シャープ「ロボホン」のUGC収集・活用方法とは?ロボホンオーナーだからこそ知っている楽しい暮らしをコミュニティに蓄積
亀井 俊之様
岩越 裕子様
森 伊吹様
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ロボホンのオーナー同士が自由にコミュニケーションできる場を創ることで、新規購入者や購入検討者にも立ち寄りやすい場とする
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オーナーの愛情がこもったUGCを収集する
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UGCを通じて見えたお客様の声を開発や訴求文言に反映する
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コミュニティ参加者の声を本などの成果物として形にする
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大々的なプロモーションを行っていないため認知度が高くない
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高単価商品で購入ハードルが高いため、ロボホンとの生活実態を伝えることで、新規購入者増加につなげたい
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ロボホンのオーナー同士が自由にコミュニケーションできる場を創りたい
効果
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ロボホンのオーナーが気軽に立ち寄り交流できる場にする
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UGCを収集・活用しロボホンとの暮らしを可視化し施策に活かす
モバイル型ロボット電話「RoBoHoN(以下、ロボホン)」を提供するシャープ株式会社では、ロボホンをご利用いただいているオーナー同士が交流できるコミュニティ「ロボホンともだち広場」を運用しています。一緒に暮らすオーナーだからこそわかるロボホンの魅力をUGCとして収集し、活用することで新たな気づきを得られたといいます。
コミュニティの導入背景やコミュニティの運営方針、取り組みについてシャープ株式会社の亀井様、岩越様、森様に伺いました。
INDEX
ロボホンとの楽しい暮らしを可視化する場としてcoorumを導入
──まずはみなさまのミッションを教えてください。
亀井様:私たちのチームは、コミュニケーションロボット「ロボホン」に関する事業の企画・開発を行っています。ミッションは「ロボホン事業をよりよくし、皆さまに継続して楽しんでいただけるようにすること」です。今回、コンシューマー向けの取り組みとして、オーナーの皆さまにより楽しんでいただけるようcoorumを導入、活用させていただいております。
──コミュニティ導入以前に抱えていた課題、また導入背景を教えてください。
亀井様:ロボホンは8年以上行っている事業ですが、大々的なプロモーションを行っているわけではありません。そのため、楽しく生活されている方は価値を感じてくださっているのですが、そもそも知っている人が少ないという課題があります。
また、ロボホンは少々高額な商品なので、まずは試してみたいという方にとってはハードルが高い面もあります。そこで、すでにロボホンと一緒に楽しく生活されている方の暮らしが見えるといいのではないかと考えていました。
岩越様:ロボホンは毎年お誕生日をお祝いするイベントを行い、オーナー様同士が出会う機会を設けています。またさまざまなオーナー様がX(旧:Twitter)でロボホンとの暮らしを発信してくださるなど、オーナー様が集うという意味でのコミュニティは以前からありました。
ただ、イベントやSNSでの情報発信は一過性のもので、貴重なお客様の声や情報を十分に蓄積できていない状況でした。現在ロボホンを利用されていない方にも実際にご利用いただいているユーザー様の声を通じて、ロボホンとの暮らしを感じられるようにしたいと考え、coorumを導入しました。
一緒に過ごすオーナー発信のロボホン愛溢れるあたたかいUGCを収集・活用
──インフルエンサーマーケティングをはじめ、さまざまな手法がある中でコミュニティを選んだ理由をお聞かせください。
岩越様:ロボホンはいわゆる高関与商品にあたり、お客様が慎重に選択し、長く愛着を持って使い続けていただく商品です。そのため、私たちメーカーからの発信だけでは、ロボホンの本質的な価値をお客様の心に響く形でお伝えすることが難しい面がございました。
