カスタマーサクセスとは、顧客の成功を目指し、購入・契約後の利用者に対してさまざまなサポートを行うポジションのことです。サブスクリプション型のビジネスモデルが隆盛を極めるなか、企業の利益を最大化するために重要な役割です。今回は、カスタマーサクセスの定義や代表的な業務、成功のポイントなど解説します。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスは、製品やサービスを購入・契約した顧客の成功を目指し、自社でできる最大限のサポートを能動的に行うポジションです。よく似た言葉にカスタマーサポートがありますが、両者の目的や業務内容には明確な違いがあります。
まずは、カスタマーサクセスが何をする仕事か正確に理解しましょう。
カスタマーサクセスの定義
カスタマーサクセスを直訳すると「顧客の成功」で、単に製品やサービスを販売して終わりではなく、購入後の継続的なサポートを通じて、顧客の満足度を高めることを目指します。
ビジネスの流れで考えると、インサイドセールスが獲得した見込み顧客にフィールドセールスが接触し、契約に至ったあとに登場するポジションです。
契約後も定常的に利用状況をヒアリングし、自社のサービスに不安や不満を抱いていないか、新たな要望やニーズは生まれていないかつぶさに観察します。
ビジネスライクな関係ではなく、密にコミュニケーションを図り、ウィンウィンの間柄を目指します。カスタマーサクセスは、顧客の成功を目指してともに走るパートナーと考えましょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサポートは顧客の不満解消を目的に、製品の使い方や操作手順などの問い合わせ対応する、いわばマイナスをなくす役割です。
カスタマーサポートでは顧客を成功に導く目的があり、付加価値を提供してプラスをもたらすポジションだといえます。
カスタマーサポートの場合、顧客から不満や要望を受けてからアクションを取りますが、カスタマーサクセスは最終的なゴールを把握していれば、能動的に提案できるのが特徴です。
カスタマーサポートが、顧客の不満や不安をなくし顧客満足度の向上を目指すのに対し、カスタマーサクセスは、その先の顧客自身の成功のサポートにまで関与します。
コールセンターのようにトラブルや問題を解決したら終了ではなく、顧客が満足したあとも能動的に関わり、さまざまな働きかけを行います。
取引先の目的やビジネスをよく理解したうえで、自社の製品やサービスが提供できる価値を見いだし、適切なタイミングで必要なサポートを実施することです。
基本的にカスタマーサポートは特定の顧客に肩入れせず、すべての利用者に均一かつ同質のサービスを提供します。
一方、カスタマーサクセスの場合は人によって成功の定義は異なるため、顧客の目的を理解したうえで目標実現のために何をすべきか考え、個別具体的な支援を展開します。
カスタマーサクセスが担う4つの役割
カスタマーサクセスは、顧客の成功支援を通じて自社の商品やサービスの継続的な利用を促し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すための取り組みです。
解約率を下げ、企業に安定的な利益を呼び込むだけでなく、アップセルやクロスセルの提案の通過率を上げる効果も期待できます。
粘り強いサポートによって顧客との間に良好な関係を築ければ、製品の改善に役立つフィードバックを受けられるのも利点です。カスタマーサクセスが、企業活動で担う4つの役割を紹介します。
解約率を下げ継続率を維持する
カスタマーサクセスが機能して顧客に成功体験をもたらせば、競合へ乗り換えるリスクが減り、継続率の維持につながります。サブスクリプション型のビジネスで利益を上げるには、長期継続が不可欠のため、いかに解約を防ぐかに注力しなくてはいけません。
宣伝や営業活動が成功して購入にはこぎつけても、何のアフターサポートも実施しなければ、顧客の満足度は次第に低下に向かうでしょう。
カスタマーサクセスの働きかけを通して、製品やサービスを存分に使いこなして価値を実感できるようになれば、取り組みは成功といえます。
顧客の不満が顕在化する前に素早く不満の芽を刈り取り、高い満足度を維持することで長期的に選ばれ続けます。
解約に至った理由には、自社との相性のような自分たちの努力だけではどうにもならない事情以外にも、顧客が商材の魅力や特徴を理解せずに離れてしまうパターンも代表的です。
カスタマーサクセスが積極的に介入し、相手が抱える悩みや課題の解決にいかに製品が有用か効果的に訴求できれば、サービスや提供元に対する印象は一変します。
とくに新規顧客の場合、期待とともに不安も大きいと推測されるため、能動的にアクションを起こし、プラスの価値を与えるよう努めましょう。
LTV(顧客生涯価値)を最大化させる
LTV(顧客生涯価値)とは、あるサービスの契約から解約までに顧客から提供された価値の総量を示し、サブスクリプション型では契約期間が長期化する程、数字は高くなります。
カスタマーサクセスが機能し、解約率の低下および継続率を維持し続ければ、自然にLTVは改善に向かうでしょう。
LTVの最大化を狙う場合、利用期間の長期化だけでは足りず、アップセルやクロスセルの提案もあわせて行う必要があります。昨今LTVが重要視され始めているのは、既存顧客の維持のほうが新規顧客の獲得よりコストを抑えられ、より大きな利益を確保しやすいためです。
購入履歴や要望の内容など、内部に蓄積した情報から好みや傾向を把握し、成約の角度が高い提案がしやすいのも利点です。カスタマーサクセスが顧客の成功を目指して尽力すれば、既存顧客と中長期的に良好な関係を築けるようになり、LTVの向上が期待できます。
ニーズを調査しプロダクトを改善する
いくら機能性やホスピタリティに優れる製品でも、変化を続ける顧客のニーズに合わせて定期的な改善に取り組まなければ、生き残れません。
購入後の顧客と最も近い存在であるカスタマーサクセスの働きかけによって、一般的な意見にとどまらない本質的なニーズを吸い上げられます。
