サブスクリプション型のビジネスがトレンドとなっている今、企業には顧客と長期的な関係を築くことが求められています。そこで注目されているのが、カスタマーサクセスという新たな組織です。本記事では、その組織のマネジメントを担うカスタマーサクセスマネージャーの役割や適性などについて解説します。
カスタマーサクセスマネージャーとは?
「カスタマーサクセスマネージャー」とは、カスタマーサクセス組織における責任者です。
「カスタマーサクセス」とは、直訳すると「顧客(カスタマー)の成功(サクセス)」のことで、文字通り顧客の成功体験を導くことをいいます。
従来は「カスタマーサポート」という受動的なアクションで顧客の不満を解消してきましたが、カスタマーサクセスでは能動的・積極的に顧客の成功体験を実現します。
カスタマーサクセスマネージャーを置く目的
カスタマーサクセスマネージャーを選任し、カスタマーサクセスを充実させることは、「顧客との関係を維持する」ことにつながります。
カスタマーサクセスは、「顧客のゴール」を見据えて能動的にアプローチします。最終的な目標地点は「顧客の利益と自社の利益を両立させること」です。
そのために、ありとあらゆる顧客の疑問や不満を把握し、サービスの利用方法やニーズにあったプラン、便利な機能などを提供することでそれらの課題を解決します。そうした取り組みから顧客満足度を高めることで、継続的な利用を促します。
昨今、サブスクリプション(月額制で商品・サービスを利用するビジネスモデル)が主流となりつつあります。その中で企業が利益を追求するためには、できるだけ長くサービスを利用してもらう必要があるのです。
「自社ではカスタマーサポートを設けているので十分」と考える方も多いのですが、カスタマーサポートだけでは自ら企業に問い合わせをする関心の高い顧客を維持することしかできず、見えない離脱を防ぐことは困難です。
受け身のカスタマーサポートに加えて、自発的なカスタマーサクセスに取り組むことで積極的に顧客成功を実現することができます。
その専任者としてカスタマーサクセスマネージャーが重要視されているのです。
カスタマーサクセスマネージャーの仕事内容
カスタマーサクセスマネージャーの仕事は「カスタマーサクセスを充実させること」ですが、カスタマーサクセスの在り方は企業により異なる部分が大きいのも事実です。責任範囲は一概に言い切れないのですが、あくまで代表的な仕事内容として、4つの業務について解説します。
オンボーディング
「オンボーディング」とは「顧客の定着化」のことです。カスタマーサクセスマネージャーは、サービス利用初期段階での離脱防止の役割を担います。
商品・サービスの利用最初期の顧客の悩みは、使い方や利用上のメリットなどの基本的な部分であることが大半です。仮に、その商品・サービスがその顧客の成功につながるものだとしても、使いこなせなければ意味がありません。
この時期のカスタマーサクセスの内容は、カスタマーサポートの運用やFAQの制作など、最初期の顧客が抱えるであろう悩みを前もって収集し、簡単に検索・閲覧してもらうための情報源を整えることです。これにより、使い方などがわからないことを理由とした顧客の離脱率を低下させることができます。
ナーチャリング
「ナーチャリング」とは、直訳すると「教育・育成」という意味であり、マーケティング分野においては一般的に「見込み客を自社の顧客にする」ことを意味します。具体的にはインターネット広告やメルマガ、オウンドメディア、セミナー、SNSなどの情報媒体を運用し、サービスの方法やカテゴリ全体の知識を発信することで、サービスへの理解を深めてもらいます。
まずは、顧客とのコミュニケーションを通じて「顧客が実現したいこと」を明確にすることが重要です。顧客にとっての成功から必要な情報を逆算し、発信することで見込み客を自社の顧客にすることができるでしょう。
カスタマーサクセスマネージャーが全てを担当するのではなく、メディアチームや広告チームと協力し、顧客の声をこれらのチームに共有することが主な仕事となります。
コミュニティマネジメント
「コミュニティマネジメント」とは、自社のコミュニティを運営し、コミュニティが健全に機能するように適宜アクションを行う業務です。
例えば「サービスの会員サイト」や「SNS」などファンを集めるためのコミュニティを運用することがカスタマーサクセスでの仕事となります。コミュニティでは、ユーザー同士が質問しあえる機能の提供、新商品の情報を発信、モニター募集、問い合わせ対応、問題のあるユーザーの対処などを行いうことで、カスタマーサクセスで最も重要となる「顧客の声」を集めることができます。
また、コミュニティマネジメントは自社のサービスを利用し満足をしたユーザーが周囲にその体験を広めてくれることから、新規顧客獲得の効果にも期待できるでしょう。
プロダクト改善
「プロダクト改善」は、カスタマーサクセスを通じて得た情報を開発部などにフィードバックし、商品・サービスの品質改善につなげる業務です。
ヘルスチェックやアンケートの実施、インタビューなどによって顧客インサイトを抽出します。これらの手法で得られた利用者目線の情報は商品改良の貴重な意見となるでしょう。
こうした意見をもとにプロダクト改善を行うことで、口コミ評判が良くなるため、顧客の離脱を防ぐことだけではなく、新規顧客の獲得にもつながります。
また、製品自体の改善ではなく新しい料金プランを追加することにより、アップセル(より高い水準の料金プランにグレードアップ)やクロスセル(利用中の商品・サービスに関連したプランの契約)を狙うことも可能です。
カスタマーサクセスマネージャーに向いている人の性格
カスタマーサクセスマネージャーは、上記のように事業の利益を高めるための重要な役割を担います。しかし誰でも適性があるわけではありません。
カスタマーサクセスマネージャーの仕事は事業内容により具体的な業務が異なりますが、上記で紹介した一般的な業務に向いている性格は以下の3つです。
人とのコミュニケーションを好む
