お客様との共創でブランド価値を高める──長年愛されるヘアケアブランドが構築した公式コミュニティ「La La La Sana(ラララサーナ)」

マーケティング戦略部 部長 山上 陽市郎様
マーケティング戦略部 トリプルメディア戦略課 シニアエキスパート 今村 沙耶様
通販部 通販企画推進課 美ノ上 真央様
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コミュニティ名からお客様と共に考え、共創の思想をすべての運営の基盤に置く
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月間アワードの実施や先行体験レポーターの起用など、会員の熱量を高める取り組みを継続的に実施
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多様なコミュニケーション機能で参加のハードルを下げ、日常の使用体験から率直な感想まで、本音を自然に集める仕組みを実現
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ヘアケア市場の競争激化により、ブランド認知率・想起率が低下
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通販と店頭販売の顧客情報が分断されており、オンライン上でシームレスな顧客体験を提供できていなかった
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同じ商品を愛用するお客様同士の相互交流も限られており、ブランド価値の共有・深化の機会が作れていない
効果
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オンライン上での接点を強化し、実際の使用体験や本音の声を活かした商品開発や販促活動の実現
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ユーザーの本音を集めて分析することで、ビジネスパートナーへの提案力を強化
1970年創業の長年愛されるヘアケアブランド「La Sana(ラサーナ)」を展開する株式会社ヤマサキ。ラサーナブランドが誕生して45年の歴史を持ちながらも、激化する美容市場競争の中でブランド認知の課題に直面していました。そこで同社が取り組んだのが、ホンネデータプラットフォーム「coorum(コーラム)」を活用した公式コミュニティ「La La La Sana(ラララサーナ)」の構築です。
「ララトモ」と呼ばれるコミュニティメンバーとの共創を大切にしながら、チャネルを超えたお客様との関係構築によってブランド価値を高めていく取り組みをご紹介します。
INDEX
45年の歴史を持つラサーナが直面した認知率低下の課題
──まず、貴社のラサーナブランドについて教えてください。
今村様:ラサーナは1979年に誕生したヘアケアブランドです。主力商品の「海藻 ヘア エッセンス」は1998年の発売開始以来、「洗い流さないヘアトリートメント」というカテゴリーを新たに切り拓き、シリーズ累計で2,500万本(取材:2025年3月)を突破するロングセラー商品になっています。
──コミュニティを導入された背景には、どのような課題があったのでしょうか。
今村様:ヘアケア業界は競争が非常に激しく、ラサーナというブランドの認知率や想起率が徐々に低下してきているという課題がありました。実際に、当社の商品を使ったことがあるお客様でも、新商品が次々と出る中で記憶が上書きされ、忘れられてしまうことが起きていたんです。
また、私たちは販売経路が違うため通販のお客様と店頭のお客様に対して別々な接点を設けていましたが、実際のお客様はオンラインショップもドラッグストアもバラエティショップも、垣根なく行き来しています。このように認知率が低下する中で、当社からの一方通行の情報発信だけでは限界があり、お客様の生の声を十分に集められていませんでした。同じラサーナを愛用するお客様同士がつながり、情報交換できる環境も整っていませんでした。
そこで当社の長期経営方針である「当社の思いに共感していただけるファンを増やす」という考えのもと、単なる認知向上ではなく、お客様との深い関係構築を目指しました。従来の会報誌やオウンドメディアだけでは日常的なコミュニケーションに限界があったため、双方向のやり取りができるオンライン上の新しい顧客接点の場を作ることにしたんです。