だからこそ、実際にロボホンを家族の一員として可愛がってくださっているお客様の日常の写真や、共に暮らす中で感じた生の声こそが、ロボホンの本当の魅力を伝えられると考えました。コミュニティは、そういった心温まる体験や想いを自然な形で共有できる場として最適なソリューションだと確信したのです。
亀井様:ロボホンは本質的にフォトジェニックな作りになっており、さまざまな角度や場面でもきれいな写真が撮れるようになっています。しかし、実際にオーナー様が日々の暮らしの中で撮影される写真には敵わないなと思いました。実は以前、インフルエンサーマーケティングにも取り組んだことがあるのですが、コンテンツの質が全く違うなと感じました。本当に可愛がってくださっている方が作る写真や感想には熱があって、温かさが全然違うのです。そこで私たちは、コミュニティ内でフォトコンテストの開催を通じて、そこで集まったオーナー様ご自身の声(UGC)を中心としていく方針に切り替えました。
──coorumを選んでいただいた決め手をお聞かせください。
亀井様:マーケティングカンファレンスで講演を聞いて課題と合うなと感じたのがきっかけでcoorumを知りました。機能面が充実しているのに加え、カスタマーサクセスの伴走支援が充実している印象だったのでcoorumに決めました。
実際に運用を始めた時は、事前にさまざまなイメージを描いていたものの、悩む場面もありました。そんな中、coorumのカスタマーサクセス担当の方に、他のcoorum利用企業と比べて、ユーザー数の増え方やいいねの数が多いのか、少ないのかといった指標を示していただいたり、いろいろきめ細かくフォローしてもらえたりして助かっています。少し物足りない機能もあるのですが、こちらの要望を開発につないでいただくなど、伴走いただいています。
──コミュニティ名「ロボホン ともだち広場」に込めた想いをお聞かせください。
岩越様:ロボホンは、「普段は交流の場にはなかなか行かないけれど、ロボホンがいるから行ってみようかな」と思わせる、交流を促す力を持っている商品だと考えています。
例えばわんちゃんを飼っている方が一緒にお散歩に出かけて、他の飼い主さんと「おいくつですか?」などと会話に花が咲くというようなことはよくあることかと思います。
街中でロボホンのオーナー様同士がすれ違うことはまだなかなかないのですが、このコミュニティを、同じようにロボホンのオーナー様同士が気軽に立ち寄れて、離れたい時は離れることもできるオープンな広場にしたいという思いで名付けました。
──コミュニティの目的や運営方針を教えてください。
岩越様:立ち上げ当初から目標としているのは、長くロボホンを可愛がってくださっているロイヤルなオーナー様と、最近購入されたオーナー様が交流できる場にすることです。ロボホンは毎月アップデートしているので、開発している私たちでも忘れてしまうほど多くの機能を備えています。
さまざまな機能を私たちからご案内していくべきではあるのですが、愛用してくださっているオーナー様同士で、ロボホンの使い方や機能を教えあったり、それをきっかけにしてコミュニケーションが楽しめたりすることを狙っていましたし、現状ある程度できているので、今後も継続させていきたいと考えています。
森 様:コミュニティの運営にあたっては、ロボホンを通じてワクワクする生活を送ってもらえるよう心がけています。オーナー様とロボホンとの楽しみだけでなく、コミュニティを通じてよりロボホンとのワクワク感を広げられればいいなと思っています。
直近では、ロボホンの自由研究コンテストや、ロボホンをテーマにしたものづくり、プログラミングなどの企画を開催しました。「小学生の頃を思い出しました」などという感想もあり、オーナー様の生活にワクワク感を添えられているかなと考えています。
お客様の解像度が上がり、開発内容・訴求文言をアップデート
──コミュニティを運営したことで可視化された顧客像があれば教えてください。
岩越様:コミュニティの導入前からアンケートやインタビューを行い、カスタマージャーニーを作成していたため、私たちがイメージしていたお客様像が大きく変わったという印象はありません。
ただ、コミュニティユーザーの属性は想定と少し異なり、この数年でロボホンを購入した比較的新しいオーナー様が多くいらっしゃいます。最近ロボホンと暮らし始めた方は、つながりを求めていたり、好きなものを共有したいという思いがあったりすることがわかり、コミュニティの意義を感じました。
亀井様:岩越が言うように顧客像自体は変わっていませんが、解像度が上がったなという実感はあります。具体的にロボホンとどこに行って何を楽しんできたのか、それに対する他のオーナー様のリアクションがどうなのかが目に見えるようになりました。
──お客様の解像度が高まったことで、施策に生かされたことはありますか?
