カスタマーサクセスでのオンボーディングとは?進める上でのポイントを解説

2024-08-26 2024-08-26 コラム

オンボーディングとは、顧客体験の向上を狙うカスタマーサクセスにおいて重要な取り組みのことです。
新規ユーザーが自走した状態でサービスを活用できるよう導くプロセスを指し、継続率の向上や解約率の低下をもたらし、ひいてはLTV(顧客生涯価値)の最大化まで期待できる重要なサポートです。
オンボーディングの成功は、カスタマーサクセス部門の最重要事項の一つといっても過言ではありません。今回はオンボーディングの定義や重要視される理由、進めるうえでの注意点について解説します。

カスタマーサクセスでのオンボーディングとは

カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは、新規ユーザーが自走した状態でサービスを活用できるまで導くプロセスのことです。すなわち、ユーザーがサービスの使い方や機能を深く理解し、自身の手で操作・活用し、サービスの魅力を実感できる状態を目指します。

オンボーディングはもともと新人が職場に早く溶け込むために実施する新人研修を示しており、今ではその意味が転じ、カスタマーサクセスの実現のための活用として浸透しています。

オンボーディングは、ユーザーの定着支援につながる施策です。万一失敗に終わると、企業が継続的に収益を上げるのは難しくなります。

「トライアルで無料プランを試したけど、使い方がよくわからなかった」「機能の使い方がわからない」など初期の段階でつまずいてしまうと、購買には結びつきません。そこで、オンボーディングの推進によって、顧客のスムーズなサービスの利用を手助けします。

とくにサブスクリプションサービスのSaaSは継続利用が前提となるため、オンボーディングの推進によってユーザーのストレスを解消して解約を回避しないと、ビジネスモデルとして成り立ちません。

オンボーディングと似た言葉に、アダプションがあります。オンボーディングは、購買~使いこなせるまでを支援する取り組みであるのに対して、アダプションは使いこなせるようになった後~定着支援までが対象です。

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オンボーディングが重要視される理由

オンボーディングが重要視されるのは、企業の売上アップや利益拡大につながる施策だからに他なりません。

ユーザーのサービスに対する不満の解消や、満足度の向上に直接的にコミットします。短期的な解約の予防および継続的な利用をもたらし、企業活動を推進するでしょう。

さらにアップセルやクロスセルによる顧客単価の向上、LTV(顧客生涯価値)の拡大も引き起こします。

導入後のカスタマーサクセスに影響するため

オンボーディングを通して顧客との信頼関係を構築できれば、その後のカスタマーサクセス全体によい影響を与える可能性があります。

顧客がサービスの利用を開始してから終了するまでの顧客ライフサイクルでは、「導入期」「活用期」「定着期」のフェーズに分類するのが一般的です。これは顧客が価値を実感して、継続利用に至るまでの流れを示したものです。

オンボーディングは導入期~活用期、つまり購入後に「買って良かった」と感じる瞬間に直接作用します。顧客ライフサイクルは段階的に進むのであり、導入期から活用期へ誘うことに失敗してしまうと、継続的なサービスの活用に結びつきません。

商品開発における企画のポジションのように、オンボーディングの成否はカスタマーサクセスの業務全域に影響を与えます。

顧客満足度を向上により解約の予防になる

ユーザーが製品・サービスをうまく扱い成功体験を得ることで、顧客満足度が向上して、企業との良好な関係の構築にもつながります。これにより解約を予防でき、製品・サービスの継続利用が増える効果が期待できます。

どうしても提案(営業)では商品の魅力が前面に押し出され、使い方がよくわからないまま契約に応じるケースも少なくありません。そのため、サポートを得られない状態だと不便に感じてしまい、解約につながります。

オンボーディングの推進によって、企業にとって避けたい短期解約を減らすことが可能です。

アップセル・クロスセルによる顧客単価向上につながる

顧客に企業への信頼感をもってもらえれば、より高いサービスへの切り替え(アップセル)、他の商品・サービスの利用(クロスセル)も実現しやくなります。

人間の心理として、サービスを使いこなせるようになると、次第に物足りなさを感じる傾向があります。そこでより高次なサービスの導入を提案すると、スムーズに受け入れられやすいのです。

