SaaS系企業のKPIとは?具体的な指標や計算式を解説

2024-08-27 2024-08-27 コラム

サブスクリプションモデルで収益を出すSaaS系企業にとって、中間目標となるKPIの設定は重要です。定点観測を通して最終的な目標までの現在地がわかり、方向性や施策に問題はないか高精度の判断が可能です。
今回はSaaS系企業におけるKPIの重要性や具体的な指標、計算式を解説します。

そもそもKPIとは

KPI(Key Performance Indicator)は重要業績評価指標と訳され、目標への達成度合いを定点観測するための指標です。

最終目標に対する現時点での位置を把握できれば、いつまでに何をすべきかわかります。KPIの設定や運用によって、施策に問題はないか、事業の方向性を軌道修正すべきかなどの正確な予測に役立ちます。

KGIを年間売上1億円に設定した場合、KPIの代表例は新規問い合わせ件数や商談率、平均顧客単価などです。目標を決める際は過去の売上や市場の成長性を加味して、現実的な水準に設定するのが重要といえます。最終目標が明確なほうがブレの生じる危険がないため、KGIを定めた後にKPIを決める流れがおすすめです。

KPIは売上や利益などの財務指標のほか、営業部門の商談率や受注率の測定にも用いられます。また、従業員のパフォーマンスとリンクさせて、個々の評価に使用することも可能です。勉強会への参加回数や顧客への訪問回数、クレーム発生率を観測することで、組織へのコミットメントや貢献度を測定できます。

KPIの意義は、組織内で客観的かつ統一的な指標を導入できる点です。チームメンバーの意思統一が測りやすくなるほか、社内向けでは評価者の主観による恣意的な評価を取り除く効果も期待できます。組織を活性化し、内からパフォーマンスを高めるにはKPIの設定が有意義です。

SaaS系企業においてKPIが重要視される理由

KPIは以下の理由から、SaaS系企業において重要な指標だと位置づけられています。

  • サブスクリプションが前提のビジネスモデルのため
  • 市場や顧客の動向に応じてサービスを改善するため
  • 業務プロセスを見直して効率化に資するため
  • 融資の際に説得力のある主張をしやすくなるため

SaaSは主にソフトウェアを定額料金で販売して、継続的に対価を得るビジネスモデルです。利益を出すにはサービスの継続率を高める必要があるため、KPIを活用して将来的な売上を正確に見積もることが重要といえます。

同時にSaaS系企業では、LTV(顧客生涯価値)や解約率なども大切な指標です。1人の顧客から得られる売上が大きくなれば、新規開拓がうまくいかずとも、事業の継続に十分な利益を確保できます。KPIでLTVや解約率を管理し、数値が良好でない場合はサービスを改善すべき状況です。

SaaS企業が抱える課題「ユーザー定着化」の解決方法を徹底解説

SaaS系企業では営業の分業化が加速していて、営業部門やインサイドセールス、カスタマーサクセスに部門を分ける動きがみられます。KPIを継続的に測定して日々の振り返りを行うことは、部署単位でのボトルネックの発見をはじめ、課題の抽出にも効果的です。

数値による客観的な管理はいち早く問題を特定し、改善につなげるための第一歩です。KPIの目標値と実績に大きな乖離が生じる場合、設定する指標や水準が企業の実態にマッチしていない可能性があります。致命的な状況に陥る前に、KPIの達成度を通じて、施策や方向性を変・転換すべきか判断しましょう。

KPIは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの融資の確度を高める際にも効果的です。客観的な数値の形で事業の将来性や継続性を伝えられるため、説得力のある主張をしやすくなります。

SaaS系企業の「成長性」に関する7つのKPI

販売時点では、コストを回収ができないSaaS系企業では継続的な事業の運営が不可欠です。ビジネスの維持や拡大の可能性を見極めるため、成長性を判断できるKPIの設定が求められます。ここでは成長性に関するKPIの定義や使用シーン、役割などを解説します。

ARPA(アカウント1人あたりの平均売上額)

ARPA(Average Revenue Per User)は、1アカウントあたりの平均売上金額を表す指標です。算出方法はシンプルで「売上 ÷ アカウント数」で求めます。たとえば期間内に5,000万円の売上が発生し、アカウント数が5万であれば、ARPAは1,000円とわかります。