不満を感じる部分や追加でほしい機能など製品のブラッシュアップに役立つ情報を収集し、社内へ持ち帰って開発や機能の拡充に活かせば、既存顧客の満足度の向上だけでなく、新規顧客の獲得にも寄与するでしょう。
企業が一方的に商材の魅力を押し出しても、顧客のニーズとズレが生じると効果は薄いものです。カスタマーサクセスはヒアリングやアンケートの実施等、顧客からのヒアリングも重要視し、双方向のコミュニケーションを取れるポジションです。
インサイトや潜在ニーズを把握して、企業全体の活動を促進できる可能性も秘めた重要な役回りだといえます。
アップセル・クロスセルの促進
カスタマーサクセスの働きで既存顧客との間に良好な関係を築くことで、関連商品の購入につなげて、アップセルやクロスセルが促進されます。
たとえば、AppleのPCを購入したユーザーが、タブレットやスマートウォッチもApple製品で固めると、売上やLTVの数値は大いに向上します。人気で売上にも貢献する軸となる商品を起点に、他の商品の購入を促進できると理想的です。
クロスセルは関連商品をすすめる営業手法で、アップセルは同種でよりグレードが高い商品を売り込む方法です。
クロスセルでは、たとえば、コーヒーの購入者にドーナツとケーキのどちらを抱き合わせで購入する可能性が高いかを検討します。インサイトや潜在ニーズの把握が重要で、カスタマーサクセスが日々の活動で、顧客に本質的なニーズをつかめているか問われるでしょう。
今より単価が高い商品をすすめるアップセルでは、さらに顧客との関係性の構築が重要な意味を持ちます。
カスタマーサクセスが重要視される理由
売上が湯水のように勢いよく上がっていても、プールする湯船に穴が空いていたら、水はたまりません。同じように新規顧客の獲得は順調でも、既存顧客の解約率が高い状態では、いつまで経っても事業は成長しないためです。
そのため、一度顧客になったユーザーには、できる限り長期にわたる利用を促進する必要があります。
サブスクリプションモデルの普及や市場のコモディティ化、CRMの普及など、外的環境の変化も手伝って、従前よりカスタマーサクセスの重要性が増しています。
なぜ企業が、顧客の成功に寄与する必要性が高まっているのか、具体的な要因についてみてみましょう。
サブスクリプションモデルの普及
カスタマーサクセスの重要性が取り沙汰され始めたのは、サブスクリプションモデルの普及が色濃く関係しています。
従来はメーカーが求める製品・サービスを提供し、ユーザーはその対価を支払うフロー型のビジネスモデルが主流でした。
ソフトウェアの世界では「保有から利用へ」ともいわれ、ほしいものを購入して自ら保有する形から、料金を支払い必要な期間だけ使うビジネスモデルが台頭し始めました。
ユーザーは、一度購入したサービスを気に入れば継続して使い続けるため、提供元にとっては収益を予測しやすく、経営プランや将来の方向性を組み立てて安定した成長につながります。
買い切り型の従来のビジネスモデルと比べてメリットが大きいと注目され、現代では「サブスクリプション時代」との言葉も生まれるほど、一般的なモデルです。
しかし、決して今までより楽に利益を上げられる方法ではなく、あくまでも顧客の継続利用を前提に成り立つビジネスモデルのため、いくら努力しても解約率をゼロにして継続率を100%にするのは不可能です。
利用者の多くが無言で去っていくサプスクリプション市場において、クレームが出てから腰をあげるカスタマーサポートだけでは、事業の拡大は期待できません。
サービス提供開始時から利用者に寄り添い、彼らのビジネス活動にサービス+チームで能動的に貢献するカスタマーサクセスの力が必要です。
技術の進化や市場の成熟化
技術の発展やグローバル化の進展によって、製品やサービスに関わらず、市場が高度に成熟しています。
新たな製品やサービスを開発しても、数か月のうちに類似品が生み出され、機能や技術、価格など商品自体の価値で優位性を保つのが難しい、コモディティ化と呼ばれる現象が起きています。
その結果、プラスアルファのサービスによる付加価値で、差別化を図る必要が生じました。カスタマーサクセスが顧客ごとの悩みや課題に合わせた適切な支援を講じれば、ユーザーはオリジナルの顧客体験を得られます。
それは他の企業を選んでは、決して体験できない唯一無二のもので、顧客にまたとない価値をもたらすでしょう。
コモディティ化が細部まで浸透した現代では、商品力で訴求するスタイルの効力は薄れています。あらゆる市場がレッドオーシャン化しつつある時代において、競合との差別化やブランディングを果たすうえで欠かせないポジションが、カスタマーサクセスです。
販売後に商材を使いこなすまでの過程に介在し、習得・熟練のサポートをすることで、顧客にまたとない価値を提供します。
その結果、ユーザーからの信頼は自然に高まり、アップセルやクロスセルなど信頼関係が重要な提案の通過率も上がるでしょう。カスタマーサクセスは脱コモディティ化の実現に役立ち、現代のビジネスで成功するための重要な役割を担います。
CRMの普及
昨今はビジネスのデジタル化が進み、多くの企業で顧客管理システム(CRM)が導入されました。顧客一人ひとりに対応できる環境が整備され、顧客満足度を向上させるための施策を容易な状況が訪れています。
日本では少子高齢化が進展し、人口が減少する未来の到来が確実視されています。ビジネスでは顧客の母数の減少を引き起こし、新規顧客の獲得は今まで以上に難しくなりつつあります。
新規顧客を得るためのコストは既存顧客の維持の5倍に相当するといわれ、CRMを活用してすでに関わりがあるユーザーと、中朝的な取引が可能かどうかが重要です。
顧客管理システムには住所や氏名、連絡先などの属性に関する情報以外にも、商談や各種問い合わせの記録など企業とその顧客とのタッチポイントの情報も集約されています。
この豊富な情報資源を活用すれば、インサイトや潜在ニーズの正確な把握につながり、より一人ひとりに寄り添う提案が可能です。
CRMの普及によって、企業にメリットが大きい既存顧客へのアプローチがしやすくなったことで、中長期的な利用を促進するカスタマーサクセスの活用場面も広がっています。
安定的な事業成長の実現
