ユーザーがつくるコンテンツでマーケティングを!UGC(User Generated Contents)について解説

2024-05-28 コラム

UGC(User Generated Contents)は、一般のユーザーが作成したコンテンツのことを言い、「ユーザー生成コンテンツ」と訳されます。商品やブランドに関する情報といえば、販売元の企業が自ら作成するのが一般的でしたが、スマートフォンの普及やSNSの流行により個人のユーザーが情報発信をしやすくなったことで、商品やブランドに関するUGCが増加しているのです。そこで注目されているのが、UGCを活用した新たなマーケティング。「UGC」は企業が一方的に配信する広告よりも信頼性が高い商品情報として認知されるようになってきています。今回はそんなUGCについて、重視される背景や活用メリット、活用事例などをご紹介します。

UGC(User Generated Contents)とは

冒頭でも述べたとおり、UGC(User Generated Contents)とはユーザー自身が制作・作成したコンテンツのことです。例えば次のようなものがUGCに該当します。

・TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSに投稿された写真やクチコミ

・ブログに掲載された商品やブランドを紹介するコンテンツ ・食べログなど口コミサイトに投稿されたレビュー

・YouTubeに投稿された商品レビュー動画

UGCは発信者が個人であるため、身近に感じやすく自分ごととして捉えやすいコンテンツであると言えます。また、企業が自ら発信する情報と異なり、発信することによって利益を得ない個人の意見であることがUGCの信頼につながっています。

UGCを活用したマーケティングに注目が集まっているのは最近のことですが、UGCという言葉自体は2000年代に既に存在していたと言われています。この頃は、一部のユーザーが食べログなどのグルメサイトでクチコミを見て予約する店を選んでいました。

その後、スマートフォンの普及と端末、Webサイト双方の機能改善が進む中で、高画質な写真を撮ったり、動画編集に気軽に取り組めるようになるなど、UGCの増加が進みました。この豊富なUGCを活用し、信頼される情報で商品やサービスの価値を高められないかという取り組みが、UGCマーケティングなのです。

UGCが重視される背景

では、なぜUGCは重視されるようになったのでしょうか。

UGCが購入判断に利用されている

マスメディアで発信する広告や、個々のユーザー向けにカスタマイズされて配信されるWeb広告など、これまでマーケティグの中心となってきた手法は、企業が消費者に伝えたい情報を一方的に発信するものでした。当然、企業が伝えたい情報が中心となるため、そこから消費者が想起する期待に沿う商品やサービスであるかは、使ってみなければわからない状況にありました。

一方のUGCは、消費者が実際に商品を利用した上で、その品質や機能、体験を発信するコンテンツです。実際のところは、発信した個人の好みや体質、生活習慣、収入などさまざまな要素が作用した上での感想になるため、一概に読み手が同じ体験を得られるわけではありませんが、利益を目的とする発信でないという点で信頼感を抱きやすい情報だと認識されるのです。また、発信者と共通点を見いだせる場合には、より親近感が湧くという面も考えられます。

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UGCを活用した広告配信に関する調査では、購入の前に商品のUGCをSNS上で探している人の割合が63%に昇っており、また生活者の32%の割合が一般の人が使用している様子を表現している広告のほうが購入しやすいと回答しています。 出典:Olapic『Facebook & Instagram Advertising With UGC : A Practitioner’s Guide』

購買行動の多様化

ネットショッピングの普及前には、商品を購入するには直接店舗に出向き購入するしかありませんでしたが、通信環境や決済サービスの充実、配送サービスの拡充などにより、ネットショッピングで商品を購入する機会が増加しています。特にコロナ禍においては外出を避けるためにネットショッピングの利用に拍車がかかりました。

しかしネットショッピングには、購入前に商品を手にとって確認することができないという課題があります。商品の質感やサイズ、そもそも粗悪品でないかなどはネットショップが自ら提供する商品情報だけでは安心できないという場合もあるでしょう。そこで役立つのがUGCです。実際に購入して使用したユーザーのクチコミを参考にすることで、不安を解消し購入を決断できます。ファッション系のネットショップでは、クチコミ投稿者の身長や普段の着用サイズの記載を促すことで、サイズの不一致に対する不安を解消しようとする取り組みも見られます。

このようにUGCは販促活動やマーケティングの一角を担うようになったのです。

サードパーティツールの規制によるターゲティング精度の低下

ユーザーの閲覧履歴や行動データを取得し、広告配信などに活用されているCookie(クッキー)という仕組みがありますが、個人情報保護の動きが強まるなかで規制が強化されています。