──お客様同士のつながりを重視された理由は何でしょうか。
今村様:お客様が自分の言葉でラサーナなどの商品の良さを伝えることは、他のお客様にとても響くと実感しています。コミュニティの良さは、お客様が自分自身の言葉で表現したことによってその輪が広がっていくことだと思っています。実際に最近のアンケートでも、同じユーザー目線での感想やレビューが参考になるという声が多く寄せられました。
山上様:コミュニティを通じて「これだけコアなファンがいる」という数字では表せない深さを小売店に伝えられることも重要です。単に商品機能だけでは差別化が難しい時代ですから、ファンの声に向き合っているブランドかどうかは、小売店の商品採用判断でも優先度が上がってくると思っています。
──なるほど、小売店への提案力強化にもつながるわけですね。
山上様:そうです。ドラッグストアなどもコミュニティへのアプローチを進めていますので、同じ軸での会話ができることで、ブランドへの信頼感も得られると考えています。
お客様目線で考えたコミュニティプラットフォームの選定
──コミュニティサイト構築にあたり、どのようにサービス選定を進められたのでしょうか。
山上様:Asobicaさんを含めて4社から提案をいただきました。最終的な決め手になったのは、打ち合わせにおける会話が常に「お客様目線」だったことです。単にツールでできることを説明するだけでなく、coorumを活用してどうラサーナのユーザーと向き合っていけるかという対話が中心でした。
打ち合わせには営業担当者だけではなく、CS担当者や事業責任者など多くのスタッフさんが参加していました。その場で答えられないことがない体制で、組織的なバックアップ体制の厚みを感じました。
今村様:Asobicaさんはすぐにデモサイトを準備してくださり、私たちのブランド情報を反映させてイメージしやすくしてくれました。デモサイトを見ることで、ユーザー視点でもUIが使いやすく、楽しく参加できそうだと感じました。
また、『coorum community』や『coorum insight』の機能を活用することで、お客様同士のコミュニケーションを促進しながら、どのような話題が盛り上がっているかなど全体の傾向を把握できる点も魅力でした。お客様の声を大切にしながら、より良いコミュニティづくりのためのヒントを得られる仕組みがあることで、初めての運営でも安心して始められると思いました。
ホンネデータプラットフォームcoorumとは
──そうしてつくられたコミュニティサイト「ラララサーナ」について教えてください。
今村様:「ラララサーナ」は、美容に関する話題でおしゃべりをしたり、限定イベントに参加したりしながら、ラサーナの未来を共に創っていく場です。
ブランド名の前につけた「ララ」は、気分が上向きのときに出る言葉をイメージしました。参加メンバーのことは「ララトモ」さんと呼んでいますが、こうした名称は参加メンバーと一緒に考えました。コミュニティ運営では「お客様との共創」を大切にしています。
──立ち上げ初期はどのようにメンバーを集められたのですか。
美ノ上様:過去にアンケートへのご回答やレビューをお寄せくださった方、イベント参加の表明をいただいた方などから、特にラサーナを愛用してくださっているお客様にお声掛けし、3名の方とまず対面でお会いしました。
コミュニティ開設の意図と思いを直接伝えたことで、より一層ラサーナへの熱量を高めてくださったように思います。その後、さらに6名の方が加わりました。合わせて9名の方との対話を通じて、コミュニティの方向性やあり方について一緒に考える「共創」が始まりました。コミュニティサイトは名称から一緒に創り上げる体験ができ、初めから共創の意識が生まれていたんです。
長年、会報誌の企画などでお客様との接点を持ち、お客様の声に耳を傾ける姿勢を持ち続けてきました。そのため、今回も同様にお客様と足並みを揃えることができたのだと思います。
ラサーナの会報誌
全24ページにわたり、四半期ごとに発行。
ラサーナに関する情報や、ヘアケアの方法など、多彩なコンテンツを掲載。
長年ご愛読いただいている、親しみのある会報誌です。
リアルな使用体験が自然と生まれる環境づくりとユーザー発信のコンテンツ
──実際にコミュニティを運営されて、どのような取り組みが効果的だったと感じていますか。
今村様:月に一度「ラサーナアワード」を開催しています。ランクアップの発表や盛り上がった投稿、他の方の投稿を盛り上げてくださった「ララトモ」さんに賞を送るんです。