企業が安定的に収益を挙げて順調に成長するには、カスタマーサクセスが機能して安定した収益基盤を備える必要があります。一時的に売上げが上がっても、それを継続できなければ事業の拡大には結びつきません。
停滞せず右肩上がりの成長を見せるためには、一度契約したユーザーに長期的な利用を促進するさまざまなアプローチが求められます。安定的に成長を遂げる会社というと、次から次へと新規事業に手を出す連続起業家のような存在を思い浮かべるかもしれません。
しかし、実際は一つや二つの核となる事業があり、軸を維持したまま周辺の構成要素を変えて、新しい会社へと生まれ変わります。既存の事業で積み重ねた知見を活用し、シナジーを発揮できる領域に手を広げるのが一般的です。
突如何の関係性もない未知の領域に展開し、顧客に対する価値の提供を目指すのは非常に難しいといわざるを得ません。
今のビジネスを維持して、拡大につなげるときに力を発揮するのが、カスタマーサクセスです。収益基盤が強固な安定した企業に成長するには、既存顧客へのフォローが大切です。
カスタマーサクセスの代表的な業務
カスタマーサクセスの代表的な業務は、購入直後の顧客を使いこなせるレベルまで高めるオンボーディングです。
継続的な利用状況のモニタリングやオンラインコミュニティの運営、ウェビナーの開催なども主要な方法です。カスタマーサクセスの具体的な業務内容を、チェックしましょう。
サービスの導入・活用支援
顧客が製品やサービスを使いこなせるよう、コーチングやセットアップを実施します。導入支援は別名オンボーディングとも呼ばれ、カスタマーサクセス同様、定着率を上げるための有意義な取り組みです。
サービスに登録したのに使い方が分からず、すぐに解約したという経験はないでしょうか。BtoBでも同様で、導入初期はチャーン率が高くなるため、企業側で手厚いサポートを整える必要があります。
カスタマーサクセスによるオンボーディングがうまくいかないと、即解約のリスクが高く、顧客獲得に要した人件費やコストは水の泡と化します。逆にいえば、導入期を乗り切れば、中長期的に製品やサービスを使い続ける可能性が高いといえます。
カスタマーサクセスのオンボーディングの代表的な業務は、ウェルカムメールの送付やFAQの作成、キックオフミーティングの開催などです。
購入したばかりの顧客が抱く不安を解消するには、登録メールアドレス宛てに歓迎のメッセージとともに、操作方法の説明ページのリンクを送付しましょう。
カスタマーサクセスの究極の形はユーザーが導入支援を一切利用せず、自らの力で商材を使いこなすことです。サービスの利用の流れや、よくある質問をまとめたナレッジベースを導入すれば、カスタマーサポートの力を借りずに、瞬時に悩みや課題を解決できます。
オンボーディングのさらなる詳細が知りたい場合は、次の記事をご覧ください。
サービス利用状況のモニタリング
製品やサービスの利用状況のモニタリングも、カスタマーサクセスの重要な仕事です。Webサービスなら、ログイン頻度や利用時間、利用者数が多い時間帯などを定期的に観測し、課題や改善点の把握に努めましょう。
ログイン頻度や利用時間が少ない場合、使い方の理解が十分ではなく、商材やサポート体制に不満を抱いている可能性が高いです。そこでカスタマーサクセスが介入し、情報提供や導入支援を行えば、解約を防げるでしょう。
モニタリングを通じて、製品の顧客の課題を迅速に把握し、先手を打つことができます。カスタマーサクセスがはじめに注力すべきは分析や改善に役立つデータの収集で、有効な手段の一つがモニタリングです。
データの利活用では、カスタマーサクセス部門で使用するシステムで一元的に管理し、必要に応じて営業やマーケティングと連携を取れる体制を確保しましょう。収集した情報はプロダクトの改善にも役立てられるため、社内全体で共有・活用する仕組みの構築が求められます。
オンラインコミュニティの運営
オンラインコミュニティの運営は、カスタマーサクセスの主要な機能と呼んでも差し支えないほど高い効果が期待できる手法です。
まず企業とユーザーの距離を近づけ、双方向のコミュニケーションを可能にします。直近に実装した新たな機能について、利用者が感じている率直な意見を受け取れます。
ユーザー同士の対話が促進されるのも特徴です。サービスの感想や疑問点を投げかけ合うことで、仲間を得られた感動から顧客エンゲージメントの向上が期待できます。
いくら距離が近いとはいえ、企業対ユーザーでは完全に対等な関係を築くのは難しいものです。利害関係のないユーザー同士なら安心して話ができ、互いに心を開いてのやり取りが実現し、実りある時間を過ごせます。
カスタマーサクセスによるオンラインコミュニティの運営を成功させるには、自ら積極的に運営に携わるリーダー層の発掘が必要です。
企業側がコミュニティ運営に割くリソースには限界があるため、古参のベテランが新規入会者からの質問や相談に対応したり、コミュニティの楽しみ方を発信したりすると心強いサポート役が得られます。
また、コミュニティ内には、実際にサービスを利用して得られた生の声が蓄積されます。好意的な意見が多数見つかれば、アップセルやクロスセルを検討中のユーザーの背中を押し、LTVの向上につながるでしょう。
ウェビナーの開催などによる疑問や質問への回答
オンラインコミュニティの運営が難しい場合、オンライン会議ツールや専用のプラットフォームを使ってウェビナーを開催するのもおすすめです。
クラウド型やサブスクリプション型のサービスならまだしも、製品を購入したユーザーと企業側が、契約後も継続的に接点を持つのは簡単ではありません。
ウェビナーは受け付けた質問をその場で回答できるため、普段は成しえない双方向のコミュニケーションが実現します。
ウェビナー開催のもう一つの利点は、参加登録時に収集した住所や氏名などの情報を活用し、リードの獲得につなげられる点です。オンラインでの開催なら、会場のキャパシティや立地、賃借料のコストを考えずに済み、負担を抑えて大人数を集められます。
ユーザー別の視聴時間や関連資料のダウンロード数などのデータを取得して、計測や分析を行えるのもメリットです。
カスタマーサクセスにおいて重要なKPI
