【2025年版】オープンイノベーションとは?定義から成功事例、導入手順を完全ガイド

2025-02-10 コラム

近年、多くの企業が注目するオープンイノベーション。社内外の垣根を越えて新たな価値を創出するこの手法は、デジタル化やグローバル化が進む現代のビジネスにおいて、ますます重要性を増しています。

本記事では、オープンイノベーションの基本から導入ステップ、成功事例、そしてcoorumを活用した具体的なメリットまで、わかりやすく解説します。

オープンイノベーションとは何か

企業が持続的な成長を実現し、競争力を高めるためには、新しい価値を創出するイノベーションが不可欠です。その手法として注目されているのが、オープンイノベーションです。

オープンイノベーションの定義

オープンイノベーションとは、企業が新たな価値を創出する際に、社内の技術や知識だけでなく、社外のリソースも積極的に活用するイノベーション手法です。2003年にヘンリー・チェスブロウ教授が提唱したこの概念は、急速な技術革新と競争激化が進む現代において、企業の競争力強化の鍵となっています。

クローズドイノベーションとの違い

従来のクローズドイノベーションでは、研究開発から製品化、市場投入まですべてを自社内で完結するスタイルが一般的でした。一方、オープンイノベーションは、他社や大学、スタートアップといった外部パートナーと連携し、幅広い知見を取り入れることで開発スピードや競争力を向上させます。

要素クローズドイノベーションオープンイノベーション
人材・自社内で最良の人材を有する・自社で優秀な人材を抱えているわけではないが、社内外に限らず優秀な人材と連携する
研究開発・研究開発から収益を得るために、自社で研究開発から販売まですべて行う・外部研究開発にも付加価値を生み出すことができる。一方、その価値の一部を享受するには内部研究開発も必要である
市場化・イノベーションを早く市場投入した企業が優位に立つ・市場化よりもビジネスモデルの構築が優先
マインド・最良のアイデアを最も多く製品化できれば優位性を築くことができる・社内外のアイデアを効果的に活用することができるかが鍵
知的財産・自社の知的財産は厳重に保護すべき・他社とのライセンスアウト/ライセンスインを積極的に行うべき

なぜ今、オープンイノベーションが注目されているのか?

従来の「クローズドイノベーション」では、研究開発から製品化、市場投入まですべてを自社内で完結させるのが一般的でした。

しかし、この自前主義では、現代のビジネス環境における急速な変化に対応するのが難しくなっています。そのため、外部リソースを積極的に活用し、社外との協業を通じて新たな価値を創出する「オープンイノベーション」が注目されています。

オープンイノベーションでは、これまで重視されていた自社技術の厳重な保護から、戦略的な共有へと考え方が変わりつつあります。また、単独での開発ではなく、外部の多様な知見を取り込むことで、イノベーションのあり方そのものが進化しています。

この手法が注目される背景には、以下のような社会的変化があります。

技術革新の加速化

デジタル技術の急速な発展により、製品やサービスの開発サイクルは大幅に短縮化しています。例えば、スマートフォン業界では新機能や新技術の導入が年々加速しており、単独の企業がすべての技術を内製化することは現実的ではなくなってきました。

このような環境下では、外部の技術やノウハウを効果的に取り入れ、開発のスピードを上げることが競争力を維持する鍵となっています。自社の強みに特化しつつ、その他の部分は積極的に外部リソースを活用する柔軟な開発体制が求められているのです。

消費者ニーズの多様化

成熟市場においては、消費者の要求が細分化し、より高度化しています。単一の企業の視点や技術だけでは、この多様なニーズに十分に応えることが困難になってきました。

例えば、食品業界では健康志向、環境配慮、利便性など、さまざまな価値観に基づく商品開発が必要とされています。このような状況に対応するには、異なる専門性や知見を持つ企業や組織との協業が不可欠です。多角的な視点からの製品・サービス開発が、市場での成功の重要な要素となっているのです。

グローバル競争の激化

世界規模での競争が激化する中、革新的なアイデアや技術をいち早く取り入れることの重要性が増しています。特に新興国企業の台頭により、従来の競争環境は大きく変化しました。

