
企業が自社のコミュニティを構築し、適切に運営することによってメリットを得られることが知られるようになりました。そんなコミュニティは構築段階も重要ですが、継続的に利益を生み続けるためには適切な運営方法を実践することも重要です。
日本では海外ほどコミュニティマネジメントが浸透しておらず、コミュニティの運営方法について悩んでいるという人は少なくありません。そこで、この記事ではコミュニティ運営の秘訣について解説します。
コミュニティ運営の重要性

まず最初に、そもそも「コミュニティ」を運営することが企業にとってどのようなメリットがあるのかについて簡単に解説しておきます。
- 良質なアイデアのフィードバック→既存顧客の売上アップ
- ファンの育成と獲得→ ユーザーの離脱防止
- CS業務のサポート→ ユーザーの離脱防止
コミュニティからユーザーの不満や感想を吸い上げ、これを商品・サービスの開発や改善につなげることで既存顧客のリピート率や継続率の向上になり、売上アップにつながります。
コミュニティの存在は「新規顧客をファン化する」「既存のファンをさらにコアなファンに育成する」という効果があり、これにより売上のアップにつながるだけでなくユーザーの離脱(解約など)防止につながります。
また、コミュニティには「商品・サービスに精通したヘビーユーザー」と「利用経験の浅いユーザー」が混在しています。利用経験の浅いユーザーからの質問をヘビーユーザーが回答することで、ユーザー間でQ&Aが完結され、新規ユーザーの早期離脱を防止するとともに、企業にとってはCS(カスタマーサポート)業務に割くリソースを減らすことができます。
コミュニティは立ち上げよりも運営が大事
企業はコミュニティから上記のようなメリットを享受できるのですが、そのためには「適切かつ健全にコミュニティを運営する」ことが重要です。
コミュニティは、開設さえすればあとはコミュニティメンバーによって勝手に盛り上がると勘違いしている人も少なくありません。そうしたユーザー主体のコミュニティも確かに存在しますが、ビジネス向けのコミュニティの場合は企業側からのアプローチが欠かせません。
企業側から適切にアプローチをしていないビジネスコミュニティは、次第にユーザー離れを引き起こしてしまいます。良質なユーザーがコミュニティから離れてしまうことでコミュニティは荒れてしまい、コミュニティの本来の目的を達成できなくなってしまいます。
運営のポイントは「活性化」
企業がコミュニティから利益を得続けるためにはコミュニティの運営が欠かせませんが、最も重要なポイントは「コミュニティを活性化する」ことです。
「荒れさえしなければいい」という守りの姿勢は、結局のところコミュニティの監視に留まり、次第に情報は陳腐化・普遍化してしまいます。ユーザーはコミュニティの参加に相応の満足や楽しみを要求しているのですから、つまらないコミュニティはやはりユーザー離れを起こす原因となるのです。
コミュニティは、適切な情報を提供することも重要ですが、何よりもそこに良質なユーザーを集めてコミュニティを形成してもらうことが欠かせません。企業がコミュニティからメリットを得るためには、コミュニティを活性化させるためのアクションを積極的に行う必要があるのです。
コミュニティ運営を成功させる5つのヒント

