ARPUとは?ARPPUやARPAとの違いや計算方法などを解説

2024-08-27 コラム

ARPU(アープ)は、ユーザーの一人から得られる平均的な売上を表す指標です。定点観測される場合も多く、SaaS型のビジネスモデルや広告収入を収益源の一つとする企業で重要だといわれています。
今回はARPUの定義や計算方法、似た指標との違い、最大化するためのポイントを紹介します。

ARPUとは

ARPU(アープ)は「Average Revenue Per User」の略語となるマーケティング用語で、1ユーザーあたりの平均的な売上を示した指標です。業績評価に役立つ数値として、通信事業の月額サブスクリプションモデルの効果測定に広く使われてきました。

近年は、クラウド環境でソフトウエアを提供するSaaSビジネスでも、導入する動きが目立ちはじめています。ARPUの基本的な計算式は「売上高÷ユーザー数」です。たとえば、月間の売上が500万円でユーザーが10人いるサービスの場合、シンプルに50万円と判断します。

ARPUの算出期間は企業側が任意に定め、1か月単位のほか、四半期・1年・1週間・1日ごとの区分もあります。ARPUを測定して経営判断につなげるには、短期・長期の視点が必要です。

ユーザーがサービスの利用を開始してから、1か月後の平均売上高と3か月後の平均売上高を見比べることで、利用状況と売上に相関関係を見いだせます。たとえば3か月目で累積の伸び率が著しく増えているならば、課金をはじめる・増やす時期がいつか正確に判断できます。

継続課金が前提のSaaSビジネスで売上を伸ばすための戦略は、新規ユーザーの増加、もしくは既存ユーザーからの課金額の上昇しかありません。平均的な売上高を示すARPUの把握は、ビジネスの成長性や収益性を判定する際に極めて重要です。

ARPUと似た指標の違い

アルファベットの略語が多いマーケティング用語では、似たような字面の言葉が複数あります。ARPUも例外ではなく、ARPAやARPPUのように間違えやすく混同しがちなワードが該当します。

意味が似た言葉にも注意が必要で、LTV(顧客生産価値)が代表的です。ARPUと似通った指標について、違いや定義を紹介します。

ARPUとARPAの違い

ARPAは、1ユーザーではなく1アカウント(契約者・取引先)あたりの売上高を示す指標です。計算方法はシンプルで「総売上高÷総アカウント数」で算出します。

ARPUと分けて測定する意義は、事業の形態によっては一人が複数のアカウントを持つ場合があるためです。たとえば、通信機器業界では、個人がスマホとタブレット、パソコンを使いこなすケースも少なくありません。

ARPAでは端末ごとに割り当てられたアカウントの売上を測定しますが、ARPUでは複数のアカウントをまとめて個人から得られた売上だと判断します。サービスを使うか、課金するか決めるのはユーザーです。端末ではなく、契約者を基準に売上を算出したほうが、実態を正確に把握しやすくなります。

会計ソフトやCRMをはじめ、BtoB向けのSaaSサービスでも、一つのアカウントで複数の端末を管理するケースが一般的です。ユーザー数(端末数)とアカウント数が異なるサービスを扱う企業では、ARPUに加えてARPAを測定する意義は重大です。

ARPUとARPPUの違い

ARPPU(Average Revenue per Paid User)は、ある製品やサービスに対する「有料課金ユーザーあたりの売上高」を示す指標です。ARPUとの決定的な違いは、有料課金ユーザーのみを対象とした数値である点です。

ARPPUを測定すれば、売上に貢献しているユーザーに絞った効果的な分析が実現します。具体的には基本的なサービスを無料で提供し、より高度な機能を求める顧客には有料プランをすすめるフリーミアム戦略をとる企業におすすめです。

ほかにも、無料で利用するユーザーが多いソーシャルゲームも、ARPPUが重要な経営指標として適切です。ある課金ゲームアプリでユーザー数が1万人、そのうち課金ユーザーの割合は50%だとしましょう。

