、顧客へのインタビューなど既存の手法を用いて顧客起点のマーケティングに取り組もうとすると、金銭的なコストと人的リソースが膨らみがちです。その一方で成果が分かりづらいため、費用対効果が合う施策になるのかが懸念されます。
顧客の声を信じていいのかという問題
調査会社から提供されるユーザーの声をどこまで信じていいのかわからない、統計的にはわかるものの具体的なインサイトがわからないなど、顧客の声として収集したものの、その信ぴょう性が課題になる場合もあります。
また、インタビューの場でも顧客がポジショントークをするため本音と建前の見極めが難しいのです。
手法の問題

顧客の声を収集するためにどの程度時間を掛けるべきなのか、また意思決定の大きさによって声の集め方が異なるのではないかなど、どのように顧客起点マーケティングを進めるのか、その手法についても課題があります。
顧客起点のマーケティングを持続的に実現するには何が必要か
顧客起点のマーケティングを持続的に実現するために必要なのは「持続的なコミュニケーション接点」と「助けてくれるお客様を増やすこと」の2点です。
持続的なコミュニケーション接点

顧客の声を収集するために、イベントなどの単発の接点を行うのはコストが大きくなりやすく、頻繁に実施するのは現実的ではありません。
また、SNSやオウンドメディアでは長期的な顧客接点を持つことができるものの、浅い接点になりがちで、欲しい声を的確に集める手段としては十分ではありません。
そこで、継続的に深く狭く顧客とコミュニケーションを取るための手段としてファンコミュニティがあります。
助けてくれるお客様を増やすこと
「お客様はどんな反応をするんだろう?」と思った時に、手軽に助けてくれるお客様を増やすことで持続的な顧客起点マーケティングが実現します。実際の利用者が良いUGCを作成したり、顧客とブランドの深いコミュニケーションによって、助けてくれるお客様、つまりファンを作っていくことができます。
ファンの欲求を上手くくすぐることで、ファンの満足度が高まると同時に、企業にもメリットが生まれます。ファンコミュニケーションに活かせるファンの欲求は次のようなものがあります。
- 共感:同じ立場の仲間とつながりたい→ファン化、LTV向上
- 関与:ブランドと関わりたい→VOCの収集
- 知識:知りたい→ファン化、UGC創出のきっかけ
- 推奨:言いたい、広げたい→UGCの生成
これらのファンの欲求を活かして顧客起点のマーケティングを行う手段がファンコミュニティです。熱量を高め、口コミを醸成し、ロイヤル顧客へと育成するドライバとしての役割を持っています。
コミュニティマーケティングとは?
コミュニティマーケティングは、企業と顧客がオンライン上でつながり双方向のコミュニケーションを持てる手段です。
ロイヤル顧客の育成・蓄積・分析はもちろんのこと、ファンとの持続的なコミュニケーションを取る実行基盤として活用できます。
質の高い顧客の声を短期間で収集

通常、リサーチ会社に顧客の声の収集を依頼すると1回ごとに料金が発生する上に設問数の制限があり、1ヶ月程度の期間が掛かります。また、回答する顧客は調査会社からポイントなどのインセンティブを受けたユーザーで、収集した声が本音なのかどうか信ぴょう性に欠ける面もあります。
ファンコミュニティであればブランドへ愛着や応援を軸とした回答が数日で集められ、その声をUGCとして活用することもできます。ファンコミュニティ内で行うため、調査費用が発生しないのもメリットです。
コミュニティ施策を実施することで得られる成果
ファンコミュニティ施策を実施することで得られる成果は次の3つです。
- LTV増大(LTV訴求内部リンク)
- VOC収集(VOC内部リンク)
- UGC(UGC内部リンク)
ロイヤル顧客の育成・蓄積・分析を行うことで、購入頻度の高いファンをキープし、またロイヤル顧客数を増やし売上を安定させることができます。
また顧客の声を収集しマーケティング活動に活かし、膨大なUGCを醸成し拡散することで認知の向上を図ることも可能です。
事例:ポキトモコミュニティ
江崎グリコ株式会社が運営するポッキーのファンコミュニティ「ポキトモ」は、ポッキーを好きでいてくれるファンの皆様が、運営や他のファンの皆様との交流を通して、誰もがコミュニケーションに前向きになれるファンコミュニティを目指しています。
ポッキーファン同士のダイレクトな繋がりの場を提供

エンドユーザーと気軽に・素早く・ローコストで、商品の話から雑談まで幅広くコミュニケーションを取ることができます。
オフラインキャンペーンやイベントを蓄積

イベントに参加できなかった顧客にもイベント記録を共有し、顧客の感想を共有してもらえる。
新商品開発/既存商品の改善へ顧客の声を活かせる

ファンコミュニティ内で収集できたVOCが新しい商品や改善のヒントになります。
おわりに
顧客起点のマーケティングが難しいのはなぜかについてご紹介しました。短期的でわかりやすい成果を上げることが必ずしも良いとは限らず、お客様を大事にするマーケティング活動を行うことが安定した売上につながります。
また顧客起点のマーケティングは、ロイヤル顧客の反応は、事業成長や施策実行、成果を上げるために欠かせないものです。顧客インサイトを理解し育成、維持することで顧客起点のマーケティングを実現しましょう。