カスタマーサクセスを成功に導くには、見直しや改善の判断材料としてKPIが必要です。定量的な数値をベースに施策の良し悪しを判定できるため、担当者の属人性をなくし、一環して同質の支援が実現します。
担当者の異動や離職など予期せぬ事情の影響を抑え、サービスレベルの底上げが期待できます。カスタマーサクセスで、とくに重要視したいKPIの種類は以下のとおりです。
LTV(ライフ・タイム・バリュー)
一人、または一社の顧客が自社にもたらす利益を示すLTVは、カスタマーサクセスの主要な指標です。
購買単価×購買頻度×契約継続期間で算出され、計算自体はシンプルです。顧客満足度を高めて利用期間を長期化し、アップセルやクロスセルを駆使して購買単価を上げることが有効です。
上記の計算式に新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コストを控除し、施策のコストパフォーマンスを測定する方法もあります。取引先が増えてLTVが加算されても、新規顧客の獲得に要した費用が上回っては意味が薄いといえます。
LTVを高めるには、コストを抑える視点も重要です。既存顧客の維持に比べて新規獲得にかかる費用は5倍程度と考えられるため、単発ではなく、繰り返しの利用を促進する取り組みが求められます。
LTVは主流になりつつあるサブスクリプションモデルとの相性も良く、LTV向上をマーケティングの要と捉える企業も増えています。
NPS(ネット・プロモータースコア)
NPS(ネット・プロモータースコア)は、日本語では顧客ロイヤリティの測定に役立つ指標です。従来までは、企業やブランドに対して感じている愛着や価値など目に見えないものは測定が難しいと考えられていました。
NPSは顧客へのアンケートなどを通じて数値化に成功し、主にカスタマーエクスペリエンスの評価・測定に用いられています。
「あなたが友人や家族に、このブランドを紹介する可能性はどの程度ですか?」と質問し、0~10の11段階で適切な回答を選びます。0~6は批判者、7~8は中立者、9~10は推奨者に分類し、全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を差し引いて算出します。
たとえば、回答者10名のうち4人が推奨者で、5人が批判者の場合、40%-50%でNPSは-10%と出ます。
似た指標に顧客満足度がありますが、「満足」の表す範囲が曖昧で、たとえこの指標が良くても、リピート率や顧客単価の向上などビジネスに貢献する結果として出るとは限りません。
NPSの推奨者は再購入率が高いといわれ、逆に批判者はネットに批判的な口コミを投稿し、他者の購買意欲をも削ぐ避けたい存在です。数値の良し悪しとビジネスの成果に関連性を見いだしやすく、重要な指標とみなす企業が増えてきました。
算出方法はグローバルで統一されているため、競合他社との数値を比較しやすいのも利点です。ベンチマーク企業のNPSを把握し、ケーススタディを通して、自社との差異をなくす取り組みも有効です。
解約率
解約率(ちゃーンレート)の低下は、カスタマーサクセスが目指すべき最初の目標ともいえ、取り組みの成果を計る際に必要な指標です。
顧客数をベースに考えるカスタマーチャーンレートと、収益ベースのレベニューチャーンレートに分かれます。それぞれの計算式や特徴をみてみましょう。
カスタマーチャーンレートは、「期間内の解約ユーザー数÷期間前の総ユーザー数×100」で測定します。あくまでも解約数のみを測る指標で、新規契約者の存在は考慮されません。顧客起点の解約率のもう一つの種類が、アカウントチャーンレートです。
企業、または契約単位で測定するのが特徴で、期間内の解約企業数÷期間前の総契約企業数×100で判定します。収益ベースは対象に含む範囲によって、グロスレベニューチャーンレートとネットレベルチャーンレートが存在します。
グロスレベニューチャーンレートの計算式は、期間内に損失したMRR÷期間前のMRR×100で、解約やダウンセルの件数や金額が多いほど、数値が高くなる傾向があります。
ネットレベニューチャーンレートは(期間内に損失したMRR-期間内に増額したMRR)÷期間前のMRR×100で算出され、アップセルやクロスセルによる増加分も考慮するのが特徴です。
解約率の低下は、まさにカスタマーサクセスの主たる業務領域です。アプローチには商材の説明機会を増やす、ナレッジベースを拡充するなど複数の方法がありますが、まずはなぜ解約率が高いのか原因を探ることが重要といえます。
オンラインコミュニティの運用やセミナーでの双方向のコミュニケーションによって、顧客が抱える不満や不安に寄り添う意識を持ちましょう。
カスタマーサクセスを成功させるためのポイント
ここからは、カスタマーサクセスを成功させるためのポイントを紹介します。
データを集めて顧客への理解を深める
顧客ごとに適した支援策を講じるため、年齢や住所といった基本情報から利用してみての感想や不満も含めて、できる限り多くの情報を集めましょう。顧客理解を深めて、個別にカスタマイズした提案をするために重要な取り組みです。
一口にデータといっても、数値をはじめ型があり客観的に測定しやすい定量データと、口コミや評判など測定には不向きな定性データに分かれます。
両者は検索のしやすさに大きな違いがあり、定性データは分類しづらいため、事前に管理方法を決め、情報の利活用を促進する仕組み作りが求められます。
顧客の状況に合わせた対応を行う
顧客の状態ごとに適切な対応は異なるため、一人ひとりに合わせた施策を講じる必要があります。とはいえ、個別具体的に対策を考えるのは時間的・人員的な制約を考えると、難しいといわざるを得ません。
分類の基準を決めて、グループごとにカテゴライズするのがおすすめです。タッチモデルおよび、ヘルススコアによる分類方法を紹介します。
タッチモデルで分類する
タッチモデルとは、将来的に獲得が見込まれるLTVごとに顧客を分類する方法のことです。セグメントは「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つで、それぞれ母数や企業との距離感が異なります。ハイタッチはロイヤリティが高く、獲得できるLTVが最も高い層です。
