
顧客志向とは、顧客のニーズや期待に真摯に向き合い、それらを実現するために尽力する姿勢のことです。
競合との差別化を図れるほか、利益拡大につながる、顧客ロイヤリティの向上を図れるなどの理由で注目されています。
本記事では、顧客志向の意味や注目される理由、注意点などについて解説します。顧客志向の取り組みで成果を生んだ企業例もご紹介するので、参考にしてください。
顧客志向とは
顧客志向とは、顧客への価値提供を最優先する考え方のことです。
顧客志向は、「消費者志向」と言い換えられます。また、反対の意味の言葉は「企業志向」です。似た言葉である「顧客思考」は、企業が顧客の気持ちや視点を持って考えることを指します。
顧客を最優先することを掲げる企業は、少なくありません。しかし、顧客ではなく、自社の都合や先入観を優先している企業も多いのが実態です。顧客のニーズよりも自社のニーズにフォーカスするほうが、はるかに容易であるためです。
なお、顧客の顕在化したニーズに応えるビジネスは、真の顧客志向とはいえないことに注意しましょう。顕在化したニーズが、顧客が本当に求めているものではない可能性があります。
顧客志向の取り組みが注目されている理由
顧客志向の取り組みが注目されている理由として挙げられるのは、以下の3点です。
- 競合との差別化を図れる
- 利益拡大につながる
- 顧客ロイヤリティの向上を図れる
それぞれの内容を解説します。
競合との差別化を図れるから
顧客志向の企業は、競合との差別化を図れます。市場には、あらゆるモノやサービスが溢れている状態です。同じような商品・サービスが存在する中で自社のものを選んでもらうためには、顧客のニーズや願望を把握して、商品に反映させる必要があるでしょう。
飽和状態の市場で差別化を図るには、顧客のニーズとマッチした商品・サービスを生み出すことが欠かせません。顧客が満足すれば、企業価値も売上もアップするでしょう。
利益拡大につながるから
利益拡大につながりやすいことも、顧客志向が注目される理由として挙げられます。顧客志向の企業は顧客を最優先に考えてビジネスを行うため、既存顧客と良好な関係性を構築しやすいことが特徴です。
新規顧客を獲得するには既存顧客との関係性を維持するのに比べ、約5倍ものコストがかかるといわれています。顧客志向はリピーター化につながりやすいため、新規顧客獲得にコストをかけ続けなければいけない企業に比べ、利益が拡大しやすいといえるでしょう。
顧客ロイヤリティの向上を図れるから
顧客志向の企業は、顧客ロイヤルティの向上も期待できます。企業側の都合ではなく、顧客ニーズを商品・サービスに取り込むことで、顧客は「自分のことを考えた商品・サービスが提供されている」と感じられ、当該商品・サービスを繰り返し利用するようになるでしょう。企業が顧客のことを真摯に考えていることが伝わることにより、他社商品・サービスに乗り換える可能性が低くなります。
また、企業への満足度が高い顧客は、口コミやレビューを積極的に行う傾向があり、それを見て購入する新たな顧客獲得にもつながります。
顧客志向の取り組みを実践する際の注意点
顧客志向の取り組みを実践する際の主な注意点は、以下の2点です。
- 顧客の潜在的なニーズを見逃さない
- 顧客ニーズへの対応と事業利益のバランスを取る
それぞれの内容を解説します。
顧客の潜在的なニーズを見逃さない
顧客志向を実現するためには、ヒアリングやインタビューなどを実施し、顧客のニーズを汲み取ることが欠かせません。その際、顕在化したニーズのみに注目しないように注意が必要です。
たとえば、顧客が「◯◯というスマートフォンが欲しい」というニーズを持っていたとしても、実際にそのスマートフォンを手に入れたら満足するとは限りません。
顧客の潜在ニーズが「周りの友人から羨ましく思われたい」であった場合、スマートフォンを入手しても、自分が期待したほど周囲から羨ましがられないと、顧客の潜在ニーズを叶えたことにはならないためです。本当の満足感を得られなかった顧客は、購入した商品に不満を抱き、他社に乗り換えることも考えられます。
顧客の潜在ニーズを捉えるには、表面上の顧客の声だけでなく、行動や心理に注目することが重要です。また、顧客に対して「なぜそのような言動に至ったのか?」を質問し、出てきた答えについても「なぜ?」と深掘りしていく手法も有効です。
「なぜそのような言動に至ったのか」と投げかけられた顧客は、自分がその言動を取った理由・心理を深く考えることになり、思考が深まることで徐々に潜在ニーズに近づきます。
企業が、顧客自身も気づいていない潜在ニーズを突き止められれば、顧客の本当の問題解決ができ、満足感を高められるでしょう。顧客は企業に対し「自分のことを深く理解してくれた」と感じるため、信頼関係の構築にもつながります。