期間内の売上高が1,000万円の場合、ARPUは1,000円、ARPPUは2,000円です。無料ユーザーがいくら増えても売上は伸びないため、ARRPUを向上させる施策に取り組むことが効果的です。

ARPUとLTVの違い

LTVはマーケティング用語「Lifetime Value(顧客生産価値)」を省略したもので、ある顧客が自社との取引開始から終了までにもたらす利益を表す指標です。

ARPUとの違いは測定期間にあり、LTVでは四半期や半年など特定の期間ではなく、ユーザーが製品・サービスを利用しているすべての期間が対象です。

両者を分けて測定する意義は、一人の顧客から得られる将来的な価値の見込み額までわかる点にあります。平均的なLTVが1,000円の企業で、現時点では特定の顧客から500円しか得られていないとしましょう。

数値を根拠に考えると、このユーザーは追加購入や上位グレードへのプランの変更をする可能性は高いです。マーケティングや営業で、注力すべきターゲットを見極める際に役立つことがLTVの利点です。

ARPUは一人あたりの平均的な売上を知る便利な指標である反面、特定の顧客の状況を考慮しにくいという特徴を有します。ブランドへの信頼度やユーザーごとの嗜好性は反映できないため、パーソナライズ化したマーケティング戦略を練る際には不十分だといえます。

LTVを計算方法や増やすための方法が知りたい人は、次のページをご覧ください。

LTV(ライフタイムバリュー)を最大化する方法や計算方法を徹底解説

事業の形態別のARPUの計算式

ARPUを算出する基本的な計算式は「総売上高÷総アカウント数」で、大まかな傾向を簡単に把握できます。しかし、より精度が高い数値を知るためにはビジネスモデルごとに異なる計算を行わないといけません。ビジネスの種類に応じた、ARPUの計算式や計算例を紹介します。

利用課金型ビジネスモデル

利用課金型ビジネスモデルとは、いわゆる継続課金型(サブスクリプション)サービスを表します。携帯電話の料金やインターネットの通信料、生命保険や車の保険料、コミュニティ型のファンクラブなどが代表的です。

サブスクリプションモデルではユーザーが利用を続けることで利益が生まれるため、一人あたりから得られる平均的な売上の把握は大切です。

利用課金型ビジネスモデルのARPUの計算式

利用課金型ビジネスモデルにおけるARPUの計算式は、次のとおりです。

  • 商品単価×平均購入点数×平均購入頻度×有料課金ユーザー率
  • 有料課金ユーザー率=(有料課金ユーザー数÷総ユーザー数)×100%

利用課金型のビジネスモデルでは、課金ユーザーのみ算出の対象とする点に注意が必要です。サブスクリプション型のサービスとはいえ、ユーザーの中には、一切課金しない層も存在します。

たとえば、RPGゲームで基本的なクエストのみプレイし、課金アイテムを購入しないユーザーたちです。

一人あたりの適切な売上を把握するには、無課金層を除外した計算が必要です。つまり、ARPUよりもARPPUに近い算出方法を採用します。

利用課金型ビジネスモデルのARPUの計算例

利用課金型ビジネスモデルの、ARPUの具体的な計算例を紹介します。

  • 全ユーザーに占める特定の期間における継続課金ユーザーの割合:40%
  • 特定の期間内における継続課金ユーザーの平均購入額:3,000円
  • 特定の期間内における平均的な購入頻度:1回
  • 特定の期間内における平均的な購入点数:1点

上記の事例では、「3,000円×1×1×40%=1,200円:ARPU」です。

広告表示課金型ビジネスモデル

広告表示課金型ビジネスモデルとは、自社が保有するアプリやWebサイトの広告枠に他社の広告を出稿し、所定の表示回数を超えたら広告主に費用を請求するビジネスモデルです。Webサービスを扱う企業の収益源は、ユーザーからの利用料にとどまりません。

広告枠を設け、他社製品の宣伝役を担うことで、広告収入を確保する手法も存在します。広告が表示された回数に応じて料金が発生するWeb広告の課金方式を、インプレッション課金(CPM)と呼びます。

