企業活動に必要不可欠なマーケティングにおいて、昨今注目を集めているのが「コミュニティタッチ」という言葉です。ビジネスパーソンとして、多くの企業が注目するこの言葉の意味や実践方法については知っておきたいところです。そこで、この記事ではコミュニティタッチの基礎を解説します。
コミュニティタッチとは
「コミュニティタッチ」とは、ユーザーへのアプローチや関わり方の一つです。
昨今、企業活動において「自社コミュニティの構築および適切な運用」が重要視されるようになりました。企業はコミュニティ内のユーザーにさまざまなアクションを起こしてもらい、そこから情報収集やユーザー間でのトラブル解決などを実践します。企業が成長するためには、コミュニティの構築だけでなく、コミュニティに所属するユーザーに対する適切なアプローチが欠かせません。
コミュニティタッチは、企業とユーザーの間で一体感を作ることで、ユーザーのファン化を目指す手法です。日本でも「サブスクリプションサービス(定額制の販売手法)」の増加により、この手法は注目されるようになりました。
コミュニティタッチが意識されるようになった背景
コミュニティタッチという手法が企業に意識されるようになった背景には、「コミュニティ」の存在が欠かせません。コミュニティとは共通点や共通する関心軸を持ったユーザーの集まりを意味しますが、企業活動においてはマーケティングの分野で特に注目されています。
進化するコミュニティの価値
企業にとっても無視できない存在であるコミュニティは、近年その形を大きく変え、進化しています。
一昔前、コミュニティといえばリアルな人の集まりが主流でした。その後インターネットが普及し始めると、コミュニティはオンライン上にも構築されるようになったのです。そして現在、SNSが普及したことでコミュニティは企業にとって「マーケティングの対象として無視できない大きな存在」にまで成長するに至りました。
近年ではコミュニティの在り方が進化し、マーケティング以外にもさまざまな活用事例が生まれています。従来の「BtoC(企業から顧客への販売)」に加え、「BtoB(企業間取引)」でも活用されるようになりました。コミュニティは構築される領域によってその性質も大きく異なり、情報の流通から実際の行動原理への影響まで、さまざまな効果をもたらします。
コミュニティの活用は海外の方が先進的
そんなコミュニティの活用ですが、日本よりも海外の方がより早く注目され始め、さまざまな企業が活用しています。
例えば、「Google」「Airbnb」「Spotify」といった企業が有名です。企業によってコミュニティの活用方法は大きく異なりますが、例えば「コミュニティ内のユーザー間で商品・サービスに関するトラブルを解消する(Q&A)」や「オフラインコミュニティを活発に行うことでコミュニティの熱量を高める」などの活用法があります。
ある調査によると、海外ではコミュニティマネージャーという職種(自社コミュニティの管理を行う仕事)が「将来性のある仕事」の特区クラスにランクインしているのです。日本ではまだまだ浸透しきっていない印象の強いコミュニティの活用について、海外は何手も先を進んでいることがわかります。
コミュニティタッチの4つの効果
次に、コミュニティタッチを実践することによって得られる4つのメリットについて解説します。
より良い製品開発やサービスの向上
1つ目のメリットは「より良い製品開発やサービスの向上につなげられる」ことです。
コミュニティタッチを通じて、コミュニティのユーザーはさまざまな情報を企業にもたらしてくれます。中には実際に商品・サービスを利用した人から感想やアイデアを教えてくれるケースもあり、これを企業の商品開発や販売の部門へフィードバックすることによって商品・サービスの品質を高めることができます。
こうした情報はコミュニティ以外の領域からも得られないことはないのですが、コミュニティタッチを通じて得られる情報の方が鮮度・確度ともに高く、企業としては、反映させるべき情報は質の良い情報であるほどに有益となります。
口コミ効果による売上向上
2つ目のメリットは「口コミ効果による売上向上」です。
コミュニティには企業・商品・サービスのユーザーであるという共通点で人が集まっています。コミュニティタッチを実践することで、コミュニティのユーザーは企業や商品・サービスの「情報発信者」となってくれるのです。