ARPAは、SaaS系の企業において重要度が高い指標です。なぜなら、PCやスマホなど異なる端末でクラウドサービスを使い分けるユーザーが増えつつあり、端末ベースでの正確な数値の把握が難しくなっているためです。

アカウント単位で課金している企業では、ユーザーごとの売上を測るより、実態に即した分析に適した方法といえます。1人が3台の端末からサービスを利用しても、ARPAでは1と算出します。

ARPAは、収益や売上額の増減を知りたい時にも有効です。アカウントごとに生み出す利益を把握すれば、収益性が可視化できます。たとえば、動画サービスの利用開始時からの期間を区分して累積額を比較することで、利益と継続率の相関関係を見出せる場合があります。

ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上額)

ARPU(Average Revenue Per User)は「アーブ」と読み、ユーザー1人当たりの平均売上金額を表します。計算式は「売上÷ユーザー数」です。ARPAとは異なり、同一のユーザーが複数の端末から利用している場合、1ではなく端末数でカウントします。

たとえば1億人の売上が発生し、500万人のユーザーだと仮定した時のARPUは2,000円です。1アカウントあたりの売上が目標額に達していない場合、新たなマーケティング施策を行うべきだと判断できます。

ARPUと関連が深く、実務では一緒に用いることが多い指標がARPPU(売上高÷課金ユーザー数)です。無料ユーザーと優良ユーザーを区別し、課金ユーザーを絞り出して正確な利益を捻出する際に役立ちます。

ASP(新規ユーザー1人あたりの平均収益)

ASP(Average Sales Prices)は、新規顧客1人あたりの平均収益を表すKPIです。新規ユーザーの成約率が上昇傾向か、アカウント数が伸び始めた顧客の属性は何か知るうえで有効な指標です。

ASPは、「特定期間内のMRR÷特定期間内の新規顧客数」で算出します。ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上額)と似た指標ですが、新規ユーザーのみを対象とする点が明確な違いです。ASPの分析によって、営業部門の新規開拓がうまくいっているか客観的に把握できます。

たとえば、所定の期間内に5人の新規ユーザーを獲得し、500万円の売上が発生した時の計算結果は100万円です。1人の新規顧客から得られる利益がわかれば、将来的なLTVの増減の見極めも可能です。

ARR(年間経常収益)

ARR(年間経常収益)は年間経常利益と訳され、毎年固定で得られる年間の収益を表すKPIです。計算式はMRR×12です。

サービスをローンチして間もない場合、今後の動き次第ではMRRに大きな変動が予測されます。ある月次収益を単純に12倍するARRでは、どの期間を測定に利用するかの判断が重要です。

MRRが月単位で解約と契約が起きる企業で重視されるのに対し、ARRはBtoB向けのサブスクリプション型のサービスを取り扱う会社で重要度が高いといわれます。ARRはASP同様、1人のユーザーから得られる利益の総額を表すLTVの見極めに役立ちます。自社に大きな利益をもたらす顧客層がわかれば、フォローに注力すべき相手の見極めが可能です。

MRR(月間経常収益)

MRR(月間経常収益)は月間経常収益と訳され、毎月固定で得られる月間収益を表すKPIです。ストック型ビジネスかつ月次更新の仕組みを採用するSaaS型の事業では、MRRの向上が事業拡大や企業の成長に直結します。

MRRの基本的な算出方法は「月額利用料×ユーザー数」です。年間や半年、月などプランごとに契約期間が分かれる場合、月額に算出し直したうえでユーザー数を乗じます。単発での利用や、株式の配当金のような一次的な収益は含まないことに留意しましょう。

MRRの主な種類を次の表にまとめました。

上記4種類の収益を合計して、MRR(月間経常収益)とみなす方法もあります。

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは?計算式や改善方法を解説

CMRR(既決月間定期収益)

CMRR(既決月間定期収益)はMRRのうち、契約で確定した収益を表すKPIです。ユーザーの継続的な利用が不可欠なSaaS系企業にとって、安定性や成長性を示すために重要な指標です。

CMRRは「MRR + 新規確定MRR – チャーンMRR – ダウングレード + アップグレード」で算出します。将来的な解約やアップグレード、ダウングレードまで考慮して、確実で信頼性が高い予測を可能にします。

新規確定MRRは新規顧客がもたらす利益を指し、契約に署名押印がなされた時点で、利用を開始していなくても計上するのが特徴です。MRRは現状の把握には効果的な反面、継続性や将来性の視点が抜け落ちています。成長性の判断には、あわせてCMRRを導入するとよいといわれます。

