
近年における様々なマーケティング環境の変化によって、顧客のロイヤリティを上げ、自社のロイヤル顧客を育成する必要性が高まっています。
激変のマーケティング環境の中、ロイヤル顧客(ロイヤルカスタマー)を育成する手段として、「ファンコミュニティ」が多くの注目を集めています。
では実際に、ファンコミュニティを通じて顧客のロイヤリティを高めるために、どの様なことを行えば良いのでしょうか。本記事では「DIYスクエア」というファンコミュニティを運営する株式会社カインズ様(以下カインズ)の実例を元に、ファンコミュニティの目的や施策を解説します。
ファンコミュニティを導入したきっかけ
カインズは、どのようなきっかけでファンコミュニティに興味を持ち、導入に至ったのでしょうか。カインズがファンコミュニティを構築したきっかけは、「DIYer100万人プロジェクト」です。「DIYer100万人プロジェクト」とは、DIY を「ライフスタイル(生活文化)」にすることを目指して、2019年11月にスタートしたファンマーケティングの取り組みです。DIYに取り組む人が自分らしい暮らしと出会い、毎日を明るく楽しいものにすることを目指すプロジェクトの一環で、ファンコミュニティが誕生しました。
コロナ禍で多くの「おうち時間」が発生した影響で、DIYの需要は非常に高まりました。この需要を一過性のものではなく、恒常的なものとして維持し、「DIYer100万人プロジェクト」を実現するために、カインズはファンコミュニティを2021年10月に立ち上げました。
ファンコミュニティの目的
では、ファンコミュニティを通じてのカインズの目的はどのようなものでしょうか。カインズがファンコミュニティを運営する目的は、オフライン(店舗)とオンライン(ファンコミュニティ)を融合させ、顧客体験を向上させること、更にはその中で顧客のロイヤリティを向上させてロイヤル顧客を育成することです。
カインズは以前から、ワークショップなどのオフラインのイベントを積極的に開催し、顧客のロイヤリティを上げることに尽力していました。その中で、パンデミックや移動負担など、様々な要因で参加が難しい顧客が抱える課題を解決するため、打ち手としてオンラインのファンコミュニティを導入しました。
カインズはファンコミュニティのプレスリリースにて
”カインズは、「カインズの店舗が近くになくてワークショップへの参加が難しい」、「DIYに関する質問がもっと気軽にできると嬉しい」などといったDIYにまつわるお客様の悩みを、私たちが注力する“デジタル”を活用した取り組みで解決できないかと考え、コミュニティサイト「Cainz DIY Square」のサービスを本格的に開始します。「Cainz DIY Square」が掲げる「きいて」「つくって」「つながって」「たのしむ」という4つのコンセプトを取り入れたコンテンツを通じてカインズが考える DIY の楽しさを伝え、DIYer同士の交流を深めていきます。”
”各地の店舗で展開を進める新しい概念の「工房」と、今回本格的にサービスを開始する「コミュニティサイト」という、いわばオフラインとオンラインが融合した「場」=「Cainz DIY Square」をカインズが提供することで、DIYer同士の交流を促進し、DIYで得られる新しい体験や価値観をさらに豊かなものとし、お客様一人ひとりの自分らしいくらしの実現をサポートします。”
ことを目的として掲げ、ファンコミュニティを通じて顧客体験を向上させることに主眼をおいています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000182.000008255.html

以上のことから、カインズがファンコミュニティを運営する目的は、ファンマーケティングを通じて顧客のロイヤリティを向上させ、ロイヤル顧客を育成することであると言えます。
コミュニティの数字
では、立ち上げから2年半ほど経過したカインズのファンコミュニティ「DIYスクエア」は、実際に顧客のロイヤリティや、LTVの向上に寄与しているのでしょうか。カインズのファンコミュニティは、次の三つのデータからも、確実に顧客のロイヤリティやLTVの向上に貢献していると言えます。一つ目の累計投稿数は約2万、二つ目の累計投稿数は約20万、三つ目の総アクション数は約200万の数字を誇ります。

以上のデータから、カインズのファンコミュニティは、非常に熱量の高い状態でのファンマーケティングが実現ができており、顧客のロイヤリティやLTVの向上に大きく貢献していると言えます。
カインズのファンコミュニティ「DIYスクエア」の機能について
カインズのファンコミュニティ「DIYスクエア」には、どのような機能が搭載されているのでしょうか。「DIYスクエア」には、顧客体験を向上させ、顧客のロイヤリティを上げるための様々な機能が搭載されてます。ここでは主に5個の具体的な機能について取り上げ、それぞれがファンマーケティングに寄与する効果について解説いたします。
作品投稿機能

一つ目の、顧客体験とロイヤリティを向上させる「DIYスクエア」の機能は、作品投稿機能です。作品投稿機能では、コロナ禍によって作品を誰かに見てもらう事が困難になった状況下においても、オンライン上で自分の作った作品を共有することができます。
作品投稿機能は、どのように顧客体験とロイヤリティを向上させるのでしょうか。作品投稿機能の特筆すべきメリットは一点に集約されます。ユーザー同士の作品投稿を通して、顧客のDIYへの満足感と更なるモチベーションを醸成する点です。
カインズのファンコミュニティでの作品投稿機能では、自身の作品を投稿することができるのはもちろん、他のユーザーへコメントやいいねを送ることもできます。「自分の作った作品を誰かに見てもらえること」は、顧客がDIYを行うモチベーションの源泉のひとつでもあります。作品投稿機能を通じて、DIYの上級者から初心者の人、全ての顧客が一体となって、DIYの楽しさやモチベーションを共有することができます。
以上のことから、作品投稿機能は、顧客のDIYへのモチベーションと楽しさを生み出すことに、大きく寄与していると言えます。
DIYレシピ

