インサイトとは?マーケティングに役立つ活用例を解説

2025-03-06 コラム

マーケティングにおける「インサイト(insight)」とは、消費者自らが意識していない心理のことです。英語で「洞察」や「直感」などを意味し、消費者の隠れた本音を表します。

競合他社との差別化を図るためには、顧客自身が気付いていない意識を見抜き、丁寧に深掘りする取り組みが必要です。本記事では、インサイトの重要性やマーケティングに活用するメリット、活用事例などについて解説します。

インサイトとは

「インサイト(insight)」は、「洞察」や「閃き」、「直感」などに訳される英語です。マーケティングにおけるインサイトは、消費者自らも意識していない本音を表します。

似た言葉に「ニーズ(needs)」がありますが、インサイトとは意味合いが異なります。

両者を混同しないよう、まずはインサイトに関する基礎的な知識を押さえていきましょう。

インサイトの概要

インサイトは「物を買う」、「サービスを利用する」などの行動につながる消費者の潜在意識を表します。マーケティング業界では「消費者インサイト」や「顧客インサイト」の形で用いられる言葉です。

例えば、1人の女性がコンビニエンスストアでお茶を購入したとします。お茶を購入した直接的な理由は「喉が渇いたから」、「食事にあわせる飲み物がないから」などかもしれません。

では、複数あるブランドから、そのお茶をあえて選んだのはなぜなのでしょうか。そこには、女性自身も気付いていない意識が隠れているはずです。

前述したように、英語のインサイトは「洞察」と直訳されます。洞察とは物事を観察し、本質を見抜くことです。

消費行動につながる顧客の本心は、目に見えるものではありません。多角的な視点で消費者の生活環境や考えを観察し、理解することが「インサイト」の発見へとつながります。

インサイトとニーズの違い

インサイトとニーズの大きな違いは、本人の自覚の有無です。インサイトが消費者自身の自覚がない欲求であるのに対し、ニーズは「〇〇したい」というはっきりとした欲求を表します。また、無意識の欲求であったとしても、他者からの問いかけで言語化できることが特徴です。

マーケティングにおけるニーズは「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」に分類されます。それぞれの具体例は後述しますが、インサイトは以下のように、ニーズより深い場所にある欲求だと理解しておいてください。

表装心理顕在ニーズ本人の自覚がある欲求
無意識潜在ニーズ本人の自覚がない欲求(提示や質問などにより言語化できる)
深層心理インサイト本人の自覚がない欲求

インサイトが注目を集める理由

現代社会はすでに多数の物やサービスであふれ、差別化が難しくなってきています。インサイトが近年注目されている理由は、消費者が気づいていない欲求に対応することにより、新たな差別化につながるからです。

ニーズは発見しやすく、すでに商品やサービスで実現されていることも多いですが、インサイトは簡単には発見できません。インサイトを見つけ、インサイトを満たした商品・サービスを提供できれば、競合他社と差別化できます。

これまでに明らかになっていなかったインサイトを発見すれば、新たな商品やサービスが誕生し、売上や利益の増加につながるチャンスも生まれます。

顧客インサイトとは?分析・調査の方法や見つけ方のポイントを解説

インサイト・顕在ニーズ・潜在ニーズの具体例

インサイトとニーズの違いは、自覚の有無にあると前述しました。それぞれの違いは、具体例を用いるとわかりやすくなります。

ここでは、「ダイエット」を対象とした顧客のインサイトや顕在ニーズ、潜在ニーズについて解説します。

顕在ニーズ

顕在ニーズとは、本人が明確に意識している欲求のことです。たとえば、ダイエットに取り組む場合、「痩せたい」「スタイルをよくしたい」といった願望が顕在ニーズにあたります。

ダイエットをしたい方が取る行動の多くは、太りやすい食べ物を避けたり、スポーツをしたりなどです。これらの行動に関係する商品やサービスには、ダイエットサプリやスポーツジムなどがあげられます。