次に、コミュニティ運営を成功させるための5つのポイントについて解説します。
はじめは少人数でスタート
1つ目のポイントは「最初は少人数のメンバーからスタートする」ことです。
コミュニティ活動をスタートする時は、人数よりもそのコミュニティを活性化させることを最優先に考えましょう。
コミュニティの熱量は最終的にコミュニティメンバーの人数にも比例するのですが、最初から人数を集めてもなかなかコミュニティは活性化しません。
例えば、10,000人のメンバーを集めてコミュニティをスタートするとします。メンバーは10,000人という多くの人の集まりの中では、誰と、どのようなコミュニケーションをとればよいのかわかりません。結果、コミュニティは人数に対して十分な熱量のコミュニケーションをとれなくなるのです。
そのため、コミュニティのスタート時期では焚火に火をつけるかのように、少人数で密度の高いコミュニケーションを図り、次第に人数を増やして人数とコミュニケーションの熱量を比例させていくことが良いでしょう。そのため、最初のコミュニティ参加メンバーは可能な限り「熱量の高い人」だけを集めてスタートすることをおすすめします。
コミュニティの目的をはっきりさせる
2つ目のポイントは「コミュニティの目的を明確にする」ことです。
コミュニティには、さまざまな目的があります。企業側からすれば「顧客のニーズを把握したい」「ユーザー間でQ&Aを完結させたい」などの目的があり、ユーザー側からしても「同じ趣味の人で集まりたい」「商品・サービスに関する情報を共有したい」などの目的があります。
コミュニティの目的を明確に設定して「こういう目的でコミュニティを作ります」とアナウンスすることで、その目的に応じてメンバーが集まりやすくなります。コミュニティの目的が明確なほどメンバー間で共感しやすくなり、共感する人同士が集まればコミュニティ内の結束が強まります。結果、コミュニティは熱量を高め、企業はコミュニティから多くのメリットを得られるようになるのです。
参加者に当事者意識を持たせる
3つ目に「参加者にも『当事者』としての意識を持ってもらう」ことです。
コミュニティ活動において、コミュニティの参加者にも何らかの役割を与えることが重要です。そうすることによって、当事者意識を持たせることができれば、継続してコミュニティに参加してくれる可能性が高まるのです。
例えば「メンバーの意見を有機的に反映させる」ための仕組みと、それを公表する仕組みを実践できれば、ユーザーは当事者としてコミュニティ内で活動してくれるようになります。実際にこの点に着目してコミュニティの仕組みを考え、ユーザーを巻き込んだコミュニティ運営に成功している企業も多いです。
参加者同士の交流ができる仕組み作り
4つ目のポイントは「参加者同士で交流できる仕組みを作る」ことです。
特にオンラインコミュニティの運営においては、オンラインの領域だけでなく、オフラインの領域でもコミュニケーションをとれる方法を用意することをおすすめします。いわゆる「オフ会」というものであり、運営側が積極的にイベントを企画することでコミュニティのメンバー同士での交流がより深まります。
コミュニティの参加者同士が気軽にやりとりできる環境を整えることで、企業側がコミュニティを管理しなくても自然にコミュニティは適切な形を維持する力を高めます。もちろん運営側が完全放置することは危険ですが、適切な運営に必要なリソースを少しでも抑え、コミュニティの熱量を高めるためには交流の場を設けることが必要なのです。
新規メンバーを大切にする
5つ目のポイントは「新規メンバーを大切にする」ことです。
コミュニティの中には、開設時から加入しているメンバーもいれば、開設から数年経過して新たにコミュニティに参加するというメンバーもいます。もし、古参メンバーだけで盛り上がっていると、コミュニティは「閉鎖的」な雰囲気になってしまい、新規メンバーの参加率を下げ、離脱率を高めてしまうのです。
長くコミュニティに参加してくれているメンバーを大切にすることはもちろん重要なことですが、新規メンバーに対しても相応の配慮をしなければコミュニティは成長しません。コミュニティに参加しやすく、また、既存のメンバーとの交流もしやすい仕組みや雰囲気を構築することをおすすめします。
コミュニティ運営でよくある5つの失敗

