一方通行の旧会員サイトを刷新!UCCが「ホンネレビュー」で実現する、売上貢献と全社横断の顧客インサイト活用
マーケティング本部プロモーション部ダイレクトマーケティングチーム
係長 金崎未奈 様
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サンプリングと投稿キャンペーンの定期実施で、忖度のないホンネレビューを自然に収集
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他社製品も含めた投稿設計にすることで、顧客のリアルなコーヒーライフを理解
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UCCで働く現役研究員が、専門知識で回答する「研究員の部屋」で信頼性の高い情報を提供
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旧会員サイトはお得感やゲームコンテンツによるエンタメ要素が強いサイトで、一方通行の発信により購買貢献が不明確であった
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SNSのUGCは、投稿数は多くも、製品体験を通した深いインサイトは中々得られず
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旧会員サイトではプレゼントキャンペーンの応募数程度しかデータが取得できないため、顧客のインサイトが深耕できる場ではなかった
効果
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コミュニティ経由での売上貢献を明確化し、事業成長へ貢献
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収集したホンネレビューを製品販促物や製品開発に活用し、顧客と共創できる環境を構築
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営業部門の商談資料への活用など、全社横断での顧客インサイト活用
コーヒー市場で長年愛されるUCC上島珈琲株式会社。しかし、メーカー共通の課題である顧客接点の希薄さに直面し、事業成長へ貢献するための新たなファン基盤の構築が急務となっていました。
同社は20万人を擁した旧会員サイト「Club UCC」の課題を踏まえ、2024年9月に「UCCラボ」を立ち上げ。コミュニティのコンセプトを「コーヒー好きのコーヒーに対するホンネが集まる場」と定め、顧客との双方向コミュニケーションを実現する場へと転換しました。
UCCラボ導入から半年後に実施したコミュニティユーザーへのアンケートの結果にて、ブランド好意度は80%に達しました。さらに、ユーザーの年間購入金額はコミュニティ登録前後で約2倍に増加し、回答者の約半数がUCC製品の購入頻度・金額が増えたと回答しています。
会員の規模よりコミュニケーションの質を重視した運営により、UCCラボ開始から半年後にはアクティブ率80%と高い数値となりました。会員から得た製品に対する意見は、実際の製品販促物にも採用され、顧客中心のマーケティングが実現しています。
こうした背景には、顧客の「ホンネ」を軸にした設計思想と、実務担当者による地道な運営の積み重ねがありました。
INDEX
存続かクローズか、20万人のエンタメ要素の強いサイトからコミュニティを刷新
──まず、コミュニティ導入の背景について教えてください。UCCラボを立ち上げる前はどのような状況だったのでしょうか。
金崎:実は「UCCラボ」は、弊社のコミュニティサイトとしては4代目になります。前身の「Club UCC」は12年運営していて、会員数も20万人を超える規模でした。ただ、その実態はゲームコンテンツを通してサイト内のポイントを貯蓄するような利用が中心で、ファン基盤としては機能していなかったんです。
サイトの構造上、一方通行の発信しかできず、お客様と双方向のコミュニケーションが取れませんでした。提供コンテンツもゲームやプレゼント応募など「お得感」に偏っていて、本来育てたいコーヒーに対する熱量やUCCに対するロイヤリティとは異なる状態でした。
──20万人という規模があっても、事業への貢献は見えていなかったということですか。
金崎:そうですね。アンケートへの協力率は高く、UCCへのエンゲージメントもある程度ありましたが、それがコミュニティ経由での購買につながっているかは見えませんでした。振り返りをしようにも、プレゼントキャンペーンの応募者数くらいしかデータが取れず、分析も取得できるデータが少ない状態が続いていて。正直、今年失敗したらコミュニティはクローズだろうという、存続かクローズかの瀬戸際でした。
そんな中、役員層への説明ではマーケティング全体のコストや人員体制の最適化という論点と、「来年までに会員規模を○○人まで拡大します」という具体的な数値目標を伴う宣言をしたことが決め手となり、存続になりました。