例えば、製造業では新興国企業が急速にキャッチアップを果たし、技術面でも互角の勝負を強いられるようになっています。このような環境下で競争力を維持するには、グローバルな視点での技術獲得や、異なる市場知見の活用が必要不可欠となっています。

これらの変化に対応するため、企業は従来の自前主義から脱却し、より柔軟な研究開発・事業開発の手法を求めています。実際、欧米企業の約78%がオープンイノベーションを実施しており、その重要性は年々高まっています。

実際、2018年に発表された「オープンイノベーション白書(第二版)」によると、欧米企業の約78%がオープンイノベーションを実施しており、その重要性は年々高まっています。

※オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『オープンイノベーション白書(第二版)』(2018年)
https://www.nedo.go.jp/content/100879995.pdf

オープンイノベーションのメリット

企業が自社の技術やアイデアに加え、外部のリソースを取り入れる「オープンイノベーション」。この手法がもたらすメリットは、多くの成功事例が証明しています。

ここでは、特に注目すべき3つのポイントをわかりやすく解説します。

開発スピードの向上

「もっと早く市場に出したい!」――そんな課題を解決する鍵となるのが、オープンイノベーションです。

従来の自社完結型開発では、基礎研究から製品化までに多くの時間がかかるのが一般的でした。しかし、外部の技術やノウハウを活用することで、開発プロセスを大幅に効率化し、市場投入までのスピードを格段に向上させることが可能です。

例えば、P&Gが採用した「コネクト&デベロップメント」戦略では、外部リソースを積極的に活用することで、新商品の市場投入期間を劇的に短縮。こうした迅速な開発体制により、革新的な商品を次々と市場に送り出し、競争力の大幅な向上に成功しています。

コスト効率の改善

研究開発にかかる莫大なコストやリソースをどう抑えるか――これは多くの企業が抱える課題です。オープンイノベーションでは、必要な技術やリソースを外部から調達することで、効率的なコスト管理が可能になります。

さらに、リスク分散効果も見逃せません。複数のパートナーと協力することで、技術開発や市場投入におけるリスクを複数の組織で共有。仮に一つのプロジェクトが期待通りの成果を出せなくても、リスクの負担を軽減しながら新しい挑戦を続けることができます。

例えば、共同開発の形式を取ることで失敗のコストを抑え、より柔軟に次のプロジェクトへシフトできる環境を整えられるのも、大きな強みと言えるでしょう。

イノベーション創出力の強化

社内だけでなく、多様なバックグラウンドを持つパートナーとの協業は、新しいアイデアの宝庫です。自社の常識にとらわれず、異なる視点や専門性からの刺激が、これまでになかった発想を生み出します。

例えば、ニップンの事例では、顧客との対話から生まれた商品改良アイデアにより、既存商品の売上を大きく伸ばすことに成功しています。顧客のリアルな要望や使用シーンをしっかり把握することで、ニーズにピッタリとマッチする製品開発が実現したのです。

coorum を活用すれば、顧客からの生の声をデータ化し、それを新たなアイデアの種に変えることも可能。顧客参加型のイノベーションで、より強固なエンゲージメントとブランド価値の向上を目指せます。

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オープンイノベーションの3つの型

オープンイノベーションを成功に導くには、自社の目的や状況に応じて適切なアプローチを選択することが重要です。オープンイノベーションは、その方向性によって「インバウンド型」「アウトバウンド型」「連携型」の3つに分類されます。それぞれの特徴と活用方法について解説します。

インバウンド型

インバウンド型は、外部の技術やアイデアを自社に取り込むアプローチです。自社に不足している技術やノウハウを効率的に補完できる手法として、多くの企業が採用しています。具体的には、スタートアップ企業への投資や技術のライセンスイン、さらには顧客との共創などが代表的な実施形態となります。

代表的な事例

P&G社は「コネクト&デベロップメント」という戦略のもと、製品開発の50%を外部の技術やアイデアに求めることを目標に掲げています。この取り組みにより、開発期間の短縮とコスト削減を実現しながら、革新的な製品を次々と生み出すことに成功しています。

