顧客分析とは、自社の商品・サービスを購入または利用する顧客を分析し、理解を深める手法です。自社の顧客について把握することで、需要に合わせた戦略を立て、売上を向上させることができます。
今回は顧客分析の目的や必要性、代表的な手法について解説します。顧客ロイヤリティを高めながら顧客分析ができるシステムも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
顧客分析とは?
顧客分析とは、自社の商品・サービスを利用する顧客の属性や購買履歴などを分析することです。顧客分析によりどのような顧客がいるか、どのようなニーズがあるか知り、より良い商品・サービスの提供につなげます。
ここでは、顧客分析の目的や分析の項目を解説します。
顧客分析の目的
経営の大きな目標のひとつは売上や利益の拡大ですが、そのプロセスに顧客分析が必要です。顧客分析には具体的にどのような目的があるのか、詳しくみていきましょう。
顧客を理解するため
顧客分析は、自社の顧客を理解するために行います。顧客の特徴やニーズ、行動を明確に把握し、提供している商品・サービスがニーズや生活様式に合っているかを確認します。
売上が好調でも、商品・サービスが顧客の要望に合致しているとは限りません。ほかにより良い商品・サービスがないため、やむをえず選んでいる可能性もあります。
このような場合は、より商品・サービスが登場した顧客が離れる可能性があります。売れ行きの状況に関わらず、顧客ニーズを把握することは重要です。
また変化が激しい現代において、顧客をその場で切り取って理解しても、すぐに状況が変わってしまいます。タイムリーな顧客の状態を正しく理解することがより求められています。
顧客との関係性を作るため
顧客分析の目的は、顧客との関係性を築き、深めていくためです。分析で得られた顧客の情報により、効果的な施策を立案できます。継続的な施策を行うことで、顧客とのより良い関係を築けるでしょう。
PDCAを回して施策の効果や課題を分析・改善していくことで、あまり効果の出ていない施策があれば、より効果が期待できる手法に切り替えるといった対応もできます。さらに効果的な施策を行うことで、顧客との関係性を深めることができるでしょう。
顧客満足度を高めるため
顧客に対する理解が深まれば、顧客が求めることを把握できます。施策に活かすことで、顧客満足度の向上につながるでしょう。顧客満足度とは、商品やサービスに対して顧客がどの程度満足しているかを数値的に示す指標です。顧客へのアンケートやヒアリングなどをもとに、データにして分析することができます。
顧客満足度の向上は優良顧客の育成につながり、LTV(顧客生涯価値)を向上させるでしょう。LTVとは顧客が自社と取引を開始してから終了するまでにどれだけの利益をもたらしてくれるかを表す数値のことで、LTVを向上させることが企業の成長のために必要です。
また、顧客満足度を高めるためにはCVも重要です。CVについては、以下の記事で詳しく解説しています。
顧客分析の項目
顧客分析の項目は、商品・サービスや業種などにより異なります。一般的には、以下の項目を分析の対象にします。
- 性別や年代など顧客の属性
- 購入・取引履歴
- 顧客とやり取りした履歴
- 購買プロセス
- 顧客満足度
これらの項目を分析することで、どのような顧客がいるか、どのようなニーズや課題があるかがわかり、より良い商品・サービスの提供につながります。
顧客分析の必要性
顧客分析はマーケティング戦略に役立ち、ターゲットの特定や施策の効果測定のために必要です。その結果、商品・サービスの開発や改善につなげることができます。
ここでは、顧客分析の必要性を解説します。
マーケティング戦略に活用する
顧客分析は、マーケティング戦略のために必要です。顧客分析によって、自社の商品・サービスの現状を把握し、これまでのマーケティング施策について評価することができます。その内容を踏まえ、新たなマーケティング戦略を策定できるでしょう。
顧客分析により顧客の課題やニーズを詳しく把握できれば、分析結果から精度の高いマーケティング戦略を立案でき、効果の高い施策を導き出せます。
ターゲットを特定できる
マーケティングではターゲットの特定が欠かせません。インターネットの普及で多くの情報がやり取りされている今日、消費者の価値観も多様化しています。市場は成熟し、他社との差別化が難しくなっている状況です。
そのような時代に生き残るには、ターゲットを特定して重点的にアプローチすることが求められます。ターゲットの特定は、顧客分析により顧客の理解を深めることが必要です。