「他人とのコミュニケーションが好き」という人は、カスタマーサクセスマネージャーの仕事に向いていると評価できます。
カスタマーサクセスマネージャーの仕事の中には、顧客や自社の人間とのコミュニケーションが欠かせません。他人とのコミュニケーションが苦手だと、必要な情報を吸い上げることも、得た情報を誰かにフィードバックすることも、満足にこなせないでしょう。
時には、外国人とコミュニケーションをとる必要がある場面だってあるかもしれません。言語能力や様々な文化に適応したコミュニケーション能力を持つ方はとくにカスタマーサクセスマネージャーに適していると言えるでしょう。
当事者意識が高い
当事者意識が高く、打たれ強いことも、カスタマーサクセスマネージャーの仕事に向いている性格であるといえます。
前述の通りカスタマーサクセスマネージャーの仕事ではさまざまな人と接することになります。顧客からは文句を言われ、自社の人間からは自分の提案が却下されるなど、投げ出したくなってしまう場面も少なくありません。また、成果が目に見えるまで多大な時間がかかることもあり、こうした状況が長く続く可能性も高いです。
それでも、自社の利益のためにはカスタマーサクセスを成功させなければなりません。その責任者であるカスタマーサクセスマネージャーは、起こり得る障害に対しても辛抱強くストイックに仕事をこなす性格が求められるのです。
ロジカルに考えられる
「ロジカルに考えられる」ことは、カスタマーサクセスマネージャーとして必要不可欠な性格であるといえます。
カスタマーサクセスマネージャーは、その仕事の中でさまざまなデータと向き合うことになります。そのデータに基づいて次の行動を決めるわけですが、世の中には「直観」や「経験則」といった部分に頼って行動原理を決める人も少なくありません。
カスタマーサクセスは、あくまでも直面しているデータや顧客の声をもとにして仕事を進めなければなりません。直観や経験則だけでは、顧客を理解してその成功を導くことは難しいのです。時には直感や経験則が活きる場面もあるでしょうが、基本的なところについてはロジカルな考え方で仕事ができる性格が活きる役職でしょう。
カスタマーサクセスマネージャーに求められるスキル
カスタマーサクセスマネージャーには、性格的な一面だけでなく、所持しているスキルによる適正もあります。スキルについては、業務をしながら身につけることもできますが、最初から持っているとスムーズに業務を進行できるでしょう。
プロジェクトマネジメント力
プロジェクトマネジメント力はカスタマーサクセスマネージャーとして大いに役立つスキルです。
カスタマーサクセスは、マネージャー1人が奮闘するのではなく企業全体で取り組む必要があります。とくに、これから自社ではじめてカスタマーサクセスを導入するというのであれば、さまざまな仕組みを作り上げ、カスタマーサクセスの土台を作る必要があります。
顧客の声を集める仕組みや、集めた声を社内で共有しサービスに反映する仕組みなど、ゼロからプロジェクトを設計する場面が多いため、業務の知見を深めてプロフェッショナルとしてプロジェクトをマネジメントして計画的に物事を進める力が重要となります。
コミット力
さまざまな問題を解決し、顧客の要望に応えるコミット力も、カスタマーサクセスマネージャーとして求められるスキルの1つとなります。
カスタマーサクセスマネージャーの仕事は、さまざまな問題と直面することになります。現状で顧客が持っている悩み、担当する商品・サービスが抱える課題をいかに的確かつ迅速に解決できるか、その手腕が問われることになるのです。
性格の話でも触れていますが、直感や経験則ではなく、得られたデータに基づいたロジカルな思考によって適切な解答を導き出し、それを現場にフィードバックする必要があります。自社の担当者を納得させるための実績などの説得力も問われることになるでしょう。
コミュニケーションスキル
前述の通り、カスタマーサクセスマネージャーはさまざまな人と仕事の中で接することになります。自らが率先して、顧客とやり取りをしたり、セミナーなどを開催する機会も少なくありません。
彼らとのコミュニケーションを円滑に進め、トラブルなく必要な情報を正確にやり取りするためのコミュニケーションスキルは必要不可欠だといえます。
カスタマーサクセスマネージャーのスキルアップ方法
こうした性格やスキルは、一朝一夕で自然と身につくものではありません。カスタマーサクセスマネージャーとして仕事をする中で磨かれるスキルもありますが、積極的にスキルアップするのであれば以下のような方法を取り入れることをおすすめします。
勉強会・セミナーへ参加する
「勉強会」や「セミナー」といったイベントに参加して勉強するのは効果的です。
こうしたイベントでは、過去に成功を経験している著名人が登壇することもあります。実際の成功例などを知ることで、自身のケースにおいても役立つ情報として仕事にフィードバックさせることができます。
ただし、こうしたイベントの中にはいわゆる「詐欺的」なものが含まれている点に注意が必要です。主催者や登壇者の情報や、何度か開催されているイベントであれば口コミ・評判を確認しておきましょう。
カスタマーサクセスに関する書籍を読む
「書籍」を読んで勉強することも、カスタマーマネージャーとしてのスキルを上げる方法としておすすめです。
最近、カスタマーサクセスに関する書籍が多数販売されています。とくに『カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』など、多くの方から指示を得ている書籍は一度チェックしてみてください。
なぜカスタマーサクセスが重要なのか、顧客にとっての成功とはなにかなど、基本的な情報をインプットすることで自社のケースに当てはめた施策を考えることができるでしょう。
解約(チャーン)防止や、LTV向上のためには、まずは適切なカスタマーサクセスのやり方を把握し、効率的に課題解決を進めていく必要があります。
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