商品の良さを直接伝えたい。全国の組合員とつながるJA全農の新たな挑戦

生活関連事業部 くらし支援部 地域とくらしの支援課
川田 純平 様 善当 由貴 様
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ログインキャンペーンとポイント制による継続的な参加促進
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ユーザーが投稿しやすい企画を行い、投稿数が約2倍に向上
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レシピ投稿から商品パッケージ採用まで、UGCの実践的活用
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JA全農が運営するJAくらしの宅配便(ECサイト)の利用促進
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組合員(お客様)との直接の接点を作りたい
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地域やJA単位でそれぞれの活動を行っているため、別地域の組合員同士の横のつながりをより強固にしたい
効果
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組合員の生の声を直接リアルタイムで集めることで、商品開発や商品改善に活かす
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JAを利用する全国の組合員が地域の壁を越えて交流し、より活発な情報交換ができる
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オンラインでの交流を通じて、実際の商品購入や商品PRにつなげる
全国農業協同組合連合会(JA全農)は、生産者と消費者を結ぶ経済事業を担う協同組合組織として、全国の組合員・地域生活者の暮らしを支えています。
2023年より運用を開始したコミュニティサイト「Aむすび」では、これまで届きにくかった組合員の声をJA全農自ら直接収集し、JA全農のプライベートブランド(PB)でもあるエーコープマーク品の商品開発や商品PRの場の提供を目指しています。さらに、ユーザー考案のレシピを商品パッケージに採用するなど、独自の取り組みを展開しており、全国各地の組合員の声に耳を傾けながら、新しい形の顧客との関係づくりを進めています。
現在オンラインコミュニティを通じた顧客との関係構築とエーコープマーク品の商品開発の新しい取り組みについて、JA全農 生活関連事業部 くらし支援部 地域とくらしの支援課の川田純平様、善当由貴様にお話しを伺いました。
INDEX
組合員の声がPBの商品開発に反映されにくい状況だった
──まずはJA全農の組織概要と、今回のコミュニティ立ち上げの背景について教えてください。
川田様:JA全農は生産者と消費者を結ぶ懸け橋として、組合員の営農と生活を守ることを目的とした協同組合です。一般的な営利企業とは異なり、組合の相互扶助によって共通の目的を達成するための組織になります。
私が所属するくらし支援部では、プライベートブランド「エーコープマーク品(PB)」の開発やスーパーマーケット事業、組織食品(共同購入)事業などを通じて、組合員・地域生活者の暮らしをサポートしています。
善当様:エーコープマーク品は、調味料等の加工食品やお菓子、日用雑貨など幅広いものを取り扱っており、2025年1月現在で約900品目ございます。エーコープマーク品の商品開発にあたっては、原材料の国産優先使用、安心・安全に配慮した品質基準、地球環境に配慮することを考えながら日々企画や開発を行っています。
川田様:PBは、カタログやチラシ等を用いた共同購入、Aコープ店舗(スーパーマーケット)やJAの購買店舗、そして農産物直売所等での店舗販売に加えてネット宅配販売のJAくらしの宅配便での販売を行っております。現在の購入層としては、農家の奥様を中心に構成されるJA女性部,フレッシュミズ(様々な年代の女性でつくるJA女性組織の中で、特に若い世代(おおむね45歳くらいまで)の組織)の方々にお支えいただいております。
コミュニティの運営を開始した背景は、JAの職員数が減少し、従来型の共同購入の継続が難しくなったため、ネット通販の「JAくらしの宅配便」を立ち上げましたが、個人ネット利用者数が伸び悩み、利用促進がなかなか進んでいない状況でした。そこで、オンライン上の交流から、JAくらしの宅配便の利用拡大に繋げられないかと導入を進めました。
また、私たちが開発、企画した商品を組合員さんに届けるまでに、いくつかの過程があります。エーコープマーク品の商品開発をする中で組合員の声を直接聞けないことや、PRする際も各組織を経由する必要があるという課題がありました。コミュニティサイトに来ていただければ、そこで新商品のこだわりを直接アピールしたり、アンケートを取ってエーコープマーク品の商品開発に活かしたりすることができると思っています。
全国各地の組合員との直接的なコミュニケーションを目指し「coorum」を導入
──コミュニティサイト「Aむすび」は、どのような狙いで立ち上げられたのでしょうか?
