
昨今、サブスクリプションというビジネスモデルが浸透したことでカスタマーサクセスが注目を受けています。
実際に、サービスのジャンルを問わず、サブスクリプション型ビジネスを展開する企業にとって、カスタマーサクセスなくてはならないものです。
本記事では、サブスクリプション型ビジネスにおけるカスタマーサクセスの重要性について解説します。
カスタマーサクセスについておさらい

カスタマーサクセスは「顧客の成功が自社の成功である」という考え方、また顧客の成功を実現すために行う業務を指します。最近ではカスタマーサクセスという部署を設ける企業も増えてきました。
カスタマーサクセスはカスタマーサポートと良く混同されることがあります。
しかしカスタマーサクセスとカスタマーサポートでは業務内容に違いがあり、企業によってはカスタマーサクセス部とカスタマーサポート部署を分けていることも多いです。
顧客の疑問や不満を解決して、満足度を高めることで継続的なサービス利用を促すという目標は同じですが、アプローチの仕方に違いがあります。簡単に説明をすると、従来のカスタマーサポートでは顧客からの質問や要望を受動的に対応をしますが、カスタマーサクセスでは企業側から顧客にアプローチをしたうえで、顧客の意見をすくい上げて、能動的に問題解決を目指します。
サブスクリプションの流行による変化

通信インフラの整備が進んだことを一因として、サブスクリプション型のビジネスが流行し始めました。
実は、近年カスタマーサクセスの急激に注目されたのには、このサブスクリプション型のビジネスが増えたことが大きく関係しています。サブスクリプション型のビジネスが流行したことで、利用者と企業にどうような変化が生まれたのかを解説します。
利用者の変化
サブスクリプションモデルの登場により、利用者は「新しいサービスを安価に使える」ようになりました。
Microsoft社が提供しているワードやエクセスなどのソフトウェアを例に挙げます。以前はパッケージ販売という形式がとられており、ユーザーはこれらのソフトを使用するために数万円を支払いソフト本体を購入していました。現在では月額制のプランも用意されており、利用者は数百円~数千円を支払うことで、ソフトを使用する権利を購入できるようになりました。
購入のハードルがグッと下がったことにより、人々は試験的に多様なサービスを利用できるようになり、自分に合わないようであれば気軽に利用をやめる(乗り換える)という選択をするようになっています。
企業の変化
企業側には、新規顧客獲得のハードルが低くなった分、解約リスクが高まるという変化が生まれています。「自分に合わなければいつでもやめられる」という手軽さゆえに、企業側は顧客の離脱を防ぐために常にサービスを改善していく努力が求められるようになったのです。
サービスの売上を計算する、「ユーザー数×平均単価×購入頻度×継続期間」という式の中で、サブスクリプションビジネスの大きな弱点である「継続期間」さえ対策することができれば、多くの利益を得られるようになります。
そんな継続期間を伸ばすための手法として、注目されたのがカスタマーサクセスです。
顧客がサービスに期待すること(顧客にとっての成功)を100%叶えてくれるサービスであれば、顧客が利用を停止することはありません。そのためサブスクリプション型のサービスを提供する企業の間で顧客の成功が自社の成功に結びつくという考えが生まれたのです。
サブスクリプションにおけるカスタマーサクセスの役割

ここまで、カスタマーサクセスは解約率を下げることための手法として注目されてきたと解説をしました。大きな目的は解約率の低下で間違いありませんが、それ以外にもいくつかの役割があるので下記で詳しく解説をします。
解約率を減少させる
カスタマーサクセスの最大の役割は「顧客の解約率(離脱率)を減少させる」という効果です。
従来のパッケージモデル(買い切りモデル)は、高い金額で購入したからには長く使い続けなければもったいないという考えが生まれました。しかし、月額単位で料金が発生するサブスクリプションモデルでは同じ考えは生まれません。ユーザーはサービスを利用するうえでの問題に直面したとき、容易に離脱を選択してしまうでしょう。
カスタマーサクセスでは、利用者の声を集めることで「顧客にとっての成功が何か」「顧客の成功のために必要な機能があるのか」「その機能を顧客が使いなすことができているか」「成功に対して、サービスの金額は適正か」など、離脱の原因となる問題を明らかにしていきます。
求められている機能がないのであればサービスの改良を行う、機能があるのに使い方が浸透していないならガイド機能を追加するなど、根本的な問題解決をしていくことで解約率を減少させます。
平均購入単価を増加させる
カスタマーサクセスにより、平均継続期間を伸ばすことは解説しましたが、実はカスタマーサクセスは平均購入単価にも影響を及ぼします。
カスタマーサクセスを通じて集めた利用者の声を利用すれば、既存のサービスを改善するだけでなく、別のサービスやプランを作くることもできます。
高単価のサービスへの切り替え(アップセル)や、関連するサービスの追加購入(クロスセル)を実現することができれば、1人あたりの単価の改善にも繋がります。
サービスの認知拡大、新規顧客の獲得
カスタマーサクセスは、顧客の需要を洗い出してプロダクトに反映させることを目的にすると解説しました。それによりサービスのクオリティが高まり、実際に成功体験をした顧客が増えると、顧客がファンとなりサービスを周囲に広めてくれるようになります。
カスタマーサクセス業務の直接的な効果ではなく、間接的な効果ではありますが、新規顧客の獲得にも大きな影響を及ぼすでしょう。
サブスクリプションにおけるカスタマーサクセスの具体施策

