昨今、さまざまな業界において「サブスクリプション型」のビジネスが増加しています。サブスクリプション型のビジネスを成功させるためには、いかに「解約率を下げられるか?」が重要です。そこで、本記事ではサブスクリプション事業における解約率の重要性や計算方法などについて解説します。
サブスクリプションにおける解約率の重要性
まず第一に「サブスクリプション」という言葉の意味をおさらいしましょう。「サブスクリプション」とは商品やサービスの購入に代金を支払うのではなく、商品やサービスを利用した期間に対して料金を支払う仕組みのことを意味しています。いわゆる「定額制サービス」のことです。以前と比較して「映像・音楽」「飲食」など、さまざまな分野においてこのビジネス手法が導入されています。
そして、「解約率」とは、一定の期間内に自社サービスからどのくらいのユーザーが離脱したのかを示す数値です。「チャーンレート」「退会率」などの言葉で表現することもあります。
「サブスクリプションの解約率」とは、サブスクリプションサービスからの一定期間内の解約の多さを示す数値です。
サブスクリプションの新規顧客獲得は困難
サブスクリプション事業を運営するにあたって解約率が重要なのは「新規顧客の獲得の難しさ」が深く関係しています。
一般的に、新規顧客を獲得する際には、既存顧客を維持する場合と比較して5倍以上のコストが必要になると言われているのです。つまり、「サービスを解約されても、新しいユーザーを獲得すればいい」という考え方だと、「契約してくれたユーザーを維持すべき」という考え方と比較して費用がかかり、利益率を下げることになります。サブスクリプション事業における利益を確保するためには、既存顧客の解約率を下げる方が賢いのです。
「解約率」は運営する上で見逃せない指標
解約率の大きさは、サブスクリプション事業を運営する上で見逃せない指標の1つです。例えば「どんな属性のユーザーの解約率が高いのか」「どのタイミングで解約しているのか」など、サブスクリプションサービスを改善するためのデータとして役に立ちます。
もし、若い男性の解約率が高いと分かれば、若い男性にとって魅力的な部分が少なく、マイナスに感じる部分が多いことになります。
また、契約後すぐのタイミングでの解約率が高いとわかれば、使い方がわからず離脱してしまっているのではないかと仮説を立てることができます。
LTV(顧客生涯価値)を向上させるためには、より長く商品・サービスを利用してもらう必要があります。解約率が高いサブスクリプション事業は、どうしてもLTVが低くなってしまうのです。LTVを改善し、最大化するためには解約率を下げる対策が必要不可欠となります。
サブスクリプションの解約率計算方法・見方
解約率の計算方法を紹介します。計算方法は比較的簡単ではありますが、見方が少々ややこしくなる場合があるため、正しい見方を理解することも重要です。
基本の計算方法
一般的に解約率の計算方法は「カスタマーチャーンレート」の計算方法を参照します。
カスタマーチャーンレート(%)=(期間中に解約したユーザー数÷期間開始時のユーザー数)×100
例えば、ある月の月初のユーザー数が1,000人、5月中の解約ユーザー数が100人いたとします。この場合は「(100÷1000)×100=10%」という計算式で、解約率は10%となります。要するに、期間開始時のユーザー数の多さに対して、期間中の解約ユーザー数がどのくらい多いのかを数値化したものが、解約率の計算方法となるのです。
算出した数値の正しい見方
ただし、この数値には1つの罠が隠れています。
例えば、上記の期間中に1,100人の新規ユーザーを獲得できたとします。すると、翌期間の開始時には1000‐100+1100=2000人のユーザーからスタートすることになるのです。もし、その期間中の解約ユーザー数が同じく100人だったとします。すると、この期間中の解約率は「(100÷2000)×100=5%」となるのです。
解約率だけ見ると、10%→5%となり、「解約率が半分になった!」と感じるかもしれません。しかし、解約ユーザー数でみると2つの期間で全く変わっていないのです。もし、解約率だけ見てしまうと「解約率を下げるための対策が奏功した」と評価してしまいますが、実際には解約ユーザー数は変化していません。
こうした事象は、新サービスのように「急成長中のサービス」においてよくみられます。短期間での新規顧客獲得数の多いサービスの場合、解約率を計算する際の分母が大きくなることで解約ユーザー数が変わらなくても解約率が下がったように見えるのです。そのため、解約率について考える際には「%」だけ見るのではなく、新規顧客の増加数などの要素についても総合的に加味して考えるべきなのです。
サブスクリプションの解約率を低下させるには
解約率を低下させるためには、まず現状を把握して改善策を見つけ出しましょう。
NPSを算出
まず「NPS」を算出します。NPSとは「Net Promoter Score」のことであり、わかりやすく説明すると「この商品やサービスを、知り合いにおすすめしたいかどうか?」という、ロイヤリティを数値化したものをいいます。
