
売上を伸ばし、企業を成長させるにはロイヤルカスタマー戦略が必要です。LTVの向上に貢献するロイヤルカスタマーの育成により、企業経営の安定化を図れます。
本記事ではロイヤルカスタマー戦略の重要性や実施方法、成功させるポイントなどをご紹介します。
ロイヤルカスタマー戦略とは
企業が長期的に売上を伸ばしていくには、企業や商品・サービスのファンとして定着してくれるロイヤルカスタマーの存在が重要です。そのため、ロイヤルカスタマーを獲得するための戦略を重視する企業が増えています。
ここでは、ロイヤルカスタマーとは何かを説明し、ロイヤルカスタマー戦略を行う重要性について解説します。
そもそもロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマー(Loyal Customer)とは、企業や商品・サービスに対して忠誠心が高い顧客という意味です。
競合他社を利用することなく、自社ブランドや商品・サービスに対して愛着と信頼を持ち、継続的に購入・利用してくれる顧客を指します。ロイヤルカスタマーの存在で安定した収益が期待できるため、企業にとって非常に大切な顧客です。
ロイヤルカスタマーは優良顧客とは異なります。優良顧客とは商品・サービスの購入・利用頻度が高く、購買金額が大きい顧客であり、自社に多くの利益をもたらす存在という点ではロイヤルカスタマーと変わりません。
しかし、ロイヤルカスタマーには購入・利用の動機に愛着心や信頼があるのに対し、優良顧客には必ずしもそのような動機があるとは限りません。近くに店舗があった、お店で見かけたといった偶発的な要因で選んでいる可能性もあります。そのため、競合他社に魅力を感じれば、すぐに移行することも考えられます。
これに対し、企業や商品・サービスに愛着心や信頼を持つロイヤルカスタマーは、めったなことでは他社に乗り換えることがありません。
ロイヤルカスタマー戦略の重要性
ロイヤルカスタマー戦略はロイヤルカスタマーを育成し、計画的に増やしていく戦略です。ロイヤルカスタマーの獲得は新規顧客を獲得するためのコストを抑えるなど多くのメリットがあり、その重要性は大きいものがあります。
いくつかのメリットをみてみましょう。
新規顧客獲得のコストを抑える
自社の商品・サービスに対する愛着・信頼度が高いロイヤルカスタマーが増えれば、新規顧客を獲得するコストを抑えられます。新規顧客を獲得するには既存顧客を維持するよりも多くのコストがかかり、効果的なロイヤルカスタマー戦略により全体のコスト削減が可能です。
顧客獲得のコストパフォーマンスに関しては「1:5の法則」と「5:25の法則」という考えがあります。「1:5の法則」とは、新規顧客の獲得よりも既存顧客の獲得にかかるコストは5分の1で済むという法則です。「5:25の法則」とは、解約など顧客離れを5%改善することで、利益が25%改善するという法則になります。
この法則により、新規顧客の獲得よりも、既存顧客の維持に注力した方が、より効率的に事業を成長させることができることがわかります。とりわけロイヤリティの高いロイヤルカスタマーの育成は、その効果が高いといえるでしょう。
多くのロイヤルカスタマーはリピーター購入する傾向にあるため、顧客生涯価値(LTV・顧客1人が生涯にもたらす利益)の上昇にも貢献します。
口コミによる宣伝効果がある
商品やサービスもしくは企業のファンであるロイヤルカスタマーは、その魅力を周囲にも積極的に広めてくれます。口コミにより積極的に情報を発信してくれる可能性もあるでしょう。
SNSやブログ、動画投稿サイトにおける動画など、ユーザー制作のコンテンツ(UGC)による情報拡散も期待できます。
宣伝効果により、多額のコストをかけずに新規顧客の獲得が期待できるのもメリットです。企業が宣伝する広告よりも、同じ消費者の称賛は信頼されやすい傾向があります。そのため、ロイヤルカスタマーの情報発信は高い広告費を使うより強いアピール効果があるでしょう。
良質なフィードバックを得られる
ロイヤルカスタマーは商品やサービスに愛着を持ち、一般的な消費者よりも高い熱量で利用しているため、良質なフィードバックを得られる可能性があります。開発や改善などに活かすことができ、より良い商品・サービスへと変えていくことができるでしょう。