次に、コミュニティの運営でよく見られる失敗パターンを5つ紹介しますので、同じ轍を踏まないように注意しましょう。
熱量の上げすぎ
1つ目は「熱量を上げ過ぎてしまう」ことです。
コミュニティの熱量を高めることは重要なことであり、特にスタート時期は人数よりも熱量を確保することが重要であることはすでに説明しています。しかし、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」というように、ただひたすらに熱量を高めることが良い結果になるとも限らないのです。
コミュニティの熱量を高め、盛り上げようとした結果、空回りしてしまうケースも珍しくありません。熱量ばかり意識してしまうとコアなユーザーや古参メンバーなどの一部ユーザーばかりが盛り上がり、それ以外のメンバーが置いてけぼりになってしまうのです。コミュニティの活性化と成長のためには、そうした状況は避けなければなりません。
入会への敷居が低すぎる
2つ目に「入会への敷居が低すぎる」ことです。
コミュニティの中には、特定の条件を満たしたユーザーのみをメンバーとして迎え入れるところもあります。あまりにも敷居が高すぎるとメンバーが十分に集まらず、コミュニティの成長を阻害してしまうリスクがありますが、逆に「来るもの拒まず」の姿勢も避けなければなりません。
コミュニティ参加の敷居があまりにも低すぎると、コミュニティの目的に合わないメンバーが増えてしまいます。その結果、人数に見合わないほどにコミュニティの熱量が下がる結果となってしまい、コミュニティの管理に割くリソースばかり増大してしまうのです。
コンテンツ型コミュニティになっている
3つ目は「過度なコンテンツ型のコミュニティになってしまった」というケースです。
コミュニティには、そのプラットフォームに合わせたさまざまな形があります。特に自社で一からサイトを作り上げる場合などは自由度が高く、さまざまな独自コンテンツを盛り込むことでユーザーの利益となります。
しかし、あまりにもコンテンツ型に傾倒してしまうと、コンテンツの更新など運営者の負担が大きく、その割に失敗しやすいというデメリットがあります。ユーザーが気軽にやりとりできる「交流型コミュニティ」のほうが、失敗のリスクや運営の負担を減らすことができます。
もちろん、何らかのコンテンツを盛り込むことはユーザーの利益となりコミュニティの成長にもつながりますが、あまりにも多くのコンテンツを盛り込むことはおすすめできません。コミュニティの目的に応じて、必要最低限のコンテンツからスタートし、運営側に余裕が出てきたらコンテンツを増やすという流れがおすすめです。
短期で結果を得ようとする
4つ目は「短期間で成果を得ようと考える」ことです。
前述の通り、企業がビジネス向けのコミュニティを構築し運営することは、最終的に企業側にとって大きなメリットをもたらす可能性があります。しかし、あまりにも利益第一主義が浮き出た運営手法をしてしまうと、ユーザー離れを起こしてしまうリスクが高まるのです。
どんなビジネスモデルであっても、最初から理想通りの利益を生み出すことは稀です。コミュニティがビジネスで役立つまでには、時間がかかって当たり前だということを念頭に置きましょう。
コミュニティ内で稼ごうとする
5つ目は「コミュニティ内で売上げを上げようとする」ことです。
これもコミュニティによる企業利益の話になるのですが、コミュニティの中には何らかの方法で直接的に稼ごうとする動きもあります。商品販売が最もわかりやすいのですが、あまりにもセールス第一なコミュニティ運営手法は、ユーザーにがっかりされてしまいます。
もちろん、役立つ商品や限定商品などを販売することは少なからずユーザーの利益にもつながりますが、コミュニティはあくまでも「企業のファンを増やすもの」として考えてください。コミュニティのメンバーが増えて活発にコミュニケーションが行われ、企業のファンが増えた先にこそ、コミュニティマネジメントにより得られる本当の利益が待っています。
コミュニティ運営に役立つサービス

次に、コミュニティの運営に役立つツールについて紹介したいと思います。
コミュニティ運営に専用ツールを使えば、運営の手間が省けるというメリットがあります。有名どころでは「Facebook」「Twitter」などのSNSや、「LINE」「Slack」「Discord」などのコミュニケーションツールがおすすめです。
ツールの使用にあたっては、ツール毎の機能だけでなく「料金・費用」の特徴にも注目したいところです。一部のツールは基本利用だけなら無料で利用できるというケースもあります。コミュニティの運営にかかるコストを抑えるためには無料ツールを利用するのもおすすめですが、効率よくコミュニティを運営するためには、必要な機能を備えた有料ツール・有料プランを選択することも考慮してください。
コミュニティ運営の成功事例

最後に、コミュニティの運営に成功した3つの企業について解説します。
Spotifyのユーザーコミュニティ
1つ目は音楽ストリーミングサービス「Spotify」のユーザーコミュニティです。
Spotifyが運営しているユーザーコミュニティでは、サービスに関するアイデアをメンバーから募集しています。これを公表し、投票制にすることでユーザーに対して運営者の一員であることを意識させると同時に、サービスの品質改善に役立てているという事例です。
よなよなエール広め隊
2つ目は「よなよなエール広め隊」というコミュニティです。
よなよなエール広め隊は、「ヤッホーブルーイング」という会社のビールの新製品やファンイベントの魅力を伝えるべく活動しているコミュニティです。「ファンがファンを増やす」というコミュニティ運営の成功事例の1つとして有名であり、イベント「超宴」には数千人のファン(うち半数はこの会社のビールを飲んだこともなかった人)が集まっています。
楽天大学
3つ目は「楽天大学」です。
楽天大学は、楽天市場の出店者が集まって知見を共有するというコミュニティで、「企業発のコミュニティの元祖」ともいわれています。インターネットの黎明期から存在しているコミュニティであり、楽天市場での成功のノウハウを学ぶことができます。
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