モバイル向けアプリ/Webのアナリティクス・マーケティングツール「Repro(リプロ)」の提供を行う、株式会社Repro。定量・定性分析による課題発見だけでなく、ユーザー行動に基づいた課題解決提案までを行うことで、世の中のプロダクトとユーザーを繋げ、共創する社会を作っていく。
その中で重要な考え方となるCS(カスタマーサクセス)チームを0から立ち上げ、現在は「Repro Singapore PTE. LTD」のCEOを務める、佐々木翼さんにお話を伺ってきました。
佐々木 翼氏
twitter:@tsubasasa2
Repro株式会社 CCO
2017年にReproへ入社しCSの立ち上げを行う。現在はReproにてCS、BizDevを兼任し組織の軟骨的な立ち回りで奮闘中。また、ペットテックを推進するdotD社で兼業CMOとして自らアプリのグロースハックに奮闘し生きたノウハウをReproにフィードバック中。
ーまずは、佐々木さんのこれまでのキャリアについて教えて下さい。
僕がビジネスに触れたのは、大学生の時に事業を始めたところからです。その時は事業をやりつつ、マーケティングに興味があったので、マーケティングの会社でインターンをやっていました。その後、新卒でシナジーマーケティングに入って、そこでBtoBのSaaS企業に必要な一連のビジネスサイドを全て経験出来たことが僕のキャリアの基礎ですね。
その後、仕事をする中で自分が成長しないと成果を出せないと思い、個人事業でプロダクトやサービスの01を模索しましたが、あまり上手くいかなかったので辞めました。そこから、もう一回修行し直したいなと思い、Reproに転職しました。
その時のReproは従業員数30名ぐらいで、CSはほぼ未着手状態。CSの立ち上げが入社後のミッションでしたが、CSはその時が初めてでした。ただ、前職でプロダクトマネージャーを務めていたため、汎用させ立ち上げは比較的スムーズでした。その後、チーム立ち上げ1年後のタイミングでCCOになり、現在は、グローバルにアサインされてシンガポールの支社立ち上げをやっています。
解約されるところしかない状態がスタートライン
ーCSチームの立ち上げは、どこから着手されたのでしょうか。
まずは、クライアントに会いにいくところから着手しました。何故かというと顧客の気持ちが何も分からなかったのです。乱暴な言い方をすると物やサービスは、極論、売ろうと思えば何でも売れるのですが、それを使って「結果を出す」となると、なかなか難しいです。そのため「何故使えないのか」を知る必要がありました。その当時、約70社の顧客がいましたが、4名ほどのメンバーで全企業に話を聞きにいきました。そうすると「最初から使っていないよ」と、正直な声を聞けました。(笑)
顧客の声を集約した「使って貰えない理由」は、オンボーディングができていないことでした。まずはオンボーディングが最初のミッションとなりました。
―Reproはデータドリブンマーケティングが得意だと思いますが、オンボーディングの段階で気を付けていることはありますか?
すごくシンプルです。最初に着手したのは、継続利用してくれている顧客の行動傾向を洗い出して、その人がどの機能をどのタイミングで使っているのかを分析しました。行動傾向をドキュメントに落としてオンボーディングのタイミングで使えるようにしてあげることを意識すると、機能毎のリテンションのしやすさやコンバージョンのしやすさ等も見えて来ました。
―佐々木さんから見るCSとは?