具体的には、より機能性が高い上位プランの導入や、関連サービスとの連携などが該当します。たとえば、引っ越し時にインターネット回線を契約した顧客に対して、格安スマホのプランを提示することが考えられます。

LTV(顧客生涯価値)の向上につながる

オンボーディングの実施は、契約の開始から終了までに得られる付加価値の合計であるLTV(顧客生涯価値)の向上につながります。とくにLTVは、継続利用が前提になるサブスクリプションモデルでの重要性が高いのが特徴です。

売り切り型のモデルとは異なり、購入後に即解約されてしまうと顧客獲得に要したコストが完全に無駄になるためです。

LTVの最大化は、オンボーディングやカスタマーサクセスの、最終的な目標とも捉えられます。継続的な顧客の獲得に成功し、解約率の減少やクロスセル/アップセルに結びつく割合が増えれば、結果的に顧客生涯価値は向上するためです。

一社当たりの総取引額が増えることにほかならず、経済的な潤いをもたらします。

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オンボーディング実施の流れ

オンボーディングの基本的な流れは、以下のとおりです。

  • 営業から引き継ぐ項目と、活用までのフローを確認する
  • オンボーディングの目標や基準を決める
  • 支援の手法を決める(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)
  • ユーザーが自走できるようになるまでサポートする

それぞれの工程で、具体的に何をすべきか解説します。

営業から引き継ぐ項目と活用までのフローを確認する

営業から、性別や年齢、購買に至った理由、購買回数など顧客情報について引き継ぎを受ける必要があります。

営業からカスタマーサポートに顧客の情報が引き継がれていないと、以前聞いたことを繰り返し質問してしまい、顧客に不安や怒りの感情を想起させる恐れがあります。

オンボーディングを活用する際の業務の流れは以下のとおりです。

  • 目標や目的の設定
  • 環境の構築
  • プランやチェックリストの作成
  • オンボーディングの推進
  • 振り返りや改善

事前のプランの策定や、定期的な振り返りが重要です。どのような目標を立てるべきか、必要な環境の構築は何かという点は次項以降で解説します。

オンボーディングの目標・基準を決める

どの地点まで進んだら、顧客が使いこなしていると判断するかの基準を設定します。具体的な内容は商品やサービスによって異なるため、基本的には独自に定めて問題ありません。

たとえば「1か月以内に登録が完了し、データ作成まで完了する」「シンプルに初期設定の登録だけでよい」などです。

最終的な目標やゴールだけでなく、中間目標指標(KPI)もあわせて決めましょう。初期設定の完了をオンボーディングのゴールに据えるなら、初期設定完了率や設定に要する時間などがKPIとして適切です。

支援の手法を決める

カスタマーサクセスにおけるオンボーディングは、LTBの大きさに応じて「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つがあります。それぞれ適切な顧客層や状態は異なるため、自社で達成したい目標を考慮しつつ、手法を使い分ける必要があります。

「ハイタッチ」とは

ハイタッチは購入実績がある大口顧客を対象とした個別サポートで、企業に対する貢献度が大きいため、時間をかけて手厚く支援するのが特徴です。

専門的な知見を有する担当者によるマンツーマンサポートや、顧客の状況に応じたきめ細やかな対応などコンサルティングに近い密な支援を行います。

具体例としては、導入初期による個別面談、定例会議や社内勉強会の開催など個々にカスタマイズした支援体制を整え、特定の顧客をがっしりと抱え込みます。

「ロータッチ」とは

ロータッチはハイタッチほど企業への貢献度は期待できませんが、後述のテックタッチと比べると売上につながる層への施策です。基本的にはセミナーや勉強会など1対多形式で支援し、必要に応じて個別支援を加えます。

ハイタッチほどコストをかけた対応や顧客に応じたカスタマイズが難しいため、費用対効果を意識して担当者当たり多くの相手に接触する必要があります。

ただし、ハイタッチと比べて顧客の母数が多いため、解約が発生すると利益の減少を引き起こしかねません。

「テックタッチ」とは

テックタッチはLTVが低い反面、多くの顧客を対象とした施策で、コストを最小限に抑えるためにテクノロジーを有効活用するのが特徴です。有人対応ではすべての顧客に支援の手が行き届かないため、自動化ツールやシステムの導入により支援します。

