ファンベースとは?注目される理由やメリット、取り組み方を解説

2023-09-27 コラム

近年、ファンを中心に考えるファンベースの考え方が注目されています。ファンを重視したマーケティングを実施し、LTV(生涯顧客価値)を高める手法です。今回は、ファンベースの意味や必要とされる背景を解説し、具体的な施策について紹介します。

ファンベースとは?

ファンベースはファンを中心に活動することで、これまでの既存顧客に向けたマーケティングよりも、より深くファンをメインに据える手法です。売上の多くを支えるファンを大切にするという考え方であり、人口減少や市場の変化などにより注目が集まっています。

ファンベースの意義や、必要とされる理由について詳しくみていきましょう。

ファンを大切にする考え方

ファンベースとは、企業の売上を支えるファン重視し、大切にしようとする考え方です。自社のファンを大切にするというのは、どこの企業でも当たり前といえるかもしれません。しかし、ファンベースでは大切にするという考え方がより強く、ファンを最優先で考え、信頼関係を築くことを目的とします。

ビジネスでは、顧客の上位20%が売上の80%を支えているという「パレートの法則」があてはまります。その中でも、より熱量の高いファンが多くの割合を占めているのです。

ファンベースはそのようなファンを中心に考えたマーケティングであり、より売上を上げて企業が成長するための戦略になります。

ファンベースが必要な理由

ファンベースが注目されるのは、人口減少や市場の変化など、さまざまな理由が背景にあります。

人口減少やライフスタイルの変化

少子高齢化で人口減少が進む現代では、これまでのように新規顧客数を増やすことは難しくなっています。

ライフスタイルも変化し、多様化することでさまざまなニーズが生まれています。ただ新規顧客を増やすだけでは、売上を伸ばすことが難しい時代になってきました。それぞれのニーズに応える商品・サービス、ブランドを創り出し、ロイヤリティの高いファンを増やすことが求められています。

市場や社会の変化

現代の市場は多くの商品・サービスが存在し、すべてのクオリティが高い水準にある超成熟市場です。選択肢の多い市場で顧客は選ぶのに迷い、結局どれも選べないという結果にもなりかねません。

超成熟市場で自社の商品・サービスを選んでもらうには、差別化が必要です。その差別化として重視されるのが、顧客ロイヤリティです。熱量の高いファンを増やすことで、他社ではなく自社の商品・サービスを選んでもらえるようになります。

ファンマーケティングとは?メリットや戦略、成功事例を紹介

ファンの支持を集める3つのアプローチ

ファンからの支持を集めてファンベースを実践するため、大切な3つのアプローチがあります。価値を高める「共感」と、価値を他には代えがたいものにする「愛着」、価値の提供元の評価・評判を高める「信頼」です。ファンベースでは、この3つを意識することがポイントになります。

3つのアプローチについて、さらに詳しく解説します。

共感

ひとつめのアプローチは、企業価値への共感を得ることです。ファンの言葉に耳を傾け、ファンであることに誇りを持ってもらいます。ファンを喜ばせ、新規顧客よりも優遇する働きかけです。

共感の心情が向かう先は「企業というブランドや商品・サービスが大切にしている価値」です。価値に対して、「こういう商品・サービスを求めていた」「この会社の考え方に同意できる」といった心情が向けられます。

愛着

2番目のアプローチは、ブランドや商品を他に代えがたいものにして、愛着を強めることです。顧客はただの「モノ」ではなく、ストーリー性がありドラマがある商品・サービスにより魅力を感じます。モノの背景に、「人」の存在が感じられることが愛着を強めるポイントです。

また、接客や電話応対、SNSなどファンとのあらゆる接点をチェックし、それぞれ丁寧に改善します。さらに、ファンが参加できる場を作り、盛り上げることも愛着を強くするための重要な働きかけです。

信頼

3番目のアプローチは、企業の評価・評判を高めて信頼を得ることです。どれだけ素晴らしい価値を提供していても、評判の悪い会社ではファンが集まりません。マーケティング施策が誠実に行われているかのチェックが必要です。

また、商品・サービスについて品質に問題がないことを丁寧に説明できなければなりません。品質の高さを証明するためには、根拠となる研究開発や製造工程などを開示することも求められます。

社内への取り組みも大切です。社員が自社を信頼し、誇りを持って働いていることは、社外のファンの信頼と結びつきます。自社を信頼していない社員が働く企業は、社外の誰からも信頼されないでしょう。

ファンベースの取り組みがもたらすメリット

ファンベースに取り組むことで、以下のようなメリットを得られます。

  • 新規顧客の増加
  • LTV(生涯顧客価値)の向上

熱心なファンは周囲にも商品・サービスを広めるため、新規顧客の獲得につながります。また、既存顧客のリピート率を高めることで、LTV(生涯顧客価値)を高めるでしょう。