企業では考えつかなかった着想を得られる可能性もあります。新たな商品開発やサービス向上に貢献するでしょう。使用した感想などのデータを蓄積することで、マーケティング活動に利用できるのもメリットです。
収益が安定する
ロイヤルカスタマーは容易なことでは他社に乗り換えることがなく、長期にわたって継続した利用を見込めます。そのため、末長く安定収益を期待できるのもメリットです。将来的な収益の見込みがわかり、経営計画も立てやすくなります。
また、ロイヤルカスタマーの獲得・維持は低価格戦略から脱却できるのもメリットです。優良顧客の獲得には低価格戦略も重要な施策ですが、長期にわたると企業の負担は大きくなります。価格の安さを重視しないロイヤルカスタマーが増えることで、低価格戦略の必要も少なくなるでしょう。
ロイヤルカスタマー戦略で行うこと
ロイヤルカスタマー戦略は、手順に沿って計画的に行う必要があります。
主な手順は、以下のとおりです。
- ロイヤルカスタマーを明確にする
- カスタマージャーニーマップを作る
- 効果測定と分析を行う
まず、自社にとってどのような顧客をロイヤルカスタマーとするかを明確にすることから始めます。次に、カスタマージャーニーマップを作成し、顧客との接点を洗い出します。
具体的な手順をみていきましょう。
自社のロイヤルカスタマーを明確にする
ロイヤルカスタマー戦略では、まずどのような顧客をロイヤルカスタマーとするのかターゲットを明確にします。年代や性別、地域などを限定し、商品・サービスの何に興味を持っているかなど顧客分析を細かく行い、ロイヤルカスタマーを定義します。
明確化の基準は企業によってさまざまです。利用頻度や購入価格のほか、キャンペーンへの応募率やメールマガジンの開封率、口コミの有無など、対象となる商品やサービスの内容によって変わります。
ロイヤルカスタマーを明確にしたら、顧客の何割をロイヤルカスタマーにするか、どの部分を改善するかなどの目標を設定します。
カスタマージャーニーマップを作る
ロイヤルカスタマーを明確にしたら、カスタマージャーニーマップを作成します。カスタマージャーニーマップとは、見込み客から商品・サービスの購入、既存顧客になるまでの一連のプロセスを図式化したものです。
カスタマージャーニーマップは、以下の手順で作成します。
- ターゲットとなる顧客(ペルソナ)を設定する
- ペルソナの行動を可視化する
- フレームワークを決定する
カスタマージャーニーマップの作成により顧客との接点を洗い出し、接点ごとにどのようなコミュニケーションを取れば顧客ロイヤルティが向上するのか仮説を立て、施策を実施します。
作成していくなかで顧客が興味を持つポイントや離れていく原因なども見えてくるでしょう。
ロイヤルカスタマーの育成には、顧客との接点を増やすことが大切です。十分な接触があるかもカスタマージャーニーマップで確認しておきましょう。
効果測定と分析を行う
施策の効果測定と分析も欠かせません。来客頻度や購入回数、購入金額などを定期的に確認して効果を測定し、分析して改善点を探します。
これまで定期的に利用していた顧客が購入をストップするなど変化がある場合、原因を明らかにしなければなりません。原因が商品やサービスにある場合、できるだけ早く原因を見つけて対策が必要です。
現状の顧客ロイヤリティを分析する方法
ロイヤルカスタマー戦略では現状の顧客ロイヤリティを測り、分析していくことが必要です。顧客ロイヤリティとは顧客が企業や商品・サービスに対して愛着や信頼を持つということで、さまざまな指標で計測できます。自社が測る指標を決め、現状の顧客ロイヤリティを検証していきましょう。
ここでは、顧客ロイヤリティを測る指標を3つご紹介します。
NPS
NPSとは、顧客が商品・サービスに抱いている愛着や信頼の度合いを数値化する指標です。「この商品・サービスを友人や知人にすすめたいと思いますか?」というアンケートを行い、0〜10の11段階で評価してもらいます。点数が高いほど顧客ロイヤリティが高いと判断できるという方法です。
回答により、顧客は「推奨者」「中立者」「批判者」という3つのタイプに分類できます。9~10点を付けた顧客が「推奨者」、7~8点が「中立者」、0~6点は「批判者」と分類しましょう。