広告表示課金型ビジネスモデルのARPUの計算式

広告表示課金型ビジネスモデルのARPUの計算式は、次のとおりです。

  • (ユーザーの一人あたりの平均広告表示回数×CPM)÷1,000

CPM(Cost Per Mille)は広告を1,000回表示したときの費用のことで、インプレッション課金では広告単価とも言い換えられます。ユーザー一人あたりの平均広告表示回数は、広告表示回数÷総ユーザー数で算出可能です。

また、アプリの滞在時間やPV数、起動の頻度などを総合的に考慮した「エンゲージメント」を使う計算式もあります。

  • エンゲージメント数 ×(CPM ÷ 1,000)

CPMを1,000で割ることで、表示1回あたりの費用を計算します。

広告表示課金型ビジネスモデルのARPUの計算例

広告表示課金型ビジネスモデルのとあるアプリの提供で、以下のデータが得られたとします。

  • CPM:100円
  • ユーザーの一人あたりの平均広告表示回数:50回/月

このときの月間ARPUは50×(100÷1,000)=5円です。広告表示課金型ビジネスモデルでは、利用課金型と異なり、課金・無課金ユーザーを区別する必要はありません。出稿頻度や広告の種類はユーザーごとに変わりますが、広告の配信自体はすべてのユーザーに行われるからです。

広告クリック課金型ビジネスモデル

広告クリック課金型ビジネスモデルは、自社のアプリやWebサイトに掲載する広告がクリックされる度に広告主に対して課金します。商品やサービスの宣伝を依頼する側の視点では、広告費の無駄が発生しにくいことがメリットです。

広告をクリックしたユーザーは商材に対する興味が大きく、購入に結びつきやすい傾向があります。自社のサービスへの広告料を収益源にしたい場合、クリック課金型ビジネスモデルの導入は有効な方法の一つです。

広告クリック課金型ビジネスモデルのARPUの計算式

広告クリック課金型ビジネスモデルのARPUは、次の計算式を採用します。

  • CPC×広告のクリック率

CPC(Cost Per Click)は、広告1クリックあたりの売上を表す指標です。クリック課金型ビジネスモデルでは、クリックごとに広告費が発生します。広告主からみれば費用ですが、出向先の立場に立つと売上にほかなりません。

広告のクリック率はCTR(Click Through Rate)とも呼ばれ、総クリック数÷広告表示回数で算出します。

広告クリック課金型ビジネスモデルのARPUの計算例

広告クリック課金型ビジネスモデルにおける、ARPUの計算例をみてみましょう。以下の条件を満たす無料アプリを想定します。

  • CPC:10円
  • 1月あたりの広告表示回数:10,000回
  • 1月あたりの総クリック数:1,000回

広告のクリック率は1,000÷10,000=0.1となり、ARPUは10×10%で1だとわかりました。

ARPUを向上させるためのポイント

ARPUを向上して、売上アップにつなげる際のポイントは次のとおりです。

  • 料金の見直しを行う
  • 顧客ロイヤリティや満足度を高める
  • リテンションやリコメンドを適切に行う
  • アップセル・クロスセルを促進する

数値を上げるためにとるべき行動を、具体的に解説します。

料金の見直しを行う

料金プランを見直し、月額料金の改定や無料プランの提供機能の制限などの施策が求められます。ARPUの上昇を目的に据える場合、無課金ユーザーの課金プランへの変更を促し、売上に貢献するユーザーの比率を増やすことが重要です。

同時にプランの価格を上げ、1ユーザーから得られる利益を高める施策も効果的です。料金の見直しはユーザーの負担を増やす行為にほかならず、世間から批判を受ける可能性があります。

しかし、いつまでも無課金ユーザー向けにサービスを提供していては利益が見込めません。ユーザー数が減る可能性はあっても、ロイヤリティの高い優良顧客に絞ることは有効な戦略です。

料金の見直しを成功させるには、有料プランを魅力的にみせる工夫が求められます。課金額を増やしてでも利用したいと思わせるためにも、無課金ユーザーと課金ユーザーの間で提供する機能に差を付けることは致し方ありません。

