ファンベースマーケティングとは?必要な理由や成功事例を紹介

2023-06-19 2024-05-31 コラム

ファンベースマーケティングは自社のファンを増やし、売上アップや他社との差別化を図るマーケティング手法です。市場が成熟する時代に企業が生き残るには、既存顧客を大切にしてファンを育成することが求められています。本記事ではファンベースマーケティングの意義や注目されている背景、成功させるポイントをご紹介します。

変わりゆく消費行動とマーケティング環境から考える、ロイヤル顧客(ロイヤルカスタマー)とコミュニティの重要性

ファンベースマーケティングとは

ファンベースマーケティングとは、自社の商品・サービスに愛着を持つファンをベースにマーケティングを行う手法です。ファンの意見を聞き、ファンの声を反映した商品・サービスの開発を考えながらマーケティングを行います。

ファンベースマーケティングが注目されるのは、人口減少や市場の縮小による新規需要の減少などがあげられます。

ここでは、ファンベースマーケティングの概要や注目される背景についてみていきましょう。

ファンをベースに売上を上げる方法

ファンベースマーケティングは、自社に共感し、愛着・信頼を持つファンを大切にして企業のブランディングを図るマーケティング手法です。すべての経営判断の中心に顧客を置いて考えます。

ファンは一過性の消費者ではありません。ファンが商品・サービスを選ぶ基準は性能やデザイン、価格といった価値ではなく、その企業が持つブランド価値であり、企業の商品・サービスを長く利用し続けてくれる存在です。

自社の売上アップを支えるとともに、口コミや紹介により新規顧客の獲得にも貢献します。これまでのマーケティング手法のように会社が新規顧客を増やすのではなく、ファンを育て、ファンを通して新規顧客を獲得する方法として注目されています。

ファンベースマーケティングが注目される背景

ロイヤル顧客が注目されてる背景
ロイヤル顧客が注目されてる背景

ファンベースマーケティングが注目されているのは、少子高齢化により新規顧客の需要が減り、市場が縮小傾向にあることが理由のひとつです。これまでと同じマーケティング手法では、新規顧客を獲得するのは難しい状況になっています。

既存顧客によるリピート消費をいかに増やすか、一人の顧客とどれだけ長く付き合うことができるかが企業の今後を左右するといえるでしょう。

また、日本は多くの商品が高い普及率となっている成熟市場であり、同じような商品・サービスを提供していては売上を上げるのが難しくなってきています。多くの領域で品質が向上し、性能や価格だけでは他社の商品と差別化することは困難です。成熟した市場で生き残る手段として、ファンベースマーケティングが注目されています。

インターネットの普及で情報があふれていることも、ファンベースマーケティングが重視される理由です。膨大な情報が発信される中で自社の情報は埋もれ、ますます消費者に届きにくくなっています。情報を新たに届けて新規顧客を増やすよりも、既存顧客を大切にしてファン化するファンベースマーケティングが必要とされているのです。

ファンマーケティングとは?メリットや戦略、成功事例を紹介

ファンベースマーケティングが重要な理由

ファンベースマーケティングが重要とされるのは、以下のようなメリットがあるからです。

  • 売り上げが安定する
  • 費用対効果が高い
  • 他社と差別化できる

売上の多くはファンが支えており、ファンを増やすことが売上増加につながるというメリットがあります。また、新規顧客よりも既存顧客を増やす方が費用対効果が高いことも理由のひとつです。

ファンベースマーケティングが重要とされる理由について、詳しく解説します。

売上が安定する

パレートの法則
パレートの法則

ファンベースマーケティングでファンを増やすことは、売上が安定するというメリットがあります。顧客の20%が売上の80%を支えているという、イタリアの経済学者ビルフレッド・パレートが提唱した法則があります。集団の報酬や評価が一部の構成員に集中するという経験則です。

売上の多くは全体の20%にあたるファンによってまかなわれていることを意味します。20%のファンを大切にすることで売上全体の80%程度は安定することになり、さらにファンを育成してコアなファンを増やせば、より売上アップに貢献するということです。

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費用対効果が高い

ファンベースマーケティングは費用対効果が高いことも、重視される理由です。新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストに比べて5倍かかるという法則があります。

「1:5の法則」と呼ばれるもので、新規顧客の獲得はコストが高いにもかかわらず利益率が低く、新規顧客の獲得以上に既存顧客の維持が大切であるという法則です。

既存顧客は一度商品・サービスを利用しており、再度利用してくれる可能性の高い存在です。中長期的に商品・サービスを利用し続ける顧客となる可能性が高く、企業に対しての愛着・信頼が高い顧客ほど、長く利益をもたらす可能性が高くなります。

