昨今のビジネス環境において、顧客体験(CX)の重要性が急速に高まっています。しかし、その実践において多くの企業が課題を抱えているのが現状です。特に、オフラインビジネスを主体とする企業では、顧客体験の把握と活用に大きな壁が存在します。
この課題の本質は、データの取得可能性の格差にあります。オンラインサービス事業者は顧客の行動データを詳細に把握できる一方、実店舗や従来型の製品を扱う企業では、販売数やプロモーション効果、CRMデータ以外の顧客体験データの取得が限定的です。そのため、多くの企業では依然として初回購入(コンバージョン)に焦点を当てた施策が中心となり、真の顧客満足につながる「使用体験」の把握や活用が十分にできていません。
しかし、企業価値の本質は、「顧客が買ってよかったと感じる総和」にあります。持続的な成長を実現するためには、いかに多くの顧客に継続的かつ深く商品・サービスを利用してもらえるかが鍵となります。
本記事では、顧客体験を6つのブロックで捉える新たなアプローチを紹介し、特に見えにくいとされる「使用体験」や「顧客心理」をデータとして可視化する方法、そしてそれらを活用した具体的な成功事例をご紹介します。マーケティングや商品開発に携わる方、そして経営層の方々に、ぜひ参考にしていただければと思います。
また、「coorum(コーラム)」では、顧客体験の可視化・改善プラットフォームを通じて、顧客との対話から得られる本音をデータ化し、商品開発からサービス改善まで一気通貫で支援しています。「顧客の声を確実に捉えたい」「データドリブンな意思決定で顧客生涯価値(LTV)を向上させたい」とお考えの企業様は、お気軽にご相談ください。⇒coorumのサービス紹介資料を見る(無料)
現在の市場環境と顧客体験の重要性
現在の市場環境を見ると、多くの企業様にとって顧客体験の向上が非常に重要になっています。その背景には以下のような要因があります。
1.人口減少に伴い、新規顧客獲得よりもLTV(顧客生涯価値)の向上が重要になっている
2. 消費者の価値基準が変化し、事前の情報収集による「指名買い」が増えている
3. 広告宣伝費の減少や競合サービスの増加により、従来のマーケティング手法だけでは効果が出にくくなっている
このような状況下では、優れた顧客体験を提供することが不可欠です。良い商品やサービスでなければ、買ってもらえないだけでなく、長く使ってもらえず、他人に勧めてもらえません。
そのため、顧客体験を向上させるには「顧客理解」が重要になります。
・顧客は現在の商品やサービスの何に満足しているのか
・現在の商品やサービスのどこがイチオシポイントなのか
・現在の商品やサービスのどこを改善すべきなのか
といった点を理解する必要があるのです。
6つのブロックで見る「顧客体験満足度」の捉え方
まず、企業が提供すべき最も大切な顧客体験のゴールは「買ってよかった」と思ってもらうことです。「買ってよかった」と感じてもらえれば、「もっと利用したい」という継続利用や「誰かにお勧めしたい」という推奨につながります。これはLTVの向上やUGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出に直結します。
しかし、多くの企業では依然としてコンバージョン(初回購入)に焦点を当てた分析や施策が中心となっています。これを「買ってよかった」「継続・推奨したい」という視点にシフトしていく必要があります。
では、顧客体験をどのように捉えればよいのでしょうか。私たちは顧客体験を大きく3つのフェーズに分けて考えています:
1. 検討体験(購買前)
2. 購買体験(購買時)
3. 使用体験(購買後)
さらに、各フェーズにおいて「行動」と「顧客心理」という2つの要素があると考えています。これにより、顧客体験は全部で6つのブロックに分けられます。
これらの6つのブロックが売上KPIにどのように影響するかを考えると、以下のようになります。
- 初回購買:検討体験と購買体験の質によって「買ってみたい」という期待が醸成されます。期待の方向性と大きさが売上に影響します。
- 継続購買:使用体験が重要になります。期待以上の実体験があれば満足につながり、継続購買や推奨が生まれます。
顧客インサイトは“見えない”
ここで重要なのは、多くの企業が「いかに商品を買わせるか」までしか着目できておらず、商品・サービス体験や顧客心理を十分に捉えきれていないという点です。この課題に対して、我々は次のような提案をしています。
顧客体験の6つのブロックをさらに詳しく見ていくと、「行動」の部分はウェブとリアルに分けて考えることができます。例えば、オンライン英会話サービスであれば、プロモーションから決済、サービス利用まですべてウェブ上で完結します。この場合、ウェブ上の行動データは比較的容易に取得・分析できるため、最適化も行いやすいです。