ただし、いずれも世の中には、すでに多数存在しています。そのため、他社のサービスや商品との差別化は簡単ではありません。

潜在ニーズ

潜在ニーズを発見するには、「痩せたい」という直接的な願望の要因を探る必要があります。なぜ「痩せたい」と思ったのか、なぜ「スタイルをよくしたい」と思ったのかなど、顕在ニーズを深掘りした先にある心理です。

人によっては、「薄着になる夏が来るまでに痩せたい」というニーズを抱えているかもしれません。「ただ痩せるだけでなく、筋力のあるバランスのとれたスタイルを目指したい」といったケースも考えられます。

商品やサービスの訴求力を高めるためには、潜在ニーズに基づいたマーケティング施策が大切です。潜在ニーズを反映させることで、消費者側は自分の願望を理解されていると感じ、自分のための商品・サービスを認識しやすくなります。

インサイト

インサイトの発見には、顕在ニーズや潜在ニーズとは異なる視点が必要です。なぜダイエットをしたいと思うのか、消費者も認識していない深い欲求を分析する力が求められます。

たとえば、「似合う服を増やすために痩せたい」という潜在ニーズには、「もっと明るくポジティブに生きていきたい」「もっと多くの人と交流したい」などの意識が隠れているかもしれません。

このようなインサイトをもつ消費者は、ダイエットに関する商品だけでなく、化粧品やファッションアイテムにも興味をもつ可能性が考えられます。顧客へのアプローチも、さまざまな手法が検討できるでしょう。

マーケティングでインサイトを活用するメリット

マーケティングでインサイトを活用することには、さまざまなメリットがあります。

ここでは、代表的な3つのメリットについて解説します。

イノベーションをもたらす可能性がある

インサイトを追求すると、消費者の深い心理や行動を理解できます。インサイトによって、消費者の購買行動に関する新たな動機が判明すると、それまでなかった製品やサービスの開発ができる可能性があります。

販促や広報・宣伝の方法にもインサイトを活用すると、より効果的なマーケティングコミュニケーションを実践でき、ビジネスモデルにも変革をもたらすことが可能です。

消費者との関係性を強化できる

インサイトを分析することで、消費者の感情を適切に反映した販売方法や、製品・サービスの開発を実現できます。これにより、消費者には「自分たちの思いをわかってくれる企業」という印象を持ってもらうことが可能です。

「この企業の商品やサービスなら大丈夫」という信頼を得ることで、消費者との関係性が強化されます。ロイヤルカスタマーとして、長年に渡り自社の製品・サービスを愛用してくれる可能性も高くなります。

自社のシェア拡大につながる

発見したインサイトをもとに新しい製品やサービスを販売することで、新たな顧客層もターゲットとして設定できます。自社製品・サービスの差別化もできるため、企業の競争力が高まります。

その他にも、SNSにおけるバズの発生、新規ビジネスの展開といった効果も期待できるでしょう。消費者のインサイトを理解してマーケティング施策に活かすことで、自社のシェアを拡大できます。

CX向上!お客様との継続的な関係性を構築
コミュニティを活用してお客様との双方向なコミュニケーションを実現。顧客体験向上からファンやロイヤル顧客を増やす方法が知りたい方はこちら。
資料をダウンロード
資料をダウンロード

インサイトを調査する流れ

自社のマーケティング手法にインサイトを活用するには、より具体的な手順を知る必要があります。インサイトを見つけるのは通常難しいものですが、基本の流れに沿って調査すれば、効率よく把握できるでしょう。

ここではインサイトを調査する基本的な流れについて解説します。

目標を設定する

まずは、インサイト調査の目標の設定です。インサイトの発見により「何を得たいのか」、目標が明確なほど効率的な工程や手法が見えやすくなります。

目標には、「あるターゲットの行動パターンから新たな顧客の欲求を発見する」「商品・サービスの改善点を見つける」などが考えられます。いずれの目標も、達成すれば業績が向上する、コストが抑えられるといった実質的なメリットがあることが前提です。

また、目標を明確に設定すれば、プロジェクトチームのメンバー間での情報共有や連携もしやすくなります。

データ収集を行う

インサイトを明らかにするためには、消費者のさまざまな情報が必要です。なかでも次のような定量的・定性的情報は欠かせません。

・定量的情報:客観的な数値で表せる情報(アンケート結果やWebサイトへのアクセス履歴など)