全体に占める推奨者の割合から、批判者の割合を引いで出てきた数値がNPSの数値です。正確な数値を求めるには400以上のサンプルをとることが理想的で、2000サンプル以上であれば誤差が少なくなります。
推奨者が多く、批判者が少ないほどスコアが上がり、顧客ロイヤリティが高いということです。アンケートでは回答理由も合わせて質問することで、商品・サービスを愛用している背景も確認できます。
LTV
LTV(Life Time Value)とは「顧客生涯価値」のことで、顧客が生涯で商品・サービスを継続的に利用することで企業が得られる総利益です。既存の顧客に継続して商品・サービスを購入・利用し続けてもらうことにより、LTVが高まります。
LTVを向上させることで、新規顧客を獲得するコストを抑えながら効率的に利益を上げられます。LTVの計測では、主に利用期間や頻度、金額など行動面の数値を把握できるのが特徴です。
LTVの計算はいくつかありますが、主に顧客の平均値でLTVを割り出す計算で求められます。計算式は「1回の平均購買単価×収益率×購買頻度×継続購買期間」です。
顧客ロイヤリティの高い顧客ほど生涯でもたらす利益が多く、LTVが大きくなります。
RFM
RFMとは、Recency(直近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入総額)の3つの指標により、顧客を分類する手法です。分類したそれぞれのグループに適したマーケティング施策を行うことで、LTVの最大化を目指します。
各指標の特徴と効果は、以下のとおりです。
Recency(直近の購入日) | ・顧客がアクティブかどうかを把握する直近に購入した顧客の方が、購入から数年経っている顧客よりも優良顧客と判断できる |
Frequency(購入頻度) | ・自社商品・サービスの継続利用を把握する・常連顧客の洗い出しができ、購入回数が多い顧客を優良顧客と判断できる |
Monetary(購入総額) | ・自社の売上に貢献する顧客を可視化できる・購入総額が多い顧客を良い顧客と優良顧客と判断できる |
3つの指標で分析することで、以下の顧客を以下の3つに分類できます。
- 優良顧客:高頻度で高額商品を最近買ってくれた顧客
- 新規顧客:新規で商品・サービスを購入した顧客
- 休眠顧客.:しばらく商品・サービスの購入履歴のない顧客
RFMでは、顧客を分類することができますが、顧客の購入・利用動機まではわかりません。ほかの分析手法と組合わせることで顧客ロイヤリティの高さを知り、精度の高い分析ができます。
ロイヤルカスタマー戦略の分析に役立つツール
ロイヤルカスタマー戦略では、分析やロイヤルカスタマーを増やすためにツール海苔用が効果的です。
顧客との関係性を管理するCRMや、長期的な関係構築に役立つMAなどがあげられます。また、コミュニティ運営の基盤を構築し、顧客ロイヤリティを高めるツールもロイヤルカスタマーを増やすために役立つツールです。
ロイヤルカスタマー戦略の分析に役立つ3つのツールをご紹介します。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
CRM(Customer Relationship Managementz)は顧客との関係性を管理するツールです。顧客との情報管理が主な機能で、顧客の氏名や所属企業、役職、部署などのあらゆる顧客情報を一元化し、それぞれに適切なアクションをするために役立ちます。
CRMは、履歴データとして顧客に関する情報を蓄積することで、多様化している顧客ニーズの把握に貢献するツールです。データを分析・活用しながら顧客との関係性を維持し、最適なコミュニケーションを実現します。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(Marketing Automation)とは、顧客と長期的な関係を構築するためのツールです。マーケティング活動をデータに基づき自動化できます。見込み顧客を可視化でき、マーケティング業務の効率化が可能です。
インターネットの普及で膨大な量の情報に接する顧客に対して確実にメッセージを届け、一人ひとりと長期的な関係を構築するために役立ちます。
コミュニティ運営ツール
コミュニティ運営の基盤を構築するツールは、顧客ロイヤリティを醸成し、ロイヤルカスタマーを増やすツールとしてロイヤルカスタマー戦略に貢献します。
