ファンコミュニティサービスとは、企業のファンを増やすコミュニティの構築をサポートするプラットフォームです。ファンが交流できるサイトをデザインし、コミュニティ運営を支援します。本記事ではファンコミュニティサービスが注目される背景や利用するメリット、サービスの選び方などをご紹介します。
ファンコミュニティサービスとは
ファンコミュニティサービスとは、企業などのファンが集まり交流するWeb上のファンコミュニティを提供するサービスです。
ファンコミュニティの構築・運用をサポートすることで、ファン同士や企業とファンとの交流を促進しています。
ここでは、ファンコミュニティサービスの概要や目的、SNS運用との違いを解説します。
ファンコミュニティの場を提供するサービス
ファンコミュニティは、企業のブランドや商品・サービスのファンが集まり、主にオンライン上で形成されるコミュニティのことです。ファンコミュニティサービスはコミュニティサイトを構築するサポートを行い、企業のコミュニティ運用を助けます。
ファンコミュニティサービスの内容は提供する会社によってさまざまですが、掲示板や投稿など、コミュニケーションに役立つ機能が搭載されています。自社の目的に合わせて選ぶことで、スムーズなコミュニティの運用が可能です。
ファンコミュニティを設ける目的
ファンコミュニティを作る目的は、企業によりさまざまです。主に、以下のような目的が考えられます。
- ファン同士が交流できる場を設ける
- 顧客満足度を向上させる
- ファンとのコミュニケーションを通じてリアルな意見を把握し、商品開発や改善に活かす
目的によりコミュニティ運営の施策は異なるため、導入する際はどのような目的でコミュニティを設けるか明確にすることが大切です。
SNS運用との違い
顧客と交流する場として、SNSを利用している企業も少なくありません。ファンコミュニティサービスとSNS運用サービスは、利用する目的が異なります。
SNS運用は企業アカウントでTwitterなどのSNSを利用し、商品・サービスについての情報を発信をするマーケティング手法です。
商品・サービスの認知拡大など、新規顧客の獲得を目的とします。SNSの特徴は拡散力で、さまざまな層が利用しているため、投稿が拡散されて多くの人の目に触れる可能性があります。知名度アップや企業ブランディングに効果が期待できるでしょう。
ただし、SNSは主に一方向の情報発信にとどまります。顧客と継続的に関わりをもち、深い関係を構築してファン化するのは難しいといえるでしょう。
一方、ファンコミュニティサービスで対象となるのは企業のブランドや商品・サービスに関心がある層です。コミュニティで既存顧客との交流を深め、ファンを育成して顧客ロイヤリティを高めることを主な目的とします。
ファンコミュニティサービスが注目されている背景
近年、ファンコミュニティサービスは多くの企業で注目を集めています。注目されている背景のひとつにあげられるのが、インターネットの普及です。SNSやWebメディアが誕生し、スマートフォンの普及でテレビ離れが進みました。情報収集はスマートフォンのみで行うという人も増え、マスメディアの限界が指摘されています。
Web上で企業が直接、顧客と接点を持つことも可能になり、自らメディアを立ち上げて顧客に情報を発信する企業も増えている状況です。
ただし、流通する情報量は膨大で、情報を発信しても埋もれてしまうという事情があります。そこで、企業のファンを育てて、ファンから情報を発信してもらうことが重視されるようになったのです。
少子高齢化による人口減少も、ファンコミュニティサービスが注目される理由のひとつです。市場の縮小により、これまでと同じ新規顧客を開拓する営業手法は通用しなくなってきています。
今後は既存顧客と信頼関係を築き、顧客ロイヤリティを高めることが売上を伸ばすために必要です。そのために効果を発揮するのがファンコミュニティであり、ファンコミュニティサービス導入を検討する企業も増えています。
ファンコミュニティサービスを利用するメリット
ファンコミュニティサービスは、これからの時代に必要なマーケティング手法のひとつであり、導入する企業も増えています。顧客ロイヤリティの向上やユーザーのリアルな意見の把握など、数多くのメリットがあることも導入が増える理由のひとつです。
