DIYをライフスタイル(生活文化)に!
カインズが取り組む「コミュニティ」の導入背景と展望とは
株式会社カインズ イノベーション推進本部コミュニティプラットフォーム部
澁谷慶子様 日野上紗貴様
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熱量の高いDIYerを少人数集めて、小規模からスタートする
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顧客同士のコミュニケーションで困りごとを解決する雰囲気作り
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DIYerをオンラインとオフラインでサポートしたい
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店舗にいないときの顧客の思いを把握することができない
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お客様の声(VOC)を集め、顧客を具体的にイメージしたい
効果
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DIY自体の熱量を高め店舗への来店回数を増やしLTVをあげる
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顧客の声を活用した商品開発
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オンラインとオフラインが融合したくらしに寄り添うコミュニティ
ホームセンターチェーンの経営を主力事業に掲げる株式会社カインズ。DIYを楽しむ人々同士がオンラインとオフラインで繋がるコミュニティ「CAINZ DIY Square」 (カインズ ディーアイワイ スクエア)が2021年11月にオープンしました。開設からわずか1年で大きな盛り上がりを見せるコミュニティとなった今、その裏側を伺いました。
──コミュニティ運営に至ったきっかけを教えてください。
澁谷様:2019年より「DIYer100万人プロジェクト」をスタートさせました。くらしを良くするために自分でやってみることの全てを「DIY」と捉え、日曜大工や、調理・洗濯等の家事、キャンプ、ガーデニング等を行う「DIYer(ディーアイワイヤー)」をサポートするための取り組みを行っています。そのなかで、DIYerをオフラインとオンラインの両面からサポートしたいという思いがあり、カインズに来店しているときもしていないときもトータルでお客様の生活と繋がりたいと感じていました。
たとえば、「店舗でのワークショップにお越しいただいたあと、作った作品をどう活用されているのだろう」とこちらが疑問に思っても、オフラインの繋がりだけではなかなか把握しきれません。ですが、オンラインのコミュニティがあれば、先ほどのようなVOC(Voice Of Customer:お客様の声)も集まりやすい。お客様をもっと具体的にイメージすることができると考えました。
──coorumを選んだ決め手を教えてください。
澁谷様:決め手となったのはID連携ができる点です。すでに登録していただいた会員情報とは別にコミュニティ用のアカウントを作らないといけない状態では、当初の目的から外れてしまいます。また、会員IDとコミュニティ内のデータを結合し、お客様の行動を解像度高く分析することで施策のPDCAを回していくことを重要視していました。ですので、ID連携ができるのはマストでしたね。
──実際にcoorumをお使いいただいて、いかがでしたか。
澁谷様:とても満足しています。分からないことや困ったことがあった際にお問い合わせをさせていただくのですが、いつでもしっかり素早くサポートしてくださり、とても安心ですね。
日野上様:コミュニティ内のユーザー様の要望からcoorumの機能を追加していただいたこともありました。コミュニティ内では、投稿に対してお客様同士コメントして、返信しあうのですが、それがすごく盛り上がっているんです。にもかかわらず、肝心のトークや返信にお客様がすぐに気づけない状態になっていました。ですので、返信がきたら通知する機能の追加をお願いしました。
澁谷様:そうでしたね。ありがたいことに、ユーザー様はいち早く追加実装に気付いてくださいます。coorumをメンテンナンスしていただいたときも、ユーザー様から貴社スタッフの方々へねぎらいの言葉が見られたこともありました。そういった点も含めてユーザー様と一緒に進化していけるコミュニティになっていると思います。
──そんなにも、熱量の高いコミュニティをどうやって作っていったんですか。
澁谷様:コミュニティに関する知見やノウハウが無かったため、貴社のご意見を踏まえて、まずはワークショップやキャンペーンによく参加してくださっているお客様にお声をかけさせていただきました。参加していただいたワークショップの感想を聞いて、「DIYer100万人プロジェクト」の概要をお伝えし、3ヶ月ほど実際にコミュニティを利用していただきました。「ワークショップで作ったものがどんどん溜まっていくのでそれをどんなふうに活用しているのか知りたい」や「ワークショップで作ったものをリメイクするのが楽しい」等様々なお声を聞かせていただきました。その後、正式にリリースしました。
──正式にリリースして、どんな手応えがありましたか。
澁谷様:すごく良い感触があります。これまでのDIYはどこか孤独な部分もあると感じていました。もし作品をうまく作ることができず、完成できなかったら諦めるしかありませんし、やっとの思いで完成させても見るのは自分だけ。しかし、共通のコミュニティでユーザー様同士が繋がることでそういった状況が変わりはじめています。
これまでは、DIYのやり方がわからない場合、困っても周りに聞くことができませんでしたが、コミュニティで発信すれば誰かが教えてくれます。作ったDIY作品も、投稿すれば多くのDIY仲間が見てくれて、「いいね」などのコメントを付けてくれます。
コミュニティがあることで、困った時に助け合える仲間や、DIYの楽しさを伝えてDIYerをサポートするDIYキャプテンがいるという安心感を提供することができ、初心者の方でもDIYを続けやすい仕組みができあがりつつあります。少しずつ「DIYをライフスタイル(生活文化)にする」という「DIYer100万人プロジェクト」の目指す形に近づいていると感じています。
実際、開始して1年ですが、非常に多くの方にご利用いただいています。中には、毎日欠かさずログインしてくださるユーザー様がたくさんいらっしゃるんです。コミュニティがこんなにも盛り上がっていただけて嬉しいです。
また、コミュニティの盛り上がりを後押しするのがオフラインで出会える点です。オンラインでやり取りしていた仲間に偶然ワークショップで会うようなケースをこれまでたくさん見てきました。着実に、オンラインとオフラインが繋がってきていると感じていますね。
日野上様:ユーザー様の声をワークショップに反映できるようにもなってきています。ある店舗だけの限定開催ワークショップをご紹介した際、「私のお店でも開催してほしい!」と、コミュニティ内で予想以上の反響があり、全店舗開催に繋がったこともありました。
──具体的な効果はありましたか。
澁谷様:コミュニティに参加しているユーザー様のLTV(年間購入金額)は、カインズ会員全体の平均よりも高いという結果が出ています。今後はcoorumのデータ連携できる部分を活用して、コミュニティのさらなる活性化につなげていきたいと考えています。
──今後の展望を教えてください。日野上様:少しずつですが、社内のバイヤーたちからも注目されはじめており、いずれはコミュニティを使った商品開発もできる気がしています。コミュニティ内でユーザー様の要望を聞いたり、商品についての意見を聞いたりすることでお客様のニーズにより沿ったものを提供していくといった流れを、部署の垣根を越えて作っていきたいと考えています。VOCを活用することで常に生活者の目線をもちながら、お客様のくらしに寄り添っていきたいです。
澁谷様:そうですね。今以上にUGC(User Generated Contents:顧客自身が創作・作成したコンテンツ)が集まるとそんなこともできる気がします。私はイベントなど、お客様と一緒にコミュニティを作っていけるようなコンテンツを企画していきたいです。オンラインの盛り上がりをオフラインにも繋げていけたらよいなと思っています。