・定性的情報:感情や心境など数値で表しにくい情報(インタビューで得られる意見や苦情など)

どちらか一方だけでインサイトを発見するのは困難です。特に、マーケティング効果を高めるためには、消費者の声を商品やサービスに反映させる必要があります。

顧客の心理状態を把握する際に役立つのが「VOC」です。VOCは「Voice Of Customer(顧客の声)」の略語で、消費者がサービスを使った感想を意味します。

VOCにはポジティブな意見だけでなく、要望や苦情といったネガティブな意見も含まれます。VOCをはじめ、より多くのデータを収集するほど、正確なインサイトを把握しやすくなるでしょう。

VOC(Voice of Customer)とは?収集・分析方法を解説

集めたデータを分析する

十分なデータが収集できたら、次は顧客分析です。顧客の行動パターンや傾向について類似点と相違点をピックアップし、共通のニーズや欲求ごとに集約しましょう。

分析時に重要なのは、データに優先順位を設けることです。個別に評価した信用度や有用性に配慮しながら、より重要なデータを優先的に扱いましょう。

顧客分析の効率化には、ツールの活用がおすすめです。膨大なデータをより正確かつスムーズに分析できます。

よく利用されるツールには、アクセス解析ツールなどがあります。必要であればデータ分析の専門家に相談するというのも1つの方法です。

集めたデータは競合他社に先んじて活用するため、より素早く分析・活用する必要があります。効率的に分析できる、適切な方法を採用しましょう。

顧客分析とは?分析の手順やフレームワーク、ツールを紹介

分析を通じてインサイトを見つける

データ分析の結果が出た後は、実際にインサイトを見つけます。見えてきた消費者の隠れた欲求や傾向はもちろん、前後の行動パターンや価値観など、顧客のより多角的で詳細なデータも分析データに含めるとインサイトがより活用しやすくなります。

この段階では、ペルソナ設定や共感マップの作成が効果的です。

・ペルソナ設定:顧客の属性や情報を詳細に設定すること(より具体的な行動パターンや傾向が想定できるため商品・サービスの印象や有用性がわかりやすくなる)

・共感マップ:消費者が置かれている状況や思考の傾向を図にまとめたもの(商品・サービスに対する感覚的なイメージが明確になる)

この段階では商品・サービスについて、何を感じているか「具体的であること」がポイントです。共感マップで一覧性を高めれば、より総合的で深い理解につながります。

インサイトが正しいか検証を行う

インサイトが見つかったら、今度はそのインサイトが正しいかどうかを検証します。これはインサイトが、実際の消費者の購買行動に当てはまっているかどうかを検証するという、これまでとは逆の作業です。

検証には、新たに追加した調査の結果やインタビュー、フィードバックの収集などの手法を用います。ほかにもチームのメンバー同士で議論したり、マーケティングの専門家と情報を共有し相談したりといった方法も有効です。

その結果、妥当ではないと判断したらそのインサイトは破棄し、あらためて別のインサイトを発見するためのデータ分析に戻ります。

実際にマーケティングに活用する

インサイト発見後は、いよいよマーケティングに活用する段階に入ります。具体的には、ターゲット像や商品開発の方向性、広告戦略の見直しなどです。

インサイトをマーケティングに活用すると、消費者との関係を構築しやすくなります。競合他社との差別化のためにも、素早く適切に活用しましょう。

また、インサイトはマーケティングに継続して活用することが大切です。時期や流れが変わればインサイトも変化し、活用の効果も変わります。1つのインサイトに固執せず、新しいインサイトが現れていないか、慎重にかつ積極的に追求し続けましょう。