ここでは、ファンコミュニティサービスの導入で得られるメリットを5つご紹介します。
顧客ロイヤリティの向上
ファンコミュニティサービスの導入により、顧客ロイヤリティの向上が期待できます。顧客ロイヤリティとは、企業のブランドや商品・サービスに愛着や信頼を感じている状態を指します。
ファンコミュニティの運用でファン同士の交流や企業とのコミュニケーションが活発に行われることで、ファン同士や企業との距離が縮まります。ファンは交流を通し、企業への愛着や信頼を深めるでしょう。
パレートの法則と呼ばれる考え方があり、「売上の8割は全顧客の2割が生み出している」とされています。新規顧客を開拓するよりも、既存顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めることが売上を伸ばすために必要とされているのです。
顧客ロイヤリティを高めることはLTVの向上につながり、企業の成長に欠かせません。
ユーザーのリアルな意見を把握
コミュニティ内では、ファンと企業のコミュニケーションも活発に行われます。企業はユーザーのリアルな声を把握することができ、商品・サービスの開発・改良に役立てることができます。
商品・サービスの開発や改良にユーザーの声を反映させる場合、市場調査やデータ分析などを行うのが一般的です。しかし、市場調査にはコストや手間がかかり、データ分析は仮説にすぎません。ファンコミュニティサービスであれば、自社の商品・サービスを熟知したファンの声を直接汲み取ることができ、手間もコストもかけずに貴重な意見を手に入れることができます。
ファン同士で問題を解決
ファンコミュニティで質問コーナーなどのコンテンツを設けることで、ファン同士による問題解決が図られます。ファンは企業の商品・サービスについて熟知しているため、ライトユーザーの質問にも的確な回答ができるでしょう。
ファン同士の交流で疑問やトラブルの解決が可能なため、カスタマーサービスの負担を減らせるのもメリットです。
ファンがファンを呼ぶ
ファンは優れた広報の役割も果たします。好きなもの・良いと思うものは周囲の人にも薦めたいと思うのが人の心理です。そのため、顧客ロイヤリティの高いファンは周囲の人に企業の商品・サービスを積極的に薦める傾向にあります。
拡散力の高いSNSで情報を発信することもあり、高い宣伝効果を生むでしょう。ファンがファンを呼び、新たなファンの獲得につながります。
近年はUGC(ユーザー生成コンテンツ)が消費者の購買意欲を高めるものとして注目されています。UGCとは、ユーザーにより作成されたコンテンツのことです。SNSやWebサイト上に投稿されたコンテンツ全般、各種メディアへのコメント・レビューを指します。
ファンが増えることで自社に関するUGCも増え、高いマーケティング効果が期待できるでしょう。
交流でファンを育てる
ファンコミュニティには顧客ロイヤリティの高いヘビーユーザーもいれば、企業や商品・サービスを知ったばかりのライトユーザーもいます。しかし、ファン同士の交流が進むことで理解を深め、ライトユーザーがコアなファンになる可能性があります。
コミュニティで共感できるコメントを見たり、共通の話題で盛り上がったりすれば、ユーザー同士が連帯感や親しみを持つようになります。
さらに、メンバー限定の特典をつけたり、コミュニティ内のアクションに応じてポイントを付与したりする仕組みを作ることも、ユーザーに特別感を与えてファンを育てることにつながります。
ファンコミュニティサービスの選び方
ファンコミュニティサービスは各社から提供されていますが、機能やサポート体制などはそれぞれ異なります。コミュニティ機能や分析機能などをチェックし、自社の目的に合わせて適したものを選びましょう。
ここでは、ファンコミュニティサービスを選ぶ際にチェックしたいポイントをご紹介します。
初期設計はしやすいか
コミュニティの立ち上げでは、初期設計が大切です。まず、目標とKPIを設定します。目標は企業によってさまざまで、自社の課題に合わせて設定します。KPIは企業の目標を達成するための具体的な行動指標のことです。目標とその達成に向けたKPIが定まっていないと、コミュニティの運営がうまくいきません。