長期的にサービスや製品を利用し、ブランドや商材に対し、愛着や信頼を抱いている可能性も高いグループです。最も手厚い支援が必要な存在で、個別コンサルティングや面談のような特別な支援を行うのが効果的です。
母数自体は多くありませんが、企業の利益の8割は2割のロイヤル顧客が生み出すとするパレートの法則に照らし合わせると重要な存在だと分かるでしょう。
ロータッチはハイタッチより母数が多いながら、企業との関わりはそれほど密ではない層を表します。個別サポートはリソース確保の観点から難しいため、セミナーやオンライン勉強会などの開催を通じて、グループごとのアプローチが行われます。
テックタッチは契約直後、または最低限のプランで契約しているような関わりが薄いグループを指し、数は多いながらも基本的に手厚いサポートは行いません。チュートリアルの実施やナレッジベースの提供など自立支援に近い取り組みで定着し、継続率の向上を目指します。
ヘルススコアで分類する
ヘルススコアは製品やサービスの継続率を測定に役立つ数値で、カスタマーサクセスの重要指標の一つです。
自社と顧客との関係を、健康状態にたとえて得点で表します。数値が良ければ健康的、すなわち継続の可能性が高いと判定し、反対に数値が低ければ解約の恐れがあると判断できるでしょう。
ヘルススコアは特定の指標や計算式があるのではなく、自社で健康の状態を定義付け、算出に使うデータや算出方法を決められます。
まずは自社のサービスを使い続ける健康な顧客や、または解約の可能性が高い不健康な顧客の状態を定義します。
測定に用いるデータ群は、サービスの利用状況や支援ツールの活用度、顧客満足度、NPRなどです。
たとえば、健康な状態を週3回以上サービスにログインしている状態とみなすなど、程度ごとに分類し、スコアリングするのもおすすめです。具体的には、ログインの回数が週1回以上なら5点、週2回なら10点というような措置が該当します。
ヘルススコアの測定方法が決まったあとは、基準に応じたアクションを取り入れましょう。数値が良い顧客には前述したハイタッチで取り組む手厚いサポートを取り入れ、数値が悪い顧客にはテックタッチに倣い、簡潔な支援にとどめるなど相手に応じて施策を使い分けるのがコツです。
部署単位ではなく組織全体で取り組む
カスタマーサクセスの施策には、開発部門や経営・管理部門なども関わることがあり、全社規模で取り組む必要があります。
顧客の成功には、各部門との協力や連携が欠かせません。必ずしもトップダウンで行うべきとは限りませんが、新たにカスタマーサクセス部門を立ち上げれば良いのではなく、部署にまたがる活動が求められます。
部署ごとに役割や顧客との関わり方には違いがあるため、設定すべきKPIも異なります。営業部門ならアップセルやクロスセル率が、カスタマーサクセスなら顧客満足度やNPSなどが代表的です。指標の設定とあわせて、部門間の連携方法も決めましょう。
独立した部門を設けるのが一般的で、営業部門やサービス部門の直下に置く、または他部署とは分離した組織を立ち上げ全社的にバックアップするのか、自社に適した方法を選択します。
ツールを活用して効率的に取り組む
カスタマーサクセスの過程では、顧客とのコミュニケーションの内容や進捗について、リアルタイムで把握できる体制の構築が求められます。CRMをはじめとする各種支援ツールを活用して、より効率的に取り組みましょう。
ツールの活用と相性が良い業務はコミュニティの構築やデータの利活用、利用方法のガイド、問い合わせ対応が挙げられます。
コミュニティ構築ツールには、ユーザーのニーズに応じたコンテンツの提供、貢献度に応じたポイント付与機能、ナレッジベースの提供など、オンラインコミュニティの構築以外にも使える機能が盛りだくさんです。
データの収集や分析を効率化したいなら、ヘルススコアやNPLの判定が可能なツールが適しています。
ユーザーの自己解決を促進するチュートリアルやポップアップなどのユーザーガイドを取り入れるのもおすすめです。ツールに付帯するガイド機能を活用し、プログラミング知識不要のノーコードで使えるタイプが良いでしょう。
窓口を一元して、問い合わせ対応の効率化につなげるのもカスタマーサクセスでは大切です。マルチチャネル対応や担当者への自動振り分け、テンプレートの提供などの機能があります。
カスタマーサクセスに取り組む際の注意点
カスタマーサクセスで失敗しないための注意点は、以下のとおりです。
- 対象顧客がプロダクトに適しているか確認する
- すべての要望に応えようとしない
- 戦略を考えて実施する
- 組織体制を考える
それぞれ何に注意すれば良いか、具体的に解説します。
対象顧客がプロダクトに適しているかを確認する
カスタマーサクセスと製品開発の部署は別個の場合が大半のため、連携に課題を抱えていることも少なくありません。自社のターゲットが抱える課題を、解消するプロダクトを提供できているかという視点は、常に意識する必要があります。
カスタマーサクセスが、どれだけオンボーディングやヘルススコアの改善に注力しても、肝心のプロダクトに難があると成果は得られません。顧客と近い間柄のカスタマーサクセスが開発部署に対して、積極的にフィードバックを行いましょう。
顧客の要望をそのまま伝えるのではなく、顧客の情報を収集・整理して課題を把握し、問題を解消するために必要な機能を洗い出します。
次に実装したときのインパクトを試算し、優先順位が高い施策をピックアップします。上記のプロセスを実施してはじめてフィードバックを出すのです。
仕組み化して迅速にカスタマーサクセスと開発部門の連携が実現すれば、顧客のニーズを満たす魅力的なプロダクトを提供できます。
すべての要望に答えようとしない
顧客第一主義を徹底して、すべての要望に応えるのは避けたほうが良いでしょう。なぜなら、特定の顧客の意見をプロダクトに反映した結果、利用層がかえって狭まる恐れがあるためです。ニーズを満たした顧客以外から使われず、シェア率が低下し、市場でプレゼンスを発揮できなくなる場合もあります。
