CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは?顧客体験による感情的価値に注目して改善を。CX向上のメリットとその方法

2023-04-27 コラム

CX(カスタマー・エクスペリエンス)は、商品の購入だけでなく購入前後を含めた商品にまつわる顧客の体験のことをいいます。顧客がどのような感情的価値を抱いているのかに注目し、分析や改善を行うことでCXの向上を図ることができます。今回はCXとUXの違いや、CX向上によるメリット、改善方法や取り組み事例をご紹介します。

CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは

CX(カスタマー・エクスペリエンス)は商品やサービスを購入し、使用、購入後に必要なフォローアップまでの過程における体験にフォーカスを当てるマーケティング手法です。良い体験を提供するだけでなく、「商品やブランドに対しどのような感情を抱いているのか」という顧客の感情に注目して施策や改善を行うのが特徴です。

製造技術の発展に伴い、商品そのものの価値だけでは他社との差別化が難しくなっている現状を踏まえ、商品の価値に加えて「感情的な価値」を提供し、差別化を図ろうという狙いがあります。

なお日本語では「顧客経験価値」「顧客体験価値」と表現されます。

UXとの違い

UX(ユーザー・エクスペリエンス)は商品やサービスを利用した、そのときに得られる顧客の体験のことを指します。つまりCXが購入からアフタフォローまで含めた体験価値を指すのに対し、商品やサービスを使用する一点に着目するのがUXであるという違いがあるのです。

また、UXでは単一の商品やサービスに着目するため、デザイナーやエンジニアなど商品やサービスそのものに携わっているスタッフと連携することで改善に取り組めますが、CXは関連するフローが多いため、デザイナーやエンジニアはもちろん、販売スタッフやコールセンターのスタッフ、外部のリソースを利用する場合が多い流通に至るまで幅広い視点が求められます。

いち商品の域を超え、経営戦略や顧客戦略にも影響を与えるため、CX対策に取り組む専任のチームを設けたり、外部のコンサルティング会社のサポートを受けたりして、慎重に取り組むべきでしょう。

CXが重要な理由

発売当初には機能面やデザイン面で価値が高かった商品であっても、市場競争が進むうちに追従する商品との差別化された価値が目立たなくなり一般的な商品と認知されるようになってしまいます。そのような商材において顧客が特定の商品を贔屓にする要因となるのは、商品に関連する体験価値です。

お気に入りのブランドから自分自身が認知され、自分に向けた情報発信や商品開発が行われることで、よりブランドへの愛着を高めることになります。企業がCXの向上を目指した取り組みを行えば、顧客は良い体験を得て、更にブランドへの愛着を高めるという好循環を生むことができるのです。

CXを向上させる体験を提供するためには、ブランドのどこに価値を感じているのか、商品をどのように使用しているのかなど顧客を深く理解しなければなりません。顧客を正しく理解し、顧客とのコミュニケーションを取ることでCXを高め、売上の向上につなげることができます。

CX向上のメリット

CXが向上すると次のようなメリットがあります。

ファンが増え、LTVが向上する

顧客が商品に関連する良い体験をし、CXが向上することで「またこの商品を使いたい」という思いを持つファンを増やすことができます。商品やブランドに愛着を持つファンは、一度商品を購入したあとも、繰り返し購入してくれる傾向にあります。また、気に入った商品を繰り返し購入するだけでなく、アップセルやクロスセルに繋がる可能性も高いため、LTV(Life Time Value)が高く、安定した収益の基盤となってくれます。

UGC(クチコミ)により認知が拡大する

良いCXを体験したファンは、その体験を友人や知人に話したり、SNSやレビューサイトに投稿するなど自ら進んでUGC(クチコミやレビュー)の投稿を行ってくれるようになります。ファンが発信するUGCは、顧客個人の感想でありその投稿によって収益を得ることがないため、企業が自ら発する情報に比べ信頼性が高いと感じる顧客が多い傾向にあります。

また信頼性の高いUGCが潜在顧客の目に触れることで、広告費をかけずともプロモーション効果が期待できる点もメリットといえるでしょう。UGCを収集し、顧客の声として紹介したり、商品開発やデザインの参考にすることもできます。

ブランディングできる

CXはECサイトや企業が公開するコンテンツ、店舗での接客、カスタマーサポートの対応など、商品購入のプロセス全般に及ぶため、CX向上を目指した分析や改善に取り組むことで顧客のロイヤリティを高めることができます。