どのようなコミュニティを作るか戦略を立て、企業ブランドの世界観が伝わるコミュニティデザインも大切です。
これらの初期設計がしやすいか、どのような導入支援があるかをチェックしましょう。
特にコミュニティサイトの運営が初めてでノウハウがわからない場合には、サポートが充実しているサービスを選びましょう。
コミュニティ機能は整っているか
コミュニティを活性化させるには、コミュニティ機能が充実していることも重要な項目です。ユーザーが必要とする情報を検索しやすく、気軽に投稿できるツールがあるかチェックしましょう。
写真投稿や掲示板、Q&Aなど、コミュニケーションに必要なフォーマットが整備されていることも確認しておいてください。また、「いいね」やフォローなどのアクション機能、アンケート機能など、交流を深めるための機能が整備されていることもチェック項目です。
分析機能がわかりやすいか
コミュニティの運用でファンを育成するには、ユーザーの行動や投稿数・投稿内容などの情報、ユーザー間同士の交流頻度などを分析して改善していくことも必要です。
自社で必要な情報を分析する機能があるか、分析項目の表示がわかりやすいかもチェックしておきましょう。
必要な情報の項目をカスタマイズできるかどうかも、サービスを選ぶ際には確認しておきたい項目です。
サポート体制は充実しているか
ただコミュニティの構築を行うだけでなく、運営のサポート体制が充実しているかもチェックしておきましょう。顧客ロイヤリティを高めるためには、コミュニティを運営しながら課題を見つけ、より良く改善していくことが必要です。
自社に適切な運営を行う人的リソースがない場合、運営のコンサリティングや一部代行などにも対応してくれるところを選ぶとよいでしょう。
顧客ロイヤリティの醸成を目的にコミュニティの運営を検討している方には、coorumのサービスを検討してみてはいかがでしょうか。コード入力などの複雑な操作がなく、誰でも簡単にイベントページの作成・ユーザー管理ができるサービスです。
ブランドに合わせたデザインの変更もでき、ユーザーの行動データを管理・分析もできます。データに基づきファンの行動特性を理解することで、効果的な施策を打つことができます。導入後もプロフェッショナルが手厚くフォローするため安心です。
実績豊富な支援スタッフが在籍し、コミュニティの活性化から効果最大化までサポートします。
基本的な機能が標準装備されたライトプランや、設計から運営の一部代行まで万全の体制で支援するエンタープライズプランなど、目標やコミュニティの規模により最適なプランを選べます。
ファンコミュニティサービスを利用した事例
大企業を中心にファンコミュニティサービスを利用した企業の成功事例は多く、これから導入する際の参考になります。日本でファンコミュニティの先駆けとされるAmazon Web Servicesの「JAWS-UG」や、売上を支えるファンが集うカゴメの「&KAGOME」などが代表的な事例です。
ここでは、ファンコミュニティサービスを利用した3つの企業事例についてご紹介します。
Amazon Web Service【JAWS-UG】
クラウドコンピューティングサービスのAWS (Amazon Web Services)は、2011年に日本に上陸後、ユーザー向けのコミュニティ「JAWS-UG」の成功により大きく成長を遂げることができました。
日本全国に支部があり、1人ではできない学びや交流を目的に、ボランティアによる勉強会や交流イベントなどを行っています。
スタートアップから大企業まであらゆる組織に所属する、初心者から経験豊富な開発者までさまざまな人々が参加しているのが特徴です。
2021年には、視聴者数4,000人を超えるオンラインイベント「 JAWS DAYS 2021 」が開催されました。全国のコミュニティメンバーを中心にイベントの企画・運営を行い、最新技術やライフスタイルなど、AWS に関わる幅広いテーマのセッションが行われています。
カゴメ【&KAGOME】