アウトバウンド型

アウトバウンド型は、自社が持つ技術やアイデアを積極的に外部に展開する形態です。特許のライセンスアウトやスピンオフ企業の設立などが代表的な例として挙げられます。この手法により、自社技術の新たな活用可能性を見出すとともに、技術資産の効率的な収益化を図ることができます。

代表的な事例

IBMは、自社の基礎研究から生まれた技術を積極的に外部にライセンス供与することで、大きな収益を上げています。このように、必ずしも自社だけで活用する必要のない技術を外部展開することで、新たな価値創造の機会を生み出すことができます。

連携型

連携型は、インバウンド型とアウトバウンド型の要素を組み合わせ、双方向で価値を創造する形態です。共同研究開発や産学連携など、複数の組織が持つ強みを掛け合わせることで、単独では実現できない大きな相乗効果を生み出すことができます。

連携型のアプローチは、より複雑で大規模なイノベーションの実現に適しています。ただし、成功のためには参加者間での明確な目標共有と、適切な役割分担が不可欠となります。

代表的な事例

東レとユニクロは、素材開発から販売まで一貫した協業体制を構築。共同で「ヒートテック」「ウルトラライトダウン」などの画期的な製品を生み出し、業界をリードする存在となっています。

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オープンイノベーション成功のための組織体制構築のポイント

オープンイノベーションの取り組みを成功に導くためには、適切な組織体制の構築が不可欠です。単に外部との連携を始めるだけでなく、それを効果的に推進し、成果につなげるための社内の仕組みづくりが重要となります。ここでは、組織体制整備の3つの重要な要素について解説します。

専門部署の設置

オープンイノベーションを組織的に推進するためには、専門部署の設置が効果的です。イノベーション推進室などの形で、外部連携を専門的に担当するチームを設置することで、取り組みを持続的に発展させることが可能となります。

この専門部署には、社内外の調整役となるプロジェクトマネージャーを配置することが重要です。彼らは外部パートナーとの窓口となるだけでなく、社内の関連部門との連携も担います。また、経営層との直接的なコミュニケーションラインを確保することで、迅速な意思決定と経営戦略との整合性がとれるようになります。

柔軟な意思決定プロセス

オープンイノベーションでは、市場環境の変化や外部パートナーとの関係性に応じて、柔軟かつスピーディーな対応が求められます。そのため、従来の意思決定プロセスを見直し、より効率的な仕組みを構築する必要があります。

具体的には、プロジェクトリーダーへの権限委譲を進め、現場レベルでの迅速な判断を可能にします。また、予算配分についても、硬直的な年間計画ではなく、状況に応じて柔軟に調整できる仕組みが有効です。さらに、プロジェクトの評価基準を明確にすることで、関係者全員が同じ方向を向いて取り組めるようになります。

オープンな社内文化の醸成

オープンイノベーションの成功には、それを受け入れ、推進する企業文化の醸成が欠かせません。特に重要なのは、オープンな対話を促進する環境づくりです。部門や階層を超えた自由な意見交換が行われることで、新しいアイデアが生まれやすくなります。

また、イノベーションに不可欠な「失敗を許容する文化」の構築も重要です。新しい取り組みには必ずリスクが伴います。その失敗を否定的に捉えるのではなく、学びの機会として前向きに評価する姿勢が必要です。これにより、メンバーは安心して挑戦的な取り組みに臨むことができます。

さらに、部門間の協力体制の強化も求められます。オープンイノベーションの成果を最大化するためには、研究開発部門だけでなく、事業部門や管理部門など、さまざまな部門が連携して取り組む必要があります。定期的な情報共有の場を設けるなど、部門を超えた協力を促進する仕組みづくりが重要となります。

オープンイノベーション推進における情報管理と知財戦略

オープンイノベーションを推進する上で、適切な情報管理と知的財産の保護は極めて重要です。外部との協業を進めながら自社の競争優位性を維持するためには、戦略的な情報管理と知財戦略が不可欠となります。

情報管理の基本方針

外部との協業においては、どの情報を共有し、どの情報を保護するかの線引きが重要になります。まず必要なのは、自社の機密情報の明確な定義です。企業の競争力の源泉となる技術やノウハウ、将来の事業戦略に関わる情報などを特定し、その重要度に応じた管理レベルを設定します。