このような見直しには定期的な調査と分析が必要なため、適切なサイクルを見極める必要もあります。

インサイト調査の具体的な手法

前述したようなインサイト調査には、以下の手法が役立ちます。

  • インタビュー調査
  • アンケート調査
  • 行動観察調査(エスノグラフィー)
  • MROC
  • SNS分析
  • ペルソナ分析

それぞれの特徴を参考に、自社の商品やサービスに応じた方法を検討してみてください。

インタビュー調査

インタビュー調査は、消費者に対するインタビューからインサイトを導き出す手法です。インサイトを探る目的以外でも、多数のマーケティング調査で利用されています。

インタビュー調査は主に2種類あり、グループインタビューとデプスインタビューに分かれます。グループインタビューは複数の参加者で行い、参加者同士の会話により意見を引き出す方法です。

デプスインタビューは1対1で行い、プライベートな内容を取り扱うとき、意見を深堀りして詳しく聞きたいときに実施します。

通常のインタビュー調査は、「この商品の改善点は?」「この商品を知ったきっかけは何ですか?」など、言葉でのやりとりが一般的です。ただし、この方法で消費者の深層心理にたどり着くのは、容易ではありません。

言葉では明確化できない、消費行動に影響する心理にアプローチする手法には「ビジュアル刺激法」が挙げられます。

ビジュアル刺激法とは、設定したテーマに合うと思う画像を対象者に選んでもらう手法です。選んだイラストや写真に対し、テーマに関する質問を行いながら対象者の心理を掘り下げていきます。

1対1のデプスインタビューで用いられることが多く、得られた発言に詳細な洞察を加えていくことで、無意識のインサイトを明らかにできます。

アンケート調査

アンケート調査とは、設問をアンケートとして消費者へ配布し、回答してもらう形式の調査手法です。得られた回答を集約・集計すれば、回答の傾向や背景の推測、想定していなかった欲求など、貴重な情報を得られる可能性があります。

アンケート調査から得られるのは、数字で表現できる「定量的情報」と、数字では表現しにくい「定性的情報」です。インサイトをより的確に把握するには、両方をバランスよく収集する必要があります。

インサイトは定性的情報から得られるケースが多い傾向にあるため、記述回答のような、自由に回答できる形式も活用しましょう。

また、アンケート調査にはメールやSMSを使うと便利です。そのためには、メールアドレスや携帯電話番号といった個人情報のデータベースが欠かせません。必然的に、アンケート調査を実施する前は、対象者の個人情報を収集する取り組みが求められます。

行動観察調査(エスノグラフィー)

行動観察調査は、ターゲットとなる消費者の行動を観察・分析する調査です。エスノグラフィーとも呼ばれ、顧客の実態に即した情報が得られます。

観察対象となる行動には、顧客が店頭で買い物をする様子や実際の生活環境などが挙げられます。ユーザーから見たアプリの使いやすさを確認する、UIテストを参考にするケースもあるでしょう。

購買行動には顧客の潜在的な意識が影響しており、行動観察調査は顕在化されていない本質的な欲求の発見につながります。

MROC

MROCはオンラインでターゲットの専用コミュニティを作成し、メンバーの交流の様子を観察する手法です。正式名称は「Marketing Research Online Community」といい、近年注目を集めています。

同じ属性の顧客を集めたフォーカスグループインタビュー(FGI)や、明確に数値化できるものをリサーチする定量調査のような従来型の調査は、調査側が質問事項を用意するのが一般的でした。これらは「知りたいことを聞く」ための調査ともいえます。

MROCは、調査側が「知るべきこと」を見つけられる点が大きな特徴です。コミュニティのなかでディスカッションやアンケートなどを繰り返し進めることで、コミュニケーションが活性化され、対象者のやり取りのなかから想定外のインサイトを発見できます。

SNS分析

SNS分析とはSNSの投稿内容から、消費者の属性や商品を購入した理由、使用中の状況などを分析することです。

アンケートやインタビューでは相手を意識しながら回答するため、回答者や質問内容によっては本音が出てこないケースもあります。

これに対して匿名で情報を発信できるSNSでは、投稿者が本音を漏らす可能性も高く、適切に分析すればインサイトを発見できる可能性があります。

SNS分析で主に活用されているのは、XとInstagramです。Xは文字数制限があり短文で意見を投稿することが多いため、効率的にターゲットの意見を収集・分析できます。Instagramは写真の投稿が多いことから、画像の分析をする場合に利用するケースが多いでしょう。