「売上の80%は20%の顧客が生み出している」という法則があります。パレートの法則と呼ばれ、顧客全体の2割にあたる優良顧客が売上の8割を担うという法則です。この法則に従えば、 すべての顧客に同じようなアプローチをするのではなく、2割の優良顧客に対する施策に注力することで、8割の売上が期待できることになります。
顧客分析によるターゲットの特定は、より少ないコストでより多くの売上を上げ、高い費用対効果を出すために重要です。
施策の効果を測定できる
顧客分析により、現在行っている施策の効果測定ができます。現在行っているマーケティング施策に多くのコストをかけている場合、顧客分析によってその施策に効果がないとわかれば、新たな施策に変更することができるでしょう。
例えば、Web広告による集客に多くのコストをかけている場合、顧客分析でWeb広告による集客が少なく、検索エンジンからの流入が多いことがわかったとします。その場合はWeb広告のコストを減らし、SEOやリスティング広告に切り替えるといった判断ができます。
顧客分析の結果でより効果の高い施策に注力できれば、限られた予算を有効に活用することができるでしょう。
商品・サービスの開発や改善に役立つ
顧客分析は、商品・サービスの開発や改善に必要です。分析により顧客のニーズや満足度を把握できれば、より顧客を満足させられる新商品の開発につながるでしょう。顧客満足度を知ることで、サービスの改善にも役立ちます。
ニーズにかなった商品・サービスを提供して他社と差別化できれば、売上アップにつながります。その結果、市場で生き残ることができるでしょう。
顧客分析の手順
顧客分析を行う際には、あらかじめ手順を把握しておき、正しく進めていくことが重要です。具体的な手順は、以下のとおりです。
- 目的目標を設定する
- ターゲットとなる顧客層を選定する
- カスタマージャーニーを検討する
- カスタマージャーニーを踏まえて顧客ニーズを探る
- 顧客のニーズに合わせて商品開発や施策を実施する
順を追って確認していきましょう。
1.目的を設定する
顧客分析を行う際に最初に行うべきことは、分析の目的を明確にすることです。具体的な目標の例は、以下のとおりです。
- ターゲットとなる顧客を特定するため
- 顧客ニーズを確認するため
- 集客や広告施策の効果測定を行うため
目標を設定することで、分析プロセスにおいてどのようなデータを集め、どの分析手法を用いるかなどの点が明確になります。また、目的が具体的であればあるほど、分析の結果をマーケティング戦略に活かしやすくなります。
2.ターゲットとなる顧客層を選定する
目的を設定したら、ターゲットとなる顧客層を選定します。顧客のなかには、「初回購入のみで終わってしまった顧客」や「リピーター客」など複数のセグメントがあります。そのため、どの顧客にアプローチするかが重要なポイントです。
ターゲット顧客層を特定することで、そのグループのニーズに応じた効果的なマーケティング戦略を展開できるようになります。逆にターゲットが曖昧なままだと、顧客に合わせた施策が打ちにくく、顧客満足度を高められません。目的を設定し、ターゲットとなる顧客層を選定してからはじめて顧客分析の手段や時期などを検討していきます。
3.カスタマージャーニーを検討する
ターゲットとなる顧客層を選定したら、カスタマージャーニーを検討します。カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、購入するまでの一連のプロセスを指す言葉です。
カスタマージャーニーを具体的にすることで、顧客がプロセスのどの点でなにを感じ、どのような考えを持っているのかを考えやすくなります。
顧客が満足する商品・サービスを提供するための要件を考え、購入プロセスをスムーズにするための具体的な施策を打ち出せるようになるでしょう。その結果、顧客体験が向上し、顧客満足度とリテンションが高まることが期待されます。
4.カスタマージャーニーを踏まえて顧客ニーズを探る
カスタマージャーニーを検討した後には、顧客の具体的なニーズを探っていきます。この段階の目的は、顧客が商品やサービスになにを求めているのか、どのような課題を持っているのかなどを把握することです。
カスタマージャーニーの各フローにおいて、顧客が持っているニーズを検討し、そのニーズを満たせる方法を考えましょう。