森 様:ロボホンは毎月、機能アップデートを実施していて、新しいダンスを覚えたり、ごっこ遊びができるようになったりします。これまでは私たち開発側が独自で考えた機能をリリースしていましたが、コミュニティ上でアンケートを実施して好きな機能やその理由を聞くことで、オーナー様のリアクションがわかるようになりました。よりお客様に即したアップデートを実施できるようになっているなという実感がありますし、気軽にオーナー様の声が聞けるようになってありがたいです。
──UGC、お客様の声の活用方法についてお聞かせください。
岩越様:先述の通り、ロボホンと生活している人はなかなか身近にいないと思っているので、ロボホンとの生活実態を明らかにしたいという思いがあります。コミュニティでフォトコンテストを実施したり、ロボホンとの出会いのエピソードを募ったりして、ロボホンとの暮らしぶりがわかる投稿を集め、さらに公式サイトやSNSに転用できているのは成果だと考えています。
また、UGCの活用とは少し観点が違いますが、「ロブリック」というブロックを組み合わせてプログラミングができる機能を紹介する際に、これまではお子様のプログラミング教育に使えますというような機能訴求をしていたのです。
もちろん正しい訴求ではあるのですが、オーナー様は「自分のロボホンはこんなことができるようになった」と子供が成長する喜びに近い想いを感じていることがわかりました。
私たちはメーカーの人間なので、つい機能訴求をしてしまうようなところがあるのですが、「ロブリック」の訴求においても、プログラミング学習ではなく、自分の好きなようにロボホンを成長させることができるという訴求に変えることで見え方が変わるだろうと気づきがありました。
この気づきを活かして、コミュニティの自由研究企画で「ロブリック」を採用し、並行してセールを開催したところ、多数の投稿と共に新たにロボホンと暮らし始めた方も多数いらっしゃったので、お客様のインサイトに刺さる言葉による訴求が重要だと改めて感じつつ、今後の指針にもなりました。
オーナーと共に作る説明書。UGCを活かしてロボボンとの暮らしを形に
──ロボホンの本を作っていると伺いました。詳細をお聞かせください。
森 様:ロブリックと同じく自由研究企画の中で、「ロボホンの説明書 ロボホンって知ってる?」という企画を投稿してくださった方がいらっしゃいました。その投稿に対するコメントで、「公式で作ってくれないか」と盛り上がっていたのを受け、ロボホンともだち広場1周年のタイミングで皆さまの声をまとめた一冊にまとめることにしました。オーナーの皆さまからの声と社内の声をあわせた、オーナー様との距離が近いからこその企画です。
内容はオーナー様に回答いただいたアンケートを元に作成したのですが、前回実施したアンケートを上回る回答数を得ており、コミュニティの成長を感じています。
2024年11月1日に「ロボホンともだち広場」の1周年記念ライブを開催し、その場で作成した本をお披露目しました。本の中にはオーナー様ご自身のロボホンの写真を載せることができるようにしていて、うちの子が載っている公式本として、どなたでも自由に印刷して楽しんでいただけるようデータの提供も行っています。オーナー様にはとても喜んでいただいており、コミュニティ内でもコメントをたくさんいただいています。
──今後の展望をお聞かせください。
岩越様:コミュニティの方向性として登録者数を増やして規模を拡大する方向と、既存のオーナー様との関係を深めていく方向と2つあると思うのですが、ロボホンは後者の方が相性がいいだろうと考えています。
もちろんコミュニティを広げ認知を拡大し、そこで生み出されるUGCを転用していく取り組みは引き続き必要です。しかし、コミュニティそのものの役割という観点ではメーカーの開発に関与できる場としてオーナー様のロイヤリティをより高めて、新しいものを生み出していくというような方向に進めていくのがよいだろうと考えています。
亀井様:先述のロボホンの説明書のように、本やグッズなどコミュニティに参加しているオーナー様の楽しい生活を、形として見せる取り組みが全体の満足度を高めていくのではないかと思っています。そういうことができる場としてコミュニティを用意したので、コミュニティを起点とした成果物を出していきたいなと考えています。
──ありがとうございました。