なお、SNSだけでなく口コミサイトなども含め、インターネットで閲覧可能な投稿データを大量に収集・分析する「ソーシャルリスニング」という方法もあります。SNS分析よりも手間がかかりますが、幅広い意見を集められる点がメリットです。

ペルソナ分析

ペルソナとは典型的な顧客像のことで、インタビューや行動観察などで得られる調査結果をもとに、詳細な顧客像を設定します。

ペルソナの具体的な設定項目の例は、下記のとおりです。

属性氏名、年齢、性別、居住地職業、勤務先、業種、役職、年収学歴、家族構成利用している商品やサービス
心理将来の目標、悩みごと、価値観休日の過ごし方、交友関係趣味、お金の使い方、ショッピングのスタイル

属性と心理面の両方から詳細な人物像を作成し、それをもとにさらに深い分析を進める方法です。実際には商品やサービスのペルソナとして必要な要素を選び、顧客像が手に取るようにわかるよう設定します。

上記よりさらに、細かいペルソナを作成するケースもあるかもしれません。ペルソナはマーケティング施策において、関係者間での顧客像の共通認識を形成するためにも利用します。あまりに細かいと共通認識を形成しにくいため、作り込みすぎないほうがよいでしょう。

お客様のリアルな声を聞けていますか?
コミュニティして活用して、お客様やファン、ロイヤル顧客の生の声を収集。マーケティング施策や事業成果に貢献できます!
資料をダウンロード
資料をダウンロード

インサイトを探す際の注意点

インサイトを探す際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 自社以外にも目を向ける
  • インサイト以外の方法も併用する
  • マーケティングで活用するためのノウハウが求められる

これらの要素を意識することで、インサイトを活用したマーケティングの効果向上が期待できます。

自社以外にも目を向ける

インサイトを集めるためにインタビューを行う場合、つい自社の商品やサービスのことばかりを話題にしてしまうかもしれません。しかし、他社のブランドでは当たり前の事実が、自社のブランドでは新しい気づきであるケースも考えられます。

他社の商品やサービスについて質問することで、自社にとって新たなインサイトが得られる可能性も生まれます。インサイトを探す際は、自社以外にも目を向ける意識を大切にしてください。

製品やサービスを利用していない人の視点も同様です。愛用者やファンだけでなく、幅広い顧客層のインサイトに着目しましょう。

インサイト以外の方法も併用する

インサイトに基づくマーケティングは、「人間の行動はすべて合理的に説明がつく」という前提で進めます。

しかし、実際の消費者の行動は、合理的に説明できないものも多数見られることに注意しなければなりません。インサイトを活用したマーケティング施策は、他の視点や手法を併用しながら設計することが大切です。

また、インサイトの分析自体が間違っている可能性もあるため、定期的な検証や改善も求められます。実際にはPDCAサイクルを回しながら、インサイトに関するノウハウを蓄積していきましょう。

マーケティングで活用するためのノウハウが求められる

インサイトは発見して終わりではなく、商品やサービスに落とし込む必要があります。そのノウハウがない場合、貴重なインサイトを見つけても、十分なマーケティング効果は期待できないでしょう。

インサイトの取り組みを進める際は、マーケティングで活用するためのノウハウが求められます。一方で、ノウハウを持つ人材のアサインには時間や費用がかかり、社内の人材育成も容易ではありません。

そのため、インサイトを活用したマーケティングを行う場合は、専門サービスの利用も有効手段のひとつといえます。

インサイトをマーケティングに活用した具体的な事例

ここからは、有名企業がマーケティングでインサイトを活用した事例を紹介します。

花王株式会社「My Kao メンバーサロン」

大手日用雑貨品・化粧品メーカーの花王株式会社は、2013年から会員制コミュニティサイトの運営を開始しました。花王は生活者と直接つながり、対話をしながらインサイトを見つけ出すことが大切としています。

消費者の価値観やライフスタイルの多様化が進み、インサイトを見つけるのが難しくなっており、深いデータを集めることが課題でした。そこで会員制コミュニティの運営により、消費者との共創マーケティングの取り組みを開始します。

