
2020年9月8日に開催したオンライン対談イベント『【1社だけど、2つのCS!?】圧倒的成長を支える、マネーフォワードのカスタマーサクセスを大解剖!』では、マネーフォワード社にてカスタマーサクセスに注力されているお二人にご登壇いただき、弊社CCOの小父内がモデレーターを務めました。
イベントでは、ゲストの高垣内氏と柏崎氏にマネーフォワード社のカスタマーサクセスの構造や業種によるスタマーサクセスの違いについて、お話を頂いております。
今回イベントに参加できなかった方にもお楽しみ頂けるよう、本レポートではイベントの内容をダイジェストでお届けします。
高垣内 友己(以下、高垣内) Twitter: @takagaitotomoki
株式会社マネーフォワード マネーフォワードビジネスカンパニー 事業推進本部 カスタマーサクセス横断戦略グループ
柏崎 貴広(以下、柏崎)
株式会社マネーフォワード マネーフォワードビジネスカンパニー Mid-Market本部 カスタマーサクセス部 HRグループリーダー
小父内 信也(以下、小父内) Twitter: @obushin
株式会社Asobica CCO
インタビュー記事はこちら
高垣内:
2018年3月に入社。同年11月まで営業に従事しており、2018年12月に会計事務所向けカスタマーサクセス部立ち上げのタイミングで自ら希望し、携わりました。現在はカスタマーサクセス(以下CS)だけでなく、CSの活動が円滑に進むためのコンテンツ作成や、コンサルティング対応を行っています。
柏崎:
2016年に入社。カスタマーサポートやPMO(仕様策定)職を経て、現在のカスタマーサクセス職に至ります。
高垣内:
マネーフォワード株式会社は2012年5月に設立し、東証マザーズに上場しています。全国に支社を設け、各拠点でサービスの販売、CS業務を行っています。
主要な提供サービスとして家計簿アプリのマネーフォワード ME、法人・個人事業主向けのマネーフォワード クラウドがあり、その他複数のサービスを提供しています。
本日は、マネーフォワード クラウドに関するCSについて、お話しします。
セールスがオンボーディングを担当
高垣内:
マネーフォワード クラウドを提供するチームは3つの本部に分かれ、それぞれ役割が異なります。柏崎はMid-Market本部、私は事業推進本部に所属しています。
事業推進本部は会計事務所様に対し、マネーフォワード クラウドを提案します。そして会計事務所様には、顧問先様に対してマネーフォワード クラウドの導入提案を行っていただきます。そのため、会計事務所様と顧問先様の双方にマネーフォワードを使っていただく仕組みになっています。会計事務所様に対してCSを行うのはもちろんですが、会計事務所様が顧問先様に対して導入支援ができるような、パートナーのサクセスという役割も持ち合わせているのが事業推進本部のCSです。
事業推進本部は大きく3つの事業部に分かれています。
マーケティング&セールス:いわゆるマーケティングチーム、インサイドセールス、新規のセールスチーム。
カスタマーサクセス:フィールドカスタマーサクセス、インサイドカスタマーサクセス
企画・後方支援:カスタマーサクセス横断戦略グループ

高垣内:
リード獲得からアポイント獲得までをマーケティングチームとインサイドセールスが行っており、商談からクロージング・受注・契約を新規セールスが行います。この新規セールスのチームの中にオンボーディング担当がいるのが特徴で、クロージングからオンボーディングまで一気通貫で対応しています。
質問者:
なぜ、オンボーディングをセールスが行うのですか?CSで行わない理由が知りたいです。
高垣内:
最初はCSでオンボーディングを対応していました。会計事務所様が顧客なので、特有なのかもしれませんが、クロージングをした営業担当に引き続き今後の対応を望まれる方が多いためです。また、綿密に引き継ぎをしても、引き継ぐことで分断されてしまい、うまく軌道にのらないケースが過去にありました。この2つをふまえ、クロージングからオンボーディングまで一気通貫でセールスが行うようになりました。
フィールドカスタマーサクセスはハイタッチによるCSを行うチームで、活用促進や研修の実施、アップセル、クロスセルの対応をします。インサイドカスタマーサクセスはリニューアル(契約更新)の商談がメインですがアップセル、クロスセルも対応します。
チームを分けている理由として対応数の差があります。フィールドカスタマーサクセスは全体の2割を対応しており、数としては少ないですが、イベントへの参加率、イベントへの登壇など関係性が深いお客様です。残りの8割をインサイドカスタマーサクセスが対応しています。
ヘルススコアの考え方
高垣内:
ここからCSの中でもみなさんがより興味のあるヘルススコアについてお話しします。
ヘルススコアは、当社の基幹データベースからlookerにデータを取り込み、レポートを作成します。そして、lookerとCRMツールであるsalesforceを連携しlookerのレポートをsalesforceで表示し、利用状況など顧客の活動履歴から利用状況データを一元管理できるようにしています。
会計事務所様の活用具合、ヘルススコアなので一般企業様のCSと比べると違いが多く、参考にならない可能性もあります。取得している情報としては契約情報、ログイン率、基本設定(初期設定)が完了しているかを確認しています。また、契約している事業所と関連する事業所の推移や会計の仕訳情報を、手入力なのかクレジットカードなど各種連携機能を利用されているのかを確認します。手入力ばかりの場合、うまく活用していないと考えられるため活用支援を行います。
ヘルススコア全体の中で、独自の指標、かけあわせがあります。
オンボーディング後、4分類にカテゴリ分けし、そのカテゴリごとに打ち手を用意しています。ロイヤルティ向上施策、アップセル・クロスセル候補先への提案、チャーンの防止施策、特に問題のない場合は経過観測をします。
小父内:
4分類のカテゴリの詳細についてお話しいただけますか。
高垣内:
はい。まず、契約情報、ご契約数や売上について、そしてNPSではないのですが、定性的な情報としてどれだけマネーフォワードに愛着を持っていただけているか。このような情報を元に4分類のカテゴリに分けています。
チェンジマネジメントをカスタマー任せにしない
高垣内:
マネーフォワード クラウドは主に会計ソフト、給与計算ソフトなのですが、会計事務所様に導入いただいた際、既存の会計ソフトと置き換えただけでは導入完了と考えないようにしています。
仕様が異なることにより、業務フローも変化させる必要があり、ここを疎かにすると実際に実現したい成功を体験していただけません。
業務フローの変化をどう作り上げていくのか、ここをリードしていくことを常に大切にしています。
小父内:
単にツールを提供して終了にはしないということですね。
高垣内:
具体的には、まず現状把握をすることで課題を洗い出し、見える化します。そして、業務フローの再構築を実施し、その後モニタリングとフォローを行います。
業務フローの再構築では、マネーフォワードのサービスに限らず細かな1つ1つの業務内容に合わせ、必要なツールを提案し、業務フローを作り上げます。
もう1つのカスタマーサクセスチーム