Cookieの活用例として、一度以上Webサイトに訪れたユーザーに対して繰り返し広告を配信するリターゲティング広告をご存知の方が多いのではないでしょうか。一般にリターゲティング広告はコンバージョン率が高く、広告単価を抑えやすいため、多くの企業が活用しているマーケティング手法です。

このCookieが利用できなくなることでターゲティングの精度が低下し、それに伴って売上やLTVが低下するのではないかとの懸念が挙がっています。そこでUGCを活用することで新規ユーザーの獲得率向上や、既存ユーザーの再購入を促進し補うことができないかと考えられているのです。

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またUGCは、企業の市場調査やユーザーアンケートのような働きも持ちます。ユーザーがどのように商品を活用しているのか、どんなところが好きなのかなど、ユーザーが発信しているからこそ汲み取れる情報が出る点にも注目です。

UGCを活用したマーケティングのメリット

コンテンツ作成費用がかからない

UGCはユーザー起点でコンテンツを制作・作成するためコンテンツの作成にかかるコストが必要ありません。UGCを上手く収集できれば、低コストで品質が高いコンテンツを多く得ることができるのです。マーケティング活動の効果検証にあたってはスムーズにPDCAを回すことが改善につながります。UGCはコンテンツの作成時間も短縮できる点も魅力です。

信頼性の高い情報をユーザーに届けられる

先述の調査結果では、商品の購入前にSNSでレビューやクチコミなどのUGCを探す人は63%に上りますが、これらのユーザーが求めている情報は、実際に使用したユーザーがどのように感じたのか、使用感をどのように捉えたのかという情報です。販売元企業ではなく、個人としての意見に信頼を感じていると捉えることができます。

どれだけ企業が上手にプロモーションをして、商品を良く魅せられたとしても、レビューやクチコミの評価が低い(つまりUGCの評価が低い)場合には、購買することは躊躇しますし、反対に良い評価があれば、購買意欲は高まります。つまり良いUGCを購入検討ユーザーにしっかり提示することが、ユーザーから信頼を得ることにつながるのです。

商品開発やキャンペーンに活かすことが出来る

UGCは、幅広いユーザーの生の声を集めることで、商品開発に活用できます。実際使ってみて、良かった点や改善点、要望を収集することで顧客起点で商品をより良く、ユーザーに寄り添った商品にしていくことができます。場合によっては企画時点では想定もしていなかったニーズや活用方法が見つかることもあるでしょう。

また、マーケティング活動においても有効に活用することができます。UGCは生活視点に寄り添ったコンテンツであるため、自社のマーケティング担当では作ることができなかった訴求や、斬新な伝え方をすることができ、それらを新たなメッセージとして打ち出していくことが可能になります。

UGCの活用事例

トヨタ・コニック・プロ

トヨタ自動車と電通グループ出資のマーケティング会社であるトヨタ・コニック・プロが始めたUGCの事例をご紹介します。

同社では熱量の高いロイヤル顧客とつながる接点をつくるために2021年6月に「みんなのトヨスタグラム」というページをトヨタ自動車の公式サイト上にオープンしました。 「みんなのトヨスタグラム」上には「#トヨスタグラム」というハッシュタグがついたInstagramの投稿をキュレーションしたUGCがまとまっています。

2022年3月にリリースした「みんなのトヨスタグラムstory」ではオーナーそれぞれの車との付き合い方を記事化するなど、 車のみのコンテンツではなく、”車を利用することにより体験できる風景”などのUGCが投稿されています。 この取り組みの開始以前には、#トヨスタグラムの投稿は月間300件でしたが、直近の投稿は2万件程度投稿されるようになっています。

このようにトヨタの情報に触れる接点・機会を増やすことで共感度向上を目指し、トヨタを好きでいてくれる人を増やす取り組みを行っています。

ローソン

ローソンも様々なキャンペーンを実施することでUGCを収集し、活用している会社の1つです。

例えば、「ローソンでほっとひといき Twitterキャンペーン」というものを実施し、#ローソンでほっとひといきというハッシュダグをつけてリツイートをしてもらうというものです。 実際の投稿を見てみると、ユーザーがどんな時にローソンを活用しているのか、スイーツと一緒に撮った写真を載せてどのスイーツが一番好きかなどの投稿がされています。

他にもバスチーズキャンペーンという、ユーザーが投稿したUGCがローソンのキャンペーンページに採用されるキャンペーンを実施しました。 そのキャンペーンにより多くのUGCを獲得することができ、普段どんな時に食べているのか、どんな食べ方をしているのかなどのコンテンツを多く集めることができました。