大手食品メーカーのカゴメは、2015年に会員制のコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を立ち上げました。同社の商品は、わずか2.5%の顧客による購入が売上の30%を占め、少数のヘビーユーザーに支えられているという構造が特徴です。
そのため、ヘビーユーザーの離脱が業績に影響し、売上を支える顧客に目を向けることが課題となっていました。ファンを増やし、継続的につながり続ける取り組みが必要だと考えて立ち上げたのがコミュニティサイトです。&KAGOMEは、「ファンを知る」「ファンに伝える」「ファンと一緒に体験する」の3つを目的に運営されています。
コミュニティはユーザーとともに新商品を開発する場ともなり、栽培相談会や料理教室など、オンラインでファンとつながる機会を積極的に増やす活動が行われています。
2021年には会員数が4.9万人を超え、直近では年間1万人のペースで増えているということです。
コメダ珈琲【さんかく屋根の下】
全国にフルサービス型の喫茶店を展開する株式会社コメダは、熱心なファンが集まるコミュニティ「さんかく屋根の下」を運営しています。会員は「コメダ部」の部員となり。掲示板での情報交換やイベントを通じ、交流を深めています。
「珈琲所コメダ珈琲店」は95%がフランチャイズで、店舗ごとにロイヤル顧客といえる常連の顧客がいる状況でした。それを「コメダ」としてひとつにつなげたいと思ったのが、コミュニティを立ち上げるきっかけです。さまざまな顧客の声に耳を傾けたいという想いが、コミュニティの目的となっています。
コミュニティは顧客同士で楽しめる場所として運営しており、会社側はイベントや情報提供は行いながらも踏み込みすぎることなく、最終的には顧客の自発投稿だけでコミュニケーションをとれる場にしたいということです。
詳細はこちら↓
「より多くのお客様が交流ができる」コミュニティを。株式会社コメダが運営する「さんかく屋根の下」がcoorumを選んだ理由。
ファンコミュニティサービスを利用する際の注意点
ファンコミュニティサービスを利用する際は、いくつか注意したい点があります。まず、「コミュニティを販売の場にしてファンに売り込むことはしない」ということです。また、コミュニティの成果が出るまでには時間がかかるため、中長期的な計画として取り組むことも大切です。
ファンコミュニティサービスを利用する際の注意点について、みていきましょう。
コミュニティに売り込まない
コミュニティは、販売を行う場ではありません。売り込みをせず、ファンが交流できる場にすることが大切です。コミュニティを自社の商品・サービスの売り込みに使うことは、ユーザーの信頼を損ねる可能性もあります。
ファンに売るのではなく、ファンを通して売るという考え方です。コミュニティはあくまでファンが交流する場であり、ファンを育成する場所と考えなければなりません。
成果が出るまでには時間がかかる
ファンコミュニティを構築しても、すぐに成果が出るわけではありません。参加者が集まり、交流が活発になるまでにはある程度の時間が必要です。
新規顧客を集めるには魅力的なコンテンツを揃えなければならず、その作成には時間がかかります。ファンを通してコミュニティの存在が多くの人に広まるまで、長期的な計画で取り組まなければなりません。ファンコミュニティは直接収益に結びつくわけではないため、社内の理解を得にくい場合もあるでしょう。
成果が出るまでには時間がかかるということを把握し、社内の理解を得ながら中長期的な計画を立てて取り組む必要があります。
ファンコミュニティサービスで顧客ロイヤリティを高めよう
ファンコミュニティサービスは、ファンを育成するコミュニティの構築をサポートするサービスです。コミュニティの場を設けてユーザーの交流を促し、企業のブランドや商品・サービスのファンを増やします。ファンコミュニティの運営は顧客ロイヤリティを高め、LTVの向上も期待できるでしょう。ファンが広報役となり、新たなファンを増やすというメリットもあります。
ただし、ファンコミュニティがすぐに成果が出るものではなく、長期的な視点で取り組むことが必要です。
ファンコミュニティサービスは各社が提供しているため、自社の目的を達成させるのに適した機能を持つサービスを選ぶようにしましょう。