柏崎:
ここからはMid-Market本部のCSについてお話しします。100名〜300名規模の中堅企業や成長企業が担当領域です。組織として幅広い領域を対応しており、CSチームは現在は図の赤色部分を担当しております。
小父内:
サポート領域も対応されるのでしょうか?
柏崎:
そうですね。実際にサポート対応は行ってはいませんが、サポート業務を円滑に行うために必要なガイドや動画の作成したり、サイドプロジェクトとして開発本部へ機能要望のフィードバックやUI改善の依頼を行っています。
小父内:
オンボーディングはCSで行うのでしょうか?
柏崎:
はい。事業推進本部とは異なり、オンボーディングが中心です。
受注からオンボーディングの流れですが、受注した営業担当にGoogleフォームへ引継ぎ内容を記載してもらうと、slackへ通知され、Clickupへ案件登録されるよう連携しています。この情報から状況を把握し、お客様とZoomにてキックオフミーテングを実施します。
営業担当からの引継ぎは基本的にGoogleフォームで行いますが、案件によってはオフラインでの情報共有を実施したり、クロージングに同行することもあります。

設定に関するスケジュールやタスク管理など、お客様とのやりとりは全てbacklogを利用しています。主にガントチャートを活用しており、縦軸はタスク、横軸はスケジュールになっています。
小父内:
ガントチャートでオンボーディングのタスクを管理しているのですね。
お客様は実際にbacklogは使ってくれるのでしょうか?
柏崎:
キックオフミーティングでbacklogの使い方を説明しているので、問題なくご利用いただけています。ステータス管理も可能なため、進捗具合もひと目で確認ができるので、分かりやすく、そして楽しみながら取り組んでいただけています。
タスクをクリックすると、設定方法についての解説と、動画も埋め込んであるためセルフオンボーディングが可能です。
質問がある場合はコメント欄に記載いただき、私たちから返答しているのですが、backlogもslackと連携し、コメント時に通知されるように設定しています。
柏崎:
ヘルススコアについては、事業推進本部と同様lookerを使用し、データ連携を行っています。給与システムを例に挙げると、当社が活用いただきたいと考えている機能をご利用いただけているのかを確認するために操作ログや機能の利用度チェックを行っています。
当社は従量課金のシステムが多いため、導入時にご希望いただいた利用人数分を実際ご利用いただけているのかを確認しています。また、アカウント数が減少傾向にある場合、チャーンにつながらないようアクションをとれるようにしています。
現在数百社程度をこのヘルススコアで管理していますが、取得データを増やし、より細かな分類ができるよう進めているところです。
柏崎:
ヘルススコアと合わせて、NPSデータも取得しています。Delightedというシステムをプロダクトの中に組み込み、お客様へランダムに質問することでNPSを取得しています。この数値もslackへ連携し、毎月集計を行っています。集計データを元に、開発チームとNPS改善を進めています。
小父内:
質問への回答率はどれぐらいありますか?僕の知る限りで10〜15%、メールだと7、8%が一般的だと思うのですが。
柏崎:
回答率は20%前後です。他のお客様へ紹介いただけますか?という質問に1〜10の数値で回答いただきます。回答の理由を書いていただくコメント欄は念のためつけていますが回答は必須ではないです。
小父内:
NPSは重要だと考え、お客様へ回答してくださいとプッシュはしていますか?
柏崎:
NPSについてプッシュはしていませんが、カスタマーエフォートスコアをプッシュして取得しています。オンボーディングがどれぐらい大変だったかをこのスコアを元に把握しています。
柏崎:マネーフォワード クラウドの各サービスの解約率は、2.2%と非常に低いです。

決算説明資料 P.25)
バックオフィスシステムはスイッチコストが高く解約のハードルが高いため、解約率は低めに推移しますが、解約率の低いからといって、システムへの満足度が高いとは限りません。そのため、NPSから不満や課題を解消することは重要だと考えており、オンボーディング率と合わせてKPIとしています。
現状、オンボーディング率は8割と高い数字ではあるのですが、かなりハイタッチです。1対1ではなく1対N、N対Nの対応に変えていくために新たなチームがcoorumなどを活用し、テックタッチを推進しています。