
インターネットを活用したコミュニティや、実際の会場を借りて行うイベントなどコミュニティマーケティングにはさまざまな形があります。
本記事ではコミュニティマーケティングの概念やできること、実際に有名企業が取り組んで成功した事例などを紹介しています。
コミュニティマーケティングとは

コミュニティマーケティングとは、直接商品やサービスを「売る」ためのものではなく「企業やブランドのファンを増やす」ためのものです。
企業の商品を買っている人たちが、いつも買っている商品に対してどのような評価をしているのかを知り、今後の商品開発、サービス提供、宣伝方針などに役立てます。
マーケティングには競争企業の分析を行う方法をはじめ、さまざまな手法がありますが、企業がユーザー同士を結び付け、意見を取り入れるのがコミュニティマーケティングです。
コミュニティマーケティングが注目を集める背景

従来のマーケティング手法では、顧客と契約を結ぶ段階までしか成果を出せないことが多いため、長期的な顧客を増やせません。
今は長期的な顧客を増やさないといけない時代なのです。
顧客のニーズの多様化
サブスクリプションサービスが業種を問わず普及し、継続的な顧客を欲しがる企業に対し、ユーザーも良質なサービスを長期的に提供してくれることを求めています。
そのため、顧客のニーズを把握することの重要性が非常に高まっています。
しかし、ライフスタイルが多種多様した現代で、正確にニーズを分析することは難しいでしょう。そのため、より多くの顧客の声を聞き、多数のニーズを効率的に把握できるコミュニティマーケティングが注目されるようになりました。
マスマーケティングの衰退
対象ユーザーを絞り込まず、すべてのユーザーに同じ方法でマーケティングを行う「マスマーケティング」は、今の時代には合わなくなっています。今は価値観に個人差が生まれ、購買傾向も人によって全く違うためです。
そのため、現在は特定の小さな市場にターゲットを絞りマーケティング活動を行うニッチマーケティングが一般的となっています。
とはいえ、ピンポイントで自社のサービス情報を効果的に発信できる場所を探すことは非常に難しいです。そのため、自社に高い興味関心を持つ人だけを集めることができるコミュニティマーケティングが注目されているのです。
SNSによる個人発信の影響力の増加
商品の購入を検討する際、SNSやWebサイトですでに購入した人の口コミを確認しようとする人はたくさんいます。
このように、個人発言の影響を無視できなくなったこともコミュニティマーケティングが広まった一因です。
口コミであれば、なんでも良いというわけではありません。
インフルエンサーなど有名人の意見よりも、主婦であれば主婦など同じ立場にいる人の意見の方が、購入を検討している人にとって参考になります。そのため一般の人の意見を集めることができるコミュニティマーケティングが有用とされるようになりました。
コミュニティマーケティングでできる4つのこと

コミュニティマーケティングでは、できることが多く、企業に大きな変化をもたらしてくれるでしょう。コミュニティを使ったマーケティングは、以下のようなことを実現できます。
新しいアイデアの発掘
コミュニティ参加しているユーザーに、商品の感想などを求めれば、企業の理解者から忌憚のない批評が聞けるでしょう。コミュニティに積極的に参加し、多く発言するのは企業のファンであり、長年愛着を持っている人が多いです。
ロイヤルティの高い消費者の率直な意見は、サービスを改良するうえでの新しいアイデアとなります。社内だけで企画している時には出ない、客観的な意見が集まることに期待できます。
カスタマーサポート業務のコストダウン
サービスを利用していて疑問に思ったことはカスタマーサポートに問い合わせて解決するのが一般的ですが、コミュニティならユーザー同士が知識を共有しあって、問題を解決できます。顧客間でできることが増え、企業の負担が減るためコストダウンになります。
サポート業務は24時間体制で行っている企業も多く、人件費が大きなコストになります。業務時間を減らしても、ユーザーコミュニティがあれば、サポート力は落ちません。
ブランディングの強化
コミュニティマーケティングをすることでロイヤルティの高いユーザーに引っ張られ、自然とファンが育成されていきます。企業のファンが増えることで「この商品と言えばこの企業」というようにブランディングが強化されます。
企業の商品の認知度が上がり、消費者から定番商品として認識されるようになれば、長期的に売上が安定するでしょう。
ファン同士の交流がさらに新たなファンを育成するので、多大な管理コストがかかることもありません。
口コミによる売上向上
コミュニティマーケティングを活用することで、良質な口コミを集めることができます。
商品やサービスは企業が発信する宣伝よりも、ユーザーが発信する口コミの方が影響力が高いです。一般的には従来の広告よりも、口コミの宣伝効果は10倍高いと言われています。
また、口コミは購買の判断において20-50%の影響力を持つとされています。
コミュニティを上手く運用し、ネットやSNS上で自社サービスの良い口コミを多数確認できる環境を作り出せば、売上増大に期待ができます。
コミュニティマーケティングの代表的な手法

