
ペルソナとは、商品・サービスを提供する対象者に対して具体的な人物像を設定することです。ただし、ペルソナを設定する際には企業の考えに基づいた「架空のペルソナ」が設定されがちなため、顧客心理を把握した「事実のペルソナ」を設計する必要があります。
この記事では、ペルソナの意味や語源、ペルソナを設定する重要性、設定するメリット・デメリットなどについて解説します。ペルソナの設定に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
ビジネスにおけるペルソナとは
まずは、ビジネスにおけるペルソナの意味や語源、ターゲットとの違いなどについて解説します。ペルソナ設定において検討したい要素も紹介するので、ペルソナについて具体的なイメージが持てるようになりましょう。
ペルソナの意味
ビジネスにおけるペルソナは、主にマーケティング領域で用いられる用語です。企業が商品・サービスを顧客に提供する際、どのような顧客に向けた商品・サービスであるか、顧客の具体的な人物像を設定することを指します。
主に「ペルソナを設定する」といったような使われ方をし、ペルソナを設定する際には実際に存在するような人物をイメージして、具体的な人物像を設定するのが特徴です。
人物の性別・年齢層はもちろん、学歴、職歴、年収、生い立ち、家族構成、ライフスタイル、趣味嗜好、価値観など、あらゆる属性を検討していきます。
ペルソナの語源
ペルソナの語源は、ラテン語の「persona」に由来します。personaの意味は、人格や位格(他者に対して区別される主体、人に対して使われる際には人格を意味する)などです。
personaは人間の外的側面を表す言葉として使われていましたが、マーケティング領域でも次第に使用されるようになったことで、商品・サービスを提供する人物像を意味する言葉になりました。
また、英語で人を意味する「person」もpersonaに由来しており、外見や内面を含めた人という意味で使われています。
ペルソナとターゲットとの違い
ペルソナと似た言葉に、ターゲットという言葉があります。ペルソナと同じように、ターゲットも商品・サービスを提供する際の人物像を指す言葉です。
ペルソナとターゲットの大きな違いは、設定する詳細度合いにあります。
ターゲットは、いわゆる属性で分類したものです。
- 30代、男性、会社員、既婚など
一方のペルソナでは、さらに具体的な人物像を作り上げます。
- 30代、男性、東京都在住、会社員、既婚(妻、息子2人、3人家族)、賃貸マンション暮らし、年収、勤務先、部署、役職:リーダー、勤続年数、学歴、趣味嗜好、休日の過ごし方(ライフスタイル)、悩み、考え方など
ペルソナでは、商品・サービスを提供する顧客の解像度を高めて理解を深めるため、具体的な人物像になるよう詳細な項目まで決めるのが特徴です。
ペルソナ設定において検討したい要素
実際に、ペルソナ設定の際に検討したい要素について解説します。検討したい要素として、次のような項目が挙げられます。
- 年齢
- 性別
- 身長体重
- 居住地域
- 住居情報(持ち家、実家、賃貸など)
- 職業
- 部署
- 役職
- 年収
- 通勤時間
- 最終学歴
- 家族構成
- 趣味
- 交友関係
- 1日のスケジュール
- よく使うSNS
- 情報収集方法
- よく見るテレビや映画、動画など
- 好きなブランド
- 現在の悩み(プロジェクトに関わる分野での悩み)
- 悩みを解決して、どうなりたいか
- 将来の夢 など
個人の特徴が問われる項目では、できるだけ具体的な設定が必要です。たとえば、趣味がゲームであれば、どういったジャンルのゲームが好きなのか、媒体はスマホなのかテレビなのかまで詳細に決めましょう。それによって、その人の行動・心理に対する解像度が上がります。
そのほか、1日の流れを検討することも重要なポイントです。どういったタイミングで何をしているのか、どのような媒体を見ているのかなどの行動パターンがわかることで、自社との接点を持つタイミングを把握できます。
ペルソナを設定するメリット
ペルソナ設定によるメリットを紹介します。主なメリットは、次の3つです。
- 顧客のニーズの解像度が上がる
- マーケティングの精度を高められる
- 担当者間で具体的な人物像を共有できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
顧客ニーズの解像度が上がる
ペルソナを設定することで、商品・サービスの提供対象となる顧客ニーズの解像度が上がります。顧客の潜在的なニーズが見えてくることによって、顧客の表面的な要望ではなく、顧客の本質的な欲求や課題を捉えられるようになります。その結果、ペルソナが求める具体的な商品・サービスの開発が可能です。