川田様:Aむすびでは、エーコープマーク品のコアファンであるJA女性部の方々を中心に、直接声を聞いたり、商品のPRを届けたり、そこから商品改善に活かしたり、ECサイトの利用促進も目的としております。
また、coorum(コーラム)導入の際に最も重視したのは、全国各地の組合員との直接的なコミュニケーションです。JA女性部の方々はもともと料理教室やフラワーアレンジメントなど多くの活動を行っており、全国に約36万人もの会員がいらっしゃいます。これまでは各地域での個別の活動を中心に年に数回全国での取組が行われている状況でしたが、Aむすびを通じてより全国の組合員のつながりが強固になり、それぞれの地域の特色ある食文化や農業の様子を共有できるようになりました。今後はJA女性部の方々だけでなく、その周りのママ友など、準組合員の方や組合員でない方にも楽しんでいただきたいです。
──実際のコミュニティの利用者層や活用状況はいかがですか?
川田様:コミュニティにはJA職員の方や取引先の方も参加されていますが、参加者の中心はJA女性部の会員の方々です。年齢層は50代、60代の方が中心で、70代の方も多く参加されています。お孫さんの写真を投稿したり、地域のお祭りの様子を共有したりと、とても活発に交流されています。
スマートフォンの操作に不安がある方もいらっしゃるかと思いましたが、家族に教わりながら楽しく参加されているようです。
投票数が約2倍アップにつながったコミュニティ活性化の取り組み
──コミュニティならではの特徴的な交流について教えてください。
川田様:特徴的なのは、全国各地の会員同士が交流することで、自然と地域ごとの違いや特色が表れてくることです。
例えば、お正月には角餅と丸餅のどちらを食べるかというアンケートを実施したのですが、その土地ならではの食文化の違いが分かって、サイト上でとても盛り上がりました。野菜も地域によって食べているものや食べ方が違うので、アレンジレシピを投稿される方も多いですね。
──コミュニティの活性化のために、どのような取り組みをされていますか?
善当様:基本的な取り組みとしては、定期的なログインキャンペーンを実施しています。1ヶ月で15日以上ログインするとポイントがもらえる仕組みで、これは多くの方に参加いただいています。
また、定期的に写真投稿キャンペーンを実施し、入賞者にはエーコープマーク品をプレゼントしています。クイズや投票企画も人気で、以前と比較して投票数が約2倍の伸び率となっており、コミュニティ全体の活性化にもつながっています。
ファンのレシピが商品パッケージになるレシピコンテストの取り組み
──特に印象に残っている取り組みはありますか?
川田様:特に印象深いのが、2024年10月に実施したエーコープ塩こうじパウダーのレシピコンテストです。一般にスーパーなどでは液体タイプの塩麹が多いと思いますが、使いやすく、アレンジしやすいパウダータイプの本商品を広めたいと考えていました。
コミュニティ上でレシピを募集したところ、素晴らしいレシピが多数集まりました。せっかくの機会でしたので、選りすぐりのレシピを商品の内袋包材として採用し、販促に活かそうと考えました。6種類をランダムで商品に入れ、カードには考案者のユーザー名を入れています。これはコミュニティがあったからこそ実現できた取り組みで、販促効果も高く、売上も伸びています。
コミュニティでの取り組みを通じて得られた「商品認知度アップ」
──コミュニティを通じて組合員さんに変化があったとのことですが、どのようなことか教えてください。
川田様:コミュニティユーザー向けのアンケートでは80%から90%の方が「コミュニティに入って他のエーコープマーク品を知った」「実際に購入したい」と回答しています。特にエーコープ塩こうじパウダーのレシピコンテストでは、コミュニティで商品を知って初めて購入し、その後常備するようになったという声もいただきました。
コミュニティの目的の一つに、商品を知っていただくPRの目的があったので、アンケートを通して実際に商品の情報をお届けできていることがわかり、嬉しい結果が出たと思います。
地域を越えたオンラインの交流で広がるJA全農の未来図
──今後の展望を教えてください。
川田様:全国に約36万人(令和6年12月時点)のJA女性部員がいらっしゃる中で、未だコミュニティを知らない方が多いのが現状です。特に20〜30代の世代に向けて、JAグループにおいて出版事業を担っている家の光協会と連携してPRを強化していく予定です。また、各地で活動しているJA女性部向けの商品説明会の内容もコミュニティにアップし、いつでも誰でも商品の良さを確認できる場所にしていきたいと考えています。
JAグループの特性上、人事異動で担当者が代わることも多いため、職員向けにもレシピやコラムなどが閲覧できるポータルサイトとしての活用も考えています。
善当様:私自身も現所属部署へ異動して1年目であり、エーコープマーク品について知らないことも多かったですが、Aむすびを通して商品の魅力をたくさん知ることができました。これからも多くの方々に、エーコープマーク品の良さを伝えていきたいです。