顧客中心の経営を事業でどう実現していくか

2023-12-18 コラム

顧客中心の経営を実現するためには、自社のユーザーを理解し、ロイヤルユーザーに合わせたマーケティング施策を実行していく必要があります。ではなぜ今顧客中心の経営が重要なのか、また顧客中心の経営を実現するためにどのようにコミュニティが活きるのか、コミュニティを活用した事例などをご紹介します。

これからの事業戦略に「顧客中心主義」が重要である理由

まずは事業戦略に「顧客中心主義」が重要である理由を市場の課題や状況から考えてみましょう。

3rd Party データが使えない

広告配信やユーザーターゲティングにおいて、頻繁に用いられてきた3rd Party データとしてCookie(クッキー)があります。Cookieとは、ユーザーが閲覧したWebサイトからブラウザ等に保存されるデータのことでWebサイトの訪問日時や訪問回数などのさまざまな情報がその対象です。

これまではCookieのデータを活用することで、ブランドや商品のターゲットとなるユーザーを特定し広告配信をすることができていましたが、プライバシー保護を強化する流れのなかで、Cookieをはじめとする3rd Party データの活用には制約がかかるようになってきました。

今後は3rd Party データに頼らず、直接的にユーザーの情報を収集する1st Party データ、さらにはユーザー自身しか知り得ない情報を積極的に提供してもらう0 Partyデータを活用できるかがマーケティング効果を高める鍵となります。

メディアの多様化

SNSを筆頭にユーザーが利用するメディアが多様化しています。それに伴いユーザーが情報を収集する方法も多様化しているため、特定のメディアに情報を配信していれば多くの人の目に触れ、ユーザーを獲得できるということはなくなってきました。

生産者・消費者の多様化

生活者が多様化するなかで、いわゆる「マス」と言われる存在がいなくなり、企業からの一方的な情報発信はユーザーに届かなくなってきました。一人ひとりのユーザーと、一人ひとりの生産者がコミュニケーションを取ることが求められています。

人口増加が進んでいた時代のマーケティングファネルは、逆三角形型で「認知」を拡大するに伴い売上の増加が見込めました。しかし人口減少やメディアの多様化が進む現在では、一人ひとりのユーザーに大事に使ってもらい、高単価、高頻度で購入してもらうための取り組みが必要になってきています。

パレートの法則

パレートの法則とは、イタリアの経済学者ビルフレッド・パレートが示した経験則で、上位20%のユーザーが、売上の80%を占めるといった傾向のことをいいます。実際にヤッホーブルーイング社では10%のユーザーが売上の60%を、カゴメ社では4%のユーザーが売上の約半数を占めているなど一部の優良顧客が売上の多くを占める事例は多数知られています。こうした状況を踏まえ、優良顧客(ロイヤルユーザー)に向けた取り組みに注力する企業は少なくありません。

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人口減少・少子高齢化

日本において少子高齢化による人口減少が進行していることは周知の通りです。そもそものターゲットユーザーが減少しているため、中長期的に見て新規顧客数は当然、減少していきます。そのような市場環境で売上を維持、拡大していくためには既存顧客の単価向上が重要です。

成熟市場で機能だけの勝負は困難

技術革新が進んだ成熟市場では、画期的な機能を持った商品を販売したとしても、短期間で真似され同様の商品が発売されることは珍しくありません。このような成熟市場では、商品の機能的価値だけで差別化することは難しく、ブランドや商品に対する愛着、親近感などの情緒的価値をいかに付与できるかが差別化のポイントとなります。

外部環境の変化による影響も甚大

外部環境の変化として記憶に新しいのは、コロナ禍による行動様式の変化や原価高騰による値上げがあります。

コロナ禍においては在宅勤務が増え、外出を控えるよう呼びかけられたことでユーザーとオフラインで接点を持つのは難しくなりました。飲食店や外食サービス、アパレルなどの店舗を見つけてそのまま立ち寄るという動きが減り、新規ユーザーの獲得やライトユーザーの再訪が大幅に減少しました。

コロナ禍でおうち時間が増えたことに関連して普及したサービスや内食サービスでは、一時的に売上が拡大したものの、競合が多いこともあり、新規顧客の獲得に苦戦することになりました。

また、コロナ禍に対応したデジタルサービスにおいても、類似サービスが急増したことで選ばれるためのブランディングが重要になりました。

いずれのサービス領域においても外部要因に左右されず、獲得した顧客との長期的な関係構築を強化していく必要を強く感じられる状況にあります。商品の利便性だけでなく、いかに情緒面でも評価され、購買頻度、購入単価の向上に加え、口コミで友人や知人に広げてもらうのかが、事業成長の鍵を握っているのです。

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このような市場課題を踏まえると、安い、近い、コスパが良いというだけでは持続的な成長は難しくなりました。好きなブランドであることや、楽しく快適に利用できるといった機能的価値+α を磨き込んでいくことが重要です。機能的価値、情緒的価値にとどまらず、ユーザーの自己実現や社会的な価値評価につなげることがブランドへのロイヤリティを高めます。

また、プロダクトアウトのサービス開発手法や企業側の意見だけを採用したサービス改良は、企業の予測でしかなく、実際に売れるのかどうかはリリースしてみなければわからないという課題もあります。実際にお菓子メーカーの商品企画では、ヒット商品が生まれるのは売り出した商品のうち1〜2割程度とも言われています。

新規商品のリリースにおいても、ユーザーの意見を直接聞き、サービスをすぐに評価してもらえる環境があることが、情緒的な価値を含めた好きを引き出すことにつながります。

顧客中心の経営とは?