情報へのアクセス権限は、プロジェクトの参加者や役割に応じて適切に設定する必要があります。特に、外部パートナーとの情報共有においては、共有する情報の範囲を明確に定め、アクセス権限を厳密に管理することが求められます。同時に、プロジェクトを円滑に進めるために必要な情報は、関係者間でスムーズに共有できる仕組みも整備しなければなりません。

知的財産の保護

オープンイノベーションでは、プロジェクト開始前の段階で、既存の知的財産権の取り扱いについて明確に定めておくことが重要です。特に、プロジェクトで生まれる新しい知的財産の権利帰属については、事前に詳細な取り決めを行う必要があります。

また、プロジェクトの開始時点で適切な秘密保持契約(NDA)を締結することは必須です。NDАには、守秘義務の範囲、期間、違反時の罰則などを明確に定め、すべての参加者の合意を得ておく必要があります。さらに、プロジェクトの進行に応じて、知的財産に関する合意内容を適宜見直し、必要な修正を加えていくことも重要です。

リスク管理

情報管理と知財保護に関するリスクを適切に管理するためには、法務部門との緊密な連携が不可欠です。法務専門家の視点から、契約内容の妥当性や法的リスクを評価し、必要な対策を講じる必要があります。

また、コンプライアンス体制の整備も重要です。情報管理や知財保護に関するガイドラインを策定し、定期的な研修やモニタリングを通じて、関係者全員に遵守を徹底させる必要があります。特に、外部パートナーとの協業においては、双方のコンプライアンス基準の調整も重要な課題となります。

定期的なリスク評価の実施も欠かせません。プロジェクトの進行に伴い、新たなリスクが発生する可能性もあります。そのため、定期的にリスクアセスメントを行い、必要に応じて対策を見直すことが重要です。特に、情報漏洩や知的財産権の侵害といった重大なリスクについては、予防措置と緊急時の対応計画を事前に整備しておく必要があります。

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オープンイノベーションに求められるマネジメント上の重要ポイント

オープンイノベーションを成功に導くためには、適切なプロジェクトマネジメントが不可欠です。ここでは、プロジェクトを効果的に推進するための重要なマネジメントポイントについて解説します。

明確な目標設定とKPI管理

オープンイノベーションの成功には、明確な目標設定が欠かせません。プロジェクトの開始時点で、最終的なゴールとそこに至るマイルストーンを具体的に定義する必要があります。例えば、「1年以内に新製品のプロトタイプを完成させる」といった定量的な目標を設定することで、関係者全員が同じ方向を向いて取り組むことができます。

また、プロジェクトの進捗を適切に管理するためのKPIの設定も重要です。開発スピード、コスト効率、顧客満足度など、プロジェクトの特性に応じた指標を選定し、定期的にモニタリングを行います。これにより、課題の早期発見と迅速な対応が可能となります。

最適なパートナー選定と信頼構築

外部パートナーとの協業では、適切なパートナーの選定が成功の鍵を握ります。技術力や実績だけでなく、企業文化の親和性や長期的なビジョンの共有も重要な選定基準となります。特に、両者にとってWin-Winとなる関係性を構築できる可能性があるかどうかを慎重に見極める必要があります。

パートナーシップを効果的に機能させるためには、継続的なコミュニケーションの維持が重要です。定期的な進捗共有ミーティングの開催や、非公式な情報交換の機会を設けることで、信頼関係を強化し、課題の早期発見・解決につなげることができます。

プロジェクト管理

オープンイノベーションでは、市場環境や技術動向の変化に柔軟に対応する必要があります。そのため、アジャイルな進め方を採用し、小さな単位で実験と検証を繰り返しながら、プロジェクトを前進させていくことが効果的です。

成果の評価と活用

プロジェクトの成果は、定量的・定性的の両面から評価する必要があります。売上高や開発期間といった定量的な指標に加え、組織の学びや将来への示唆といった定性的な価値も重要な評価対象となります。