消費者と直接コミュニケーションを取ることにより、定量・定性の両面から深く理解でき、想定外の価値発掘や仮説創出が得られました。

2022年12月には、暮らしに役立つ情報を発信する双方向のデジタルプラットフォームの「My Kao」を立ち上げ、2023年9月には会員と直接対話ができるコミュニティサイト、「My Kao メンバーサロン」をプレオープンしました。内部では、スキンケアなどのコミュニティが立ち上がっています。

既存のコミュニティをスケールアップすることが目的で、事業担当者が自ら個々のコミュニティのオーナーとなり、会員とリアルタイムに会話をすることで、迅速な消費者理解と共創価値の最大化することが狙いです。

従来のコミュニティをスケールアップするにあたり、コミュニケーション機能に優れており、運用者側のUIも使い勝手がよかったことで、コミュニティプラットフォームの「coorum(コーラム)」の導入が決まりました。

コミュニティにおいてインサイトを発見・活用した具体例として、日焼け止めがあります。会員に日焼け止めの使用を体験してもらったところ、ある地域の祭りに踊り手として参加する女性から、強く支持されているとの結果が出ました。そこから、屋外イベント時のメイク崩れに日焼け止めを活用できるとのインサイトが得られたのです。

この結果、祭りやダンスイベントに協賛してサンプリングをする案件が生まれるなど、生活者に寄り添った提案につながりました。

今後は「My Kao メンバーサロン」内におけるコミュニティをどんどん増やし、花王の全社員が生活者と直接つながるのが当たり前の状況を実現することが目標です。

コミュニティごとにさまざまな共創のありかたを探り、成功事例を横展開しながら進めていきたいとしています。

導入事例インタビューはこちら▼
多様化するくらしのニーズを理解するためには、生活者とつながり続けるコミュニティが鍵となる!「My Kao メンバーサロン」

株式会社SUBARU「ファンコミュニティの導入」

自動車メーカーである「株式会社SUBARU」には、もともとWebサイトへの訪問日や訪問回数、CVのタイミング、ディーラーへの訪問日や車の購入履歴など行動ログを収集するしくみがありました。

行動ログに全ディーラーから毎週集まってくる定性評価を加え、マーケティングに役立てようとしましたが、定性評価はディーラーごとに評価が真逆なことも少なくなく、マーケティングには用いにくい状況にあったといいます。

また、実際にディーラーに足を運び、ヒアリングをしてみると、会議室で考えていた顧客イメージと大きく異なることがわかりました。

そこで、業務の一環としてお客様とのコミュニケーションが取りやすいようコミュニティを導入しました。

コミュニティから得られる情報は、これまで収集してきた定量情報とは異なる「見えていない事実」です。これらの「見えていない事実」は緻密に分析され、マーケティング施策の立案に役立てられています。

一方で、定量情報は仮説の検証や分析に活用するなど、うまく使い分けられるようになりました。

導入事例インタビューはこちら▼
データ統合が進むSUBARUの「効果が見えるファンコミュニティ」。お客様と技術者のつながる場を目指して

株式会社ニップン「オンラインコミュニティ『アマニ』」

株式会社ニップンは、パスタや冷凍食品、健康食品などを取り扱う総合食品メーカーです。メーカーという立場では難しい、実際の顧客との直接的なのつながりを求めるため、「coorum」(コーラム)を利用し、健康食品分野の「アマニ」のオンラインコミュニティを立ち上げました。

その際、コミュニティにおける交流から(MROC)、企業の想定していた「健康志向」とは異なる顧客が一定数いらっしゃるということを発見しますした。

コミュニティにはアマニのさまざまな使い方が投稿され、多くの顧客が活用できる「アマニの使い方」ライブラリとなって販売促進となりました。

これはその後の、アマニを毎日食べる習慣へ誘導するイベント「アマニ継続チャレンジ」の立ち上げにつながります。オンラインコミュニティの分析から生まれた施策です。

株式会社ニップンの事例では、メーカーとしては難しい顧客からのナマの反応を得るためオンラインコミュニティを立ち上げ、その投稿からインサイトが得られています。

顧客と直接コンタクトしにくいメーカーでも、情報収集の方法はあり、活用して業績につなげることは可能だといえるでしょう。

導入事例インタビューはこちら▼
「ニップン アマニコミュニティ」で見つけた新たな顧客像と、毎日のアマニ習慣が広がる秘訣とは?