例えば、価格が高いことで購入されなかった場合と、製品・サービスに魅力がないため購入されなかった場合では、顧客のニーズを満たす手段が異なります。
顧客ニーズに基づいて改善を行うことで、顧客満足度を高めるだけでなく、企業の信頼性や市場での競争力も強化されます。
5.顧客のニーズに合わせて商品開発や施策を実施する
顧客ニーズを探った後は、ニーズに合わせて商品開発や施策を実施します。すでに提供している商品・サービスが、精査した顧客ニーズから乖離している場合も十分に考えられます。
そのため、顧客のニーズに近づけた商品・サービスを開発し、顧客満足度が高まる施策を打つことが重要です。顧客が求めている事柄を商品・サービスに反映させることで、顧客満足度が高まるでしょう。
具体的には、顧客が求める価値を提供できるように価格設定を見直したり、使いやすさを改善するためのデザイン変更を行ったりするなどの施策が考えられます。
マーケティング施策においても、ターゲットとする顧客層がどのようなメディアやSNSを利用しているかに基づいて、広告の配信方法を最適化するなどの施策が考えられるでしょう。
顧客分析の代表的なフレームワーク
顧客分析には数多くの手法があります。それぞれの特徴を知り、自社に適した手法で効果的な顧客分析を行いましょう。
ここでは、顧客分析の代表的な手法を13個紹介します。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客を属性・ニーズ・購入履歴などによってセグメント(細分化・グループ分け)する手法です。セグメンテーションとは「区分」という意味で、マーケティング分野では不特定多数の顧客をさまざまな切り口で分類し、特定の属性ごとにグループわけすることを指します。顧客分析で重要なのはターゲットの特定であり、セグメンテーションが的確に行われなければ適切なターゲティングも行えません。
セグメンテーション分析は、STP分析のひとつです。STP分析とは市場を細分化する「Segmentation」とターゲットを特定する「Targeting」、立ち位置を明確にする「Positioning」の3つから成り、セグメンテーションは分析の初めを担います。
セグメンテーションで細分化したうえでターゲットを決め、ポジショニングにより自社のポジションを分析し対策するという手法です。新規事業の展開などに際し、自社や商品・サービスの市場における立ち位置を明確化するために活用されます。
このうちのセグメンテーション分析は、顧客をセグメントに分けることで多様化する顧客のニーズを把握するために役立ちます。
セグメンテーション分析は、数値以外のデータも活用するのが特徴です。
セグメントは、以下の4つに分類されます。
- 地理的変数:地域・都市の規模・気候・人口密度など
- 人口動態変数:性別・年齢・職業・年収・家族構成など
- 心理的変数:性格・価値観・ライフスタイルなど
- 行動変数:購入経路・購入頻度・使用率など
セグメンテーション分析を行う際に使う変数は、商品・サービスの内容や戦略によって変わります。セグメントする際は、複数の変数を組み合わせることが一般的です。
たとえば、地理的変数の「東京都の都心部在住」と人口動態変数の「20代の女性」、心理的変数の「独身」を組み合わせて、「東京23区内在住で20代の独身女性」という内容に定義します。
定性分析
定性分析とは、数字に表しにくい質的データに基づいて行う分析です。契約に至るまでに重要な役割を果たす情報を対象にします。「質的」とは、数値では表しきれない顧客の心情などを指し、一例として、自由回答形式のアンケートやインタビュー、クチコミなどがあげられます。
定性分析に対し、数値データを用いて分析・評価するのが定量分析です。定量分析は、正確なデータをとるため、少しでも多くのデータを集める必要があります。データ量が少ないまま分析すると、正確なデータを把握できません。これに対し、定性分析はデータが少なくても分析ができる点がメリットです。顧客の声を丁寧に分析して本音を深堀りするため、少ない収集量でも分析できます。 数値では表すことのできない本音を探ることで、本当に求められているニーズや改善点がわかります。その結果、より顧客満足度を高める改善案を見つけることもできるでしょう。
ただし、定量分析とは異なり数値で判断できないため、受け取り方によって判断が異なるという問題があります。改善策を立てる場面でも、判断する際に意見が分かれることがあるでしょう。さまざまな視点から問題を考えられるという意味では、いくつもの改善ポイントを見つけられるということでもあります。その点でメリットと考えることもできるでしょう。