特に重要なのは、成功事例だけでなく失敗事例からも積極的に学びを得ることです。何がうまくいき、何が課題となったのかを詳細に分析し、その知見を組織全体で共有することで、次のプロジェクトへの改善につなげることができます。

オープンイノベーションの成功事例とその要因

近年、多くの業界でオープンイノベーションを活用した成功事例が増えています。ここでは、革新的なアプローチで成果を上げた具体例を挙げ、それぞれの成功要因を分析します。

事例1:株式会社LEGO

株式会社LEGOは、オンラインプラットフォーム「LEGO IDEAS」を通じて、製品開発における顧客との共創を実現しています。このプラットフォームでは、世界中のファンが新製品のアイデアを投稿し、他のユーザーからの支持を集めることができます。1万票以上の支持を集めたアイデアは、LEGO社の開発チームによる製品化検討の対象となります。

同社の取り組みが成功している背景には、製品化プロセスの透明性確保が挙げられます。アイデアの投稿から審査、製品化決定まで、各段階での判断基準が明確に示されており、参加者の理解と信頼を得ることに成功しています。また、採用されたアイデアの提案者に対する適切な報酬設計により、質の高い提案が継続的に集まる仕組みを確立しています。

LEGO IDEAS公式サイト

事例2:株式会社P&Gの「コネクト&デベロップメント」戦略

株式会社P&Gは「コネクト&デベロップメント」という戦略のもと、世界中から技術やアイデアを募る取り組みを展開しています。同社は、研究開発の50%を外部リソースから調達することを目標に掲げ、大きな成果を上げています。

この戦略の特徴は、自社が求める技術ニーズを明確に提示した上で、グローバルなネットワークを通じて解決策を募集する点にあります。また、提案された技術やアイデアを効率的に評価するプロセスを確立することで、イノベーションの確度を高めています。この取り組みにより、新製品開発のスピードアップとコスト削減を実現し、市場競争力の強化につなげています。

P&G Connect + Develop

事例3:インテル株式会社のオープンイノベーション戦略

インテル株式会社は、スタートアップ企業や研究機関との協業を通じて、次世代技術の開発を加速させています。同社は自社の技術プラットフォームをベースに、パートナー企業との共同開発を積極的に推進し、新たな市場機会の創出に成功しています。

特に注目すべきは、半導体技術にとどまらない幅広い分野でのオープンイノベーションの実践です。AI、IoT、自動運転など、新興テクノロジー分野において、有望なスタートアップへの投資や技術協力を行い、業界全体のイノベーションを牽引する役割を果たしています。

事例4:株式会社東レ×株式会社ユニクロの戦略的パートナーシップ

株式会社東レと株式会社ユニクロは、2006年に戦略的パートナーシップを結び、画期的な機能性衣料の開発に成功しています。両社の協業は、素材メーカーとアパレルメーカーの従来の取引関係を超え、製品企画から開発、生産、販売までを一貫して行う新しいビジネスモデルを確立しました。

特に「ヒートテック」や「ウルトラライトダウン」などの商品開発では、東レの高度な素材開発力とユニクロのマーケティング力を組み合わせることで、市場に革新的な価値を提供することに成功しています。この協業の成功により、両社は2015年には取り組みをさらに発展させ、より長期的な視点での技術開発に取り組んでいます。

事例5:Appleのエコシステム戦略

Appleは、App Storeを通じて外部開発者との協業を実現し、革新的なモバイルエコシステムを構築しています。同社は、開発者に対して明確な技術仕様とガイドラインを提供し、品質の高いアプリケーション開発を促進しています。

このアプローチの特徴は、プラットフォームを通じて外部の創造性を最大限に活用しながら、ユーザー体験の品質を維持している点です。また、開発者に対する収益分配の仕組みを確立することで、持続的なエコシステムの発展を実現しています。この取り組みにより、iPhoneやiPadなどのハードウェア製品の価値を大きく向上させることに成功しています。

事例6:シスコシステムズ株式会社の技術獲得戦略

シスコシステムズ株式会社は、積極的なM&Aを通じてネットワーク技術の革新を実現しています。同社は、有望なスタートアップ企業を早期に発掘し、自社の技術ポートフォリオに統合することで、市場の変化に迅速に対応しています。