顧客ロイヤリティを高めるにはコミュニティの運営が効果的であり、ツールによりコミュニティ運営を実施する基盤を効率的に構築できるのがメリットです。
コミュニティの運営は、カスタマージャーニーマップを作成する際のペルソナ設定にも役立ちます。顧客と近い関係になることで、より明確なロイヤルカスタマーの輪郭を捉えることができます。
coorum(コーラム)では、コミュニティを活用したロイヤルカスタマーの育成が可能です。初期立ち上げではロイヤルカスタマーのペルソナを具体化し、コミュニティの核となる顧客を選定します。
コミュニティ運営では、ロイヤリティ向上のための分析・改善もできます。ロイヤルカスタマーの育成・蓄積・分析のサイクルを回し、コミュニティを活性化させながらロイヤルカスタマー戦略の効果的な推進をサポートするツールです。

ロイヤルカスタマー戦略を成功させるポイント
ロイヤルカスタマー戦略を成功させるには、いくつかのポイントがあります。顧客との接点を増やし、コミュニケーションを継続させることが必要です。定期的に情報を発信しつつ、ロイヤルカスタマー限定の商品・サービスを用意するなど特別感を与えることも大切です。
ここでは、ロイヤルカスタマー戦略を成功させる3つのポイントをご紹介します。
顧客とのコミュニケーションを継続する
自社の商品・サービスに愛着や信頼を持ってもらうためには、顧客との接点を増やし、継続的にコミュニケーションを取ることが大切です。接点を増やせば、商品・サービスの利用で気になったこと、相談したいことが出たとき、すぐにアクションを起こすことができます。
また、顧客はスタッフと実際にやり取りをする体験を通し、企業や商品・サービスへの親しみや愛着を持ちやすくなります。接点を増やすには、SNSやメールマガジン、LINEアプリなどを活用していくとよいでしょう。
定期的に情報を発信する
顧客との接点を増やしたら、顧客のニーズに合わせた情報を定期に発信していくことが大切です。このとき、ただ新商品の情報を発信するだけでは他社との差別化ができません。
商品のこだわりや開発の背景など、自社独自の情報を発信することで企業や商品・サービスへのロイヤリティにつながります。
また、お客様の声やQ&Aなどを通し、顧客の疑問・不安を解消する情報発信も必要です。積極的に顧客をサポートする姿勢が、信頼の獲得につながるでしょう。
特別感を与える
ロイヤルカスタマーの育成には、ロイヤルカスタマー限定の商品・サービスを用意するなど、一般顧客との差別化を図り特別感を与えるロイヤリティプログラムの施策も必要です。
ロイヤリティプログラムは顧客と企業の結びつきを強める効果が期待でき、顧客のファン度を測ることも可能です。
施策の一例として、以下のものがあげられます。
- 会員制度を設け、ランクごとに特典を与える
- 誕生月にプレゼントを贈る
- 新商品の先行販売を行う
- 会員限定商品を販売する
- 限定メルマガで情報を提供する
- ロイヤルカスタマーの声を反映した商品・サービスを企画する
- ロイヤルカスタマーのみが参加できるコミュニティサイトを作る
ロイヤリティプログラムは自社の利益に貢献している顧客を優遇するという企業姿勢を伝えることができ、企業に対する信頼を高める効果も期待できます。
顧客に特別感を与えることで、高いロイヤリティを醸成できるでしょう。
ロイヤルティプログラムを設ける際は、単なる割引や特典の付与ではなく、良質な顧客体験を提供するという観点が必要です。何を提供すれば顧客特別感を与えるかは、扱う商品・サービスによって異なるため、十分検討するとよいでしょう。
ロイヤルカスタマー戦略で顧客ロイヤリティを高めよう
ロイヤルカスタマー戦略でロイヤルカスタマーを育成することで新規顧客獲得のコストを削減し、収益の安定化を図れます。口コミなどによる宣伝効果も期待できるでしょう。ロイヤルカスタマー戦略を成功させるには、ターゲットの明確化などの手順を踏み、顧客との接点を増やすなどの施策が必要です。
ロイヤルカスタマー戦略の実施には、ツールの活用も役立ちます。コミュニティ運営の構築をサポートするcoorum(コーラム)は顧客ロイヤリティを醸成し、ロイヤルカスタマーの育成に貢献します。ぜひご活用ください。