クイックレシオ(当座比率)

クイックレシオ(当座比率)は、期間内に獲得したMRRと失ったMRRの比率を表すKPIで、ビジネスの健全な成長性を測る際に役立ちます。

算出方法は、新規MRR+Expansion MRR÷Downgrade MRR+Churn MRRです。

クイックレシオが低い場合、解約やダウングレードによる収益の低下が深刻な状況の可能性が高いです。一般的にはビジネスの成長に伴い、新規MRR+Expansionの成長率は徐々に縮小します。

新規開拓が順調で顧客数が増加している局面ではなかなか意識が向きませんが、クイックレシオが低いと将来的に利益が出なくなる可能性があります。

新規ユーザーの獲得やクロスセル/アップセルの上昇などの好調を示す要因のみ目を向けず、懸念事項にも同時に目を向けなくてはいけません。クイックレシオの分子と分母の割合を示すことで、ビジネスの成長性や継続可能性を一目で把握できます。

SaaS系企業の「効率性」に関する6つのKPI

投資額をいかに効率的に回収できるかも、事業の成否を分かつ重要な要素です。SaaS系企業では効率性を表すKPIを設定し、費用対効果を正確に把握する必要があります。

各指標の定義や使用シーン、具体的な役割などを解説します。

LTV(顧客生涯価値)

LTV(Life Time Value)は、1人のユーザーが生涯を通して自社にもたらす利益の平均を表す指標です。算出に用いられる代表的な計算式を以下に列挙します。

  • 平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
  • ARPU(1ユーザー当たりの平均月次単価)÷チャーンレート

LTVの算出には収益率やARPUが用いられるため、収益性の正確な把握に役立ちます。サブスクリプション型のSaaSでは契約期間が長期化するほど値が大きくなるのが特徴です。

顧客との継続的なリレーションの構築が、LTVの向上には重要です。目標値と実態がかけ離れている場合、顧客満足度の向上やサービスの改善を検討すべき状況だといえます。

既存顧客の維持に注力し、長期契約や上位プランへの変更に成功すれば、新規開拓より低いコストでの収益の改善につながります。

LTV(ライフタイムバリュー)とは?注目される理由や向上に役立つ施策を紹介

CAC(顧客獲得単価)

CAC(Customer Acquisition Cost)は、1人の新規ユーザーを獲得する際に生じたコストを指すKPIです。リードの獲得に要したマーケティング費用や、顧客育成を目的に営業部門が投じたコスト、ユーザーが自走できるまで支援するオンボーディングの費用などが該当します。

CACは、「新規獲得に投じたコストの合計÷新規顧客獲得数」で算出します。より正確な実態を表すために、計算では既存顧客の維持(リテンション)に伴うコストを除外するのがポイントです。

CACは顧客の開拓に適したマーケティングチャネルの特定や、ユニットエコノミクスの把握に役立ちます。数値を下げる努力をすることで、いかに効率良くユーザーを増やせるかが企業活動の大きな課題です。

ユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算性)

ユニットエコノミクスは顧客1人あたりの採算性を示す概念で、「LTV(顧客生涯価値)÷CAC(顧客獲得費用)」で算出します。新規顧客の開拓に要した費用の、何倍の収益を得ているか示す概念ともいえます。

SaaSビジネスを続けるには、ユーザーごとの売上がCACを上回らなければいけません。SaaS系企業は売り切り型のビジネスと異なり、販売時点ではコストを回収できないのが特徴です。たとえば、成長局面にもかかわらず赤字事業だと考えて撤退するリスクがあります。

ユニットエコノミクスの数値が良好ならば、売上が低くても、事業は健全な状態だと判断できます。目の前の状態にとらわれず将来的な予測にも役立つことから、投資家の判断材料にも使われる指標です。一般的には、ユニットエコノミクスの値が3を超えるのが望ましい状態だといわれます。

CACペイバックピリオド(顧客獲得単価の回収期間)

CAC Payback Periods(顧客獲得単価の回収期間)は、新規顧客の獲得に要した費用を利益で回収できるまでの期間を表す指標です。計算式は「CAC÷(ARPA×粗利率)」です。CACペイパックピリオドが小さいほど、ユーザーが自社に利益をもたらすまでの期間が短いことを意味します。