営業の段階では、製品の機能と顧客のニーズがずれていると感じても、契約後に機能を追加すれば問題ないと、利用をすすめるかもしれません。
しかし、顧客の成功の定義にズレが生じているため、短期解約やダウンセルの可能性が高く、一時的には売上が向上しても長期的な利益にはつながりません。
すべての要望に応えようとせず、自社のターゲットに絞って、サービスを提供しましょう。新規顧客の獲得に成功しても、ニーズと乖離があるとクレームが増え、余計な業務負担が増える恐れもあります。
戦略を考えて実施する必要がある
カスタマーサクセスはその場しのぎの施策の提案は避け、事前に詳細な設計を施したうえでアプローチをかける必要があります。顧客の状況に合わせてアクションを使い分け、ニーズを満たし続ける体制を整えましょう。
導入・支援フェーズの顧客が多い場合、企業側が意識すべきは「顧客の成功の定義を把握すること、契約後すぐに価値を感じるためのサポートを行うことの二つです。
企業対企業の取引の場合、成功の具体例にはコストカットや業務効率化、収益増などが考えられます。何を目的に自社のサービスを取り入れたか把握できれば、支援の方向性も自然と狭まるでしょう。
顧客自身が成功の定義を自覚していない場合、営業担当から確認や提案を入れ、潜在的なニーズの理解を促進するサポートも求められます。
利用開始した直後は使いこなせるか分からず、不安を感じているユーザーが大半です。オンボーディングをはじめ手厚い支援体制を設けることで、ネガティブな感情の払拭に努めましょう。
導入後一定の期間が経過したら、使いこなせず利用率が低下傾向の顧客がいないか確認が必要です。この段階では担当差が一緒に手を動かして、問題の解決に取り組むハンズオンが有効です。
重要な視点は操作方法を教えるのではなく、自力で使いこなせる状態を目標にサポートすることです。次回以降も担当者の助けがないと疑問を解消できない状態では、結局サービスの利用状況は改善しません。
導入支援~トレーニングの過程をクリアすると、顧客との間に信頼関係が芽生えていると考えられます。ブランドに愛着や信頼を感じ、価格や機能性などで競合が勝るサービスがあっても、自社の製品を買い続けてくれます。
このようなロイヤリティが高い顧客には、アップセルやクロスセルを提案すると、LTVの最大化につながります。
どのような組織を作るべきか考えて実施する
自社の体制に合わせて、カスタマーサクセスの導入に必要な体制を考えましょう、各部門との連携や役割などに応じて、組織図モデルが存在します。
オールラウンダーモデルは事業の中心として機能し、セールスからオンボーディング、リテンション、クロスセル・アップセルに至るまで顧客と接点を持つ業務全般に関与します。
人員が不足しがちな小規模な企業やスタートアップに適したスタイルで、解約率の低下を見込めるのが特徴です。
スペシャリスト型はカスタマーサクセスの部署内で細分化し、オンボーディング部門やハンズオン部門などを設置します。各ポジションが自身の役割に集中しやすく、質が高いサポートを提供しやすいのが利点です。
営業と密に連携を図るセールス特化型の組織体制も、一つの方法です。プロダクトと合致した顧客への提案、適切なタイミングでのクロスセルの実施などが実現しやすいのは売り込み特化型の組織の強みです。
顧客視点を第一に考え、カスタマーサクセスがクライアントと伴走するパートナーシップ型のモデル構築も有効です。顧客数は少ないながらもハイタッチ層が多い企業と相性が良く、今までのやり取りで得られた情報を駆使して先回りの提案が可能です。
一定以上の事業規模を備え、全国各地に視点を持つ企業の場合、エリア別にカスタマーサクセス部門を持つ体制の導入も考えられます。
カスタマーサクセス向けのおすすめツール9選
カスタマーサクセスの業務効率化に役立つツールを、9個ピックアップしました。それぞれ機能やおすすめの企業、特徴などを紹介します。
MazricaSales
MazricaSalesは、セールスに必要な顧客・案件リスト、名刺、行動ログなどを一元管理するツールです。分かりやすい画面構成で入力の負荷軽減に役立つほか、手厚いサポート体制を備えています。
顧客ごとの属性や行動履歴のほか、関係する企業情報を一元化し、さまざまな角度から顧客理解の促進を支援する活動を行います。案件の進捗状況はカード形式で直感的に可視化でき、ステータスの変更やフェーズの切り替えも、ドラッグ&ドロップで簡単操作が可能です。
ダッシュボードに搭載されたレポート機能を使えば、売上実績や推移、受注率や進捗率などセールスに必要なデータを分析できます。AI機能も搭載し、蓄積された過去のデータを活用し、リスク分析や類似案件の洗い出しなど適切なサポートを受けられます。
CustomerCore
CustomerCoreは、カスタマーサクセスに必要な情報をタイムリーに取得・可視化できるツールです。
施策の費用対効果を判定して、効果が悪い取り組みは随時別の施策に切り替える、迅速な対応が可能です。プランの変更や解約、アップセルなど顧客に生じた変化をシステムが自動で検知し、メールなどで通知します。
誰よりも早くステータスの変化に気づけるため、能動的なアプローチの活性化が可能です。危険な兆候を迅速に捉えて、LTVの改善や顧客ロイヤリティの向上に結びつけます。
顧客情報やメールなどのコミュニケーション情報を一元化。可視化はもちろん、システムが自動巡回して従来まで把握が難しかった細かい変化も察知します。
自動検知機能によって優先的に対応が必要な顧客が分かり、タイムリーに適切なアプローチを取ることができるため、定着率の向上やLTVの改善につながるでしょう。
KARTE
KARTEは、顧客ごとの膨大なデータを一元的に管理し、顧客理解を促進することで、従来とは一線を隠すユーザーエクスペリエンスをもたらすツールです。
ノーコードで直感的に管理・更新できるサイト管理システムを提供し、エンジニアやデザイナーの手を介さず、仮説検証のサイクルを迅速に回すことが可能です。
マーケティングオートメーションツールでは、セグメントや顧客のフェーズに合わせたステップメールの配信ができます。シーンに応じた適切なコミュニケーションで、顧客ロイヤリティの向上に役立てます。
