オンラインコミュニティとは、ネットワーク上で形成されるコミュニティのことです。インターネットやSNSなどの発展に伴い、その価値が高まっています。本記事ではそんなオンラインコミュニティを開設・運営するコツや注意点について解説します。
オンラインコミュニティを開設する目的
企業がオンラインコミュニティを開設し、適切に運営することでさまざまな形のビジネス展開が可能になります。
- 集客
- サービスの提供
- 商品やサービス改善のための意見収集
- 顧客のファン化および熱烈なファンの育成
- オフラインコミュニティとの連動
- ユーザー同士でのトラブル解決等の相談
オンラインコミュニティにはさまざまな可能性があり、ビジネスに活かすことができますが、重要なことは「何を目的にオンラインコミュニティを開設し運営するか?」ということ、つまり目的を明確にすることです。
顧客の声(VOC)の収集
オンラインコミュニティの運営の仕方によっては「顧客の声の収集」という目的を達成できます。
コミュニティには自社商品・サービスの利用者、またはブランドのファンが集まっています。そのコミュニティ内では、顧客の「生の声」を聞くことができ、その意見は要するに「顧客のニーズ」を正確に測るための指針となるのです。
例えば「○○(サービス名)は価格を上げてもいいから、もっとサービスを充実させてほしい」という意見があって、企業側が「サービスの品質は据え置き、もっと低価格化を推し進める」となれば、ニーズに反した改悪になります。顧客の声を収集することで適切な商品・サービスの改善・開発が可能になり、顧客満足度を高めることができます。
顧客ロイヤリティの向上
オンラインコミュニティの運営は、「顧客ロイヤリティの向上」という目的を達成できます。
ファンコミュニティでは、コミュニティ限定の情報の提供や商品の販売などを実施できます。ファンは自身の欲求を満たし、さらなるコアなファンとしてさまざまな利益をもたらしてくれます。
ある企業では「熱狂的なファンの発言が、参加して日の浅いユーザーの起爆剤になる、これが良い循環となる」と評価しています。顧客ロイヤリティ、つまりファンの自社への親しみの強さが、さまざまな形で企業に利益をもたらし、ビジネスチャンスを広げてくれるのです。
顧客のオンボーディング
オンラインコミュニティでは、「顧客のオンボーディングをフォローする」という目的を達成できます。
従来は、顧客から企業のサポートセンターに問い合わせてトラブルを解消していました。企業がサポートに割けるリソースは有限であり、時には問い合わせから解決までに時間がかかってしまうケースも多く見られました。
オンラインコミュニティには「Aというトラブルを抱えているユーザー」と「Aというトラブルの解決法を知っているユーザー」が混在し、コミュニケーションを図ることで企業を介さずにユーザーのトラブルを解消できます。ユーザー同士でトラブルを解消できるような仕組みを作ることで、ユーザーサポートに必要なリソースを削減できるのです。
顧客獲得のための訴求チャネル
オンラインコミュニティの運営は「顧客獲得のための訴求チャネルとしての機能」を果たすことになります。
オンラインコミュニティには、さまざまなネットユーザーが集まっています。その中には、まだ自社の顧客になっていないユーザーも少なからず存在し、そのユーザーはオンラインコミュニティ内でのユーザー同士のやり取りから、さまざまな情報を獲得します。
中には、新規ユーザーが顧客化するための後押しとなる判断材料を、コミュニケーションの中でやり取りしている場合もあるでしょう。また、コミュニティの規模・参加人数の多さ自体が、顧客化を進める判断材料になることもあります。オンラインコミュニティは既存顧客だけでなく、新規顧客へのアプローチにも役立つのです。
顧客への情報発信やセールス
オンラインコミュニティは「顧客への情報発信やセールスを行うための場」としても機能します。
オンラインコミュニティは、ユーザー同士だけでなく、企業から適切な情報を発信するための場としても機能します。その情報は、ときに「新商品の発売情報」や「既存サービスの改善予定」などの情報を含めることもできます。