コミュニティを起点にUCCの商品に興味を持っていただける流れをつくる──そのためには、お客様の本音が聞ける場は必要不可欠だと思って取り組んでいました。
忖度なき製品レビューを求めて。運用性と分析力がcoorum選定の決め手
──Club UCCからUCCラボへの転換にあたって、設計思想をどのように切り替えたのでしょうか。
金崎:一番重視したのは“ホンネ”というキーワードです。UCCラボのコンセプトは「製品体験を通してコーヒーのホンネをシェアする」場所。ロゴにも「コーヒーのホンネが集まるUCCラボ」と記載するくらい、大切にしています。
(UCCラボのコミュニティメッセージ)
イメージしていたのは、生活者視点で語られる忖度無しの意見が集まり、「これがおすすめ」と情報交換できる場所です。
──お客様の本音を大切にするために、具体的にどんな設計にしたのですか。
金崎:まず、お客様のコーヒーライフに関する解像度を徹底的に上げました。どんな人に、どんなコーヒー体験を提供するのか。そして「ホンネが生まれるコンテンツ」を提供できる設計にこだわりました。
例えば、UCCラボでは他社製品の投稿もOKにしています。実際のコーヒー好きは、いろんなブランドを楽しんでいるはずです。その日常のコーヒーライフをそのまま共有してもらうことで、「こんな風にコーヒーライフを楽しんでいるんだ」といった発見もありますし、お客様同士でも幅広い情報交換ができると考えています。
──そうした要件を実現するツールとして、なぜcoorumを選ばれたのでしょうか。
金崎:大きく3つの決め手がありました。
1つ目は、分析機能の充実です。購買金額の向上、ブランド好意度、SNS上でのUGC数など、私たちのチームが追いかける指標を測定したかったのですが、coorumには会員の「行動データ」と「購買データ」を紐付けて見られる仕組みがありました。実際、検証期間中にこれらの指標の改善が確認できたことが大きかったです。
2つ目は、運用面での拡張性です。新しい投票機能やアンケート機能など、お客様が参加しやすい仕組みが定期的に追加されていくと聞いていました。実際、写真投稿が苦手な方でも投票なら気軽に参加できますし、企画のバリエーションも広がります。四半期ごとにビジュアルを変えるような運用も、管理画面から柔軟に対応できそうでした。
そして3つ目は、Asobicaさんの姿勢です。UCCのことを理解しようとしてくれていると感じました。実際に弊社の製品を飲み比べてみましたと言ってくださったり、「私はこういう飲み方が好きです」といったコーヒーへの思いを共有してくださったり。
お客様の声を大切にしたいという私たちの思いと、実際にそれを体現されている姿勢が合致していました。その姿勢、レスポンスの速さも含めて、一緒にコミュニティを育てていけるパートナーだと思えたんです。
コミュニティに寄せられたホンネレビューが、製品販促物に採用

──UCCラボの運営体制について教えてください。どのようなチームで動かしているのでしょうか。
金崎:コミュニティ運営に関わっているのは社内で4名です。ただ、企画立案から投稿原稿作成まで、実務的な部分は基本的に私一人でやっています。上司がプロジェクトマネージャーとして相談に乗ってくれて、デザイナー2名と週1回の定例ミーティングでバナー制作やサイト全体のクリエイティブを調整しています。
──実際にどのような施策を展開されているのですか。
金崎:定期的にサンプリングや投稿キャンペーンを実施しています。重要なのは、サンプリングをした後に自然とレビューを書いてもらえるサイクルを作ることでした。
「コーヒーギャラリー」という写真投稿の部屋が一番人気で、閲覧数も多いです。今日の一杯や愛用しているコーヒー器具などを撮影し投稿する、というシンプルな仕組みですが、新製品を楽しんでいる様子を見て「私も買いました」という連鎖が生まれています。
──限られた人数でこれだけの運営をされているのは大変だと思いますが、何か工夫されていることはありますか。
金崎:社内外の協力を得られているのが大きいと思っています。例えば「研究員の部屋」というコンテンツでは、現役のUCCの研究員が本業の知見を活かして楽しみながら参加してくれています。ユーザーから寄せられるコーヒーに関する質問に対して、データを用いて専門的に回答してくれるので、信頼できる情報源として会員さんに好評です。
ビジュアル面においても、四半期ごとにデザイン刷新を継続的に実現できているのは、パートナーのクリエイターさんがUCCラボに愛着を持って関わってくださっているからです。

(2025年秋のトップバナー。四季折々、デザインが変わる)
──コミュニティのお知らせを拝見したのですが、ホンネレビューが実際の製品販促物に採用されたそうですね。
金崎:はい、採用されたのは 「Cold Brew BLACK PET500ml」という製品で66件のレビューが集まり、そのうち2件が実際の製品販促物に採用されました。「グイグイ飲めちゃう!」といったキャッチーな言葉です。
