
デプスインタビューとは1対1で行う調査方法であり、消費者の潜在的なニーズやインサイトの把握などを目的に行われます。消費者心理や行動理由を理解するために役立ちますが、調査にコストや時間がかかる点がデメリットです。
本記事では、デプスインタビューの概要やメリット・デメリット、実施の流れを解説します。
デプスインタビュー とは
デプスインタビューとは、対象者とインタビュアーによる1対1の面談式で行う調査方法です。
会話を通して、対象者が無意識にとっている行動や潜在的なニーズを引き出すことを目的に行います。
ここでは、デプスインタビューの目的や他のインタビューとの違いを解説します。
デプスインタビューの目的
デプスインタビューの「デプス(Depth)」は「深さ」という意味で、言葉のとおり、対象者の購買理由や購入に至った背景などを深く掘り下げることが目的です。
調査結果を数字で把握する「定量調査」では得られない、具体的な情報を得るために行います。マーケティングで仮説を立てる段階でインタビューを行うことで、施策の方向性や基幹となるアイディアを得ることが可能です。
定量調査を実施する際、設問内容や項目を検討する目的でデプスインタビューを行うこともあります。インタビューにより企業側が気づかなかった視点を得られることもあり、定量調査の精度を高めることができます。
他のインタビューとの違い
デプスインタビューは対象者から直接言葉で聞き取る定性調査ですが、同じ定性調査の手法にグループインタビューやエスノグラフィーがあげられます。
デプスインタビューが1対1のインタビューなのに対し、グループインタビューは6名程度の対象者を1箇所に集め、座談会形式で行う調査です。デプスインタビューよりも比較的迅速に、コストを抑えて調査を実施できます。
エスノグラフィー調査とは、顧客の生活環境に身を置いて、顧客の商品・サービスの利用状況などを観察する調査です。顧客の購買行動は潜在意識に基づいていることも多く、言語化できない部分を実際に観察することで探る手法です。
デプスインタビューが効果的な場面
デプスインタビューは、次のような場面で実施すると効果的です。
- 消費者の心理や行動理由を理解したい場合
- アイディアや仮説を構築したい場合
- 商品・サービスの問題点を確認したい場合
定量調査では市場全体の傾向を把握できても、消費者の心理や行動理由を深堀りできません。より消費者のニーズを掘り下げ、商品・サービスの開発に役立てたいときにデプスインタビューを実施します。
どのような施策が効果的か、アイデアが浮かばないときも、デプスインタビューが有効です。インタビューで消費者の心理や行動への理解を深めれば、施策のアイデアや仮説の構築に役立ちます。
また、提供している商品・サービスに改善点があるかを確認したい場合にも、デプスインタビューが役立つでしょう。
デプスインタビューのメリット
デプスインタビューは、次の点がメリットです。
- 潜在的なニーズを確認できる
- 人前では話しにくいテーマも質問できる
- 対象者の反応を観察できる
ここでは、デプスインタビューのメリットを紹介します。
潜在的なニーズを確認できる
デプスインタビューは、1人あたり1時間〜1時間半という長い時間をかけて話を聞き取り、対象者が商品・サービスを選んだ理由や行動について掘り下げます。
深掘りにより、本人も気づいていなかった購買理由や行動の背景といった「顧客インサイト」の確認ができます。
行動の背景・理由を詳細に深堀りして消費者への理解を深めることで、意思決定のプロセスを把握し、商品開発やマーケティング施策の立案・改善などに役立てることができるでしょう。
人前では話しにくいテーマも質問できる
デプスインタビューは1対1で対話するため、人前では話しにくいテーマも質問できる点がメリットです。年収や健康状態、悩みごとなど、複数名が一緒にインタビューを受ける場所では話しにくいデリケートな内容も、本人の了解を得られれば質問することが可能です。
また、ほかに参加者がいる場合、他者の発言の影響を受け、本音を話せない状況も起こり得ます。デプスインタビューであれば、周囲の意見に左右されずに本音を語りやすくなるでしょう。
対象者の反応を観察できる