CACはいわば将来得られる利益を見越した投資額です。先行利益をいかに早く回収できるかは事業の健全性を表すために不可欠な視点です。CACペイバックピリオドをKPIに取り入れれば、投資効率や施策の良し悪しを把握できます。

数値が低い時は、ビジネス上の課題と対策に齟齬が生じている可能性があります。一般的にCACペイバックピリオドの目安は6か月〜1年です。平均的な数値と著しくかけ離れている場合、先行投資の費用対効果が悪いことを意味します。

ランウェイ(資金が底をつくまでの猶予期間)

ランウェイは事業資金が底をつくまでの猶予期間を示し、「手元の資金÷バーンレート」で算出します。とくに、創業間もないベンチャー企業やスタートアップで重要な指標の一つです。

資金が尽きるまでの期間を把握していれば、余裕を持った戦略の見直しや方向性の転換が可能です。余剰資金にあわせた適切な戦略の立案に成功すれば、無駄を省いた効率的な投資に近づきます。

一般的なランウェイの目安は、1年~18か月です。たとえば、バーンレート(月ごとのキャッシュ減少率)が200万円で事業資金が3,000万円だと仮定した場合、ランウェイは15か月だと判断でします。

バーンレート(月ごとの資金燃焼率)

バーンレート(月ごとの資金燃焼率)は、事業単位で生じた月額コストを示すKPIです。「総コスト÷期間」で算出し、予算を使い切るまでにどの程度の猶予があるか把握できます。

1か月の総コストを表すグロスバーンレートと、売上を差し引いたネットバーンレートに分かれます。たとえば、月次売上が300万円のサービスで、6か月間の総コストが3,000万円だったとしましょう。月額コストの500万円から300万円の売上を差し引いて、ネットバーンレートは200万円です。

創業したての企業は、顧客基盤が不十分で売上が少ないケースが想定されます。一方で固定費や人件費はかかるため、予算管理の体制を確保していないと倒産リスクが高まります。

SaaS系企業の「継続性」に関する7つのKPI

ユーザーからの中長期的な利用が前提となるSaaS系企業では、継続性の判断につながるKPIの設定が有効です。各指標の定義や使用シーン、具体的な役割などを解説します。

AU(活動顧客数)

AU(活動顧客数)はアクティブユーザーと訳され、所定の期間中にサービスを利用するユーザー数を表す指標です。

2以上のアカウントを持つ同一ユーザーは、1人とみなします。AUの数値が悪い場合、サービスを十分に活用できていない顧客層が多いとわかります。見た目上の顧客数は多くてもアクティブユーザーの数が少なければ、将来的な解約の可能性を危惧しなければなりません。

チャーンレート(解約率)

チャーンレートは解約率を表すKPIで、事業の安定性やサービスの改善の必要性を測るうえで重要な概念です。

新規顧客の開拓に成功している状況でも、解約数が多いと収益が出ないばかりか、赤字を出す恐れもあります。チャーンレートを下げる施策に注力し、LTVや顧客ロイヤリティを高めることが事業の継続性を高めるために重要です。

チャーンレートには、ユーザー数や契約数をもとに解約率を示すカスタマーチャーンレート、収益ベースで算出するレベニューチャーンレートが存在します。

  • カスタマーチャーンレート:当月解約ユーザー数÷前月末のユーザー数×100
  • グロスレベニューチャーンレート:当月分の解約+ダウンセルのMRR÷前月末のMRR×100
  • ネットレベニューチャーンレート:当月分の解約+ダウンセルのMRR÷(アップセル・クロスセル)MRR÷前月末のMRR×100

カスタマーチャーンレートはBtoB企業の場合、アカウントチャーンレートと呼ばれます。いずれにせよ顧客数ベースの指標のため、プラスの値が出てきます。カスタマーチャーンレートは料金プランが一つしかなく、一律の料金を提示する企業に適した指標です。

一方で複数の料金プランに分かれる場合、収益ベースの金額がわかるレベニューチャーンレートの導入が適しています。解約やダウングレードの影響を知るだけであればグロスレベニューチャーンレートで十分ですが、クロスセルやアップセルの効果も見極めたい場合はネットレベニューチャーレートがおすすめです。

CRR(顧客維持率)

CRR(顧客維持率)は既存顧客のうち、ロイヤリティの維持に成功した割合を表すKPIです。モニタリングを通して、LTV(顧客生涯価値)を高めて、リテンションに適したチャネルを構築できれば解約率の低下にもつながります。顧客維持率の算出にあたり、測定期間を定めたうえで次に掲げる情報の取得が必要です。