コミュニティマーケティングにはオフラインイベントや、コミュニティサイトでのオンライン交流などがあります。
オフラインイベントの運用
オフラインイベントとは実際にユーザー同士が集まる「ユーザー会」のことを指します。
企業が主催し、ユーザーを集めディスカッションやインタビュー、新商品のモニター調査などを行うことが多いです。
集まった人たちのユーザー属性を分析したり、直接伺った意見をマーケティングに活用することができます。
また、関心があることについて同じ熱量で話せる人を繋げてあげることで、サービス自体を盛り上げることができます。
オンラインコミュニティの運用
オンラインコミュニティとは、ネットやSNS上に形成されるコミュニティを指します。
ディスカッションやインタビュー、モニター調査など基本的にオフラインイベントと内容は変わりありませんが、すべてをオンライン上で済ませることができるため、時間や地理による制限なく、多くのユーザーを集めることができます。
また、会場設営などの作業がない分、オフラインイベントよりも運用のハードルが低い点が特徴と言えます。
国内コミュニティマーケティングの成功事例

国内企業でコミュニティマーケティングを成功させた事例は以下の通りです。
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)
AWSは、Amazonによって提供されているクラウド・コンピューティングサービスです。AWSには、ユーザーたちが自由に交流を行えるコミュニティ「JAWS-UG」があります。
サービスを利用するユーザーであれば、自由に勉強会や交流会などのイベントを開くことができ、各イベントの開催に運営は関与しません。
ユーザーが自分たちで使い方を見つけて、自走できるシステムを作ったことにより、活発なコミュニケーションが行われるようになった1つの事例です。
ユーザーを管理することは大事ではありますが、ある程度は勝手に使えるという条件がコミュニティ運営において重要なのかもしれません。
トヨタ自動車 スポーツカー86
トヨタ自動車では、アプリを通じてオフラインの交流会を企画したり、ツーリングイベントを開催するなど、ファン同士の交流を促すイベントを多数開催しています。
スポーツカーのコミュニティは、専門的な知識がある人ではないと参加できない雰囲気がありますが、女子会などのユニークな企画を提供することで、初心者でも参加しやすい環境を作り上げました。また、マナーやルールづくりを事前に徹底して行ったことも、コミュニティ成功の鍵と言えます。
無印良品
無印良品では、「くらしの良品研究所」というコミュニティを活用し、お客様の声を製品に反映させています。
実際にユーザーの意見が採用された商品も多く、同社の有名商品である「人をダメにするソファ」も実はユーザーの意見をもとに1度リニューアルされています。
結果、このソファは20万個以上の売り上げを達成することに成功しています。ヒット商品の背景にはこうしたユーザーの意見を大切にしたリニューアルがあったのです。
コミュニティマーケティングを行うコツ

コミュニティマーケティングを取り入れるうえでのポイントを解説します。
関心の強い少人数からはじめる
ファンを育成するためには長期的な顧客で商品を多く買っている人限定にして、小規模なコミュニティからはじめましょう。
大規模なコミュニティを作ると、管理運用に多大なコストがかかってしまう可能性があります。まずは、勝手にコミュニティを活用し、使いだしてくれる層に初期ターゲットを絞って、運用を開始しましょう。
利益を生み出すための場所として捉えない
コミュニティマーケティングは、利益につながるステップのためのものであり、直接的にユーザーの利用料金などで利益を出すためのものではないことを意識しましょう。
大切なのは潜在顧客の関心を集めること、好感を持ってもらうこと、そして既存顧客の熱量を高めることです。また、ユーザーが発言しやすいようにするために、フラットな関係を築くことも大切です。
中長期的に活用をする
コミュニティマーケティングはすぐに結果が出るものではありません。コミュニティが成熟し、多様な価値観を持つユーザーが集まり、コミュニティ内に多くの情報が蓄積されてから真価を発揮します。
そのため、取り組みを行う期間は少し長めに設定をすべきでしょう。あきらかにコミュニティの盛り上がりが足りない場合は、構成員や開催するイベントの種類を見直してみるべきです。
解約(チャーン)防止や、LTV向上のためには、まずは適切なカスタマーサクセスのやり方を把握し、効率的に課題解決を進めていく必要があります。
CXinでは、カスタマーサクセス体制構築のお手伝いとなるよう、実際のカスタマーサクセス現場の声をもとにした【カスタマーサクセス白書】を無料配布しております。ぜひご活用ください。