デシル分析
デシル分析とは、顧客の購入金額に応じて10のグループに分けする手法です。「デシル」はラテン語で「10等分」という意味で、購入金額をもとに顧客を上位から10等分し、各ランクの購入比率や売上構成比を算出します。
その結果から、注力すべき顧客をグループ化します。比率や構成比を明らかにして顧客をグループ分けすることで、売上に貢献する優良顧客を把握できるのがメリットです。
売上貢献度に応じたマーケティング施策を行えば、効率的なアプローチができます。
例えば500人の顧客がいる場合、購入金額の高い順に50人ずつの10グループに分け、各グループごとに金額の合計を算出します。分類後は、集合体それぞれに適したマーケティング施策を考えていくという流れです。
例えば、リピート購入など売上に大きく貢献すると思われる上位の顧客に対しては、優待や得意客限定セールなどの施策が有効です。
ただし、商材によっては上位の顧客が必ずしも優良顧客といえない場合もあるため注意が必要です。「購入金額は高いものの、一度しか購入していない」「頻繁に購入していたのは数年前で、最近は休眠している」といった顧客も上位に含まれる可能性があるため、顧客の態様は詳細にチェックしなければなりません。このような不都合を解決するのが、次に紹介するRFM分析です。
RFM分析
RFM分析とは以下のような3つの指標で顧客を分類する方法です。
- Recency:最新購入日
- Frequency:購入頻度
- Monetary:累計購入金額
これら3つの頭文字をとって、RFM分析と呼ばれます。購入金額だけでなく最新購入日と購入頻度も分析対象にすることで多角的な視点から顧客を分析でき、デシル分析の不都合を解決できる手法です。
「最終購入日」では顧客が最後に購入したのはいつかを分析し、最終購入日からの経過時間が短い顧客を高く評価します。「購入頻度」は顧客が何回購入したのかを分析し、回数の多い顧客を高く評価する項目です。
「累計購入金額」では顧客が購入した金額の合計により、金額の高い顧客を高く評価します。
各項目は相互に関連しており、3つの指標すべてが高い評価であるほど優良顧客ということができます。購入額は少ないものの頻繁に購入しているといった顧客も拾い上げ、適切なアプローチが可能です。反対に、購買金額が多くても購買頻度が下がっている顧客が多い場合は、競合他社に流れている可能性があるため、何らかの対策が必要です。
顧客をグループ分けすることで、顧客の細かい事情に則したアプローチができます。今後の購入見込みが低い顧客へのアプローチを少なくし、売上に貢献している顧客に対するアプローチをこれまでよりも増やすことで、より売上アップにつながるでしょう。
ただし、購入金額が多額でしばらく購入がない顧客の場合、「顧客自身の事情で一時的に購入のない優良顧客」という可能性もあります。事情がやめば、復活する場合があるでしょう。RFM分析では、このような顧客を見逃してしまう可能性があるため、注意しなければなりません。
CTB分析
CTB分析とは、次の3つの要素から顧客が購入した商品を分析し、グループ分けする手法です。
- Category(カテゴリ):商品・サービスの種類
- Taste(テイスト):色や模様、形状、サイズ
- Brand(ブランド):企業が展開するブランドやキャラクター
分析により顧客の趣向を把握し、次にどのような商品を購入するかを予測します。これにより、購買予測に基づいたマーケティング施策や商品開発が可能です。
デジル分析などは既存の商品を効率的に販売するための手法ですが、CTB分析は将来の需要について予測を立てるときに使う手法です。顧客の属性を分類し、どのような顧客にどのようなニーズがあるのかを確認します。
また、顧客ごとにどのような商品を購入しているか3つの指標で分析することにより、ターゲット設定に役立ちます。
顧客が購入している商品からなぜそれらの商品を購入しているかを深堀りすることで、年齢層や性別、ライフスタイルなどを推測できるでしょう。
CTB分析は顧客の傾向を把握することを目的としているため、複数の商材に対して行い、購入した商品と顧客の関係性を明らかにする必要があります。その結果、顧客をいくつかのグループに分割し、それぞれの特徴からマーケティング施策を立案します。
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、特定のシーズンに購買行動をしている顧客の共通点や特徴を分析する手法です。商品の売上が伸びる時期に、どのような顧客がトレンドを生み出しているか分析します。