デプスインタビューでは、対象者の反応を観察できることもメリットです。1対1のため対象者は他者の影響を受けず、自由に自分の感情を出して本音を語れます。
調査者は対象者の言葉だけでなく、表情や仕草、態度などの反応を丁寧に観察し、本音に近づくことができるでしょう。
そのためにも、リラックスして質問に答えてもらえる雰囲気づくりが大切です。
デプスインタビューのデメリット
デプスインタビューには次のようなデメリットもあります。
- 調査にコストや時間がかかる
- インタビュアーの技量によって結果が左右される
- 議論が発展しにくい
- インタビューの仕方によってはバイアスがかかる
どのようなデメリットなのか、詳しくみていきましょう。
調査にコストや時間がかかる
デプスインタビューは1名に対して1時間〜1時間半の時間をかけるため、グループインタビューと比較して1人あたりに多くの時間がかかる点がデメリットです。
1人から得られる情報量は多く、情報をまとめて分析する時間もかかります。そのための人件費や調査対象者への謝礼も必要になり、インタビューをオフラインで実施する場合は会場費もかかります。
デプスインタビューを実施する際は、余裕をもったスケジュールや予算の確保が求められるでしょう。
インタビュアーの技量によって結果が左右される
インタビュアーの技量により、対象者から引き出せる情報量や質が左右されるという点もデメリットです。
インタビューを受ける対象者はさまざまで、どれだけ対象者の心理を深堀りして有益な情報を取得できるかは、インタビュアーのスキルにかかっています。
デプスインタビューがうまくいかない原因の1つは、インタビュアーが参加者の話を掘り下げることができず、ただ質問に回答しただけで終わってしまうことです。
優秀なインタビュアーであれば、その場の雰囲気づくりや信頼関係の構築によって対象者をリラックスさせ、本音を引き出すことができるでしょう。
設定したインタビューの流れに終始するのではなく、対象者の発言を広げる質問をしながら、潜在ニーズやインサイトを深掘りできるスキルが求められます。
議論が発展しにくい
デプスインタビューは1対1で対話をしながら進めるため、グループインタビューとは異なり議論が発展しにくい点がデメリットです。
グループインタビューでは他者と意見交換するため、会話の中で考えが広がり、議論が発展していく可能性があります。一方、デプスインタビューにはそのような効果が期待できません。いかにインタビュアーが個人の思考・行動を掘り下げ、インサイトを探ることができるかが重要になります。
インタビューの仕方によってはバイアスがかかる
インタビューの仕方によっては対象者に「正しい答えを返そう」という意識が働き、バイアスがかかる可能性があります。
また、デプスインタビューはあくまで特定の個人の意見であるため、大多数の消費者の考えとは異なる偏った意見になるケースもあるでしょう。
デプスインタビューで得られるのはあくまでも調査対象者個人の考えであり、必ずしも多くの消費者ニーズを代表するものとは限らない点に注意が必要です。

デプスインタビューの費用相場
デプスインタビューの費用相場は、調査内容や質問数、リクルートの難易度などによって異なります。一般的な費用相場は、次のとおりです。
基本料金 | 5万〜15万円 |
リクルーティング料 | 1万~1万5,000円 |
レポーティング料 | 5万〜20万円 |
謝礼 | 8,000~1万円(1人あたり) |
会場費 | 2万~3万円 |
リクルーティング料は、インタビュー対象者を選定する際にかかる費用です。条件や選定の難易度に応じて金額が変わります。
レポーティング料は、インタビューで取得した情報を分析し、レポートを作成する費用です。簡易なレポートであれば費用を抑えられますが、より詳細になるとコストは上がる傾向にあります。
レポーティングはオプションである場合も多く、自社で分析する場合は費用をカットできます。
さらに、調査対象者への謝礼やオフラインで実施する場合は会場費が必要です。
デプスインタビューを実施する流れ
デプスインタビューは、目的の設定からデータ分析・活用まで、一連の流れがあります。ここでは、デプスインタビューを実施する流れを解説します。
1.調査の目的を明確にする
