ROASとは?計算方法やROIとの違い、改善のポイントを解説

2025-02-18 コラム

ROASは「Return On Advertising Spend」の略称で、特定の広告における費用と売上の比率を表しています。似通った用語のROIとは異なり、利益ではなく売上をベースに算出することが特徴です。今回は、ROASの計算方法や他の指標との違い、改善のポイントを解説します。

ROASとは

ROASは、ある広告の費用対効果を表した指標です。ROASの数値が高いとコストパフォーマンスに優れ、少ない費用で多くの利益をあげていると判断できます。

ROASの主な用途は、広告費の適切な予算配分や入札価格の決定です。数値が高い広告には追加で予算を投資し、低ければ配信を止めるなど、実施する施策のコントロールに適しています。

ここでは、ROASとROIやCPAとの違いを解説します。

ROIとROASの違い

ROI(Return On Investment)は、投資額に対する利益率を表した用語です。ROASは売上をベースに広告の費用対効果を計算しますが、ROIは利益ベースで費用対効果を算出します。

広告に限定せず、投資額と利益額を特定できればさまざまな事業や施策の費用対効果の算定が可能です。ただし、ROIの場合、売上から販売管理に要した費用や投資額を差し引く必要があります。

計算が複雑になりやすいため、広告間の単純なコストパフォーマンスの比較にはROASのほうが適しています。

ROIとは?計算式やROASとの違い、ROI改善・向上のポイントを解説

CPAとROASの違い

CPA(Cost Per Acquisition)は、コンバージョンを1件獲得する際に投じたコストを測定した指標です。ROASは広告費に応じた売上の比率を測定するものですが、CPAは広くコンバージョンを対象とします。

CPAはROIやROASと異なり、数値が低いほどパフォーマンスが優れていると判断します。

ROASが重要である理由

ROASが重要な理由として、広告費1円あたりの売上を可視化することで、課題点の抽出につながり、広告全体の成果の向上に活かせる点が挙げられます。広告ごとの売上への貢献度を見極めて、広告効果を最大限に引き出す施策の立案に役立ちます。

具体的なデータに基づき、さまざまな広告の費用を適正な配分に調整して広告施策全体を舵取りできるのは、ROASを分析する利点です。

また、インターネットが高度に発展して消費者と広告との接点が増加したことや、各種分析ツールが多数登場し始めたこともROASに注目が集まる要因の一つでしょう。

ROASの計算方法

ROASの計算式は以下のとおりです。

  • ROAS(%)=広告経由の売上÷広告費×100

広告経由の売上を広告費で割ることで算出できます。たとえば、広告費に70万円を費やして、単価1万円の商品を100個販売したときの計算結果は、100万円÷70万円×100%=約143%です。

ROASの算出では、必ず広告経由の売上のみを測定対象にして、広告以外で得た対価を含めないよう注意が必要です。

ROASが100%を超えると売上が広告費を上回り、費用対効果が良いと判断できます。

ただし、上記の事例でデザインソフトの利用料やデザイナーの委託料などの経費が30万円を超えた場合、利益額はマイナスになります。ROASが100%以上でも利益が出ているとは限りません。

広告の適正なコストパフォーマンスが知りたい場合、ROIやCPAを合わせて確認する必要があります。

ROASのメリット・デメリット

ROASの大きなメリットは、単純な計算式で広告の成果を可視化できることです。一方で、単体の分析だけでは利益を正確に算出できず、費用対効果の測定は限定的な範囲にとどまります。

ROASのメリットとデメリットを把握して、何ができて何ができないのか正確に理解しましょう。

ROASのメリット

ROASのメリットは次のとおりです。

  • 簡単な計算で測定できる
  • 複数の広告の費用対効果を手軽に比較できる
  • 客観的なデータに基づく高精度の対策が可能

ROASは広告経由の売上と広告費がわかれば簡単に算出できます。

複数の広告を同時に打ち出す場合、ROASを活用することで各広告のパフォーマンスの比較が容易にできます。A/Bテストを実施して、2つの施策のうち効果が高い方法を見つけることも可能です。

また、効果が高い広告にリソースを集中投下し、反対に売上に影響が少ない広告は縮小する判断がしやすくなります。さらに実際の測定結果に基づき、高い効果が見込まれるターゲットを絞った配信が可能です。

ROASを活用することで、先入観や思い込みにとらわれず客観的に判断できるようになり、データドリブン経営(データに基づく迅速かつ的確な経営)の実現につながるでしょう。