株式会社エー・ピーホールディングス「『coorum』立ち上げ」

宮崎や鹿児島の地鶏を中心に、生産者と店舗を直結させる居酒屋「塚田農場」を運営する株式会社エー・ピーホールディングスは、本来の「おいしいの提供」から上場を機に「おもしろい」に代わってしまったイメージの原点回帰に、「coorum」(コーラム)のオンラインコミュニティを活用していました。

以前のブームからのロイヤル顧客も多いものの、オンラインコミュニティの交流の様子からは、「おもしろい」ブーム以降にファンとなった顧客は「おいしい」を求める志向が強いことを発見します。

また、SNSでの調査(ソーシャルリスニング)で「おいしい」の評価が多かったことも、「おいしい」訴求戦略への切り替えの理由になりました。

株式会社エー・ピーホールディングスでは、方針転換の現実的な評価を把握するために、オンラインコミュニティが利用されています。しかし、今後は新しい顧客からの声という情報収集にも役立つでしょう。

導入事例インタビューはこちら▼
店舗では拾いにくい”塚田農場”好きなお客様の色んな声を聞きたい。塚田農場が目指すオンラインコミュニティの姿とは?

ライオン株式会社「トップ スーパー NANOX」

大手日用雑貨品メーカーのライオン株式会社は、2010年に洗濯用の液体洗剤「トップ スーパーNANOX」を発売しました。ナノレベルの極小の洗浄成分が、汚れや臭いを落とす製品です。

この製品を開発する原点となったのが、「洗濯物の汚れが落ちたかどうかは、消費者は目で見るより臭いで判断する」というインサイトです。消費者は洗濯物の嫌な匂いがしないことやよい香りがすることで、洗濯物が綺麗になったと感じていたことが判明します。

このインサイトに対応するため広告などに「ニオイまで落とす」というメッセージを採用し、パッケージなども香りのよいイメージを強調するものにしました。

「トップ スーパーNANOX」は消費者に支持され、売上を伸ばすことに成功しました。その後「NANOX one」としてリニューアルされ、現在も販売されています。

参考|日経XTECH「第5回 定性調査で引き出した主婦の「コンパクト」「におい取り」欲求」

日清食品株式会社「カップヌードルリッチ」

2016年に45周年を迎えたカップヌードルですが、高齢層に関して大きな課題がありました。60歳を超えると、カップヌードルの購入率が低下する傾向があることです。

そこで、日清食品株式会社は、シニア層に受け入れてもらえる新商品の開発を開始します。とくに重視したのが、情報発信を積極的に行う「アクティブシニア」です。これまでシニア向けの食品は、減塩や低カロリーなどのヘルシー志向の商品が多く見られました。

しかし、アクティブシニアをリサーチすると、SNSでは豪華な食事の写真が多く見られます。健康志向といいながらも、実際にはおいしさを犠牲にしたくないという傾向がわかりました。

健康だけでなくおいしさを求めるシニアが多いというインサイトを発見した結果、健康面に配慮しながらも、フカヒレ・すっぽんといった高級食材を使用した「カップヌードルリッチ」の開発に至ります。

カップヌードルリッチは高価格帯の商品ですが、テレビ番組でも取り上げられ、シニア層と親和性の高い新聞広告を重視した結果、発売7か月で1,400万食以上の売上を達成しました。

参考|ダイヤモンド・オンライン「「カップヌードル」と「ライザップ」の成功に共通すること」

ユニリーバ・ジャパン株式会社「DOVE」

ユニリーバ・ジャパン株式会社の「DOVE(ダヴ)」は、洗顔料やボディクリームなどパーソナルケア製品を展開しているブランドです。保湿効果に優れた石けんから始まったブランドで、その後さまざまなカテゴリーに展開を広げるため、ブランドの意義や目的を再定義しました。