NPSが高い評価であれば、既存顧客の解約率を下げ、SNSなどで情報拡散することで新規顧客の獲得にもつながります。逆にNPSの評価が低いと新規顧客を獲得することが難しくなり、既存ユーザーの離脱率が増えてしまうのです。
シンプルなNPSの評価方法は、「おすすめ度」を10段階で評価してもらい、数値化します。10点満点の評価で「0~6点:批判者」「7~8点:中立者」「9~10点:推奨者」として分類します。例えば推奨者が35%、批判者が15%いるサブスクリプションサービスの場合、「NPS=35%—15%=20」となります。
顧客体験を分析
次に「顧客体験」を分析します。顧客体験とは、ユーザーが商品・サービスと接触して興味を持った段階から、購入して利用し続けるまでのすべての企業との接点、およびそれらに基づいてユーザーが企業に対して抱いた評価のことです。
解約率を下げるためには、すべての顧客体験をピックアップして、どの顧客体験がNPSに対して大きく影響しているのかを可視化します。その際、顧客体験をある程度の分類に分けておくと、分析の効率が高まります。
NPSと顧客体験から原因を推測
NPSと顧客体験の分析が完了したら、これらのデータから解約率に影響している原因を推測します。
例えば、ユーザーの離脱率に関して「アフターフォローの充実さ」が関係することがあります。例えば顧客体験の分析の結果、アフターフォローが充実していないことが顧客の離脱率を高め、NPS評価を下げて解約率を高くしているという課題が明確になります。
原因の根本を改善
解約率に関する課題が明確になったら、その分析結果に基づいて原因を根本的に改善します。例えば上記の例だと「アフターフォローが問題」という分析結果がでています。そこで「ユーザーからの問い合わせで何が多いのか?」を調べて「よくある質問」に反映させて内容を充実化するなどの改善策が見えてきます。
その他にも、担当者の手腕が問われる内容が解約率に影響しているのであれば、ユーザーへのアンケートから何が高く評価されているのかを把握し、その評価の高い担当者を表彰するなどしてスキルアップへのモチベーションを高めることも有効な手段となります。
サブスクリプション事業のように「長期間の契約を前提とするビジネスモデル」においては、解約率を下げることが長期的な利益の確保につながります。解約率を下げるためにはNPSや顧客体験を分析し、必要な対策を打ち出して解約率を下げましょう。
解約率低下に役立つカスタマーサクセスツール
解約率を下げるためには「カスタマーサクセス」も重要です。カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を表す言葉であり、カスタマーサポートのような受動的な解決策ではなく、能動的・積極的にユーザーにアプローチすることで顧客の不満獲得を防止し、解約率を下げることにつながります。
カスタマーサクセスを実施するにあたっては「カスタマーサクセスツール」を導入することが重要な対策の1つとなります。そこで、解約率を下げるために役立つであろう3つのカスタマーサクセスツールを紹介します。
KARTE
「KARTE(カルテ)」は、訪問者の行動・感情をリアルタイムで分析して、それぞれに合わせた顧客体験を提供するためのCXプラットフォームです。さまざまなデータのつながりから顧客を「文脈的」に把握し、あらゆるアプローチによって「分析・解析を溶かす」ことをコンセプトとしています。このツールはさまざまな業種に最適化された顧客体験を提供することができ、業種によって異なる顧客体験を1つのツールで管理できます。
Gainsight
「Gainsight(ゲインサイト)」は、アメリカを中心に海外で高く評価されているツールです。顧客のエンゲージメントに関する分析ができるだけでなく、解約やアップセルの兆候を検知することで能動的にアクションを起こすことができます。解約の兆候を検知することができるため、解約される前に適切なアクションを起こし、解約を防ぐことができるツールなのです。
Hi Customer
「HiCustomer(ハイカスタマー)」は、顧客の「ヘルススコア」を算出することで、対応すべき顧客を可視化してCSチームのリソース不足を回避してパフォーマンスを向上させることができるツールです。解約・アップセルの兆候を検知するアラートは独自に作成可能であり、解約率の改善につなげることができます。API経由で主要SFA/CRMとのデータ連携が可能で、営業時点でのデータをこれに活用することでカスタマーサクセスの精度を向上させることができます。
coorum
「coorumu(コーラム)」は、法人向けのユーザーコミュニティ管理ツールです。既存顧客に必要なナレッジを蓄積し、顧客分析の難易度を下げ、顧客ごとに最適なコンテンツを提供できます。希望する目標やコミュニティの規模に応じて3種類のプランから選択できるカスタマーサクセスツールです。
解約(チャーン)防止や、LTV向上のためには、まずは適切なカスタマーサクセスのやり方を把握し、効率的に課題解決を進めていく必要があります。
CXinでは、カスタマーサクセス体制構築のお手伝いとなるよう、実際のカスタマーサクセス現場の声をもとにした【カスタマーサクセス白書】を無料配布しております。ぜひご活用ください。