こうした情報は、既存顧客のアップセル・クロスセルへの導きに役立ちます。従来の手法では提供できる情報量や、何よりもユーザーによる情報発信、つまり「情報拡散性」が乏しいというジレンマがありました。SNSによる情報発信は特に情報の拡散性が極めて高く、まだ顧客になっていないユーザーに対しても商品やサービスの情報を提供することで顧客化を推進します。
オンラインコミュニティの作り方
オンラインコミュニティを開設・運営するための方法は、大きく分けて3つあります。
- SNSを運用する
- 会員サイト(自社サイト)を運営する
- プラットフォームサービスを利用する
次の項目から、3つの方法それぞれの特徴について解説していきます。
SNSでオンラインコミュニティを作る方法
「ツイッター」や「Facebook」などのSNSを活用してコミュニティ運営ができます。例えば「任天堂」では、大元となる公式アカウントだけでなく、各ブランドごとの個別アカウントやサポート用アカウントなどの運営しています。
SNSのメリット
SNSによるオンラインコミュニティの開設・運営のメリットは大きく分けて2つあり、1つ目は「簡単である」ことです。すでにSNSを利用しているユーザーであればわかりやすいと思いますが、アカウントの開設から操作まで、さまざまな部分において簡単な仕組みとなっており、誰でも気軽に取り組むことができます。
2つ目に「コストがかからない」ことです。多くのSNSは基本的な利用のみであれば無料で利用可能です。特殊な機能が有料化することもありますが、無料で利用できる部分だけでも十分にオンラインコミュニティの開設・運営は可能です。
SNSのデメリット
SNSを利用したオンラインコミュニティには2つの弱点があり、1つ目に「荒らしや炎上のリスクがある」ことです。SNSは情報拡散力が強く、良い方向に作用することもあれば悪い方向に作用することもあり、後者のことを特に「炎上」といいます。また、コミュニティを適宜監視していないと「荒らし」と呼ばれる悪質なユーザーの横暴を許すことになります。
2つ目に「オープンすぎること」です。要するに、関心が高いユーザーだけを集めることができないため、コミュニティの規模に対して十分な熱量を維持できない可能性があるのです。SNSは操作しやすい反面でカスタマイズ性に乏しく、自社向けのユーザーを選別できないという点がもどかしいのです。
自社サイトでオンラインコミュニティを作る方法
オンラインコミュニティを、自社で会員サイトなどを運営することで機能させる方法もあります。例えばCMでも馴染みのあるMVNO「マイネオ」のユーザーコミュニティ「マイネ王」では、さまざまな機能を搭載した自社コミュニティに多くのユーザーが集まっています。
自社サイトのメリット
自社サイトでオンラインコミュニティを開設・運営することの最大のメリットは「自由度の高さ」です。
SNSの場合、基本的な部分をいじることはできず、テンプレートにはまった使い方しかできません。しかし、自社でサイトを構築することにより必要な機能を選定して設置することができ、コミュニティ運営の目的をより理想に近い形で実現できるのです。
自社サイトのデメリット
自社サイトでオンラインコミュニティを運営することには2つのデメリットがあり、1つ目に「Webに関する専門知識が必要」ということです。開設や運営を自社スタッフで行う場合、どうしてもウェブサイトに関する比較的高度な知識が求められます。
2つ目に「運営にリソースがかかる」ことです。自社スタッフで対応する場合はもちろん、他社に外注する場合でもコストがかかってしまいます。SNSが基本無料で対応スタッフのレベルもそこまで求められていなかったのに対して、求められるリソースのレベルが高いことがネックになるのです。
プラットフォームサービスでオンラインコミュニティを作る方法
「coorum」などのプラットフォームサービスで、オンラインコミュニティを開設する方法もあります。
プラットフォームサービスのメリット
プラットフォームサービスを利用したオンラインコミュニティの開設・運営のメリットをご紹介。
1つ目に「Webに関する専門知識が不要で簡単に導入できる」ということです。自社でサイトを運営する場合と比較して専門的な知識が問われないため、担当スタッフの選択肢が広がります。