ペルソナを詳細に設定しすぎることで、「1人」にしか売れない商品・サービスが生まれるのではないか、と感じる人もいるでしょう。しかし、実際には「1人」が持っているニーズは、ほかの多くの人も持っているものです。
つまり、「具体的な1人」のニーズを満たした商品・サービスを開発することが、多くの人の心に刺さりやすい商品・サービスを生む秘訣となります。
そのため、顧客ニーズを分析する際にはペルソナ視点に立って、表面的なニーズから潜在的なニーズまで掘り下げていくようにしましょう。
マーケティングの精度を高められる
設定したペルソナをもとにマーケティング施策を立てることで、マーケティングの精度を高められる点もメリットです。
ペルソナが具体的に設定されていれば、広告の内容や配信方法、配信時間などの訴求方法も想像しやすくなります。
また、ペルソナの1日のスケジュールやよく見る媒体・SNS、悩みなどにあわせて広告を配信すれば、高い反応率を期待できるほか、ファン化や売上アップも期待できるでしょう。
たとえば、読書(本の小説を読む)が趣味の会社員を対象に、マーケティングをする場合を考えてみましょう。
単に読書が好きな人という設定だけだった場合、読書といっても、どういったジャンルが好きなのかわかりません。また、書籍で読むのか電子書籍で読むのかによっても、目にする広告媒体も変わってきます。
「本のジャンルとしては、小説よくを読む人」といった詳細な設定ができていれば、マーケティング施策としてどういったチャネルでどのような訴求を行えば良いのか、見当をつけることができます。
ペルソナを詳細に決めることで、最善のマーケティング方法を選ぶことが可能です。
担当者間で具体的な人物像を共有できる
ペルソナを設定することで、担当者間で具体的な人物像を共有できるようになります。施策や製品の精度・質を高めるためには、担当部署間での認識の共有が欠かせません。
もしも、ざっくりとしたターゲットしか設定していなかった場合、担当者が思い浮かべる人物像はそれぞれで異なるでしょう。しかし、ペルソナを設定できていれば、部署や職種が異なっても、メンバー全員が同じ人物像を思い描けるようになります。
たとえば、「30代女性、事務職、カフェ巡りが好き」というターゲットを考えてみましょう。このターゲットでは、人によって思い浮かべる人物像はさまざまです。
カフェの中でも、「おしゃれなカフェ」が好きならば、おしゃれといってもどういったおしゃれが対象なのか(古民家カフェ、北欧系の家具が置いてあるカフェなのか、など)は、人の感性によって変わってきます。
「30代女性、事務職、古民家カフェを巡って、お店おすすめのコーヒーを飲むのが好き」とペルソナ設定すれば、趣味や好きなものなどが具体的になるため、メンバー間のズレも少なくなるでしょう。
また、ペルソナについて資料を見るだけで人物像を共有できるため、コミュニケーションコストの削減にもつながります。

ペルソナを設定する際の問題点
ペルソナ設定はメリットだけでなく、設定する際に問題点も存在します。それぞれの問題点について詳しく見ていきましょう。
ペルソナの作成に時間がかかる
ペルソナの作成には時間がかかることは、あらかじめ理解しておきましょう。ペルソナの設定は、自社がターゲットとする人物像を詳細に表したものです。
年齢や性別はもちろん、居住地域や職業・部署・役職、年収、家族構成、趣味、1日のスケジュール、悩み……など、細かなレベルで考慮する必要があります。
ペルソナ設定が曖昧な場合、顧客ニーズを的確に捉えられません。そのようなペルソナをもとにした商品・サービスを開発してしまうと、需要にあっていない商品・サービスができあがってしまい、売上にはつながらない可能性があります。
また、ペルソナを設定する際は、主観だけで設定するのではなく、今まで行ってきたマーケティング施策の結果や営業情報なども加味して、顧客ニーズを深く分析するようにしましょう。
複数のペルソナ設定が必要になることがある
ペルソナを設定する際に、複数のペルソナ設定が必要になる場合もあります。企業で取り扱う商品・サービスが多い場合やそれぞれの特徴や価格帯が異なる場合には、利用する顧客の属性の幅も広がるため、それぞれの商品・サービスごとのペルソナ設定が必要です。
ただし、複数のペルソナを設定すると、管理が難しくなるだけでなく、それぞれのペルソナの違いが曖昧になってしまう恐れがあります。違いが明確でないとペルソナとして機能しないため、違いを意識しながら設定するようにしましょう。
また、複数のペルソナを設定することは、それだけリソースも必要です。ペルソナの作成には時間がかかるため、必要とするペルソナ設定かどうかの見極めも肝心です。
架空のペルソナ設定に陥りやすい