一方で、実際の使用シーンが家庭の中にある場合、その使用体験はリアルな場面で行われます。このようなリアルでの顧客体験は、デジタルデータとして自動的に取得することが難しいのが現状です。
また、「顧客心理」の部分も非常に重要です。例えば、ブランドを想起したきっかけや、購入前に知人とした会話、なぜその商品をそのシーンで使ったのか、どんな気持ちになったのかなど、これらの情報は通常のデジタルデータでは取得できません。
つまり、「顧客インサイトは“見えない”」という前提があります。多くのマーケターは、この見えない部分を推測しながら顧客インサイトの探求・分析を行っています。
お客様が楽しみながら話せる場の重要性
しかし、私たちとしての提案は、この「見えない」とされている部分を、分析可能なデータとして取得する方法を作ることです。そのためには、お客様が楽しみながら「商品・サービス体験」や「顧客心理」を話してくれるようなコミュニケーション接点が必要です。
この解決策として、私たちは「ゼロパーティデータ」という概念を提案しています。ゼロパーティデータとは、お客様が自ら進んで企業に提供するデータのことです。これは、ウェブサイトやアプリのログ、ID-POSなどでは取得できないデータであり、お客様に自発的に発話してもらう必要があります。
そこで我々のサービス「coorum(コーラム)」は、顧客が自ら参加したくなる、かつ「商品・サービスの顧客体験価値」をより感じることができるコミュニケーション接点を創出します。
具体的には以下のような特徴があります。
1.ロイヤル顧客の声を「顧客単位で」リアルタイムに拾い集めデータ化
2. 自社の顧客IDと連携することで顧客の行動をリアルタイム且つ顧客単位で解像度高く分析
3. UI/UXの自由度が高いことにより、自社の世界観を高レベルで再現
coorumの機能としては、独自のURL(独自ドメイン)にコミュニティサイトを生成でき、トップページのカスタマイズ、掲示板、写真投稿、コンテンツ投稿、サークル、投票機能、リサーチアンケート、Q&A機能など、多様なコミュニケーション機能を標準装備しています。
これらの機能を使って収集した「商品・サービスの体験」や「顧客心理」に関するデータを、既存の顧客データと突合し、顧客にとって重要な顧客体験価値を分析することができます。さらに、AIを活用したプロファイリング機能により、顧客セグメントごとの特徴をサマライズすることも可能です。
このように収集・分析されたデータは、マーケティングの業務プロセスに活用することで、お客様により商品・サービスの価値を感じてもらうことができます。
例えば、以下のような施策が可能になります:
1.初回購入者向け:ECサイトでのポップアップ表示やロイヤリティプログラムの案内
2. 離反顧客向け:LINE配信や効果的なユースケース(UGC)の紹介
3. ロイヤル顧客向け:コミュニティサイトでのポップアップや新商品の事前案内とアンケート
これらの施策は、分析結果に基づいて最適なプロモーション施策を提案し、ワンクリックで実行することができます。顧客の声を商品開発や販促に活かしきれていないとお感じの方はお気軽にご相談ください。⇒coorumのサービス紹介資料を見る(無料)
顧客の声を活かした企業の取り組み事例
ここからは、具体的な活用事例をいくつかご紹介いたします。
まず、コミュニティ等でのユーザー間の交流を活用した事例です。商品・サービス体験において話題になっていることとその心理を捉え、それをコミュニケーション施策や商品企画に活かしていきます。つまり、「話題の種」を見つけ、その熱量を最大化する戦略を立てるのです。
すかいらーくグループのしゃぶ葉の事例
例えば、すかいらーくグループのしゃぶ葉では、デザートコーナーのソフトクリームをホイップクリームに変更するというハロウィンイベントを実施しました。これは、ファン界隈での共感ポイントである「ソフトクリームが溶けてしまうと写真が撮りづらい」という声に着目したものです。ソフトクリームが溶けてしまうことで、UGC創出や口コミ、話題化が妨げられている可能性があることがわかったのです。
このような顧客の声を活かし、コミュニティサイトを通じて各商品の魅力が語られる場を作り出すことで、購入・体験・推奨のサイクルを繰り返し、ファンを増やしていく取り組みを行っています。
大創産業「DAISO」の事例
次に、UGCから新たな訴求軸を発見した事例をご紹介します。大創産業の「DAISO」のケースでは、顧客からの投稿を通じて、予想外の商品の魅力が明らかになりました。元塾講師や幼児教室講師の経験を持つ顧客が、「1冊がサクサク終わらせられることがむしろメリット」であると指摘したのです。薄いからこそ、子どもが1冊をサクサクと終わらせることができ、達成感を得られるという点が高く評価されていました。
このような発見は、企業が当初想定していなかった商品の価値を明らかにし、新たな訴求ポイントとして活用することができます。