ファンベースがもたらすメリットをみていきましょう。

新規顧客の増加

ファンベースは新規顧客の獲得に効果的です。企業に対する愛着が強いファンは、積極的に第三者に商品・サービスを広める広報の役割をします。消費者にとって一番信頼できる情報源は家族や友人であるという調査結果もあります。膨大な情報が溢れる時代に、熱量の高いファンからの情報は高い信頼を獲得するでしょう。

また、インターネットが普及した現代、消費者は企業が発信する情報をそのまま鵜呑みすることなく、自らネットで検索して情報の真偽を確かめます。

商品・サービスを購入するときは、SNSの投稿や口コミの評判を見てから購入を決めるという消費者も少なくありません。熱心な企業のファンはSNSや口コミサイトに投稿することも多く、なぜその企業や商品・サービスが素晴らしいかを詳細に伝えます。

投稿が拡散されることで、投稿を見た消費者が新規顧客になり、商品のコンセプトや企業の価値に共感した消費者がファンになる可能性もあります。

LTV(生涯顧客価値)の向上

熱心なファンは商品・サービスの利用をリピートするため、成熟市場でも安定した売上を見込めます。ファンは通常の顧客とは異なり、簡単に他社に乗り換えるということはありません。特定の商品・サービスを利用しているファンが、自社の関連商品を購入することもあるでしょう。ファンを増やすことで顧客のLTV(顧客生涯価値)が上昇することが考えられます。

LTVとは、​​ある顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの期間に、どれだけの利益をもたらすかを表した数値です。顧客との取引が長く継続すればするほど、LTVは高くなります。

LTVの向上により、購入頻度が高い顧客や継続期間が長い顧客など、優良顧客の傾向がわかります。真の顧客のニーズを把握し、効率的なマーケティングができるでしょう。

ファンベースのマーケティング自体は短期的な成果が見えにくいものの、長期的に見ると、安定的に高い売上の維持が期待できます。

LTVを向上させるために必要な戦略については、以下の記事が参考になります。

LTVをアップさせる営業戦略|基本知識から応用までを徹底解説

ファンを育成するために必要なこと

ファンベースの基盤となるファンを育成するためには、企業のブランド価値を高めて共感を得ることと、評価を高めて信頼を獲得することが大切です。

さらに、社員一人ひとりが自社のファンになることも欠かせません。自社で働く社員がファンであることで、初めて顧客の共感を得る商品やサービスを提供することができます。

ここでは、ファンを育成するために必要なポイントを紹介します。

企業のブランド価値を高める

ファンの共感を得るため、企業のブランド価値を高めることが大切です。そのためには、まず、「企業のブランドや商品・サービスが大切にしている価値」を明確にすることから始めましょう。ブランド価値を明確にするには、以下の方法があります。

  • 顧客アンケートやレビューを集めて自社の魅力・ブランド価値を抽出する
  • 社内で自社ブランドの特徴や性能、魅力を話し合う
  • 競合と比較して自社の強みを見つける

自社のブランド価値を明確にしたら社内で共有し、社員同士で話し合いながら共感しましょう。商品・サービスの魅力や、その魅力をどう伝えるかを定期的に話し合います。企業のブランド価値に共感した社員は、価値をさらに高めようと工夫をするようになり、共感を集める商品・サービスを生み出すようになるでしょう。 

企業の評価を高める

企業の評価を高め、ファンの信頼を獲得することも重要です。自社の施策がファンのことを考え、誠実な方法であるかをチェックしましょう。

施策の中には、利益の追求だけを考えて不誠実な内容になっているものも少なくありません。

例えば、以下のような施策は誠実とはいえないでしょう。

  • 一度検索しただけで、どのサイトを見てもしつこく広告が流れる
  • 自動更新のお試し無料プランで無料期間が終わる前に通知が来ない
  • 動画広告が自動再生される
  • 品のないバナー広告を掲載している
  • 解約プロセスがわかりにくい

クリック率など目先の利益を得るために、不誠実な施策が行われていないかを確認しましょう。本当にファンのための施策なのかを考え、不適切な部分があれば見直してください。

過去に失敗したことや不祥事があれば、隠さずサイトに掲載しておくこともファンの信頼を得る方法です。誠実な対応をする企業には支持が集まり、やがてファン化していくでしょう。

社員一人ひとりが自社のファンになる

ファンベースでは、社内にもファンを増やすことが必要です。社員が自分の企業を信頼し、誇りを持っていることは、社外のファンの信頼につながります。

社員の信頼を得るためには、企業理念やミッションを共有することから始めましょう。十分浸透させるため、ディスカッションや研修を行うことも必要です。

社内の慣習などで、社員の信頼を失うような事柄がないかも確認しましょう。表向きには「お客様第一主義」と唱えながら、実際はノルマの達成に厳しいといった矛盾があると、社員の信頼は得にくいといえます。