ROASのデメリット

ROASのデメリットは次のとおりです。

  • 単体では利益が出ているかわかりにくい
  • LTVが期待できないお客様に配信される可能性がある

売上ベースの分析にとどまるROASでは、販売原価や投資額を考慮した、トータルの費用対効果を明らかにできません。ROASの数値が高く見えても、実際には利益が出ておらず赤字経営に陥っているケースもあります。

また、ROASの分析では成約したお客様を優良顧客に育成できるかわかりません。広告は商品の購入額が大きいターゲットに向けて配信されることになるため、将来購入の可能性がある方にはアピールできません。

ROASのみを指標にして配信先を決めたケースでは既存顧客に配信が偏ることで、LTVの高いお客様を意図せず避ける事態が起きる場合もあります。

現時点では購入していなくても将来的にロイヤル顧客に成り得る相手に広告を届けることができなくなるケースもある点に注意が必要です。

ROASの目安

ROASは、1円の広告費に対して1円の売上がある状態を示す100%が目安になります。数値が高いほど、コストに対して金銭的な対価を多く受け取っていることになります。

また仮に事前に広告費が判明している状況を想定した場合、損益分岐点ROAS(収益がちょうどゼロになるROAS)を明らかにして、損益分岐点を超えるにはいくらの売上が必要か算出できます。

顧客単価が100万円でコストが40万円のケースでは、100万円 ÷ (100万円-40万円) × 100 =約167%です。

上記の計算結果から、損益分岐点を超え、利益を出すためには広告費の1.67倍以上の売上が必要だと判断できます。売上ベースのROASが100%を超えても、事業が成功しているとは限りません。費用を考慮した損益分岐点ROASは、ROAS単体でも利益の有無を見極められる便利な指標です。

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ROASを改善・向上させるポイント

ROASを高く維持して、広告パフォーマンスを良好に保つことはビジネスの成功における重要な要素です。ここでは、ROASを改善・向上させるポイントを紹介します。

CVRの改善・向上を図る

CVR(コンバージョン率)が高まれば、売上が伸びる機会が増え、結果的にROASの改善にも結びつきます。

CVRを測定するには、広告をクリックしたユーザーのうち、問い合わせや資料請求、契約などのコンバージョンに達した割合を測定します。クリック時に費用が発生する場合でも、CVRの改善によって連動してROASも高まるでしょう。

広告やクリエイティブのCVRを改善するには、LPのリニューアル、CTAの追加、入力フォームの簡素化などの施策があげられます。

リピート率の改善・向上を図る

リピート率を高めることで、売上アップにつながり、結果的にROASが向上します。パレートの法則では、上位顧客の20%が売上の80%を生み出すといわれています。リピート率を上げて売上のシェア率が高いお客様を獲得すると利益の増大に効果的です。

新規顧客の増加に取り組むより、既存顧客のリピート率の向上を目指したほうが短期的にも長期的にも売上に与えるインパクトは大きくなるでしょう。

お役立ち情報の配信やイベントの開催など関係性の構築につながる施策を行い、信頼関係を築くことが重要です。

顧客の購入単価を高める

顧客の購入単価を高めることもROASの改善・向上につながります。アップセル(上位プランへの変更)やクロスセル(関連商品の購入)で、一人あたりの購入単価の上昇を狙いましょう。

顧客単価が上がればROASの向上に直結する反面、単純に製品価格をあげると顧客の購買意欲を削ぐ可能性が高いです。関連商品の提案やまとめ買いによる割引の導入をはじめ、付加価値の提供を意識すると、アップセルやクロスセルの成功に結びつきます。

注力するチャネルを見直す

パフォーマンスの良いチャネルを明らかにして資源を重点的に配分すれば、ROASの向上・改善が期待できます。デジタルマーケティングにおけるお客様との接点は、リスティング広告やSNS、メールマガジン、ポータルサイトなど多種多様です。

チャネルごとに広告配信の費用やユーザー層が異なるため、注力領域を見直すと費用対効果が改善する場合があります。

具体的には、同じ広告を別々の媒体に出稿するABテストを実施してROASを見比べましょう。他と比べて数値が高いチャネルは、自社のブランドや商品との相性が良いと判断できます。

広告にかかるコストを削減する

広告費の削減は、ROASの改善・向上に即効性が期待できる施策の一つです。具体的には、掲載時間や場所、対象デバイスを見直し、効果が低い配信先の属性を除外するとROASの改善につながります。