2つ目に「サービスを利用しているユーザーが多い」ことです。ユーザー数が多いということは、既存顧客の利用を促すだけでなく、新規顧客獲得のチャンスが広がるということでもあるのです。
プラットフォームサービスのデメリット
プラットフォームサービスを利用する方法のデメリットは、1つ目に「手数料を取られる」ことです。手数料がかかる分、得られる利益は減少します。
2つ目に「自由度が低い」ことです。基本的にプラットフォームに則った利用法しかできないため、自社向けにカスタマイズできないもどかしさがあります。
オンラインコミュニティを作るためのコツ
オンラインコミュニティを運営し、期待通りの効果を発揮させるためには、以下の6つのコツを実践することをおすすめします。
最初は少人数で開始する
まずは「少人数でスタートする」ことです。
最終的には規模の大きなコミュニティを運営したいところですが、最初から大規模なコミュニティを運営しようとしてもノウハウがありません。大規模なコミュニティの運営には相当な苦労が必要であり、経験が活きる場面も多いので苦戦することになるでしょう。最初は小規模・少人数からスタートしてノウハウを蓄積していき、徐々に規模を大きくしていくことをおすすめします。
ユーザーが喜ぶコンテンツを用意する
2つ目のポイントは「ユーザーが喜ぶコンテンツを用意する」ことです。
ただただ「ユーザーを利用すること」を考えてはいけません。コミュニティには、コミュニティ全体や個別のコミュニケーションが盛り上がれる(ためになる)コンテンツが必要なのです。また、コミュニティ限定のサービスなどを提供することもおすすめです。いかにユーザーのニーズを的確につかみ、それに見合ったコンテンツを提供し続けられるかが、コミュニティ担当者の腕の見せ所となります。
頻繁に更新をする
3つ目のポイントは「更新は頻繁に行う」ことです。
更新頻度の低いコミュニティは、陳腐化して次第にユーザーに飽きられてしまいます。これはユーザーの離脱を招いてしまい、コミュニティの規模を維持することが難しくなってしまうのです。定期的に、適度な頻度でコミュニティコンテンツを更新・充実させ、サービスに過疎感を感じさせないことが重要になります。
発言しやすい環境を整える
4つ目のポイントは「誰でも発言しやすい環境を整える」ことです。
これは特に成長期~成熟期のコミュニティに見られるジレンマなのですが、コアなユーザーが幅を利かせる風土が出来上がってしまうと、新規ユーザーが誰も発言できず、コミュニティの熱量にばらつきが発生してしまいます。コミュニティの規模を維持し、拡大していくためにはユーザーに「帰属感」を与えることが大事であり、誰でも気軽に発言できる環境を作ることが重要なのです。
オフラインのイベントを開催する
5つ目のポイントは「オフライン(リアル)のイベントも開催する」ことです。
より企業への愛着や当事者意識を高めるためにはオンライン空間だけでは満足な熱量を得られない可能性があります。そのため、リアルイベントも定期的に開催し、ファンの熱量を高めるための起爆剤を用意する必要があるのです。特に、食品や飲料など、実際に体験することがコミュニティの熱量に大きく影響する企業では、オフラインでのイベントを適度に開催することが有効な手段となるでしょう。
誠意ある対応を心掛ける
6つ目のポイントは「誠意ある対応と厳正な対応を心掛ける」ことです。
オンラインコミュニティでは、日々さまざまなトラブルやもめごとが発生します。こうしたトラブルや問題を放置すると次第にコミュニティは荒れてしまい、規模を縮小せざるをえなくなってしまいます。細かなルールなどはあらかじめ設定しておき、それでも発生する問題に対しては日々の監視・パトロールの実施と、適宜必要な措置を取ることで対処しましょう。
以上オンラインコミュニティを作るコツのご紹介でした。実際にオンラインコミュニティを運営されている企業の成功事例が知りたい方は、下記記事をご参考にしてみてください。
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