まず、どのような目的でデプスインタビューを行うのか、調査の目的を明確にします。「売上を伸ばす」「商品・サービスの問題点を見つける」など、会社により目的はさまざまです。
目的が明確でないと、調査対象者を絞り込めず、有効な回答を引き出す質問を設定できません。失敗を防ぐためにも、どのような情報を得たいのか、目的を整理しておきましょう。
2.自社で行うか、外部に委託するか決める
デプスインタビューを自社で実施するか、外部に委託するかを決めましょう。自社で行う場合、事前準備や対象者の選定など、多くの手間とコストが発生します。
対象者から効果的な話を引き出すためのノウハウも必要です。社内で行うのが難しい場合は、専門会社への委託を検討することになります。
自社の状況や費用対効果を考え、どちらにするか決めるとよいでしょう。
3.調査対象を選定する
インタビューの目的を明確にしたら、調査対象者を選びます。
アンケートなどの調査データを活用して利用者を分類し、自社にとって調査の重要度の高いユーザーを優先的に選ぶことがポイントです。
アンケートに自由回答欄を設けることで、インタビュー対象者を絞り込むこともできます。商品・サービスについて積極的に回答してくれる人であれば、インタビューでも多くの意見・考えを引き出せる可能性が高いでしょう。
4.質問項目を決める
目的に沿って、質問項目を決めましょう。まず仮説を立てると、質問項目を考えやすくなります。
たとえば、「顧客のリピート購入を増やしたい」という目的がある場合、「他社製品に切り替えるのは、〇〇という動機があるのでは?」といった仮説を立て、それを検証する質問を考えます。
インタビューでは1つの質問について深掘りするため、効率よく進められるよう質問の優先順位や時間配分を決めておくことも大切です。
5.インタビューのフローを設定する
調査対象者と質問内容が定まったら、インタビューフローを設定します。
その際は、必ず「確認したいことは何か」「質問にどれくらい時間をかけるか」を検討します。
デプスインタビューでは、質問の順番を固定しすぎると、形式的な質疑応答で終わってしまう可能性があります。最低限の質問と時間配分を決め、時間内でどのように回答を得るかという流れを設計するとよいでしょう。
インタビューでは対話の流れに沿って臨機応変な対応が必要であり、フローの設定では時間配分を細かく決めず、大きな枠組みにしておくことも大切です。
6.インタビューを実施する
調査対象者と事前に日時を決め、インタビューを実施します。対象者から有益な話を引き出すため、リラックスした雰囲気を作る工夫が必要です。
まずは、出身地や趣味など、お互いの共通点を見つけるような質問をして緊張をほぐすとよいでしょう。
ただ用意した質問をするだけでなく、反応や表情、態度を見ながら話を広げ、上手に掘り下げていくことが大切です。
7.得られたデータを分析する
インタビューで収集したデータは、整理して分析します。文字に書き起こして情報を整理するときは、回答者の感情や思考プロセスにもフォーカスし、質問項目に対する反応を記載していきましょう。分析では、複数名に実施したインタビューの回答について共通部分をグルーピングします。
グルーピングしたグループ同士の共通点や相関性を見つけることで、新たなアイデアや改善策へとつながりやすくなるでしょう。
8.分析したデータを活用する
分析結果した結果は、目的に沿って活用します。商品開発やマーケティング戦略の基礎にできるほか、次のような活用方法があげられます。
- 顧客インサイトの発見
- カスタマージャーニーマップの作成
- ペルソナ分析
消費者ニーズが多様化し、激化する市場競争に生き残るためには、顧客自身が自覚していないニーズや顧客インサイトを把握することが鍵となります。顧客インサイトの発見により本当に必要とされる商品・サービスを開発でき、競争力を高めることができます。
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品を認知してから購入するまでのプロセスを可視化したものです。デプスインタビューでは、購入に至った経緯や思考の変遷を時系列で把握することができるため、カスタマージャーニーマップの作成に役立ちます。