僕は、事業の中にはプロダクトとカスタマーしか存在しないと思っているので、その間のマーケティングもセールスもCSも手段だと思っています。その上で、CSがマーケティングやセールスと異なるのは、よりコアな部分に入っていけるところだと思っています。コアに入れるからこそ、キャッチアップしなくてはいけないものがあまりに多過ぎて、難しい職種だとは思いますが、キャリアアップ出来る職種だと思います。
ただ、CSをわかりやすくナレッジばかり語る状態に市場がなってしまうとただの手段に落ちてしまうので、考え方に昇華されていくのか、手段になってしまうのかというところは今後向き合っていかなくてはいけないところだなと思っています。
カスタマーかプロダクトかどちらかの文脈からCSを語るようにならないと、CSの未来は厳しいなという感じがしますね。
データドリブンのReproが大切にする、定量では測れないもの
―現在の業務であるシンガポール支社の立ち上げはCSと内容がまた大きく変わられたと思いますが、こちらは何から着手されたのでしょうか。
僕がチーム内でも話していることに「ブラザーをたくさん作ろう」というものがあります。「ブラザー」=「仲間」ですね。何かあった時に無償でも助けたいと思えるし、助けてくれるだろうという人のことです。支社立ち上げの時も、まずは仲間を沢山作るところから始めました。全く定量的ではないですが、大事ですね。
ーブラザーはどうやったら作れるのでしょうか。
自分の困っていることを相手の状態も含めて、包み隠さず全部言うことです。そうすれば、この人信用出来ない、信頼に値しないということにはならないので、大体助けてくれます。ベースは正直に全部話すことです。会社と会社ではなくて、人と人。そういう状態で常にいるというのが良いかなと思います。たまに嫌われることもあると思いますが、八方美人が1番ダメだと思います。
常に前に進むからこそ見えるもの
―CSもシンガポール支社立ち上げもどちらも0ベースのチャレンジだと思いますが、佐々木さんがここまで突き動かされる原動力は何でしょうか。
元々、成長軸でReproに入っているので、ここでチャレンジしないと絶対後悔するという想いと、1つ1つの試練を突破すれば成長出来るだろうという成長欲求ですね。
特に我々の業界って、少しスピードを緩めると埋もれたりするじゃないですか。それが怖いです。なので、常に成長していたいというか、失敗してもいいから常に前に進んでいかないと不要な人材にすぐなってしまうと思うので、自分が一生生きて行くスキルのために頑張っています。
ー現在のスキルでも十分生きていけそうに見えますが。
そうですね、生きてはいけますね。でも、僕はやりたいことが2つあって、1つ目は自分のコントロール出来る範囲を増やしたいのです。
コントローラブルな部分が増えていくと自分が理想とする世界とか社会があった時に、まずは自分がコントロール出来る範囲からでも変えられるじゃないですか。1人よりも2人の方が遠い未来に行けるのと一緒で、自分でコントロール出来る範囲をたくさん作っておいて、色々なことをやっていきたいなと思っています。
こう思うのは僕の子どもの頃の原体験があって、結構アンコートローラブルな領域が多かったのが辛かったですね。分かりやすい例で言うとお金です。留学に行きたいとしても、お金がない/借りられもしないとなると選択肢が1個減るのですよ。他にも、僕は岡山の田舎の出身なので、高校選択でも近くの高校か少し遠くの高校の二択で、選択肢があまりにも少ないというのに後で気が付きました。
選択肢が見えるというのは1つのスキルなのかもしれないですね。若干、決めの問題でもありますが、決めて行動すると選択肢が出てきます。過去を振り返った時に、選択肢がこれだけしかなかったなと思うのか、あの時たくさんの選択肢の中からこれを選んで良かったと思えるのかで人生の濃さが全然違ってくるなと思います。だから、選択肢を限りなく増やせる状態を作るのが、僕もそうですし、僕のチームとしても直近でやりたいことですね。
2つ目は、国同士の制限を突破する為の会社という枠組みを作っていきたいというのがあります。日本ではあまり感じることはないかもしれないですが、ルールが国によって制限されているので、例えば、フィリピンの若い子が海外で働こうと思ったら、その制限をすごくたくさん突破しなくちゃいけないです。そういうのを突破出来る1つの手段が、今の資本主義の社会だと会社です。僕は、その会社というものが次のコミュニティ経済圏との繋がりを作る1つのポイントになってくるかなと思っています。
―それは、今の支社立ち上げと近いものですか?
近いですね。例えば、インドの人間がシンガポールで働きたいですって言った時に、会社を通さないとビザの関係などで働けないのです。でも、会社が従業員や従業員の家族の為に、ハブになると可能性が広がるので、現代のルールの中で、どれだけ世界を個々人として広げていけるかというのは面白い実験だなと思っています。1人1人の可能性を国という枠組みを取っ払って広げていくみたいな視点が、僕が中長期的にチャレンジしていきたいところです。