前述したように、ペルソナを設定するときには具体的な人物像になるよう詳細な項目まで決める必要があります。その際に注意したいのが、「架空のペルソナ」を設定していないかという視点です。
企業がペルソナを設定する場合、企業の独りよがりなペルソナを設定しがちです。たとえば、自社の顧客を想定して「こういう人物が商品・サービスを利用するだろう」と仮定してしまいます。
そうすると、実態に伴わない架空の人物像を設定してしまうことになるため、顧客ニーズを正確に把握できず、結果的にマーケティング精度も上がらず売上につながりません。求められるのは、「架空のペルソナ」ではなく、顧客心理を追求した「事実のペルソナ」です。
顧客心理を把握する際には、「coorum(コーラム)」の活用がおすすめです。「coorum(コーラム)」では顧客の声から顧客心理や使用実態などを把握できます。精度の高い「事実のペルソナ」を設定するためにも、ぜひ「coorum(コーラム)」をご活用ください。
ペルソナの設定手順
ペルソナの設定手順について解説します。ペルソナを設定する流れを理解して、適切なペルソナを設定できるようになりましょう。
1.自社分析を行う
ペルソナを設定する前に、まずは自社分析を行いましょう。自社の商品・サービスの強みや弱み、他社との差別化ポイントを明確にして、ペルソナに反映させることが重要です。
自社の強みや弱みを明確にすることで、その時点で自社商品・サービスがどういった人物に需要があるのかないのかが、浮き彫りになります。
自社の強みや弱みを明確にするためには、市場の状況や他社について研究するとよいでしょう。市場における自社の立ち位置を把握したうえで、自社と他社との違いを分析することで自社の強み・弱みが見えてきます。
たとえば、「展開する食品シリーズの展開数の少なさ」が自社の弱みとして考えられる場合は、他社を参考に人気商品のシリーズ化などを検討するとよいでしょう。
また、同時に自社が狙いたい顧客を改めて検討することも大切です。自社分析の結果、需要のある顧客と自社が狙いたい顧客に相違がないか検証しましょう。その際も、企業よがりの顧客設定ではなく、あくまでも需要のある顧客に対して目を向けることが重要です。
2.顧客情報を収集・分析する
自己分析を行ったあとは、顧客情報の収集・分析に取り組みましょう。性別や年齢、職業、趣味といった基本的な顧客属性情報を調査するだけでなく、顧客の生の声に耳を傾けるとペルソナ設定に活用できる要素が見つかりやすくなります。
顧客の声に耳を傾ける際には、インタビューや顧客アンケートの活用が有効です。「なぜこの製品を選んだのですか?」「この商品でどのような悩みや不満を解決できそうですか?」「B社の製品でなく、なぜA社のこの製品なのですか?」など、顧客の心理や行動の背景を探る質問を投げかけましょう。
さらに、SNSの口コミを確認することで、顧客の本音や不満をチェックできます。また、ホームページへのアクセス解析や顧客の購買データ、行動履歴などの自社で持つデータを分析すれば、ペルソナの要素をより具体的にできるでしょう。
能動的に発信された顧客の心理・使用実態を顧客ID単位で収集・分析したいのであれば、「coorum(コーラム)」の活用が有効です。上記で挙げたようなインタビューやアンケートでは、顧客は受け身で回答しがちですが、「coorum(コーラム)」では、顧客が能動的に発信する仕組みにより、顧客の本音データを顧客ID単位で収集・分析可能なため、ペルソナ設定に役立てられます。
3.ペルソナの設定項目を決める
顧客情報を収集・分析したら、いよいよペルソナの設定項目を決める段階です。ペルソナを設定する際には、具体的な項目について考える必要があります。顧客の個性を掘り下げられるよう、項目を細かく考えていきましょう。
設定項目としては、前述した次のようなものが挙げられます。
- 年齢
- 性別
- 身長体重
- 居住地域
- 住居情報(持ち家、実家、賃貸など)
- 職業
- 部署
- 役職
- 年収
- 通勤時間
- 最終学歴
- 家族構成
- 趣味
- 1日のスケジュール
- よく使うSNS
- 情報収集方法
- 現在の悩み(プロジェクトに関わる分野での悩み)
- 悩みを解決して、どうなりたいか
- 将来の夢 など
4.具体的な人物像を作る
設定項目が決まったら、設定項目に従って具体的な人物像を作成していきましょう。どのような会社に勤めて、どういったポジションでどのような業務に携わっているのか、抱える悩みや課題、趣味、将来の夢など、「1人」の人間としての要素を物語に落とし込んでいきます。
その際、顧客視点を忘れないように、1人称で物語に落とし込むのがコツです。また、その人物をイメージした写真やイラストを加えたり、その人物が商品・サービスを手に取るまでの物語のイメージを加えたりすると、より具体化しやすくなります。