デプスインタビューの分析データは、自社商品の典型的なユーザー像を描くペソルナ分析にも活用できます。ペルソナ分析では、年齢・性別などの属性だけではなく、ライフスタイルや価値観なども細かく設定することが必要です。デプスインタビューにより対象者の価値観や思考プロセスを深掘りすることで、ペルソナ像を詳細に把握できるでしょう。

デプスインタビューを成功させるポイント
デプスインタビューを成功させるためには、いくつかのポイントがあります。詳しくみていきましょう。
答えやすい質問を選ぶ
インタビューでは、対象者が答えやすいような質問をすることが大切です。対象者は「何を質問されるのか」「きちんと答えられるのか」などの不安を感じやすく、いきなり核心に触れる質問をすると、無難な回答をしようと考えてしまう可能性があります。本音を引き出せないことにもなるでしょう。
まずは住まいや勤め先のことなど、簡単に答えられる質問をしてリラックスを促し、安心して考えや感情を表現できるようにしましょう。
オープンクエスチョンを活用する
デプスインタビューでは「はい・いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、相手に自由に回答してもらうことができるオープンクエスチョンを活用しましょう。クローズドクエスチョンでは、回答で終了してしまい、会話を広げて掘り下げることが難しくなります。
オープンクエスチョンでは「サービスについて、どのように思いますか?」「どの部分に魅力を感じますか?」など、回答の範囲に制約を設けず、自由に答えてもらえるように質問します。オープン・クエスチョンにすることで、より多くの情報を引き出すことが可能です。
仮説を立てて質問する
質問は、仮説を立てることも重要なポイントです。目的を設定したあと、その目的を達成するための課題を洗い出し、課題を解決するための仮説を立てます。
インタビューは、仮説と対象者の回答が合っているかを確認しながら進め、仮説と結果が合っていれば、さらに掘り下げていきます。結果が異なっている場合は、新たな気づきにつながるかもしれません。
仮説を立てたうえで質問をすることで、方向性を絞った話を聞き出すことができるでしょう。
顧客の声を継続的に収集できる「coorum(コーラム)」
デプスインタビューは対象者の話を深堀りして潜在的なニーズを確認できるというメリットがありますが、事前準備に時間がかかります。また、調査の度にコストがかかり、外部に依頼した場合には調査結果が出るまでに時間がかかります。
「coorum(コーラム)」であれば、事前準備の手間を軽減し、コストや時間をかけずに継続的に顧客の本音の声を収集できます。
ここでは、質の高い顧客の声をいつでも収集できるプラットフォーム「coorum(コーラム)」を紹介します。
「coorum(コーラム)」とは
「coorum(コーラム)」とは、顧客との継続的な接点の構築と顧客分析機能により、顧客の声やインサイトをマーケティングに反映できるツールです。
デプスインタビューのように事前準備の手間をかけることなく、顧客の声を素早く収集し、ニーズやインサイトを把握して商品企画・開発やマーケティング施策に反映させることができます。
顧客心理がわかる声を獲得できる
「coorum(コーラム)」では顧客との継続的な接点を構築できるため、いつでも好きなときに顧客の声を収集することができます。
一人ひとりにデプスインタビューを実施するという手間やコストをかけず、顧客の心理・使用実態を収集・把握できます。また、これらを既存の顧客行動データをIDで紐付け、まとめて分析・改善が可能です。これにより、顧客起点のマーケティング戦略を実現します。
「coorum(コーラム)」で顧客の声を獲得しよう
デプスインタビューは対象者と1対1のインタビューにより、潜在的なニーズやインサイトを深掘りしてマーケティングに役立てることができます。消費者の心理や行動理由の理解を深めたり、商品・サービスの改善点を確認したりすることを目的に行われます。
ただし、一人ひとりに行うデプスインタビューは手間やコストがかかり、分析にも時間を要します。
「coorum(コーラム)」であれば、顧客との関係を構築して質の高い顧客の声を継続的に収集でき、顧客起点のマーケティングを実現できます。顧客ニーズを把握して競争力を高めたい方は、ぜひご活用ください。