たとえば、サービス画面上の操作ガイドの設置、自己学習で疑問を解決できるヘルプページの設置などです。

大口顧客を対象にしたハイタッチを積極的に推進すべきだと考えられますが、いつまでも高い視点から施策を展開するのは好ましくありません。顧客の数も多いため、費用対効果が悪化しやすい傾向にあります。

顧客をセグメントに分解し、なるべくテックタッチに寄せるような努力が求められます。

ユーザーが自走できるようになるまでサポートする

自分たちで仮説検証を行えるようになるまで、ユーザーからの問い合わせ内容や運用データを分析し、ユーザー目線で問題点を少しずつ改善できるようサポートします。

オンボーディングでは顧客に寄り添った支援が重要ですが、時にはカスタマーサクセスの担当者が手足となってサポートすると非効率につながる恐れがあります。

テックタッチ層へのアプローチを想定して、属人化を防ぐ仕組みの導入が必要です。チュートリアルの作成、自分だけでも次のステージに迷わず進めるポップアップの構築、FAQの充実などがあげられます。

設定した目標の達成度を、顧客に共有する取り組みも有効です。対象期間内に、どの程度の顧客がオンボーディングの測定に至ったか把握することが前提になります。

たとえば、セットアップの完了率をユーザー側で可視化できる仕組みの構築が求められます。

オンボーディングに使用するKPI 

オンボーディングに限らず、マーケティングにおいては重要業績評価指標であるKPIの設定が必要です。オンボーディングで適切なKPIとしては、完了率やアップセル/クロスセル率、解約率があげられます。

いずれも、ユーザーの定着を促進するために効果的な指標です。それぞれの指標の特徴や、マーケティングでの活用方法について解説します。

オンボーディング完了率

オンボーディング完了率は、カスタマーサポートの助けを借りずに自分の力だけで、商品やサービスを使える状態に達したユーザーの割合を示します。

何をもって完了とみなすかは、企業の裁量で定めて問題ありません。設定の切り口としてはユーザーの行動や活用時間などがあげられます。

「初期設定が無事完了した」「特定の機能を何回使用したか」など、ユーザーの行動に焦点を当てるほか、サービスの利用時間やアクティブユーザー数を指標に据えるのもおすすめです。

オンボーディング完了率は、後に解説する解約率と密接な関係があり、オンボーディングが未遂で終わると完了率も下がります。カスタマーサクセスやオンボーディングの推進のためには、どちらも重要な指標です。

アップセル・クロスセル率

アップセル率は「アップセルに成功した顧客数÷全顧客」、クロスセル率は「クロスセルに成功した顧客数÷全顧客」で算出します。分母には、全顧客を据えるのが一般的です。

アップセルとは、上位プランの提案やアカウントの追加を通じて、顧客単価を向上させる取り組みを指します。一方、クロスセルは現在契約中のサービスとは異なる新たなサービスの追加を求める行為です。

どちらも売上アップに直結するため、アップセル・クロスセル率はカスタマーサクセスにとって重要な指標です。

提案を成功させるには、高い顧客満足度の獲得が前提になります。オンボーディングで使い勝手のよさを向上した後に頃合いをみはからって、追加サービスの検討を打診するという流れです。

解約率

継続したサポートが前提となるカスタマーサクセスにおいては、既存顧客の解約率を抑えることが何よりも重要です。

算出方法には、顧客数をベースに考えるカスタマーチャーンレート、収益ベースのレベニューチャーンレートの2種類があります。解約件数は多くなくても、そのうち高単価の顧客が大半を占めると、レベニューチャーンレートの悪化を招く可能性が高いです。

一つの指標だけだと偏向や偏りが見られるため、二つ以上の数字を比較検討して傾向を把握する必要があります。

なお、それぞれの指標の計算式は以下のとおりです。

  • カスタマーチャーンレート:「失った顧客数÷顧客数」
  • レベニューチャーンレート:「(サービス単価×当日の解約数)÷当月の収益数」

解約率を下げたい場合、コミュニティサイトの構築が起死回生の一手になり得ます。コミュニティと解約率の関係性や、具体的な方法について知りたい人は次の記事をご覧ください。

コミュニティはなぜ解約率(チャーンレート)を下げることができるのか?