ファンベースを推進する具体的な施策

ファンベースを具体的に進めていく上で効果的な施策は、以下の3つです。

  • ファンコミュニティを作る
  • 自社サイトで本業を紹介する
  • 従業員エンゲージメントを高める

ファンコミュニティは、ファンが気軽に参加してファン同士が交流できる場所であり、会社への愛着を高めます。

ファンの信頼を獲得するため、自社サイトで本業を紹介するのも効果的です。社員をファン化するには、従業員エンゲージメントの向上が欠かせません。

ファンベースを推進する有効な施策を紹介します。

ファンコミュニティを作る

ファンコミュニティとは、ファン同士が集まって意見や情報を交換する場所です。近年はファンコミュニティのサイトを作る企業が増え、ファン同士の交流が積極的に行われています。

ファンコミュニティは同じ企業や商品・サービスに関心をもつ人が集まる場で、共感できるコメントを見たり共通の話題で盛り上がったりして、ファン同士が連帯感を持つ機会を提供します。ファンとの交流を通じ、企業への愛着も深まるでしょう。

ファンコミュニティではファンの意見を直接聞くことができ、商品・サービスの開発や改善に役立てることもできます。

サイト内で情報共有が行われることで、カスタマーサポートの負担も軽減できます。熱心なファンは、他の参加者の疑問や不安などの相談に応じるため、そこで問題が解決できることも多いでしょう。カスタマーサポートに問い合わせる件数を減らせます。

ファンコミュニティは自社でサイトを立ち上げて運営するという方法もありますが、社内に人的リソースがない場合、コミュニティサービスの利用がおすすめです。coorumではコミュニティの立ち上げや運営、ロイヤル顧客のデータ分析までワンストップで対応し、LTVの最大化を実現するサービスです。

立ち上げでは、コミュニティを成功させるために重要な初期メンバーを選定します。コミュニティ活性化に役立つ機能を備え、達成したい目標やコミュニティ規模などにより最適な利用プランを選べます。

ファンベースによるマーケティングを検討している方は、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

ファンコミュニティについては、以下の記事も合わせて参考にしてください。

ファンコミュニティの意味とは?導入する目的やメリットも解説

自社サイトで本業を紹介する

ファンの信頼を得るには、自社サイトで本業を丁寧に紹介するのが効果的です。企業側は当たり前なことでも、消費者にはわかりません。

研究開発の現場や工場などの製造現場、コンテンツの制作現場などを撮影し、映像を流すことで、ファンにとっては興味深い本業の裏側を知ることができます。

紹介する内容は企業によりさまざまです。

  • 工場や研究所、仕事場など商品やコンテンツが作られるまでの工程を見せる
  • 開発者や技術者・制作者の紹介やインタビューを公開する
  • 商品が作られる現場(工場など)を訪れたファンが案内する
  • これまで獲得した賞や特許を掲載する

本業の紹介は企業への理解と信頼を深め、さらに愛着を寄せることにつながるでしょう。

従業員エンゲージメントを高める

社員の信頼を得て社内にファンを増やすには、従業員エンゲージメントを高めることで達成できます。従業員エンゲージメントとは社員が会社の方向性に共感し、愛着と信頼を寄せて自発的に「会社に貢献したい」と思う意欲のことです。

従業員エンゲージメントの向上により、社員は自発的、積極的に行動します。生産性や仕事の質が高まり、企業価値を上げるでしょう。顧客満足度アップにもつながります。

従業員エンゲージメントを高める方法として、企業理念やビジョンの共有、労働環境の改善、社内コミュニケーションの活性化などがあげられます。

従業員エンゲージメントを高めた社員がひとりのファンとして社外のファンと向き合うことで、より価値を高めた商品・サービスを提供していくことができるでしょう。

企業価値を高めてファンベースを推進しよう

ファンベースはファンを大切に考え、マーケティングの中心に据えて売り上げを上げていく手法です。人口減少やライフスタイルの変化で新規顧客の獲得が難しい時代に、ファンベースのアプローチが注目されています。

ファンベースは、共感・愛着・信頼という3つのアプローチで実践し、ファンをコアファンへと育てる仕組みです。ファンベースの取り組みにより、LTVの向上やファンを通しての新規顧客の獲得といったメリットがあります。

ファンベースを推進する具体的施策として有効なのが、ファンコミュニティです。ファン同士が交流できる場を提供することで、ファンを育成します。ファンベースの取り組みでファンを増やし、企業を成長させましょう。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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