  • 測定開始時の既存顧客数(S)
  • 期間終了時の総顧客数(E)
  • 期間内に増えた新規顧客数(N)

CRRの計算式は「((E – N) / S) ÷×100」です。たとえば、測定開始時に50人の顧客がいて期間内に50人増え、期間終了時に100人に達した場合の顧客維持率は、((100 – 50) / 50) × 100=100%です。

CRRの対象期間は週ごと・月ごと・年ごとがあり、企業によって異なります。新規顧客の獲得に要するコストは既存顧客の維持と比較して、5倍に達するといわれます。顧客維持率をKPIに設定し、リテンションや顧客ロイヤリティの実施に注力するのは効率的に事業拡大を目指す際に有意義な活動です。

NRR(売上継続率)

NRR(売上継続率)は、前年比で既存顧客の売上を維持できているか測るKPIです。月ごとに発生する収益の増減を表し、既存顧客の支払う対価がどのように変動するか表します。

NRRがSaaS型のビジネスで重要なのは新規顧客の獲得にリソースを割かずとも、収益を維持・拡大できるかの判断に寄与するためです。この数値が100%を上回れば、アップグレードやエクスパンションの施策が効果を挙げていると判断できます。

NRRは「{(月初のMRR+Expansion MRR)-(Downgrade MRR+Churn MRR)}÷月初のMRR」で算出します。月初のMRRが100万円、Expansion MRRが10万円、Downgrade MRRが10万円、Churn MRRが5万円だと仮定しましょう。

この場合(100万円+10万円)-(10万円+5万円)÷100=-0.05、つまり95%です。NRRが100%を下回り、月初MRRから数値が低下したため、下降局面だと推察できます。顧客ロイヤリティの向上をはじめ、既存顧客に向けたサービスの改善が急務な状況だといえます。

NRS(顧客継続度)

NRS(顧客継続度)はネットリピータースコアと呼ばれ、サービスの利用を継続したいと感じるユーザーの割合を表す指標です。企業はアンケートで「このサービスを1年後も利用しますか?」と質問し、5段階評価で回答を得ます。

得点ごとに、「5点:リピーター」「4点:中立者」「0~3点:離反リスク者」と判定します。リピーターの割合-離反リスク者の割合を測定し、数値がプラスならば継続性は高いといえるでしょう。

NPS(顧客推奨度)

NPS(顧客推奨度)はネットプロモータースコアと呼ばれ、ユーザーの推奨度から顧客ロイヤリティを判断する方法です。「このサービスを他人にどの程度すすめたいですか?」と質問を投げかけ、0〜10の11段階で回答を受けます。

スコアごとに「9~10点:推奨者」「7~8点:中立者」「0~6点:批判者」と分類します。「推奨者の割合-批判者の割合」がプラスならばロイヤリティが高い、マイナスならばロイヤリティが低いといえるでしょう。

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RFV(顧客のエンゲージメントスコア)

RFV(顧客のエンゲージメントスコア)は、ユーザーによる製品の活用度や満足度を表す指標です。サービスを使いこなしている顧客層の属性を把握し、十分に活用できていないユーザーへの効果的なアプローチの発見に用いられます。

RFV分析で必要な要素は、Recency(直近の利用状況)・Frequency(利用頻度)・Volume(利用量)です。十分なデータを得たうえで以下の計算を行います。

  • Recencyスコア:現時点の日付-最終利用日
  • Frequencyスコア:サービスの利用日数-利用期間
  • Volumeスコア:サービスの利用量÷利用期間

顧客別に3つのスコアを測定し、エンゲージメントの把握に努めます。総合的な数値で評価するほか、数値の悪い特定の指標に着目して、問題点や改善点を見つける方法もあります。

適切なKPIで事業を推進しよう

ユーザーの長期利用が不可欠なSaaS系企業では、KPIによる目標の管理が必要です。複数の指標を組み合わせて多面的な観点から評価を下さなくてはいけません。「成長性」「効率性」「継続性」の3つの視点で別々のKPIを設定すると、正確で確実な判断につながります。

本記事で紹介したすべての指標を取り入れると、測定や評価に要する手間や負担がかかります。ビジネスのフェーズや課題、目標を考慮し、自社に適したKPIを導入して事業の推進につなげましょう。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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