シーズンや顧客の分類はさまざまで、一例として以下のような分類があげられます。
- シーズン:年単位、曜日、分単位
- 顧客の分類:年齢、居住地域、既婚・未婚など
例えば、「夏によく購入しているのは、〇代の〇〇地方に住んでいる顧客」といった分析結果を得れば、適したタイミングで分析した顧客層に向けたアプローチができます。アパレル業界など、シーズンの商品を扱う業種に効果的な方法です。
行動トレンド分析は他の手法と異なり、優良顧客を中心とした特定の顧客層を対象に分析を行うのが特徴です。年齢や性別などで分類し、特に売上が高いグループを優良顧客とします。売上に貢献する優良顧客のニーズに沿った商品・サービスを提供することで、顧客全体のニーズを満たすことにつながる手法です。
適切に分析することで顧客のニーズに合わせた生産計画を策定でき、適正な在庫管理ができるため、保管のコストを抑えられます。また、適切なタイミングで広報活動を行えるため、効率的に売上アップを図れるでしょう。
LTV分析
LTV(顧客生涯価値)を分析に用いる手法です。顧客が支払った金額をベースに利益を算出し、貢献度の高い顧客を分析します。LTVとはLife Time Value(ライフタイムバリュー)の頭文字をとった言葉で、顧客が企業との取引期間を通じ、企業にどれだけの利益をもたらしたかを表す指標です。
一般的に収益性が高いほどLTVも高くなり、LTVを高めるにはリピーターの獲得が効果的です。既存顧客の維持に注力し、繰り返し自社のサービスを利用してもらうことがLTVの向上につながります。
マーケティングには「1:5の法則」や「5:25の法則」という法則があり、いずれも新規顧客獲得よりも既存顧客を維持する方がコストを抑えるという法則です。「1:5の法則」は、顧客の維持よりも新規顧客の獲得は5倍のコストがかかるというもので、「5:25の法則」は、顧客の離脱を5%抑えることで利益率が25%向上するというものです。
そのため、既存顧客の維持に努め、ブランドやサービスに愛着を持つファンを育成し、顧客ロイヤリティを高めることがLTVの向上につながります。
LTV分析により、実際の売上と売上にかけたコストを明確にでき、費用対効果のある施策の立案が可能です。その結果、収益を最大化させることができるでしょう。
LTVの計算方法はさまざまあり、最も簡単な計算方法は以下のとおりです。
「LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間」
例えば、平均顧客単価5万円で収益率50%、購買頻度は月に1回(年12回)で、継続期間10年の場合、計算式は「LTV=5万円×0.5×12×10=300万円」と計算できます。
LTV分析は過去の分析結果との比較が重要であり、過去と比較してLTVが上昇していれば「顧客の多くが定期的に購入している」「既存顧客の購入額が増えている」という分析ができます。
反対にLTVが低くなった場合、「新規顧客の獲得に比重がかかっている」「既存顧客の購入額・購入頻度が低下している」といったことが考えられるでしょう。
コホート分析
コホート分析とは、顧客の属性や条件で分類し、購買行動を分析する手法です。「コホート」とは共通の要素を持つ集合体のことで、一定の条件や属性によって分けたそれぞれのグループが、時間の経過に伴いどのような変化が起きるのかを分析します。
例えばECサイトでは「同じキャンペーンを経由したユーザー」をコホートに分け、月ごとに購入金額やコンバージョン率(どれだけ成果としている行動をしてくれたかを測る指標)の変化を追い、キャンペーンの長期的な成果を測ることができます。
サブスクリプションのサービスの場合を例にすると、「無料お試し期間に申し込んだ顧客」をコホートで分類し、解約率や継続の状況を分析することで、今後の活動でお試しをすすめるかどうかの判断ができるでしょう。
コホート分析はSaaSやサブスクリプションのサービスに有用です。SaaSとはクラウド上で利用するソフトウェアサービスのことで、サブスクリプションとは商品・サービスを一定期間利用するサービスを指します。
これらのサービスは継続的に利用してもらうことが重要であり、顧客の動向を正しく捉えて改善に活かしていかなければなりません。そこで役立つのがコホート分析です。
CPM分析
CPM分析は以下の4つの要素をもとに、顧客を初回購入から離脱客まで10のグループに分類する手法です。