企業が自社の商品・サービスを褒めるより、ユーザーが褒める方が買い手に対して説得力があります。いわゆる「口コミ」「レビュー」という、消費行動に強い影響力をもたらす情報をユーザーに発信してもらうことにより、新規顧客を獲得し、売上向上につなげることができるのです。
熱狂的なファンの育成と獲得
3つめのメリットは「熱狂的なファンの育成と獲得が可能になる」ことです。
コミュニティタッチを実践することで、企業とユーザーの距離は縮まります。ユーザーに企業をより身近に感じてもらうことにより、今まで以上に企業や企業の商品・サービス・ブランドに対して愛着を持ってもらうことができます。
コミュニティタッチを通じてユーザーと交流を深めることで、「新しいファンを獲得する」「既存のファンをより熱狂的なファンとして育てる」という効果が期待できます。ファン化したユーザーは、商品・サービスのリピーターとなり、企業に利益をもたらします。
カスタマーサポートとしての役割
4つ目のメリットは「コミュニティに所属するユーザーがカスタマーサポートとしての役割を果たしてくれる」ことです。
コミュニティに所属するユーザーには、商品・サービスを使い込んでいるヘビーユーザーも含まれています。そのようなヘビーユーザーは開発者すら気づかないような商品・サービスの特徴を把握することもあります。
また、コミュニティにはそれとは逆に「商品・サービスについてあまり詳しくない、使用歴の浅いユーザー」もいます。こうしたユーザーは、商品・サービスに関する不安や疑問を抱いているケースも多く、これを放置すると自社から離れてしまうリスクを高めるのです。
このようにユーザーの商品・サービスの活用度合いに幅があるからこそ、ヘビーユーザーが初心者ユーザーの質問に答えたり、ユーザー同士がサポートし合ったりすることで、企業に問い合わせなくてもユーザー間で問題を解決できる可能性があるのです。これにより「ユーザーは迅速に問題を解決できる」「企業はカスタマーサポートにリソースを割かなくて済む」という、双方にとってメリットがあるのです。
ただし、この機能を健全に活用したいのであれば「ユーザーの質問に応えてくれるユーザー」を確保する必要があります。例えばポイント制にすることも解決方法の一つです。他のユーザーの質問に答えたり、回答内容が評価されたりするなどの条件を満たしたユーザーにポイントを付与して、ポイント数に応じて何らかの特典を用意することで回答ユーザー数を確保できます。
コミュニティタッチの種類と具体例
次に、コミュニティタッチを実践するための具体的な手法について解説します。
オフラインのイベント
1つ目は「オフラインのイベントを開催する」ことです。
いわゆる「ユーザー会」「オフ会」など、コミュニティユーザーにとって参加する価値のあるリアルイベントを企画・開催します。オンラインイベントと比較すると参加できるユーザーが限定されますが、オンラインコミュニティを活用している企業の多くはオフラインイベントを併用してコミュニティの熱量を高めています。
オンラインコミュニティの開設
2つ目の手法は「オンラインコミュニティの開設」です。
昨今、マーケティングの対象となるコミュニティといえば、主にオンライン上にその領域を持つコミュニティです。自社のオンラインコミュニティを開設することにより、情報発信や情報収集など、企業にとって最終的に利益につながるアプローチを実践できます。
独自のオンラインコミュニティ構築が難しい場合、「SNS」が活用されるケースも多いです。SNSはユーザー数がすでに多く、ユーザーは気軽に参加できるのでコミュニティメンバー数を確保しやすいというメリットがあります。ただし、高いコンテンツの自由度を確保するためには、自社サイトなどを活用したオンラインコミュニティを開設し、SNSコミュニティと連動させるなどの工夫が必要です。
専用ツールの利用
3つ目は「専用ツールを利用する」ことです。
コミュニティタッチなど、コミュニティに関するアクションは簡単なことではありません。専属のコミュニティマネージャーを選任するにしても、何のツールも用いずにコミュニティタッチを実践することは非効率です。
どのようなツールが適しているかは、対象となるコミュニティの性質や目的、予算などによって異なります。SaaSにもコミュニティタッチに活用できるツールが多く、例えば法人向けのユーザーコミュニティ管理ツール「coorum(コーラム)」などが有名です。