次に、カスタマーサクセスを成功させるための5つのポイントについて解説します。
顧客のサクセスマップを作成する
顧客にとってのサクセスは何かを見つめ直すために「サクセスマップ」を作成します。
どのような業務にも共通することですが、これから何を改善するのかを可視化することは重要です。あいまいな認識ではチーム内での共有も難しく、方向性が定まらずに効率の良い施策を打ち出すことはできません。
ユーザーの声を集める仕組みを作り、意見をすくい上げたうえで顧客にとっての成功を明らかにしましょう。
顧客データの分析
カスタマーサクセスの目的の1つは「顧客の離脱を防ぐ」ことにあります。そのためには、離脱するユーザーについて分析することが必要です。
離脱する顧客には何らかの共通点がある可能性があるはずです。今までに集めた顧客データや関連情報を集約し、チャーンされる原因が何であるかを明らかにします。
利用中のユーザーに直接ヒアリングして困っていることを聞き出すことももちろん大切ですが、離脱したユーザーのデータから傾向を探ることも重要です。
オンボーディングの改善
オンボーディングとは、商品・サービスの利用を定着させるための仕組みのことです。
サブスクリプション型のサービスにおいて、短期間でユーザーが離脱する場合、原因が「使い方がよくわからないこと」や「便利な機能に気づけないこと」であるケースが多いです。
カスタマーサクセスを担当する方は、そうした課題に対しては、導入サポートやFAQなどを作成し、初心者ユーザーの定着化を図りましょう。
コミュニティの構築
カスタマーサクセスには「ユーザーからの声を集めてフィードバックする」という役割があります。そのためには、ユーザーがサービスの疑問や不満を発言できる仕組み(場所)を用意する必要があります。
代表的なものとしてはユーザーコミュニティを立ち上げる方法が挙げられます。会員サイトを用意する方法や、最近ではSNS上でユーザーを囲い込む方法など、様々な方法でサービスを利用するユーザーを集めましょう。
その後、集めたユーザーに対してアンケートを行ったり、ユーザーが気軽に発言できるチャット機能を作ることで、よりユーザーの声を集約する仕組みが完成します。
プランや機能を充実化
集めたユーザーの声を、マーケティング部署や開発部署に共有をしてサービスの改善を図ります。
その際、1つのサービスに機能を追加していくのではなく、プランを細分化しユーザーが自身の要望に合わせてサービスを選べるように改善していきましょう。また、ユーザーの意見を叶える機能をオプション(アップセル商材)を開発することも有効です。ユーザーが自分にとっての成功とそのためにかけるコストを自分で選択できるようにすることで、金額面でのミスマッチを防ぐことができます。
サブスクリプションを運営する企業がカスタマーサクセスに成功した事例

最後に、実際にサブスクリプションを運営する企業が、カスタマーサクセスに成功した事例を3つ紹介します。
Netflix
定額制の動画配信サービスで有名な「Netflix」では、3つの視聴プランが用意されています。最安値の「ベーシック」では同時に視聴可能な画面数が1になっていますが、「スタンダード」では2、「プレミアム」では4となっています。
このプランを充実化させた背景にはカスタマーサクセスにより、ユーザーのライフスタイルを分析したことがあります。
昨今、消費者は1人1人が通信端末を持つ時代となりました。それゆえ、家族で利用するなどの需要において、同時に視聴可能な端末数が多くなることはメリットがあるのです。仮に、ベーシックプランを4人で契約した場合は800円×4人=3,200円ですが、プレミアムプランは約半額の1,800円で利用できます。
freee
株式会社freeeでは、会計ソフト「freee」を提供しています。
このfreeeというサービスには、顧客の「つまずき」を点数化するシステムがバックグラウンドで働いています。取引の登録作業などの多くのユーザーがつまずく箇所を点数化し、点数が高い項目の問題点を積極的にユーザーにヒアリングしました。
こうして得られた情報を、マーケティングや開発部署にフィードバックし、サービスの改善を行ってきました。現在は、マウスオーバーで様々な入力項目にガイドが表示されるようなサポートが施されており、ユーザーは使い方でつまずくことなく利用することができます。
SmartHR
さまざまな有名企業も利用しているクラウド型労務管理ソフトである「SmartHR」は、きわめて高い継続利用率を実現しています。その支えとなっているのが、カスタマーサービスチームの存在といえます。SmartHRでの事例はカスタマーサクセスの具体施策というよりは、体制という面で参考になるでしょう。
同社のカスタマーサクセスチームは、立ち上げ当時には3名しか在籍していませんでした。しかしチームの重要性を見直し、約1年後にはチームは12名まで拡大しました。さらにチームを「オンボーディング」「EnterpriseCMS」「SMB CMS」「テックタッチ」「オペレーション」の5つに分けています。簡単に説明するとチームごとに扱う顧客の層を分けています。導入から間もない顧客や大口の顧客など、顧客別に抱える問題を鮮明に追うことができるようになりました。
解約(チャーン)防止や、LTV向上のためには、まずは適切なカスタマーサクセスのやり方を把握し、効率的に課題解決を進めていく必要があります。
CXinでは、カスタマーサクセス体制構築のお手伝いとなるよう、実際のカスタマーサクセス現場の声をもとにした【カスタマーサクセス白書】を無料配布しております。ぜひご活用ください。