- 購入回数
- 購入総額
- 在籍期間(初回購入からの最終購入日までの経過日数)
- 離脱期間(最終購入日からの経過日数)
10のグループは大きく「現役の顧客」と「離脱した顧客」に分けられ、4つの要素に基づいて分類します。分類したら次のグループに移行するためのマーケティング施策を立案し、実施します。最終的には全体を「長期間にわたって一定以上の金額を購入している顧客」に導けるよう育成する施策を行うという流れです。
CPM分析は、主に優良顧客を育成するために用いられます。顧客の育成段階を分類し、段階に応じた施策を立案する際に役立つ手法です。
例えば、商品を1回購入し、2回目以降の購入履歴が見られない顧客に対しては、リピート購入につながりやすい時期を見定めてアプローチします。
これに対し、すでに一定以上の購入回数・購入金額に達している顧客の場合、顧客体験の向上を図るなどの施策で、優良顧客へと育成することが大切です。
特にECサイトなど、リピーターからの売上が多くを占めるビジネスに向いている手法です。
なおCPM分析は、RFM分析と弱点を補強し合える関係にあります。RFM分析は直近の購買データから情報を得て、短期的に売上を伸ばしたい場合に効果的な手法です。そのため、RFM分析の項目で説明したように、頻繁に購入していたロイヤリティ顧客が一定期間購入しない場合、離脱した顧客に分類してしまう可能性があります。
しかし、長期的な顧客育成ができるCPM分析と合わせて実施すれば、このような不都合の回避が可能です。
NPS(ネットプロモータースコア)
NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客が製品やサービスを他人に推奨する可能性を測定する手法です。
具体的には、「当社の商品やサービスを友人や家族にどのぐらいおすすめできますか?」との設問を用意し、0から10までの11段階で回答してもらいます。
この質問によって顧客は、「推奨者」(9~10点)、「中立者」(7~8点)、「批判者」(0~6点)のいずれかに分類されます。
点数が高いほど、顧客ロイヤリティが高いことになり、逆に低い場合は顧客体験の改善が必要でしょう。
パイプライン分析
パイプライン分析とは、顧客への営業プロセスを段階的に可視化するフレームワークです。潜在顧客が商品・サービスの認知から、最終的な購入決定に至るまでの各フェーズを精査し、どのフェーズで見込み客が脱落しているかを特定します。
購入に至るまでのフェーズの例としては、以下があげられます。
- イベントや展示会、セミナーによる認知
- 問い合わせや資料ダウンロード
- 初回打ち合わせ
- デモ、見積もり提示
- 成約
パイプライン分析を適切に行うことによって、注力すべき点が明確になり、リソースを適切に配分できるようになります。
ABC分析
ABC分析は、顧客や商品を売上・利益貢献度に基づいて、「A」「B」「C」の3つのカテゴリに分類するフレームワークです。このフレームワークは、パレートの原則の考えがベースとなっています。
「Aカテゴリ」の顧客や商品は売上全体の大部分を占めるため、優先的な扱いが必要です。逆に、「Cカテゴリ」は全体の少数部分しか占めていないため、リソースの割り当てを減らすことを検討しなければなりません。
中間に位置する「Bカテゴリ」に対しては、適切なアプローチをとることで「Aカテゴリ」に格上げする戦略が考えられます。
ABC分析を実施することで、企業は効率的にリソースを配分できるようになります。
アソシエーション分析
アソシエーション分析は、異なる商品やサービスの関連性やパターンを特定するために用いられるフレームワークです。アソシエーション分析を活用することで、顧客が特定の商品を購入する際に、他にどの商品を購入する可能性が高いかを予測できます。
あるアソシエーション分析の結果によると、「金曜日の17~19時は、30~40代の男性がおむつとビールを同時に購入しやすい」という傾向が見られました。
関連性のない2つの商品が、子育て世代の男性によって購入されているという事実が明らかになったわけです。この結果に基づいて、2つの商品を並べて配置したところ、売上がアップしたといわれています。
顧客分析の結果を業績向上につなげる方法
顧客分析を行う際には、分析して終わりではなく、なにかしらの施策に結びつけることが重要です。顧客分析の結果を業績向上につなげる方法は、以下のとおりです。
- ユーザーの状況に合わせた提案・アプローチを行う