たとえば、企業側がターゲットの設定が甘く、広告を見るユーザーのシチュエーションを十分に想定できていない場合、昼間に視聴するケースが多いのに夜に配信してしまうような状態が発生する場合もあります。

コンバージョン以前に広告のクリック率自体が良くない場合、訴求文やデザインなどクリエイティブの抜本的な変更を検討すべきかもしれません。

地道にPDCAサイクルを回す

効果の測定や検証、改善を繰り返して、広告の精度を高めることも重要です。いくら緻密に計画を練り上げても、初めから満足いく成果をあげるのは難しいでしょう。

定期的に広告の分析と改善を繰り返すことで、費用対効果の高い施策を特定し、精度を向上させられます。

PDCAサイクルでとくに重要な工程は、仮説の構築と検証です。広告の良し悪しを判断して改善につなげるには、検証可能な仮説を立てる必要があります。

また、配信先を増やしたり広告のクリエイティブを変更したりする際は現実的な目標値の設定が求められます。

定量的な数値目標を掲げ、数値を定期的に記録して一定の検証期間を設けることも大切です。地道な活動を積み重ねて繰り返しPDCAサイクルを回し続けることで、徐々に広告の効果を高められます。

顧客への理解を深める

顧客像を明確にして、お客様が抱える課題と自社ならではの価値を特定できれば、正確なターゲティングが可能となり、クリエイティブの改善も期待できます。その結果、売上の向上や、ROASの改善・向上につながるため、顧客理解の促進はROASの改善・向上に効果的な戦略です。

具体的なペルソナに向けて配信先を選別できるWeb広告では、明確なターゲティングが欠かせません。広告のCVRが良くないときは、自社のサービスを求める層に接触できていない可能性が高いと考えられます。

ROASを比較し、数値が高い広告のユーザー層を把握すれば、コンバージョンにつながるターゲットを高精度で特定できます。

また、コミュニティ運営を行うことで、顧客理解を深めたり、チャネルの一つとしてユーザーにアプローチしたりできます。

オンラインコミュニティは、ブランドや商品のファンが集う場を提供して、ロイヤル顧客の育成や顧客満足度の向上などを狙うマーケティング手法の一種です。

コミュニティの運営は、SNSの公式アカウントでは実現しにくい、双方向のコミュニケーションやコアなファンに対するヒアリング調査の実施にも適しています。ターゲティングに誤りがないか、注力するチャネルは間違っていないかなどの確認にも効果的です。

コミュニティ内で参加者に向けたプロモーションを実施して、効果測定をする使い方もおすすめです。将来のマス層への訴求を念頭に置き、反応が良いユーザー層を見つけられます。

オンラインコミュニティの構築は顧客理解の促進にとどまらず、顧客の声(Voice Of Customer)を活かした商品開発や、プロモーション戦略にも適しています。

coorum(コーラム)はコミュニティの形成にとどまらず、様々な顧客の本音を引き出す仕組みを構築でき、既存の顧客IDに紐付いたデータの分析・改善までできる多機能サービスです。

coorum communityではロイヤル顧客の心理や使用実態を調査することができます。また、coorum researchではリピーターや一般顧客に向けたアンケート等を実施することで、お客様の心理や使用実態を収集可能です。

顧客セグメント別に細かいデータ収集や分析が可能であることがcoorumの強みです。

VOCの定義や収集・分析方法については下記記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。

VOC(Voice of Customer)とは?収集・分析方法を解説

coorumでROASの改善・向上を図ろう

ROASは広告のパフォーマンスの良し悪しを判断して、資源を適切に配分するための重要な指標です。単体での分析にこだわらず、ROIやCVRなども合わせて総合的に数値をチェックしましょう。

coorum(コーラム)は顧客セグメントごとに、顧客の心理・使用実態を収集・把握し、既存の顧客行動データをIDで紐付け、それら全てをまとめて分析・改善案まで提供できるツールです。

熱心に利用を続けるコアなファンにはコミュニティ内のインタラクティブなコミュニケーションでインサイトを把握します。

一方で利用頻度が低い顧客や新規ユーザーにはアンケートを実施することで、購買行動に至る心理や利用実態を探ることができます。

顧客セグメントに応じて異なる手法を駆使することで、個々のお客様の状況を考慮した深いリサーチが可能です。

高精度の顧客分析機能を備えたcoorum(コーラム)を使えば、ROASの向上につながる施策の立案を期待できます。ROASの向上・改善にぜひcoorum(コーラム)をご活用ください。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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