顧客志向の取り組みと親和性が高いのは、デプスインタビューです。デプスインタビューとは、対象者とインタビュアーによる1対1の面談式で行うインタビュー形式であり、60〜90分と比較的長い時間をかけて意見を聞き取ります。
「デプス(Depth)」は英語で「深さ」という意味をあらわします。その名称のとおり調査対象者と深くかかわり、顧客の深層心理を理解し、潜在的なニーズを理解するのに有効です。
顧客ニーズへの対応と事業利益のバランスを取る
顧客ニーズへの対応と、事業利益のバランスを取ることも大切です。顧客志向は追求すべきですが、事業利益とのバランスを欠くほど、過度に顧客の特定の要望に対応することは避けるべきでしょう。顧客志向は競合との差別化や利益拡大につながる反面、追求しすぎると生産効率が低下したり余計なコストがかかったりするため、逆効果になりかねません。
顧客のニーズを最大限に汲み取りつつ、自社の利益もしっかりと確保できるような取り組みを行いましょう。

顧客志向を成功に導くためのポイント
顧客志向を成功に導くためのポイントは、以下の5点です。
- 顧客を深く理解する
- 顧客との接点を増やす
- 購買プロセスを効率化する
- クレームの原因を理解する
- 顧客からのフィードバックを活用する
各ポイントを解説します。
顧客を深く理解する
顧客志向の取り組みを成功させるには、顧客のことを深く理解する必要があります。顧客志向のビジネスとは、顧客自身も認識していない潜在ニーズを探り、顧客の抱える課題を解決する取り組みです。顧客志向を実現するには顧客が何を求めているのか、解決したいと感じていることは何なのか、深く知らなければなりません。
顧客のニーズを発見しやすいのは、インタビューやアンケートなど顧客に直接話を聞く方法です。このとき、返ってきた回答に対して、「なぜ?」という質問で深掘りを行うことがポイントです。
また、行動観察調査(エスノグラフィー)も、潜在ニーズを発掘するのに有効といえるでしょう。行動観察調査とは、対象者の行動を観察し、定性的な事実を収集する調査方法のことです。インタビューやアンケートでは得られない、潜在的な要望を把握できる点がメリットです。
行動観察調査は、以下のような流れで行います。
1.対象者を選定する
2.行動観察を行う
3.行動観察後、意見交換を実施する
たとえばキッチングッズを販売しているメーカーであれば、顧客が自宅で実際に料理から洗い物、片付けまでを行っている現場を観察し、録画します。意外なタイミングで使用するなど、想定外の使用法を確認した際は、行動の背景にある意図を読み解くために、その場で調査対象者に質問しましょう。
行動観察後は、社内で顧客の潜在ニーズを抽出するための意見交換を行います。こうすることで、立てた仮説の完成度がさらに上げることができます。
顧客との接点を増やす
顧客理解を深めるためには、顧客との接点を増やすことも重要です。接客やインタビュー、アンケートなどにとどまらず、顧客の日常やプライベートを理解することを目的に、顧客と時間を共有します。
具体的には、公式SNSの強化やファンコミュニティの構築、サイトやアプリへ訪問した顧客とのデジタル上でのコミュニケーション、イベントの実施などが挙げられるでしょう。このような取り組みにより顧客との接点を増やすことで、顧客が抱える潜在的なニーズの把握につながります。
顧客の行動・心理や使用実態といった、顧客ニーズ把握のために必要な情報を収集・分析可能なプラットフォームとして挙げられるのが 「coorum(コーラム)」です。coorum(コーラム)を活用すれば、商品・サービスに対する顧客の声を収集でき、顧客を解像度高く分析することが可能です。
購入プロセスの効率化と購入後の仕組みの工夫を行う
顧客志向を成功させるために、購入プロセスを効率化することも求められます。
購入するのに手間がかかったり、スムーズに購入できなかったりすると、企業への信頼を失いかねません。また、通販で購入した商品がなかなか届かない場合、それだけでも顧客満足度は大きく低下してしまいます。商品自体は素晴らしくても、購入プロセスが非効率だと、顧客が離反する可能性があります。
また、顧客がすぐに商品やサービスを使いこなせるように、オンボーディングの取り組みを行うことも重要です。顧客が商品・サービスを購入後、すぐにそれらを使いこなせないと、離反につながりかねません。
商品やサービスの契約までの流れや契約がスムーズか、サービスを使用し始めるのが容易であるかなど、商品やサービスの購入プロセスや購入後の取り組みの内容を精査しましょう。
クレームの原因を理解する
