
昨今の様々なマーケティング環境の変化により、顧客を起点にしたマーケティングの重要性が高まっています。特に、ロイヤルカスタマーに寄り添った商品企画を行い、ロイヤルカスタマーと双方向のコミュニケーションが取れる場所を設置することが、非常に重要です。
本記事では、オンラインコミュニティで収集したVOCを商品企画に活かす方法とその事例をご紹介します。
なぜ顧客起点が必要なのか

人口減少や少子高齢化の進行によって、商品・サービスのターゲットとなるカスタマーの数が減少しています。その一方で生み出される商品の数は増えており、機能的な価値を追求するだけでは差別化が難しい現状になっています。そこで繰り返し購入してくれるリピートカスタマーを増やし、選ばれ続けるブランドになることが求められるようになりました。
また、パレートの法則として知られる通り、多くの企業において売上の大部分を占めるのは、一部のロイヤルカスタマーです。言い換えれば、新規カスタマーの獲得を目指して行った施策が、ロイヤルカスタマーの離脱を引き起こせば、売上を大きく毀損してしまう可能性があるということになります。
そこで鍵を握るのがVOC(ロイヤルカスタマーの声)や熱量をマーケティングに活かす顧客起点マーケティングです。ロイヤルカスタマーは、商品・サービスの独自性や市場環境、競合、意思決定プロセスなどに詳しく、そのVOCを活かすことで、強いマーケティング基盤を築くことができるのです。
顧客起点マーケティングのメリット

顧客起点マーケティングでは、リサーチや商品企画、プロモーション、カスタマーサクセスに至るまでのすべての工程において、VOCを取り入れ、カスタマー軸の意思決定を行います。
課題や目的に応じてさまざまなマーケティング手法が考えられますが、オンラインコミュニティやオフラインイベントを活用してVOCを直接聞くことができれば、リブランディングや商品企画開発などのロイヤルカスタマーの離反リスクがある施策において特に有効です。
また、リサーチ会社のアンケート調査などの既存手法による市場調査では、コスト面、収集結果の質、要する時間など多くの面でデメリットが多くありました。これに対しオンラインコミュニティを活用すれば、ロイヤルカスタマーから費用をかけずに短期間で、意見やアイデアを収集できる点も大きなメリットとなっています。
コミュニティを活用した商品企画の事例
ここからは具体的なコミュニティの活用事例をご紹介します。アイデアの募集やアンケート、投票などさまざまな方法で手軽に、直接、VOCが聞けるので、活用事例は他業種にわたります。

商品企画フローにおけるVOCや熱量の活かし方

実際にオンラインコミュニティを活用して商品企画を行っている企業へヒアリングを行いました。この企業では大きく10段階のフローで商品企画を行っていますが、そのうち下記の5つの調査をオンラインコミュニティで行っています。オンラインコミュニティを活用することで、VOCを活かした商品企画が実現しています。
- 現在のメニューで「新規商品の開発目的」が実現できている理由とそうではない理由
- カスタマーからアイデアを募る
- 商品のサーベイ
- カスタマー試食
- テスト販売
凄麺|試食販売の代わりにオンラインコミュニティでVOCを聞く

ご当地カップラーメンを提供するヤマダイ株式会社は、VOCを活かした商品開発が強みです。しかしコロナ禍ではスーパーでの試食販売ができなくなってしまいました。そこでお客様との双方向のコミュニケーションを取る手段としてオンラインコミュニティを導入しています。
オンラインコミュニティでは商品に対するVOCの収集に加え、アンケートや投票企画を開催して、商品企画やプロモーションのアイデア出し、またクリエイティブやチラシの中にVOCを取り入れるなどの取り組みを行っています。
また、オンラインコミュニティならではのVOCを開発チームにフィードバックし、開発者のモチベーションアップにつなげています。実際にオンラインコミュニティで収集できたVOCとして、旅行好きのご夫婦のお話があります。怪我をしてしまい旅行に行けなくなってしまった時期があり、その間に北海道から沖縄までのご当地ラーメンを順番に食べて旅行気分を味わっているというVOCがありました。
一般的なアンケート調査などではなかなか収集しづらいオンラインコミュニティならではのVOCであり、コストを掛けずにVOCを収集できていることに魅力を感じていただいています。
本物の「凄麺」好きが集うヤマダイ株式会社のコミュニティ「すごめんち」。その熱さの秘訣とは
タマチャンショップ|SNSより深い声をオンラインコミュニティで