コミュニティタッチを活用するコツ
次に、コミュニティタッチを活用し、企業の利益につなげるための3つのコツについて解説します。
オフラインイベントでは参加者を限定する
1つ目は「オフラインイベントの参加者を限定する」ことです。
イベントを開催するとなれば、多くのユーザーに参加してもらいたいという気持ちが先行しがちです。しかし、コミュニティタッチにおいては、オフラインイベントでは人数を集めるよりも参加者をコアユーザーに限定する方が効果が高くなることがわかっています。
ユーザーの選定方法はさまざまですが、例えばコミュニティに貢献している(ユーザーからの質問に多く、良質な回答を行っている等)ユーザーへのリワードとしてイベントへの参加権を付与するなどの手法が考えられます。
参加者を巻き込む一体感を演出する
2つ目に「一体感を演出する」ことです。
コミュニティタッチにおいては、コミュニティマネージャーを筆頭に企業側でさまざまな企画立案を行います。しかし、ユーザー側も「ただ単に参加するゲストである」よりは「イベントを構成するメンバーである」ほうが、イベントやコミュニティの熱量を高める要因となるのです。
具体的にどのような手法が有効であるかはイベントやコミュニティの性質により異なりますが、例えば「匿名性の投票」などの仕組みがあるとユーザーは気軽にアクションを起こすことができます。
この場で儲けることを考えない
3つ目に「コミュニティを売上げに直結させることは考えない」ことです。
イベントやコミュニティにおいて何らかのセールスを行うという手法もないことはないのですが、それが露骨にわかるような手法をユーザーは嫌います。もちろん最終的にはコミュニティタッチにより企業に利益をもたらす必要がありますが、あまりにも露骨にそれが行動に現れるような手法を用いれば、ユーザー離れを起こしてしまうでしょう。
自社や自社製品・サービスについてアピールしたい気持ちは抑えつつ、ユーザーの利益につながる行動を第一に考えてください。イベントやコミュニティの参加者が何を求めて参加しているのかを分析し、それを達成するという体験を提供しましょう。企業の利益は、その先に存在します。
コミュニティタッチを取り入れた企業例
最後に、実際にコミュニティタッチを取り入れ、成功した3つの事例について解説します。
Spotify
1つ目は、スウェーデンの企業が提供する音楽ストリーミングサービス「Spotify」の事例です。Spotifyはユーザーコミュニティを開設しており、コミュニティユーザーは以下のことができます。
- 質問の投稿や問題の解決方法を見つけること
- 新しい機能や新しい使い方を見つけること
- アプリ改善の提案や賢い使い方の提案
- 音楽に関するチャットやプレイリストのシェア
注目すべきなのは「アプリ改善の提案や賢い使い方の提案」です。Spotifyはコミュニティにおいてユーザーから出されたアイデアの一部を商品開発に活かしているのですが、その反映状況をレポートにまとめ、反映しなかったアイデアについてもその理由を見える化することでユーザーの疑問や不満を軽減しています。
ヤッホーブルーイング
2つ目の事例は、よなよなエールなどのクラフトビールで有名な「ヤッホーブルーイング」です。
ヤッホーブルーイングでは「超宴」というイベントを開催しています。このイベントは2015年以降に何度か開催されており、ある年には数千万円の赤字を出してしまったにもかかわらず、ファンとの密接なコミュニケーションを実現したコミュニティの成功事例として有名です。
会場には数千人の来場者が全国から集まり、またある年の来場者のうち半数ほどが「ヤッホーブルーイングのビールを飲んだことがない」という新規顧客であり、まさに「ファンがファンを呼ぶ」という結果になりました。
Airbnb
3つめの事例は、宿泊施設や民宿を貸出す人向けのウェブサイト「Airbnb」です。
Airbnbではオンラインコミュニティを展開していますが、オフラインイベントにも力を入れていることで有名です。同じ地域のユーザー(ホスト)同士で集まることでコミュニティの熱量を高め、コニュニティの目的をより高い水準で達成することに成功しています。
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