顧客ロイヤルティや満足度を高める

ユーザーに多くの金額を投じる価値があると感じさせるには、顧客ロイヤリティや満足度の向上が必要です。ARPUの上昇には、一人ひとりの課金額を増やす施策が不可欠です。

いくら長期的に利用を続けているユーザーでも、突然値上げや機能の制限を迫られれば、提供元やサービスに不信感を抱くでしょう。顧客からの不満や怒りを防ぎつつ、課金額を増やすためには、信頼関係や愛着が一つのキーワードです。

顧客ロイヤリティはブランドや企業に対する信頼度を表す指標で、サービスへの感想を示す顧客満足度より広い概念だといわれています。顧客ロイヤリティを伸ばすには品質で競合に勝るだけではなく、コミュニケーションのとり方への配慮も求められます。

ほかのサービスでは得られない良質な顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の提供は、課金ユーザーに多くの金額を投じる価値があると思わせるために、極めて重要です。顧客ロイヤリティを上げるには、まず顧客の本心を正確に把握しないと始まりません。

有効な方法の一つが、NPS®(ネットプロモータースコア)の実施です。具体的な手法やメリットが知りたい方は、次の記事をご覧ください。

NPS分析の方法!数値をもとにしたネクストアクション

リテンションやリコメンドを適切に行う

リテンションで既存ユーザーとの関係性を維持したり、メールやアプリ内通知の配信によるリコメンドを実施したりする戦略も有効です。ARPUの向上には商品単価を上げるほか、購買頻度を高めて1ユーザーあたりの売上を増やす手法もあります。

自社の商材への興味関心をひくためには、企業側からの働きかけが重要です。ユーザーのデータを収集・分析し、適切な頻度で効果的なメッセージを配信し、購買意欲をそそりましょう。

注意点は、接触の回数は多ければ多いほどよいわけではありません。頻繁に連絡がありすぎるとユーザーから煙たがられ、企業やブランドのイメージが失墜する場合もあります。一方で、メールや通知が見落とされては無意味です。

リコメンドには一定以上の回数を担保しつつ、印象を悪化させないバランス感が求められます。ユーザーごとに心地よいコミュニケーションのとり方は異なるため、データをつぶさに分析し、数字に基づく客観的なアプローチを大切にしましょう。

顧客分析の手法や効率化に資するツールを知りたい人は、次のページをご覧ください。

顧客分析とは?分析の手順やフレームワーク、ツールを紹介

アップセル・クロスセルを促進する

ARPUを高める王道の戦略は、顧客単価の上昇です。利用中のサービスの上位プランをすすめるアップセルや、関連商材の追加購入を狙うクロスセルで、1ユーザーあたりの売上を伸ばすことが有効です。

ユーザーの負担は増えるため、提案を行う相手は慎重に見極める必要があります。リテンションやリコメンドと同様、一人ひとりの属性やサービスの利用状況など多方面のデータを収集・分析し、提案の通過角度が高いユーザーを抽出しましょう。

アップセルやクロスセルには、一定数を超える商品ラインアップが前提です。メインの商材では複数の料金プランを用意しつつ、関連商品を提供しないと、顧客単価の向上は難しくなるでしょう。

ベーシックな機能のサービスを無料、または格安で販売し、ユーザーからの印象を良く保ち、頃合いをみて高価な上位プランを提案する戦略もおすすめです。

ARPUでユーザーの利用状況を確認しよう

ARPUで一人あたりの平均的な売上がわかれば、ユーザーごとのサービスの利用状況を推測できます。

課金額が少ない相手にクロスセルやアップセルを行えば、提案が通過しやすいでしょう。無課金のユーザーにはアプローチを行わず、優良顧客のみに注力する方法も一つの手です。

いずれにせよARPUは企業が着目すべき重要な指標の一つです。定期的・継続的にデータを収集し、推移をみながら効果的な戦略の立案につなげましょう。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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