ここからは顧客中心の経営とはなにかを考えていきましょう。顧客中心の経営ができているか確認する方法として、「あなたのプロダクトのファンの方はどのような方ですか?」と質問することがあります。ユーザーの具体的なストーリーや感動エピソードをお話できる方はユーザーに向き合った経営をされているのだろうと推測できるのです。

顧客中心の経営を進めるためのステップは下図のとおりです。それぞれ見ていきましょう。

顧客理解

ロイヤルカスタマーはどのような人で、どこに行って、なにを求めているのかを理解する「顧客理解」がなにより重要です。離反顧客、一般顧客、ロイヤル顧客をセグメントし、それぞれのユーザーの声(VOC)を収集します。セグメントごとにどのようなユーザーなのか、どこで購入しているのかなどの顧客像を推測ではなく断定できるようにしていくことが重要です。

顧客起点

顧客理解ができたら次に、見えてきたユーザー像をきっかけにして、いかにインサイトを得るのか、マーケティング施策に落とし込むのかを考えます。商品開発やプロモーション、販売チャネルに至るまで、自社のユーザーに合わせた施策を実施していきましょう。

顧客育成

ユーザーを見つけてどのような人なのかわかったら、次はユーザーを増やし、育てていくフェーズです。ロイヤルユーザーの輪を広げていきましょう。

顧客との価値共創

最後にユーザーと共に事業のあり方を作っていく、ブランドを作っていく「顧客との価値共創」のフェーズです。企業は価値を提供し、ロイヤルユーザーは価値を享受する関係ではありますが、相互の関係はフラットなものです。お客様であり仲間であるユーザーと共に価値を作っていきましょう。

ユーザーと対等な関係を築き、ユーザー同士がコミュニケーションを取るようになると、ブランドの評価がより高まったり、トラブルや炎上が発生したときにも良いレビューなどで味方になってくれるなど安心して事業経営ができるようになります。

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ロイヤルユーザーの見つけ方

ロイヤルユーザーはどのような人なのかを見つける時に、自社でロイヤルユーザーを定義するのはなかなか困難です。そこで提唱しているのは、上位20%のユーザーのうち、さらに20%、つまり全体の上位4%がどのような人なのかを分析する方法です。

上位4%に属するユーザーの関心事項を収集し、その共通項を見出し積み重ねていきます。その先に見えてきたユーザー像が商品やサービスのファン、ロイヤルユーザーであるという考え方です。企業の想像ではなく、事実としてユーザーの情報を収集するのがポイントとなります。

顧客中心の経営を実現している事例

続いてはコミュニティを活用して顧客中心の経営を実現している事例をご紹介します。

ニップンアマニコミュニティ

ニップンが運営するアマニオイルのコミュニティは「ユーザーのファン化」、「VOCの収集」、「UGCの投稿を促す」の大きく3つの目的で運営しています。

ユーザーが投稿したアマニの活用例では、アイスクリームにかけたり、カップラーメンにかけて食べるなど、一見不健康に見えるものに、健康食品であるアマニオイルをかけている様子が投稿されています。これは健康食品を販売しているという立場の企業側からだけではなかなか思いつかない内容です。また、投稿者に直接ヒアリングをすることも可能な点はコミュニティの魅力です。

ニップンアマニコミュニティでは、アンケートでキャッチコピーの収集を行い、実際の商品に反映しています。ユーザーとしても自分たちの声を反映してくれたことに喜びを感じる企業とユーザーの共創事例となっています。

「ニップン アマニコミュニティ」で見つけた新たな顧客像と、毎日のアマニ習慣が広がる秘訣とは?

すかいらーくのしゃぶしゃ部

しゃぶ葉では、ファンだけが参加できる入部制のコミュニティを運営し、クローズドな環境で盛んにファン同士のやり取りが行われています。多くの飲食店と同様にしゃぶ葉でもコロナ禍の影響を受けました。ユーザーが減少してしまったことに加え、コロナ禍による生活様式の変化により、コロナ禍以前のデータが活用できなくなってしまったのです。そこで、外部要因に左右されない安定した売上基盤の構築を目的にコミュニティを運営しています。

コミュニティの効果として、SNS上でのUGCが2倍に増加したり、ファンのアイデアをもとにした出汁の開発を行うなどの成果が出ています。

しゃぶ葉に熱い想いを持ったユーザーに限定したコミュニティ「おやさい学校 しゃぶしゃ部」が目指す、ユーザー全員にとって価値のある施策立案とは?

なぜ「コミュニティ」が顧客中心の経営に不可欠なのか

顧客中心の経営に必要なことは、まず顧客を理解することです。コミュニティは常にユーザーの声を聞き、アイデアを集め、実行し、また声を聞くという取り組みをリアルタイムで行える場です。実際に食品メーカー、飲料メーカーを対象に行なったアンケート調査でも、過半数がコミュニティを運営しており、ユーザーの声を聞く場としてコミュニティが活用されていることがわかります。

ユーザーの声を聞くのであれば、SNSが活用できるように思いますが、自社に関連する投稿を収集するだけでも骨が折れる作業になりますし、投稿しているユーザーがライトユーザーなのか、ヘビーユーザーなのかの判断をつけることも困難です。ロイヤルユーザーの声をすぐに聞くことができるコミュニティのほうがVOCの収集には適しているといえます。

コミュニティサイトとは?作り方や運営のポイントを解説

なお、コミュニティはさまざまなマーケティング施策の中でも中長期的な施策にあたり、ユーザーと長く深く関係を築いていく取り組みです。ロイヤルユーザーを育成し、VOCを集めて、UGCを広めてもらうという仕組みを持つコミュニティが顧客中心経営を実現に導くのです。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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