「リアル・ビューティー・キャンペーン」で行われた調査では、自分を美しいと感じている女性は2%(日本人は0%)のみというインサイトを発見します。この結果から、広告の女性の写真に整形や画像補正を行わず、ありのままの姿を見せるという方式を採用しました。

このキャンペーンはグローバルで大きな反響を集め、DOVEのブランドイメージが向上し、売上も拡大しました。

自分自身を肯定しにくい消費者のインサイトに着目し、主力商品のDOVEを通して、美の多様性を表現するプロモーションを展開した成功事例です。

参考|MarkeTRUNK「インサイトとは?マーケティングにおける重要性と成功事例3選」

フォルクスワーゲン「Think small.」

1959年のアメリカにおける自動車の事例です。フォルクスワーゲンは、小型車「ビートル」を象徴するキャッチコピーを「Think small.」としました。

当時のアメリカは大型車が主流で、「大きいのはいいこと(Think big.)」が一般的でした。しかし、当時の米国の平均的な世帯人数は3.3人程度で、大型車が必ずしも必要ではありませんでした。

フォルクスワーゲンは、「大きくなければいけない」という思い込みで高コストをかけているインサイトを発見します。そこで、「Think small(小さいのがよいこと)」とのキャッチフレーズを発信しました。

広告効果のみでなく、ビートルはコンパクトで性能にも優れていたため、アメリカで大ヒットを記録します。「ビートルを選ぶのはスマートな消費者である」とのイメージも獲得しました。

参考|株式会社オノフ「インサイトとは?見つけ方・重要性・活用事例などを詳しく解説」

株式会社大戸屋ホールディングス「2階以上のフロアへの店舗の設置」

飲食店は地下や2階では集客力が低いといわれますが、和食チェーン店の「大戸屋ごはん処」は、店舗が地下や2階にあるケースが多く見られます。

これは、ターゲットとしている女性客の「一人での外食が苦手」というインサイトに着目した結果です。

大戸屋が全国展開を始めた1990年代、和食のチェーン店は少数派でした。しかも、定食屋は男性向けで量が多いというイメージも根強くあります。

大戸屋は新たなターゲットである女性客を集めるため、一人で外食をしづらい女性の気持ちを調査しました。すると、一人で外食するのが嫌なのではなく、一人で店に入るところを他人に見られるのが嫌というインサイトを発見します。

地下や2階といった他人の目に触れにくい場所に店舗を構え、野菜が豊富なメニューを提供し、店の内装を明るくした結果、女性客を増やすことに成功しました。

参考|Cross Marketing「消費者インサイトをマーケティングに活用するには?分析方法や活用事例を紹介」

インサイトや顧客の声を効果的に収集・活用するならcoorum

物やサービスがあふれ、差別化が難しくなっている現代では、消費者のインサイトが重要なヒントになります。インサイトを発見することで新たな商品・サービスの開発につながり、自社のシェア拡大も期待できます。

インサイトを活用したマーケティングを実践するなら「coorum」(コーラム)がおすすめです。

「coorum」(コーラム)は、コミュニティ運営からロイヤル顧客のデータ分析までワンストップで行います。

「coorum community」では、顧客との継続的なコミュニケーションが可能です。質の高い顧客の声をいつでも収集でき、ブランドのファンを育成しながら顧客情報を分析できます。

顧客単位で行動データと統合・可視化したいときは「coorum ingisht」がおすすめです。購買データや属性データなどを統合でき、注目すべきロイヤル顧客の特定に役立ちます。

また、「coorum research」を活用すれば、顧客の本音(EOC)の収集や分析ができます。ゲーミフィケーション機能やアンケート機能などを搭載した、インサイト収集の新手法ともいえる仕組みです。

インサイトを発見して、他社との差別化がされた商品・サービスを実現したい方は、ぜひ「coorum」(コーラム)を活用してみてはいかがでしょうか。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

関連記事

顧客起点マーケティングを実施するなら

ロイヤル顧客プラットフォームcoorum

ユーザーコミュニティ施策に関するお問い合わせやご検討中の方はお気軽に資料請求下さい。