オンボーディングを実施するポイント

オンボーディングによって、LTVの最大化に結びつけるためのポイントは以下の4点です。

  • 顧客理解を深めて密なコミュニケーションを図る
  • オンボーディングの目標や期間を明確にする
  • サービスの使い方だけでなく、得られる効果まで伝える
  • ツールを導入して支援する

それぞれのポイントがどのような意味をもつのか、解説します。

顧客理解を深めるためにコミュニケーションをとる

オンボーディング期間中に、顧客が重視する指標が変わることもあります。現状や課題を理解するために、密なコミュニケーションが求められます。前段として、オンボーディングに適した体制の構築が必要です。

初めて商品に接点をもった見込み顧客をファンにまで育て上げるには、密にコミュニケーションを図り、自立して商品を使えるまで導くよき相談役にならなければなりません。

ハイタッチやロータッチ、テックタッチなど必要な接点ごとに、アプローチの手法は異なるため、顧客に主眼を置いた体制の構築が必要です。

オンボーディングの目標や期間を明確にする

オンボーディングがどのような状態に達したら成功とみなすのか、目標および期間を明確にします。目標の定め方としては一般的なWebマーケティングと同様、KPI(重要業績評価指標)とKGI(重要目標達成指標)を設定します。

オンボーディングのKPIとして適切なのは、「初期設定の完了までに要した時間」「初期設定の完了割合」「サービスや機能の利用回数・利用時間」です。

KGIに考えられるのは、LTV(顧客清算価値)やNRR(売上継続率)、CRR(顧客維持率)、チャーンレート(解約率)などがあげられます。

指標が明確だと達成度を振り返りやすく、施策のコストパフォーマンスの把握や課題の発見につながります。

オンボーディングの内容を具体的な行動に落とし込んだとしても、目標や期間を明確にしなければ、適切な効果検証ができません。

施策が始めからうまくいくのは、非常に稀なことです。PDCAサイクルの実施がほぼ必須だと考えると、どのような状態に達したら成功なのか、突き詰めて考える必要があります。

サービスの使い方やどのような効果が得られるか伝える

サービスを使うことで顧客がどのようなメリットを得られるのか、どのような利用価値を体験できるかまで伝える必要があります。

多くの場合、単純にサービスの使い方を教えるだけでは、継続的な需要の獲得にはつながりません。顧客がどのような部分にメリットを見出すかは顧客ごとに異なるため、密な顧客理解がどの程度まで行われているかがキーファクターだといえます。

サービスに対する事前知識や、利用環境に合わせた伴走体制を提供しないと、使いこなすための支援にはつながりません。顧客の質問に機械的に答えるのみならず、ベネフィットまで押さえて、効果的なサポートを行いましょう。

ツールを利用して支援する

ユーザーのニーズや自社サービスの使い方に合ったツールを選ぶことも、重要なポイントです。いくら有益な情報が書かれたメルマガでも、メールを見る習慣がない層に送付するのは無意味です。

テックタッチのツール選びでは、ユーザーのデータを収集し、それをもとに臨機応変に対応を変えられる種類の選定が求められます。

また、新機能をリリースした際には使い方で迷わぬよう、オンボーディングのツールにもメンテナンスを入れる必要があります。決断をする前に、メンテナンスにどれだけの手間やコストが生じるかを見積もりましょう。

ツールの種類は多岐にわたり、顧客自らオンボーディングを実施できるセルフオンボーディング機能つきのものや、顧客に応じたシナリオを構築できるタイプ、サイト上へのQ&Aの設置に特化した種類などさまざまです。

適切なオンボーディングでビジネスを成功させよう

カスタマーサクセス部門では、ビジネスを成功に導く適切なオンボーディングを実施できるかは非常に重要な問題です。

事業フェーズや狙うターゲットの状況など、シーンに応じてふさわしいオンボーディングの手法は異なります。

大口顧客向けに支援を行うハイタッチや、特定の顧客への個別対応がメインのロータッチ、大勢に対してITツールを駆使しサポートするテックタッチなどに分かれます。

オンボーディングを成功に導くには、明確な目標や期間の設定が必要です。適切な指標としては、完了率や解約率、クロスセル・アップセル率などがあげられます。

オンボーディングを推進し、既存顧客の売上単価をアップできれば、ビジネスは安定性を増し、次なる投資も実現できるようになるでしょう。

本記事を参考に、カスタマーサクセス部門で不可欠なオンボーディングを成功に導いてください。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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