UGCを活用する時の注意点

商品企画やマーケティング活動と、幅広い活動が期待できるUGCですが、活用にあたって配慮が必要なことがあります。

著作権に配慮する

自社商品やブランドに言及するUGCであっても、企業が自ら作成したコンテンツではない以上、作成した本人にコンテンツの著作権が帰属します。そのため、UGCの活用にあたっては製作者の許諾を得た上で使用するのが原則になります。

ただし、モニター施策などで事前に二次活用の許諾を得ている場合は必ずしも都度許諾を得る必要はありませんので、法務担当などと協力しながら取り組みを進めると良いでしょう。

薬機法に配慮する

商品を紹介するLPや広告のなかで、ユーザーの声としてUGCを活用する場合は企業が発信するPRの一部としてみなされ、薬機法の規制の対象になります。化粧品やサプリメントなど医薬品でない商材の広告において、ユーザーの意見で合ったとしても効果効能を謳うことはできませんので注意が必要です。

ステルスマーケティングにならないよう配慮する

企業がインフルエンサーやモニターにUGCの投稿を依頼していながら、その旨を明示しないで投稿を行ってしまうとステルスマーケティングにあたります。インフルエンサーによる発信はマーケティング効果が高い一方で、ステルスマーケティングが発覚した場合にはユーザーが強い不信感を抱くことになってしまいますので注意が必要です。

依頼を受けるインフルエンサーやモニターのステルスマーケティングに対する意識が低く、悪意なく行ってしまうケースもあるため、依頼する企業担当者からPRの旨の明記方法について、具体的な依頼をしておくと安心です。

UGCの生成を促す手法

UGCの活用方法についてご紹介してきましたが、そもそもUGCが投稿されていなければ活用することはできません。ユーザーにUGCの生成を促す方法をご紹介します。

ファンや既存顧客とコミュニケーションを取る

店頭での接客や、ネットショッピングの同梱物、メルマガ、SNS上でのコミュニケーションなど、既存顧客との接点が持てるタイミングを活用してUGCの生成を促しましょう。レビュー投稿の依頼文を添えたり、SNS用のハッシュタグや撮影スポットを設けるなどの工夫を行うことで、少しずつUGCは増えていきます。

また、生成されたUGCに対してリアクションを返していくことも必要です。例えばSNSで自社商品に関するコメントを見つけて丁寧な返信をすることで、返信を受けたユーザーは更に愛着が高まったり、それを見た他のユーザーにも投稿しようという意欲を与えることができます。

ハッシュタグキャンペーン

短期間で多くのUGCを生み出すには、ハッシュタグをつけて投稿してくれたユーザーの中から抽選でプレゼントを提供するなどのキャンペーンが有効です。キャンペーンの設計にあたっては、プレゼントなどのインセンティブをつけたり、不快な思いをするユーザーが出ないないよう配慮するなど、良いイメージのまま多数のユーザーに参加してもらえるよう工夫が必要です。

また特定のSNSを利用する場合が多く、SNSの特性やツールの使用方法についても知識が必要になります。

インフルエンサー施策

SNSで影響力を持つインフルエンサーに商品を使用した感想や写真などを投稿してもらうという手もあります。人気のあるインフルエンサーであれば、ファンから多数のリアクションが得られることが想定されます。

先述の通り、ステルスマーケティングにならないよう配慮が必要な点に加え、短期間での投稿のしすぎや複数のインスタグラマーに同時に依頼することで、かえって効果が下がってしまうことも考えられますので、配慮が必要です。

コミュニティサイトを運営する

商品やブランドファンが集う場を企業が提供する仕組みがコミュニティサイトです。その商品やブランドのファンのみが集まるため、SNSよりも自由な発言ができる点や、企業と直接コミュニケーションが取れる点がコアなファンに好まれています。

ファンコミュニティの意味とは?導入事例やメリットなどもあわせて解説

コミュニティサイトでは企業からの発信でUGCを募ることができるほか、SNSに比べUGCを見落としにくいというメリットもあります。一方でユーザー数が少なすぎる場合や、動きが少ないコミュニティサイトにはファンが集まらなくなってしまうので、企業が積極的に運営に関わっていく必要があります。

まとめ

今回はユーザー起点で作られるコンテンツ、UGCについて紹介しました。UGCは企業起点のプロモーションと違い、信頼でき共感を得やすいコンテンツであるため、うまく活用することができれば、新たなマーケティング施策になり得ます。

個人の声を発信しやすくなった昨今では、ユーザーはUGCを参考にすることが増えてきました。今後もその流れは変わらず、むしろその価値はますます高くなると考えられます。

新規顧客の獲得や、既存顧客のロイヤル化など企業が抱えている課題にアプローチできる可能性を秘めたUGC。企業の重要な資産の一つと捉え、その数と質を高めてながらマーケティング活動に取り入れてみてはいかがでしょうか。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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