既存顧客を大切にするファンベースマーケティングは、少ないコストで大きな利益をもたらす費用対効果の高いマーケティング手法といえるでしょう。

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他社と差別化できる

多くの商品・サービスが普及している市場は選択肢が多く、選ぶときに迷って決めきれずに諦めるということにもなりがちです。選択肢が多い市場では、かえって消費行動が控えられる傾向になります。

選ぶものがありすぎて選べない状況の中で、「すでに知っていて使い慣れている商品・サービス」は安心して選べます。成熟した市場では同じような商品・サービスで新たに参入するのではなく、商品・サービスを熟知している既存顧客を大切にすることが他社と差別化できるポイントです。

ファンベースマーケティングを成功させるポイント

ファンベースマーケティングを成功させるには、いくつかのポイントがあります。企業ブランドの価値を高め、ファンの共感を呼ぶことがそのひとつです。

さらに、企業への愛着や信頼といった顧客ロイヤリティを高めること、熱狂的なファンを育成して唯一無二の存在になることで、LTV(顧客生涯価値)を向上させます。

ファンベースマーケティングを成功させるポイントについて、詳しくみていきましょう。

ブランド価値を高めて共感を呼ぶ

ファンベースマーケティングで大切なことは、企業ブランドの価値を高め、ファンの共感を呼ぶことです。人は価値観が近いものに共感を覚えます。企業が大切にしていること、伝えたい想いなどを積極的に発信することで、同じような価値観を持つ人からの共感を集めることが可能です。

ブランド価値への共感を獲得すれば、安さや流行に左右されて他に流されるということなく、自社の商品・サービスを利用し続けてくれることが期待できます。

想いを伝えて愛着を強める

企業への愛着を強め、他に代えがたいものにすることがファンの育成につながります。企業ではひとつの商品・サービスを作り上げるまでにさまざまな試行錯誤を繰り返し、困難を乗り越えています。それらをベースにファンが共感しやすいストーリーを作ることで、ファンの心をつかむことができるでしょう。

商品・サービスへのこだわりを伝えることで、商品・サービスに対する愛着が生まれます。ファンの意見を取り入れて開発された商品・サービスであれば、「ファンを大切にしている」ことが伝わり、より愛着が強まるに違いありません。「長く利用したい」と思ってもらえます。ドラマ仕立てのストーリーを作ることで、ファンは企業をより近い存在として認識するようになるでしょう。

企業の評価を上げて信頼度を高める

商品・サービスは良くても企業のイメージが良くなければ、ファンを獲得することはできません。企業のイメージや評価は、ファンの信頼を獲得するために不可欠です。企業の評価を高めるには常に誠実であることを意識し、顧客を大切にする姿勢を見せることが大切です。

商品・サービスの開発や新しい施策がファンベースになっているかも意識しなければなりません。開発・製造の工程などの内部も可能な限り紹介することで、誠意が伝わるでしょう。

まず社員が企業のコアなファンになることも必要です。ファン目線になって商品・サービスを紹介することで想いが伝わりやすくなり、信頼の獲得につながります。

熱狂され、唯一無二の存在になる

ファンの共感・愛着・信頼をさらにアップグレードすることで、熱狂的なコアファンを育てることができます。ブランド価値をより前面に出し、ファンを身内として大切に扱いながら、ともに価値を高めます。価値はほかに代えられないものになり、唯一無二の存在になるでしょう。そのためには、忘れられない体験や感動を作ることも大切です。

コアなファンを増やすことでLTV(顧客生涯価値)も上がります。LTVは「Life Time Value」の略で、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの間にどれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。LTV の最大化により収益が安定し、マーケティングコストを削減できます。

LTV(ライフタイムバリュー)とは?注目される理由や向上に役立つ施策を紹介

熱狂的なコアファンの育成に役立つのが、コミュニティサイトの運営です。コミュニティサイトを通して顧客同士が交流でき、仲間意識を育みます。商品・サービスに関する意見交換が行われ、開発のヒントを得たり商品・サービスの改善に役立てたりすることができます。

ユーザーの意見を参考にした商品・サービスを提供することで、顧客の愛着や信頼感も高まるでしょう。顧客ロイヤリティを高め、より熱狂的なファンを増やします。

コミュニティサイトの構築をサポートするサービスとしておすすめなのが、coorumです。coorumでは、会社の目的に合わせたコミュニティサイトの構築をサポートしています。

コミュニティの初期設計から支援し、コミュニティの核となるユーザーの選定など初期の立ち上げもサポートするサービスです。多種多様なコミュニケーション機能を備え、ロイヤル顧客の育成・蓄積を実現します。