- 収集したニーズをにした商品開発・改良を行う
- ニーズに合わせたアップセルやクロスセルの提案を行う
- ユーザーのセグメントを整理し個別に戦略を立てる
それぞれ解説します。
ユーザーの状況に合わせた提案・アプローチを行う
顧客それぞれの状況に合わせた提案やアプローチを行うことで、顧客満足度を高めつつ、売上アップを実現できます。
顧客分析の結果を活用して、顧客のニーズや興味、行動パターンに基づいたマーケティング戦略を展開することが重要です。顧客の状況に合わせて適切な提案を行うことで、顧客の最も欲しいタイミングで商品を提案できるようになります。
また、顧客の満足度が高まることで、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得につながる可能性が高まります。
収集したニーズをもとにした商品開発・改良を行う
顧客分析の結果を業績向上につなげるためには、収集したニーズをもとにした商品開発・改良を行うことが重要です。顧客の属性情報や購買履歴、利用行動といった分析結果から、顧客が求めている商品やサービスを洗い出しましょう。
顧客の悩みや要望を商品・サービスの設計に反映させることで、ニーズに応えられるものを市場に送り出せるようになり顧客満足度を大幅に向上させられます。この取り組みが、リピート購入の促進や新規顧客の獲得につながります。
ニーズに合わせたアップセルやクロスセルの提案を行う
顧客分析の結果を業績向上につなげるためには、顧客分析の結果をもとに、アップセル・クロスセルの提案を行いましょう。
アップセルは顧客が利用している製品やサービスをアップグレードする提案、クロスセルは顧客のニーズに基づいて関連する製品やサービスをおすすめする提案です。この2つの手法を用いることで、顧客の満足度を向上させながら、売上も増加させられます。
アップセルの場合は、顧客が現在利用している商品よりも高性能かつ高価格帯の商品を提案します。クロスセルの場合は、例えば、スマートフォンを購入した顧客に対して、ケースや充電器などの提案を行うのが一般的です。
ユーザーのセグメントを整理し個別に戦略を立てる
ユーザーのセグメントを整理して個別に戦略を立てる取り組みは、顧客分析の結果を業績向上につなげるために有効です。これにより、異なる顧客グループのニーズに合わせてより効果的な施策を打てるようになります。
例えば、若年層の顧客に対してはSNSを活用したプロモーションが効果的です。一方、年配の顧客には印刷物の郵送によるアプローチが適しているでしょう。
各セグメントの特性に応じた戦略を展開することで、より業績に紐づく顧客分析を行うことができます。
顧客分析のポイント・注意点
顧客分析を行う際は、以下の点に注意が必要です。
- 目的を明確にして仮説を立てる
- 顧客を定義する
- 顧客の課題やニーズを深掘りする
- 顧客の購買プロセスも分析する
それぞれ、詳しくみていきましょう。
目的を明確にして仮説を立てる
顧客分析をする際は、何を目的に行うのか明確にしておくことが大切です。
例えば、「自社の商品・サービスを購入する顧客のニーズと課題を知りたい」「メインターゲットのニーズが知りたい」「自社のファンを増やしたい」といった目的です。
目的を明確にしないと、数値を出しただけで満足してしまい、成果が得られない可能性があります。分析はあくまで目的を達成するための手段であり、結果をもとに目的を達成することが大切です。
行うべき施策を検証するため、仮説を立てることも必要です。例えば、商品が売れている理由もしくは売れていない理由を知る目的で分析する場合であれば、「別の年齢層に利用が増えている」「新しくできた店舗に顧客を奪われている」といった仮説を立てます。
洗い出した仮説について顧客分析を行い、得られたデータによって仮説を裏付けていくという流れです。
顧客を定義する
分析する顧客の範囲が異なれば、分析結果も変わります。そのため、分析対象とする顧客を明確に定義しなければなりません。目的に応じて、どのような顧客を対象にするのか明確にしましょう。
顧客は、以下のようにさまざまな種類に分けられます。
- 潜在顧客
- 新規顧客
- 既存顧客
- 見込み客
- 優良顧客
- リピーター
- 休眠顧客
顧客分析ではどの顧客層を対象とするのか、正しく定義しましょう。これらの種類に顧客を分類するためには、自社の顧客についてよく理解し、行動や購買履歴をきちんと把握していることが大切です。顧客を把握して分類することは、効率的なマーケティング施策の実施にもつながります。