特筆すべきは、買収後の統合プロセスの効率性です。買収した企業の技術や人材を効果的に活用しながら、自社の製品ラインナップを拡充することに成功しています。この戦略により、急速に進化するネットワーク技術の分野で、継続的な競争優位性を維持しています。

これからのオープンイノベーションの展望(1.0から3.0へ)

オープンイノベーションは、ビジネス環境の変化や技術の進展に伴い、その形態を進化させてきました。この進化は、単なる企業間連携から社会全体の価値創造へと、その範囲と影響力を拡大させています。

オープンイノベーション1.0の特徴

オープンイノベーション1.0は、主に企業間の1対1の連携を中心とした形態でした。この段階では、研究開発の効率化や新規事業創出を目的として、技術提携や共同研究開発などが行われました。例えば、自動車メーカーと部品メーカーの共同開発や、製薬会社とバイオテクノロジー企業の技術提携などが典型的な例として挙げられます。この形態は明確な目標に向けて、限定的な範囲で協業するのが特徴でした。

オープンイノベーション2.0の特徴

2.0では、多対多の関係性へと発展し、より複雑で広範な価値創造が目指されるようになりました。この段階では、社会課題の解決を目的として、企業、大学、研究機関、政府機関などが参画する産学官連携やエコシステムの構築が進められました。例えば、環境問題や高齢化社会への対応など、単一の組織では解決が困難な課題に対して、多様なステークホルダーが協力して取り組む形態が一般的となりました。

オープンイノベーション3.0の現在と未来

現在のオープンイノベーション3.0は、1対多の戦略的連携を通じて、社会全体の最適化を目指す段階です。プラットフォーム型やエコシステム型のビジネスモデルを通じて、デジタル技術を活用した効率的な連携が進んでいます。たとえば、AppleのApp StoreやAmazonのマーケットプレイスでは、多数のパートナーと連携し革新的な製品やサービスを生み出しています。また、自動車メーカーを中心にIT企業や自治体が連携し、次世代交通システムの構築が進められています。

このようなオープンイノベーションの進化は、今後もさらに加速していくことが予想されます。特に、SDGsへの対応や、デジタルトランスフォーメーションの推進など、企業単独では対応が困難な課題が増加する中で、より戦略的かつ包括的な連携の重要性は一層高まっていくでしょう。企業には、この進化を的確に捉え、自社の強みを活かしながら、より大きな社会的価値の創造に貢献していくことが求められています。

まとめ:オープンイノベーションの実践に向けて

急速に変化する市場環境において、オープンイノベーションは持続的な競争優位を築くための重要な戦略です。従来の自前主義では市場の変化に対応しきれず、外部との連携が不可欠となっています。

LEGOやP&G、東レとユニクロの事例に見られるように、Win-Winの関係を築き、持続的な価値創造の仕組みを構築することが成功の鍵です。また、オープンイノベーションは1.0から3.0へと進化を続け、個別の製品開発から社会全体の革新へとその範囲を広げています。

今後、企業にはこの進化を的確に捉え、自社の強みを活かした戦略的な取り組みを通じて、さらなる社会的価値の創造が求められます。

本稿で見てきたように、オープンイノベーションには「インバウンド型」「アウトバウンド型」「連携型」という3つの基本形があり、企業はその目的や状況に応じて適切なアプローチを選択する必要があります。また、成功のためには、明確な目標設定、適切な組織体制の構築、効果的な情報管理など、さまざまな要素を総合的にマネジメントしていくことが求められます。

LEGOやP&G、東レ・ユニクロの事例が示すように、オープンイノベーションの成功企業は、単なる技術やアイデアの獲得にとどまらず、持続的な価値創造の仕組みを構築することに成功しています。特に重要なのは、パートナーとの間でWin-Winの関係を築き、長期的な視点で協業を発展させていく姿勢です。

さらに、オープンイノベーションは1.0から3.0へと進化を続けており、個別の製品開発から社会全体の革新へとその範囲を広げています。

今後、企業には、この進化を的確に捉えながら、自社の強みを活かした戦略的な取り組みを展開していくことが求められるでしょう。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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