ニップンのアマニ製品を使ったコミュニティの事例
株式会社ニップンのアマニ製品を使ったコミュニティの事例をご紹介します。アマニは、n-3系脂肪酸(オメガ3)を含む健康食品ですが、市場は2019年をピークに停滞気味でした。そこで、既存顧客の利用頻度を上げることを目標に、コミュニティを活用した取り組みを行いました。
「アマニ継続チャレンジ」と呼ばれる企画を実施し、ユーザー同士がつながり、承認・交流をしながらアマニを毎日利用するよう促しました。この取り組みを通じて、以下のような興味深い発見がありました:
- 意外な生活習慣:ヘビーユーザーもカップ麺を食べており、アマニ油を加えることで罪悪感を軽減していた。
- アイスクリームやヨーグルトと一緒にアマニ油を楽しむユーザーが多かった。
- 毎日の利用方法:毎回レシピを変えるのではなく、習慣化されることの方が利用頻度向上には重要だった。
これらの発見を活かし、「ちょいかけ図鑑」という施策を実施したところ、1ヶ月で147件の投稿があり(従来のレシピ投稿は1件/月)、利用頻度も大幅に向上しました。
このような取り組みを通じて、ロイヤル顧客から得たインサイトは当初の見解とは異なるものでした。具体的には以下のような違いが明らかになりました。
さらに、ロイヤル顧客との共創企画として、魅力訴求と販促への協力も行いました。コミュニティ内でのアンケートを実施したところ、商品開発部が成分を強調したいと考えていたのに対し、ユーザーからは「1杯でWの効果」という表現への反応が良いという意外な発見がありました。
これらの取り組みの結果、2023年10-12月の売上数量は前年比121%を達成し、回転率向上による成果を上げることができました。特筆すべきは、これがPOP施策のみによる売上貢献だった点です。
次に、「coorum insight(コーラムインサイト)」の活用例として、ロイヤル顧客化されるきっかけを分析した事例をご紹介します。利用頻度アンケートに回答したユーザーの中から、一定期間で利用頻度が向上したユーザーを特定し、その理由を分析しました。
具体的には、40代の愛知県在住の女性ユーザーの事例を詳しく見ていきます。この方は、健康に気を使っており、シンプルな料理を好む傾向がありました。利用頻度は、当初週3〜5回だったものが、週6回に増加しました。特に注目すべき点は、嫌いだった生野菜サラダにアマニドレッシングをかけるようになったことです。
この行動変化のきっかけとなったのは、「検証!ご飯と相性の良いアマニ油入りドレッシングは…!?」というコンテンツでした。このコンテンツが態度変容につながった理由として、以下のようなことが考えられます。
1.野菜嫌いだが、健康面の心配から野菜摂取の必要性を自覚していた。
2. お手軽に野菜を美味しく摂取する方法がわからなかった。
3. 検証コンテンツを見て、どのドレッシングタイプのアマニオイルとどの野菜
4.個人では様々な種類のアマニオイルを購入して検証するのは難しかったが、このコンテンツによって心理的ハードルが下がった。
このように、コミュニティを通じて得られたインサイトを活用することで、ユーザーの行動変容を促し、結果として利用頻度の向上とLTVの増加につなげることができました。
これらの事例が示すように、coorumを活用したコミュニティ運営は、顧客理解・顧客データにまつわる課題を解決し、データの蓄積・分析・施策実行までをワンストップで実現することができます。顧客の声を商品開発や販促に活かしきれていないとお感じの方はお気軽にご相談ください。⇒coorumのサービス紹介資料を見る(無料)
まとめ
本記事でご紹介してきた“「買ってよかった」を実現するマーケティング戦略”のポイントを、以下にまとめました。
1.顧客体験は検討、購買、使用の3つのフェーズに分けられ、それぞれに行動と心理の2つの要素がある
2. 特に使用フェーズでの体験が顧客満足度に大きな影響を与える
3. リアルでの顧客体験や顧客心理は通常見えにくいものだが、coorumを活用することでデータとして取得・分析することが可能になる
4.取得したデータを基に、セグメント別の最適な施策を実行することで、LTVの向上やUGCの創出につなげることができる
coorum(コーラム)は、こうした顧客中心のアプローチを通じて、企業の成長と顧客満足度の向上の両立を支援しています。顧客をいち消費者としてではなく、価値創造のパートナーとして捉え直すことで、新たな機会を見出すことができるでしょう。
本日ご紹介した内容が、皆様の業務や戦略立案に少しでもお役立ていただければ幸いです。定期開催されているセミナーでは、より詳しいノウハウや事例の詳細などをお話ししているので、お気軽にご参加ください。
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