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ファンベースマーケティングの事例

ファンベースマーケティングをこれから始める際には、実際の成功事例が参考になります。

消費者ニーズに応じた独自の施策で認知度を広げ、ファンの育成に成功したビール製造メーカーや、コミュニティサイトで長期的なファンとの関係構築を行う大手菓子メーカーなどの事例があげられます。

ここでは、ファンベースマーケティングに成功している3社の事例をご紹介しましょう。

株式会社ヤッホーブルーイング

株式会社ヤッホーブルーイングは、長野県に本社を置くビール製造メーカーです。地ビールメーカーとして業界大手であり、ビールメーカー全体でも大手5社に次ぐ規模を誇ります。

徹底したファンベースのマーケティングが特徴で、年に1回のファンイベントを通して熱狂的なファンを獲得してきました。

商品が美味しくないと支持を得られず、その後のファン形成につながらないと考え、市場投入する前に他との圧倒的な差別化を目指す製品ブランド開発を心がけています。その一環として、個性的なネーミングとパッケージデザインを考え、クラフトビールの中で最も高いレベルかつ安定した品質を狙っている戦略が特徴です。

製品開発ではコンセプトや飲用シーンなど細部にこだわったペルソナを設定し、ペルソナに該当する少数のモニターに聞きながら製品開発を進めていくというプロセスをとっています。ペルソナを詳細に設定したことで、製品は狙ったターゲット層に高く評価されました。

そのようなファンベースマーケティングの結果生まれたのが、「よなよなエール」や「水曜日のネコ」といったユニークなネーミングと個性的なラベルデザインのビールです。

こだわりのブランドを長く育てることが他社との差別化につながり、コアなターゲット層からの熱心な支持を獲得しています。

森永製菓株式会社

大手菓子メーカーの森永製菓株式会社は、2013年からファンコミュニティ「エンゼルPLUS」を運営しています。コミュニティは商品を売るための場ではなく、あくまでも会員にコミュニティを楽しんでもらうことを第一に考えているのが特徴です。

サイトは2021年時点で約48万人の会員を抱え、高いアクティブ率を維持しています。長期間の運営により、商品認知と顧客ロイヤリティの向上が図られてきました。

コミュニティ開設のきっかけは、広告を取り巻く環境の変化に危機感を抱いたことです。近年はテレビなどのマス媒体に加え、Web広告なども一般化して広告素材が増えてきています。そのため、従来のような広告モデルだけでは限界を感じたということです。お菓子は他ブランドと差別化が難しいという点も、ファン・コミュニティー・サイト開設の理由としています。

また、数多くのお菓子が店頭に並ぶなかで同社の商品を「指名買い」してもらうためには、ファンになってもらう必要があると考えました。そのためのアプローチがファンコミュニティサイトの開設です。


サイトでは会員が新商品や期間限定商品を店舗で見つけて画像を投稿し、他の会員への商品認知が広がるという運営が行われています。担当者も積極的に会員と交流し、オフラインでもコミュニケーションを深め、会員数は増え続けている状況です。

同社は製品だけでなく企業自体のファンも多く、質問やアンケートには多くの回答が得られています。コミュニティは企業とファンとの共創の場ともなり、商品開発の計画もあるということです。

サイボウズ株式会社

ソフトウェア開発を手掛けるサイボウズ株式会社は、コミュニティサイトの「キンコミ」を運営しています。「すごくなくてもいい」をコンセプトに、誰でも気軽に参加できるサイトを目的にしています。

同社は設立以来エコシステムを重視し、ファンづくりをモットーにしてコミュニティの構築に注力していました。同社が提供する業務改善のクラウドサービス「kintone」のユーザーがスムーズに製品を活用できるようにしたいというのが、「キンコミ」立ち上げのきっかけです。

非公開: BtoB・SaaS企業のコミュニティ担当者が話します!ユーザーカンファレンス サイボウズ様×オービックビジネスコンサルタント様 パネルディスカッション

これまでもSNSや全国各地での勉強会などで顧客同士の交流やノウハウの共有はあったものの、心理的なハードルを感じて参加できない顧客もいたということです。

「キンコミ」を通じてコミュニティに気軽に参加する人が増え、これまで発言できなかった顧客でも安心して参加できるようになりました。今後は、コミュニティの書き込みに対するハードルをできる限りなくし、誰もが参加できる場にしていきたいということです。

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ファンベースマーケティングで熱狂的なファンを増やそう

ファンベースマーケティングはファンをベースにし、中長期的に売上や企業価値を高めるマーケティング手法です。少子高齢化や成熟市場といった時代には、売り上げを支えるファンの存在が欠かせません。

ファンの共感を得て愛着や信頼を獲得することで、顧客ロイヤリティを高めることができます。ファンベースマーケティングの実施でコアなファンを増やし、LTVを向上させましょう。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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