採用までには広告宣伝チーム、製品開発チーム、品質保証室など複数部署の調整が必要で、3ヶ月かかりました。でも、お客様の生の声が製品パッケージに載るというのは大きな一歩でしたね。
最近では他の製品担当からも、「コミュニティを通してファンにサンプリングをして、意見を聞けないか」という相談が増えています。
(ホンネレビューの一部が製品の首掛けPOPに採用:出典)
──ホンネレビューから得られた発見はありますか。
金崎:たくさんあります!例えば豆製品は、ホットコーヒーで飲まれることが多いと想定していましたが、実際にはアイスコーヒーを楽しむ方が多数いました。「アイスコーヒーで飲んだら美味しかった」というレビューから交流も生まれています。
また、「コーヒー好き=ブラック」という固定観念とは異なり、ミルクを入れて楽しむ方も多いと判明したのも意外でしたね。こうした発見は、今後の製品開発やマーケティングにも活かしていきたいと考えています。
ブランド好意度80%、購入金額2倍。数字が証明する顧客との関係性の変化

──UCCラボを立ち上げて約1年が経過しました。実際にどのような成果が出ているのでしょうか。
金崎:まず定量的な成果からお話しすると、導入から半年後にUCCラボで実施したコミュニティに関するユーザーアンケートでは、ブランド好意度が80%に達しました。
年間購入金額については、UCCラボ登録前と登録後を比較すると約2倍に増加しています。また、アンケート調査の結果では約50%が「UCC製品の購入頻度・金額が増えた」と回答いただきました。
──数字以外の変化はいかがですか。
金崎:顧客属性が大きく変わりましたね。Club UCCはコーヒーが好きだけどお得感も重視する層が中心でしたが、UCCラボはUCC公式オンラインストアを利用する層も多いです。メルマガでUCC公式オンラインストアの情報を送っても、以前はほとんどクリックされませんでしたが、今ではコミュニティ内でECを利用した購入報告の投稿も見られます。
印象的なのは、会員さんの行動変化です。「コミュニティ参加後、店頭でUCCの文字を探すようになった」「ついUCCの文字を見つけてしまう」という声をいただいています。日常生活の中でUCCを意識してもらえるようになったのは、大きな変化だと感じています。
──社内での評価はいかがですか。
金崎:社内では、貴重な意見が集まる場所、新製品のレビューがすぐに集まる場所として少しずつ認識されています。集まったレビューを見て製品開発チームからは、リニューアル検討の参考にするという声も聞きます。
──こうした成果を生み出せた要因は何だと思いますか。
金崎:やはり“ホンネ”を軸にした設計が功を奏したと思います。
私たちも本音で接するから、お客様も本音を返してくださる。オンラインイベントでは立ち上げの裏話もお話ししたりしていますが、そういった対等な関係性が、今の成果につながっているのだと考えています。
あとは、定期的なサンプリングとレビュー収集のサイクルが確立できたこと。自然な形で顧客の声が集まり、それが社内でも活用される。この好循環が生まれたことが大きいですね。
「コーヒーのことならUCCラボだよね」──Asobicaとともに、次のフェーズへ

──今後、UCCラボをどのような場に発展させていきたいとお考えですか。
金崎:最終的には、コーヒーの相談役として「UCCラボだよね」と想起してもらえる存在になりたいです。コーヒーについて知りたいことがあったら、まずラボに行けば情報が集まっている、誰かが答えてくれる、そんな場所を目指しています。
ただ、単なる情報交換の場で終わらせるつもりはありません。ファンづくりというミッションを持っている以上、コミュニティ経由でこれだけの売上に貢献していると胸を張って言える状態を作りたいです。
──具体的にどのような展開を考えていますか。
金崎:営業部門との連携ができないか模索しています。コミュニティの企画が商談資料に活用できるような、お客様の生の声を営業活動に活かせる仕組みを作りたいと考えています。
製品開発への本格的な活用も目標です。お客様と一緒に製品を作る共創マーケティングですね。ただ、社内調整のハードルが高いので、まずは小さな事例を積み上げている段階です。先ほどの製品販促物への採用も、その意味では大きな一歩でした。
最近では、ブランドサイトを作る際に「UCCファンが選んだ○○」という形で掲載したいという依頼もありました。製品担当からサンプリング依頼も増えていて、少しずつですが全社的な活用が広がってきています。
──ありがとうございました。最後に、Asobicaへの今後の期待について、率直なご意見をお聞かせください。
金崎:Asobicaさんは本当に、UCCラボの企画の一員として関わってくださっています。
引き続き、お客様目線でのフィードバックをいただきながら、一緒にコミュニティを育てていきたいです。これからも無茶を言ってしまうかもしれませんが、ご支援いただけたらと思います。