「日本のお母ちゃんになりたい」をテーマに、自然食品を販売しているタマチャンショップでは、お客様を第一に考えて運営する企業文化を軸に、SNSよりも深くVOCを聞く場としてオンラインコミュニティを運営しています。
オンラインコミュニティ開始前からSNS上に商品のレビューはありましたが、その収集には多大な労力がかかっていました。また拡散性が高いために、カスタマーは本音を言いづらいだろうことも推測されていました。そこでタマチャンショップが好きなカスタマーだけが集まる場を設けることで、より深いVOCを聞けるようになっています。
また、目安箱やアンケート企画を活用した、商品開発やパッケージの制作も行っています。例えば「母の日にもらってうれしいもの」を母親向けにアンケートを取って、それを参考にパッケージや母の日用のギフトセットを作っています。
ユーザー投稿のレシピ・食へのこだわりが溢れるタマチャンショップのコミュニティ「タマリバ」。ロイヤル顧客を育てる仕掛けとは?
DMMチャットブースト|一緒に活用事例をつくるカスタマーサクセス

LINE公式アカウントに自動返信機能や再入荷通知機能などの拡張機能を実装できる「チャットブースト」を提供しているDMMチャットブーストでは、カスタマーの要望に合う活用方法を提示するという上下関係になりがちなカスタマーサクセスではなく、一緒に活用事例を作っていく関係を築くためにオンラインコミュニティを活用しています。
カスタマー同士でツールの活用方法やナレッジを解決する場とすることで、より早く課題解決ができています。またカスタマーをうまく味方につけたマーケティング施策を行うことで市場認知の拡大にも役立てています。
担当者からはオンラインコミュニティで集めた事例がインタビューにつながるなどカスタマーの解像度が高っており、カスタマーサクセスでは得られなかった手触り感があるとの声が上がっています。
市場認知度を高めるためにcoorum(コーラム)を活用。顧客の解像度を高め、目指すべき「顧客の成功」へ
ルネサンス|商品アイデアが約500件、カスタマーと進める商品開発

「生きがい創造企業としてお客様に健康で快適なライフスタイルを提案する」という企業理念のもと、スポーツクラブや介護リハビリ施設を運営するルネサンスでは、コロナ禍の休業期間中に顧客接点が持てなかった経験から、時間や場所を問わないコミュニケーションの場を作る目的でオンラインコミュニティを運営しています。
オンラインコミュニティを通じて、マスターコーチとの交流に魅力を感じているカスタマーが多いことがわかりました。そこでマスターコーチが発信するコンテンツを配信し、長く利用してくれるロイヤルカスタマーを増やし、LTVを伸ばしていこうと取り組んでいます。
また、オンラインコミュニティ主導で新商品のプロテインの開発を始めました。オンラインコミュニティの会員にフレーバーのアイデアを募り、消費者ならではの幅広い視点が494件も集まりました。6月には試飲会を予定しており、良い商品、ロイヤルカスタマーが欲しい商品作りを進めています。
ロイヤル顧客の育成とLTVの向上を目指し、coorumを導入。二人三脚で目指す、リアルとデジタルが融合したコミュニティとは
おわりに
オンラインコミュニティで収集したVOCを商品企画に活かす方法とその事例をご紹介しました。VOCを直接聞くことで、企業内では想像もしなかったアイデアに出会ったという事例が多数あります。
よりロイヤルカスタマーに寄り添った商品企画を行っていきたい、ロイヤルカスタマーと双方向のコミュニケーションが取れる場を持ちたいという課題をお持ちであれば、オンラインコミュニティの導入を検討してみてはいかがでしょうか。長期的に、ロイヤルカスタマーと深く関係を築く場としてコミュニティを持つことでより有益なVOCの収集が実現します。