クレームの原因を理解することも、顧客志向を成功に導くために必須です。顧客のクレームにただ謝るだけでは根本的な解決には至らず、顧客の真意を理解しなければ、さらなる怒りを招きかねません。顧客の気持ちに寄り添い、今後どのように対応するのか、どういった点を改善するのかを伝えましょう。
またクレーム対応は、顧客との信頼関係を強固にできるチャンスでもあります。顧客と真摯に向き合い不満を解決すれば、顧客満足度が向上しリピーター化も期待できます。
顧客からのフィードバックを活用する
アンケートやインタビュー、SNSのコメントなどの顧客からのフィードバックを、商品・サービスの改善に活用しましょう。フィードバックの内容を分析することで、顧客のニーズや期待を理解できます。
顧客からのフィードバックを活かした施策を実行後、顧客の満足度や行動が実際にどのように変わったかを検証することも大切です。

顧客志向の取り組みが成果を生んだ企業例
ここからは、顧客志向の取り組みを行っている企業例をご紹介します。今回は、株式会社Asobicaが提供するcoorum(コーラム)を導入した企業の一部を例として挙げていきます。その他の企業の事例について知りたい方は、下記のページからご確認ください。
サッポロビール株式会社
サッポロビール株式会社は、2022年9月に「ヱビスビール」のファンが集い、自由に語り合えるコミュニティ「ヱビスビアタウン」を本格始動させています。以前からSNSで同じような取り組みを行っていたものの、参加者が増えるとさまざまな情報が行き交うようになり、次第に関係性が希薄化するという課題を抱えていました。
顧客からの要望もあり、「SNSよりも濃度の高い新しいコミュニケーションの場を立ち上げよう」と「ヱビスビアタウン」が設立されました。
「ヱビスビアタウン」は顧客の本当の声を聞ける場であり、さらに会社側のリアルな想いを伝えられる場としても機能しています。
導入事例インタビューはこちら▼
ファンが集い語らう街「ヱビスビアタウン」で本音が聞ける理由と運用のポイント
花王株式会社
花王株式会社は、2022年12月に双方向デジタルプラットフォーム「My Kao」を立ち上げました。
もともと2013年から会員制コミュニティサイトを運営していましたが、価値観やライフスタイルの多様化によって、それまでよりもインサイトの把握が困難になったことが、「My Kao」立ち上げの理由です。
2024年にオープンした「My Kao メンバーサロン」では、コミュニティ内のROOMを増やし、全社員が生活者と直接つながることを当たり前とする状態を目指しています。
導入事例インタビューはこちら▼
多様化するくらしのニーズを理解するためには、生活者とつながり続けるコミュニティが鍵となる!「My Kao メンバーサロン」
株式会社すかいらーくホールディングス
株式会社すかいらーくホールディングスでは、「おやさい学校 しゃぶしゃ部」を立ち上げ、企業と顧客、顧客同士という三方向の関係性を作ることに成功しています。
以前からSNS運用に力を入れており、プロモーション活動としては十分活用できていた反面、顧客のインサイトを探るのには不向きであると考え、そのための方法を探していました。
しゃぶ葉ユーザー限定コミュニティ内での発話は解像度が高く、顧客が必要としているものをすぐに知ることが可能です。コミュニティで得たインサイトから、1つでもリアルの施策に活かすことを意識しています。
導入事例インタビューはこちら▼
しゃぶ葉に熱い想いを持ったユーザーに限定したコミュニティ「おやさい学校 しゃぶしゃ部」が目指す、 ユーザー全員にとって価値のある施策立案とは?
coorumで顧客志向の取り組みを実践しよう
顧客志向とは、顧客のニーズや期待に真摯に向き合う姿勢のことであり、「消費者志向」と言い換えられます。
顧客志向の取り組みを成功に導くためには、顧客の潜在的なニーズの把握につながる、顧客との接点の拡大が欠かせません。顧客接点の拡大を目指すなら、coorum(コーラム)がおすすめです。
顧客の解像度が上がり顧客理解が進めば、顧客のニーズやインサイトを把握でき、商品開発やプロモーションに活用できます。それにより、競合との差別化を図れるほか、利益拡大につながる、顧客ロイヤリティの向上を図れるといった効果が期待できます。
自社でサイトやアプリにおける顧客接点の拡大・構築難しい場合は、支援するサービスを利用するとよいでしょう。coorum(コーラム)なら、各チャネルでの顧客とのコミュニケーションを促進する機能を多数搭載しており、顧客ニーズの収集をサポートします。
顧客志向の取り組みを精度高く実践するために、ぜひcoorum(コーラム)の導入をご検討ください。