良いCXを追求することはファンを増やし、ファンが発信するUGCは潜在顧客へのプロモーションとなり、新たなファンを生むという好循環につながります。こうしてブランドとしての認知や高感度が高まります。

一方で悪いCXは、その体験をした顧客が離れるだけでなく、悪い評判を生み、利用したことがない顧客にまで悪いイメージが広がってしまう可能性もあります。CXに真摯に向き合うことがブランドの価値向上につながるのです。

CXを向上させる方法

実際にCXを向上させるための方法をご紹介します。

顧客理解を深める

良いCXを提供するためには、自社のロイヤル顧客がどのような人で、どのような体験を好むのか、商品のどんなところを気に入っているのかを正しく理解する必要があります。そこで取り組みたいのが「ひとりのロイヤル顧客」に焦点を当てて、アンケートやインタビューを行う顧客起点マーケティングの考え方です。日頃から商品を愛用し、繰り返し利用してくれている顧客の声を聞き理解することで、求められているCXはどのようなものか理解できることでしょう。

アンケートやインタビューに協力してくれるロイヤル顧客を見つけるためには、日頃から顧客と接点を持つことが重要です。SNSやレビューサイトなどで自由に発信する顧客にコンタクトを取ることもできますが、自社のロイヤル顧客が集うファンコミュニティを自ら運営するという手もあります。ファンコミュニティは顧客との接点が持てるだけでなく、UGCの生成を促したり、イベントなどを実施することで既存顧客のロイヤリティをより高めることもできます。

KPIを設計し改善する

CXの改善にあたっては、具体的な数値目標(KPI)の策定が必要です。CX改善は、商品購入のプロセス全般が対象になるため、関連部署が多く明確な目標を定めて取り組まなければ、進むべき道がわからなくなってしまうことも起こり得るためです。

しかしCXは顧客の感情的価値を含む概念です。感情を数値で評価するのは難しく効果検証がしづらいという面もあるでしょう。売上目標やWebサイトへのアクセス数、NPS、購入率など、数値化できるKPIを細かく設定し、ひとつずつ取り組みを進めていくことが成果につながります。

CXを向上させた事例

CX向上につながる施策を行っている企業を3社ご紹介します。

エポスカード

エポスカードは、「好きを応援するカード」をコンセプトに様々なアニメやゲーム・キャラクター等のコンテンツとコラボしたクレジットカードを発行しています。CXの向上を目指しファンコミュニティを立ち上げました。

ファンコミュニティにはキャラクターカードの所有者が集い、顧客が投稿を行ったり、他者の投稿にいいねをつけるなど、クレジットカードの利用シーンにとどまらない顧客体験を提供しています。

ファンコミュニティ内では、ログインや投稿に対するいいねなどのアクションによってポイントが付与され、顧客ランクが上がっていく仕組みをとっており、顧客ロイヤリティの向上に貢献しています。

b8ta Japan

b8ta Japanは「発見と体験と提供するストア」として、スタートアップ企業の商品や他の店では見かけない革新的な商品など幅広い商品を取り扱っています。b8taのストアには複数のブランドが出品しており、顧客が商品と出会い体験する場として利用されています。

顧客に良質な体験を提供するだけでなく、ストア内の定量・定性データがブランドに提供される仕組みで、各ブランドのCX向上施策にも活きるストアになっています。

エノテカ

ワインの輸入販売を行うエノテカでは、全国に60店舗以上のワインショップを構え、質の高い接客ができるようさまざまな取り組みを進めています。その一方で、ECサイトでの購入体験の向上にも力を入れており、購入環境を問わず好みのワインに出会えるよう工夫がなされています。

ワインは詳しい人でなければ自分に合ったものを選ぶのは難しい趣向性の高い商品ですが、オンラインでも自分の好みに近いワインを見つけられるような機能が充実しています。具体的には購入したワインを記録し好みを可視化できる「マイワイン」や購入傾向をレポート表示する「パーソナルレポート」など店頭でスタッフがヒアリングする情報がアプリに集約され、オンラインショップでの購入の際に参考にできる仕組みです。

おわりに

顧客の感情的価値を指すCXについてご紹介しました。購入前の情報収集から、使用時、アフターサポートまで商品に関する全ての体験に目を向けるCXは、向上に向けて取り組むことで顧客ロイヤリティを高めリピーターを増やすことにつながります。CXの改善においては、ロイヤル顧客を深く知り、コミュニケーションを取ることが有効に働きます。その方法のひとつとしてブランドとしてファンコミュニティを持つのも有益な手となるでしょう。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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