顧客の中でも特に重要なのは、優良顧客です。優良顧客は、その他の顧客層と比べて売上・利益への貢献が大きく、「自社の優良顧客は全体の何%存在し、どのような特徴・傾向にあるのか」という情報を明確にしておくことが重要です。優良顧客を明確に定義することで、重点的に適切なアプローチができます。
顧客の定義に役立つのがRFM分析です。RFM分析は、多角的な切り口で顧客を分類するのに役立ちます。
顧客の課題やニーズを深掘りする
自社の顧客について理解を深めるため、顧客の課題やニーズを深掘りすることが大切です。顧客が商品・サービスを選ぶときには必ず理由があり、その傾向を知ることが顧客の課題・ニーズを知るためのポイントとなります。
既存顧客にどのような課題があり、どのように自社の商品・サービスを知り、なぜ購入したのかを把握できれば、これまで以上に顧客のニーズに合わせた商品開発や施策の立案が可能です。
顧客の課題やニーズを把握することで、顧客体験を改善し顧客のロイヤルティを高めることにもつながります。顧客体験とは、顧客が企業の商品・サービスに興味を持ち、利用するまでの一連の体験のことです。購入・利用に至るまでの過程や、アフターサポートなど購入後の体験も含まれます。
課題やニーズの把握はデータの数値だけでは難しく、顧客へのインタビューやアンケート、ヒアリングの実施といった定性分析が必要です。
顧客の購買プロセスも分析する
顧客分析では、顧客の購買プロセスを分析することも重要です。プロセスを把握することで、それに合わせた施策ができます。
購入プロセスの分析は顧客体験を向上させ、リピート購入や周囲の人に勧めてもらえる可能性を高めるために役立ちます。顧客の購買プロセスを把握することは、顧客にアプローチする最適な方法を見つけ、サービスを改善することにもつながるでしょう。顧客の購買プロセスを分析することで、売上の向上を妨げている障害を見つけることもできます。対処法を見つけ、顧客満足度の向上にも貢献するでしょう。
特にBtoBの場合は意思決定のプロセスに関与する人物が多く、手続きが複雑です。長期化しやすい傾向にあり、適切にアプローチできなければ購入につなげられないでしょう。顧客分析によって顧客の購買プロセスや意思決定者の傾向などを把握できれば、最適なアプローチが可能です。
コミュニティ運用で顧客分析ができるツール
顧客同士が交流するコミュニティサイトを運営しながら、顧客分析をする方法もあります。コミュニティサイトは顧客にアプローチし、顧客ロイヤリティを高めるために効果的です。
コミュニティサイトのプラットフォーム・coorumは、コミュニティ運営からロイヤル顧客のデータ分析をワンストップで行い、LTVの最大化を実現するサービスです。
coorumではコミュニティ内の行動ログから顧客タイプを分類し、タイプ比率を可視化できます。最適なタイプ比率を維持することで、顧客ロイヤリティの向上を実現します。ロイヤリティが高い顧客の行動ログを「顧客単位」で分析し、行動ログを時系列で分析することで、顧客ロイヤリティをために必要な施策を導き出すことが可能です。
サイト内では、ロイヤリティが高い顧客の投稿やコメントのキーワードを分析することで、ロイヤル顧客の商品・サービスに対する感情を分析できます。顧客がどのような感情を抱いているのかを把握し、トレンドの傾向を分析することも可能です。
coorumはロイヤル顧客を育成できるコミュニティの運営や顧客分析でLTVの最大化を実現できるため、売上向上を図りたい方におすすめです。
coorumを使って顧客との関係を深めよう
顧客分析は自社にどのような顧客がいて、どのようなニーズがあるかを知ることができ、より良い商品・サービスの提供につなげるために重要です。顧客分析はマーケティング戦略の実施に役立ち、商品・サービスの開発や改善にも欠かせません。
顧客分析の方法は数多く、目的に合わせて適した方法を組み合わせれば、自社の顧客について深い理解が得られます。成果につながる戦略を立て、売上の向上が見込めるでしょう。
顧客分析に力を入れたいと考えている方には、coorumがおすすめです。coorumを活用することで、ユーザー一人ひとりの定性的、定量的なデータを時系列ごとに持てるようになります。また購買データをお持ちの企業であれば、その購買データとコミュニティのデータを突合することで、購買とロイヤリティの相関を見るといったより高度な分析が可能です。
顧客の解像度が上がるため、より効果的な戦略の立案が可能です。ぜひcoorumの導入を、ご検討ください。