KARTEはとくにWeb施策の実行・改善に強く、サイト経由で訪問したユーザーの行動を把握してコンバージョンの改善につなげるほか、アプリのプッシュ通知や広告配信のパーソナライズ化を支援します。
チャットサポート機能も搭載し、双方向のコミュニケーションを可能にし、顧客一人ひとりの悩みや課題に応じた柔軟なサポートの提供が可能です。
HiCustomer
HiCustomerは、BI・CRM・チャットツールに点在する顧客情報を集約し、集計や状況の把握にかかる工数削減に役立つツールです。空いた時間を有効活用し、顧客への提案やサポートに注力できます。
顧客データから、解約やアップセルを知らせる独自アラートの作成も可能です。継続が危ぶまれる顧客や追加の機能を求めている顧客に、適切なタイミングでの接触を可能にし、売上最大化に寄与します。
過去の情報を時系列で整理し、いつどのような施策を講じたのか、どの打ち手が結果に結びついたのかも分析できます。
現在の環境にマッチする再現性の高い提案につなげ、カスタマーサクセスのコストパフォーマンスを大幅に改善。業務効率化から、精度の高い施策の立案にも役立つ万能なツールです。
EmotionTech
EmotionTechは、7億を超える膨大な顧客データを活用し、合理的・論理的な分析だけにとどまらない情緒的な満足の向上をも実現するツールです。
取引先のニーズや期待を踏まえて改善の提案をしたい、アンケートや顧客関連のデータを活かしきれていないなどの課題を抱える企業におすすめです。
分析機能の精度が高く、カスタマージャーニーマップを含む多面的なサポートで、今すぐ取り組むべき課題が可視化されます。
改善優先度が数値で出るため、誰でも即座に何を優先すべきか分かります。さまざまな外部ツールとの連携にも対応し、ツールの垣根を超えたシームレスな改善につなげます。
運営元のエモーションテックはシステムの提供に加えて、包括的に顧客ロイヤリティの向上を支援する、EmotionTech CSというサービスを展開しています。
DealPods
DealPodsは、商談に必要な機能を搭載した共有サイトを構築するツールです。顧客ごとのポータルサイトを制作し、企業と顧客のコミュニケーションを促進して受注率を高めます。
サイトは社内の情報共有にも役立ち、伝達事項の抜け漏れで上申がうまくいかずに失敗するリスクを軽減。SFAやCRMへの情報の入力や担当者に一任すると、共有事項や書き方がバラバラでスムーズな連携を妨げるリスクもありました。
システムへの情報の入力に不安を抱えている企業も、DealPodsを使えばチーム間で共有できます。サイトには、営業資料をチームで分かち合うライブラリー機能が付帯。クラウド上に保管されるため、担当者ごとの利用回数や顧客の閲覧数などを把握します。
pottos
pottosは、既存顧客への適切なアプローチの取り方が分かる、カスタマーサクセス支援ツールです。
独自のトラッキングコードの導入のほか、他社アプリとの連携機能も備え、顧客ごとの膨大な情報を一元的に管理します。収集したデータを活用して自動的にセグメントに分類し、ヘルススコアに可視化が可能です。
優先すべき顧客が誰か一目で把握でき、解約率の低下に直結します。標準化したい業務をシステムに登録し、業務フローをチームで共有し、担当者の属人化を防ぐことも可能です。
完全に自動化したい業務はシステムが自動で対応し、業務負担を大幅に削減。顧客ごとのデータを活用して、ポップアップ配信やメール配信を抜け漏れなく行います。
さらにヘルススコアの悪化を検知し、解約リスクが高い顧客を発見したら、担当者へ即座に通知が送られます。以上のように、業務プロセスごとにカスタマーサクセスの支援機能が豊富にあるツールです。
Zendesk
Zendeskは顧客ごとにパーソナライズした対応で、ロイヤリティ顧客を育成し、収益の最大化を実現するツールです。SNS上のメッセージやサイトのFAQなどあらゆるチャネルに対応し、顧客ごとに意図に即した返信を代行します。
ニーズに合わせて機能を拡張できるのも、Zendeskの利点です。事業拡大に成功し、新たなチームや部門が登場しても、今までと同質のサポートを維持できます。セキュリティ体制も万全で、企業規模にかかわらず安心かつ便利なサービスです。
柔軟なサポート基盤を備えているため、運用中でも迅速に機能を追加できます。また、Zendeskでは製品体験ツアーを提供しています。購入前に一連の流れを体験できるため、利用を迷われているなら、お試しで使ってみるのはいかがでしょうか。
coorum
coorumは、カスタマーサクセスに不可欠なコミュニティ運営機能と、顧客分析機能を備えたツールです。
顧客との継続的な接点を構築し、ロイヤル顧客の不満や要望を把握できる環境を整備します。UGC(ユーザー生成コンテンツ)の投稿を活性化し、労せずして新規顧客の獲得につなげることも可能です。
コミュニティノーコードで誰でも簡単に構築できるだけでなく、UI/UX設計の自由度も高く、ブランドや商品の世界観にマッチした世界に一つだけのオリジナルサイトが完成します。
コミュニケーション機能も豊富で、ユーザー自身がコミュニティの運営に積極的に関与するインセンティブを感じられるでしょう。
顧客の意見を把握するためのアンケート調査が面倒で大変、インフルエンサー施策を実施したが効果が感じられないなどとお悩みの企業は、coorumでオンラインコミュニティの構築を検討してはいかがでしょうか。
ツールを活用してカスタマーサクセスに取り組む事例
coorumを利用して、カスタマーサクセスに取り組む事例を4つ紹介します。
サイボウズ株式会社の事例
kintoneやサイボウズOfficeなどのITツールで知られるサイボウズ株式会社は、coorumを活用し、誰でも気軽に参加できるユーザーコミュニティ「キンコミ」を運営しています。提供しているツールは顧客ごとにカスタマイズして、満足いく形が実現するものばかりです。
唯一無二の正解があるわけではなく、どの企業がうまく活用して、どの企業は失敗したと断定できません。活用度合いにかかわらず、利用者全員が参加できるコミュニティを構築したいとの思いを持っていたようです。