まずは大枠を作ってから、詳細情報を肉付けしていきましょう。
<人物像の例>
- 山田太郎
- 45歳
- 男性
- 175cn、65kg
- 東京在住
- 賃貸マンション
- 会社員
- 食品メーカー
- 商品開発部
- 部長
- 年収1,000万円
- 通勤時間40分
- ○○大学○○学部卒業
- 妻、息子2人
- 趣味は山登りやキャンプ
- 出社前にお弁当を作って、早いときは8時に家を出て出社、帰りは19時頃
- Xをよく見る
- 新聞やインターネットで情報収集することが多い
- 妻も働いているため、子どもたちの夜ご飯作りも交代で担当
- 料理が得意ではないが、見た目にも量的にも満足できる食べ盛りの子ども向けの冷凍食品があればと考えている
5.定期的な見直しと改善を行う
ペルソナは一度設定したら終わりではなく、定期的に見直しを行うことが重要です。
顧客のニーズや嗜好は常に変化するほか、自社を取り巻く環境も変わります。ペルソナを常にアップデートして、最新の状況にあわせて見直しと改善を行っていきましょう。
その際は、顧客アンケートを再度実施したり、サイトのデータを再度分析したりすると有効な情報が得られます。

ペルソナを設定するときの注意点
ペルソナを設定するときの注意点も、あわせて確認しておきましょう。ここでは、主な注意点を4つ紹介します。
先入観や思い込みで設定しない
商品・サービスに対して強い先入観や思い込みがあると、正しくペルソナを設定できない可能性があります。
また、自社にとって都合のいい顧客をペルソナとして設定すると、実際の顧客と異なった人物像が設定されてしまい、顧客のニーズの解像度が下がり、望んだマーケティング効果を得られません。
自社で持つ客観的データをもとに、実際の状況に即したペルソナを設定することが重要です。企業の独りよがりな「架空のペルソナ」ではなく、「事実のペルソナ」に近づけるためには、顧客心理の理解が欠かせません。
そこでおすすめなのが、「coorum(コーラム)」の活用です。「coorum(コーラム)」を通じて、顧客との継続的な接点を作ることで、顧客の心理・使用実態をいつでも好きなときに収集できます。
収集した顧客データは、顧客単位で分析が可能です。ペルソナ設定に役立つほか、ニーズやインサイトを把握することで、商品企画や開発にも反映できます。
シンプルな設定にする
ペルソナを設定するときには、シンプルな設定にすることが大切です。ペルソナを設定する際には、盛り込みたい要素が数多くあります。しかし、すべてを盛り込んでしまうと、人物像が複雑化してしまい、結果的に「事実のペルソナ」からそれてしまいます。
大事なことは、「事実のペルソナ」を設定することです。本当に必要な情報だけを抜粋して、なるべくシンプルなペルソナ設定にするようにしましょう。
現実的な人物設定を心がける
ペルソナを設定する際の「架空のペルソナ」設定を回避するためには、身近な人を参考にしてみるとよいでしょう。
芸能人や著名人のような人ではなく、誰もがイメージしやすい身近な人物を参考にすると、具体性があって共感を得られる「事実のペルソナ」に仕上がります。
そのためには、顧客の声を知ることが大切です。「coorum(コーラム)」を活用して、顧客の心理・使用実態を収集してみてはいかがでしょうか。
設定を定期的に見直す
設定したペルソナが、間違っている可能性もあります。また、顧客のニーズや自社が置かれている環境は日々変化しているものです。
ペルソナの設定ミスやズレを回避・修正するうえでも、ペルソナ設定は定期的に見直しましょう。それにより、顧客とのズレがなくなり、常に顧客が求めるものを商品やサービスに反映させられるようになります。
ペルソナ設定には「coorum(コーラム)」の活用がおすすめ
ペルソナは、顧客ニーズの解像度を上げたり、マーケティングの精度を高めたりするうえでは重要な要素です。そのためにも、企業の独りよがりな「架空のペルソナ」ではなく、顧客心理を追求した「事実のペルソナ」を設計する必要があります。
ペルソナを設定する際に、先入観や思い込みで設定せず、現実的な人物設定を心がけるとよいでしょう。
「coorum(コーラム)」を活用すれば、顧客とのコミュニケーションを強化できます。さらに、顧客と継続的な接点を構築できるため、いつでも好きなときに顧客の声を収集できます。
顧客の声から、顧客の心理・使用実態なども把握でき、ペルソナ設定に役立てられるでしょう。また、顧客ニーズやインサイトを把握することで、商品企画や開発、マーケティング施策にも反映できるのが、「coorum(コーラム)」の魅力です。
ペルソナ設定に「coorum(コーラム)」をぜひご活用ください。