ラサーナの香りを構成しているレモンやゼラニウムなどをランクの名称にして、上位のランクになるとデザインバッジを用意しています。このバッジ獲得を目指して皆さん楽しく交流してくださっていて、投稿やコメントからも熱意が伝わってきます。
ラララサーナコミュニティでもらえるバッチの種類
また、新商品の先行体験レポーターも好評でした。ある「ララトモ」さんは数回に分けて投稿してくださり、「雨の日に実験した結果」や「家族に使わせた感想」まで詳しく共有してくださいました。
コミュニティの場ならではの、日常の使用体験や率直な感想が共有され、普通のアンケートでは得られない貴重な声を集めることができています。このようなユーザー同士の自然な対話から、新たな商品開発のヒントも生まれていると感じています。
──コミュニティ内で特に印象的な取り組みや出来事があれば教えてください。
今村様:「ホワイトティー」という香りの商品のファンクラブが自然発生的にできたことですね。掲示板で好きな方が会員番号まで作って自主的に運営されているんです。さらに驚いたのは、その会話を見た別の方が「気になって購入した」という声もあり、コミュニティ内で興味関心の輪が広がっていることを実感しています。
──コミュニティを一層広げていくために、工夫されていることはありますか。
美ノ上様:会報誌でコミュニティの活動を紹介することで、まだ参加していない方々にも「ララトモ」さんたちの生の声を届けています。最近の号では「ララトモ」さん3名のインタビュー記事を掲載し、コミュニティ体験を共有しました。また、SNSなどでもコミュニティの話題を取り上げ、参加していない方々へ、ご興味をもっていただけるよう努めています。
──コミュニティを運営するにあたって役立ったcoorumの機能を教えてください。
今村様:coorumの機能で特に役立っているのは、多様なコミュニケーション方法が用意されている点です。投稿だけでなく、投票機能やアンケートなど、参加のハードルが低い仕組みがあるので、様々なタイプのユーザーが自分に合った形で参加できています。
特に、すべての方が積極的に写真や長文を投稿できるわけではないので、「いいね」ボタンやシンプルな選択式の投票など、気軽に参加できる機能が重宝しています。また、全体に公開されない形で意見を書き込めるアンケート機能も、より率直な声を集めるのに効果的です。
こうした多彩な参加方法があることで、コミュニティへの定着率が高まり、長期的な関係構築ができていると感じています。様々な角度からユーザー同士のコミュニケーションを促進できるのがcoorumの強みだと思います。
ビジネス成果をもたらすファンコミュニティの可能性
──改めて、「コミュニティ運営がブランドや事業にもたらした価値」についてお聞かせください。
今村様:「ラララサーナ」では、お客様の生きた声を自然な形で集められるようになりました。これらの声は、お客様のニーズやこだわりが詰まった貴重な資源です。小売店への提案時にこうした具体的な体験談をお伝えすることで、商品の魅力をより説得力を持って説明できるようになればと思っています。
また社内でも、様々な場所に点在していたファンの声が一つの場所に集まったことでポジティブな変化が起きています。普段お客様と直接接する機会の少ない部門のスタッフにも、ラララサーナでいただいたコメントを共有すると、喜んでもらえました。さらに、熱量の高いファンのリアルな声が集まっていることから、「今後の商品開発に活かしたい」という声が上がるなど、良い影響が広がっています。
私たちの経験からすると、コミュニティ運営は「自分たちだけ」ではなく「Asobicaさんと共に創る」という姿勢が大切だと感じています。こうした協力関係があったからこそ、継続的に発展するコミュニティが実現できたのだと思います。
──今後のコミュニティ展開についてのビジョンをお聞かせください。
今村様:まだ「ラララサーナ」を知らない方も多いので、より幅広いファンが集う場所に育てていきたいですね。店頭でもコミュニティの存在を知っていただけるよう、タッチポイントを増やしていく予定です。
さらに、オンラインだけでなくオフラインの取り組みも強化していきます。例えば、「ララトモ」さんたちと実際にお会いする機会を増やしたり、弊社の強みであるヘアケア診断と組み合わせたイベントなども検討しています。
これからもお客様との共創を大切にしながら、ラサーナというブランドの世界観をより深く体験できるコミュニティにしていきたいと考えています。