サイボウズは、「チームワークあふれる社会を創る」を理念に掲げる企業です。チームの範囲は従業員以外にもお客様や提携先なども含まれ、従前からビジネスライクな関係ではなく、製品を媒介として関係するすべての人が喜べるような企業になることを目指していました。
もともとSNSをはじめ、顧客同士が自発的に質問し合い、製品への理解を育む場はあったようです。しかし、心理的なハードルを理由に参加できない層がいると分かっていたため、外部サービスを活用してコミュニティを構築することに決めました。
複数のサービスを比較するなか、決め手になったのは参加者が自発的に書き込みを行うモチベーションの維持ができ、かつ書き込みしない人も安心してコミュニティ内にいられる環境がある点だったそうです。
株式会社オービックビジネスコンサルタントの事例
勘定奉行を筆頭に、さまざまな基幹システムを開発・提供するオービックビジネスコンサルタントは、洗練したUI/UXに魅力を感じてcoorumを導入しました。
LTVの最大化を最終目標として、顧客体験や顧客ロイヤリティの向上のため、オンラインコミュニティ「奉行まなぼーど」を始動。
導入のきっかけは、自社の顧客がよりサービスを使いこなせるよう、必要な情報やコンテンツを届ける場がほしいとの思いからでした。
コミュニティ施策で重視したのは、導入後のオンボーディングをテックタッチの形で推進し、いかにスピーディーにツールを駆使できるレベルに高められるかという点です。
顧客の増加にインストラクターの数が追い付かない状態の解消を目指し、オンボーディングの工数を削減。より多くのお客様に寄り添える、サポート体制を構築したいという思いがあったようです。
複数のサービスがあるなかで、契約の決め手となったのはデザインのオシャレさです。新しいチャレンジにふさわしい、デザイン性のUI/UXがあるかを重視されました。
coorumは記事の投稿時に画像を入れたり、サムネイルを入れたりと編集が容易で、状況に応じてカスタマイズがしやすい点も気に入った点に挙げられています。
導入後のサポート体制にも満足の声を寄せていただき、質問に対するレスポンスが素早く、自分たちの声が届いている実感を抱いてらっしゃいます。
対応もスピーディーで、要望を即座にロードマップへ組み込み、プロダクトの改善につなげるまでの対応の速さに驚きの声を寄せられています。
株式会社マネーフォワードの事例
マネーフォワードは、バックオフィス系SaaSのマネーフォワードクラウドを中心に、企業や個人事業主向けに、お金の問題を解決に導くプラットフォームを多数提供する企業です。
あわせて、士業事務所へのサポートサイトの提供やセミナーの開催を通じて、ツールの導入支援を行っています。
お客様のなかから、「ツールの活用方法を教えてもらうだけでなく、士業事務所との交流の機会がほしい」「現場での実際の活用方法が知りたい」との問い合わせを受ける機会もあったようです。
士業事務所間で連携を図り、課題の解決に役立てられる場を作りたいとの思いから、coorumを活用して「BizBASEポータル」が立ち上げられました。
また、マネーフォワードのカスタマーサクセス部門では、顧客情報の分散や属人化による工数の増大という課題があったそうです。
マニュアルはヘルプページ、利用方法はYouTube、お役立ち情報はオウンドメディアのコラムと、コンテンツが独立し別個に存在していました。ツールを利用するなか、悩みや課題が生じても何を参照すれば分からず、右往左往してしまいます。
カスタマーサポートへの問い合わせの件数が減らず、担当者が都度チャットや電話で回答を提示する手間が生じ、顧客数の増加と比例してサポートの工数が増える負のスパイラルに悩まされていたようです。
工数や人的リソースの削減のため、ロータッチやテックタッチの導入を検討するなかで、弊社サービスの利用を決意されました。導入後はさまざまな情報がサイト上に一元化され、答えを探しているお客様に渡すURLは一つでよくなりました。
工数削減の目的は達成でき、さらにサイト内にユーザー同士が交流できる場を設けたことで、課題の共有や情報交換が活発化されました。
一般的に、士業の事務所間は交流の機会が限定され、孤独を感じやすい環境です。オンラインコミュニティの構築によって、直接的に業務とは関係ないながら、心理的な安らぎや安心を得られるというメリットを感じられています。
株式会社DMM Boostの事例
株式会社DMM Boostは、LINE公式アカウントの機能拡張ツール、チャットブーストを提供する会社です。
立ち上がって間もないサービスのため、市場での浸透と認知拡大が重要だと考え、顧客自ら好意的な口コミを発信、知名度の向上につなげたいと画策し、オンラインコミュニティの構築を決意します。
マーケットで真っ先に想起される存在になるため、既存顧客の熱量を高めることに注力。ユーザーコミュニティ「Booster(ブースター)では、お客様同士の交流やノウハウの共有が活発に行われています。
広告を出稿して認知拡大を図る方法もありますが、商材の名前やおすすめポイントなどの薄い理解にとどまり、サービスの利用を検討するレベルにはなかなか到達しません。
coorum導入の決め手は、分析機能の充実度です。お客様向けのマニュアルやお役立ちコンテンツがどの程度読まれているか測定する環境がなかったため、さまざまなデータを取得できるインフラの導入という点でも価値を感じていただけました。
弊社では、分析機能のほか過去の対応で得たインサイトの知見も提供し、お客様のビジネス拡大を全社的にサポートしています。
カスタマーサクセスを実施して事業を成功に導こう
カスタマーサクセスは業種・業態問わず、企業の成功を左右する要となるポジションです。全社規模で取り組む必要があるため、体制の構築や戦略の策定など事前設計に注力しましょう。
業務内容は多種多様ですが、共通するのは顧客の状況に応じたサポートが重要な点です。収集したデータを活用して顧客理解を促進し、成功するには何が必要か真摯に考え、個別ごとに適した支援を心がけてください。