二つ目の、顧客体験とロイヤリティを向上させる「DIYスクエア」の機能は、DIYレシピです。DIYレシピ機能では、カインズ公式やDIY上級者のDIYレシピを入手、ないしは自身で提供することができます。
DIYレシピは、どのように顧客体験とロイヤリティを向上させるのでしょうか。DIYレシピの最大のメリットは一点に集約されます。顧客のDIYへの積極的な参加を促すことができる点です。
顧客がDIYに熱中するためには、製作のアイデアとスキルの上達が必要不可欠です。逆にいえば、製作のアイデアやスキルの上達の不足は、DIYからの離脱を生み出してしまうと言えます。DIYレシピを通して、次なる作品への創作意欲を生み出し、顧客がDIYを恒常的に行うことができる環境を作り出します。
以上のことから、DIYレシピは、顧客がDIYに熱中する環境を生み出すことに大きく貢献していると言えます。
トークページ

三つ目の、顧客体験とロイヤリティを向上させる「DIYスクエア」の機能は、DIYトークです。DIYトークでは、DIYに関しての質問や体験談、嬉しかったことや感じたことなどの感情を掲示板に投稿して、他のユーザーと議論や質問、話し合いなどを行うことができます。
DIYトークは、どのように顧客体験とロイヤリティを向上させるのでしょうか。DIYトークの最大のメリットは一点に集約されます。顧客が気軽に、かつ双方向的なコミュニケーションを行うことができる点です。
顧客がDIYに熱中する際、DIYを行う顧客同士の双方向のコミュニケーションは欠かせません。DIYを行うに当たっての疑問点や感想など、他人と共有したいものが多く発生するからです。DIYトークでは、それらを気軽に共有できる場所を提供しており、初心者から上級者まで全ての顧客が気軽に参加できる、双方向的なコミュニケーションを行える場所を提供しています。
以上のことから、DIYトークは、顧客の双方向的なコミュニケーションを促進させることに大きく寄与していると言えます。
コミュニティ限定のキャンペーン

四つ目の、顧客体験とロイヤリティを向上させる「DIYスクエア」の機能は、コミュニティ限定のキャンペーンです。コミュニティ限定のキャンペーンでは、DIY知識クイズなどの商品配布型のキャンペーンや、ブランド担当者と近い距離で対話ができるキャンペーンなどが行われています。
コミュニティ限定のキャンペーンは、どのように顧客体験とロイヤリティを向上させるのでしょうか。コミュニティ限定のキャンペーンを行うメリットは一点に集約されます。顧客の熱量の圧倒的な高さです。
企業がキャンペーンなどのプロモーション活動を行う際に、運営側からの発信に終始してしまうことも少なくありません。通常、キャンペーンを行うに当たって、YouTubeやSNSなどが用いられることが多いです。そのため、キャンペーンの情報は広く届けられる一方で、顧客の熱量の高さには疑問の余地があります。対してコミュニティ上でのキャンペーンの場合、ファンの人に限定されたものになるため、ユーザーの熱量の高さは確約されたものになります。
以上のことから、コミュニティ限定のキャンペーンは、熱量の高い顧客に対してダイレクトに情報を届けられると言えます。
ワークショップへの参加や工具のレンタル

五つ目の、顧客体験とロイヤリティを向上させる「DIYスクエア」の機能は、ワークショップの開催や、レンタル工具の提供です。コミュニティ内に、ワークショップやレンタル工具を利用するための導線が敷かれており、非常に利便性の高いものになっています。
ワークショップの開催やレンタル工具の提供は、どのように顧客体験とロイヤリティを向上させるのでしょうか。ワークショップの開催や、レンタル工具の提供の、特筆すべきメリットは次の二つです。一つ目はオンラインとオフラインの接続、二つ目は利便性の向上です。
ワークショップの開催やレンタル工具の提供の一つ目のメリットは、オンラインとオフラインの接続です。コミュニティ内で活動しているユーザーは、前述の様々な顧客体験を通して、DIYに対する熱量が高まっていきます。そうしたオンラインで蓄積した熱量が、ワークショップやレンタル工具などのオフラインでの活動でさらに高まり、コミュニティ内での更なる活動量の向上に繋がります。即ち、オンラインとオフラインを循環する流れを構築しているとも言えます。
ワークショップの開催やレンタル工具の提供の二つ目のメリットは、利便性の向上です。コミュニティ内で、DIYに対するモチベーションが高まった顧客は、しかしながら実際にDIYを行う場所や手段がない場合があります。「DIYスクエア」ではそれらの場所と手段を提供する導線、即ちワークショップの開催やレンタル工具の提供が行われているため、顧客のDIYへ対する利便性の向上に大きく寄与していると言えます。
以上のことから、ワークショップの開催やレンタル工具の提供は、オフラインとオンラインを接続し、利便性の向上へ大きなインパクトを残していると言えます。
DIYスクウェアが生み出す効果
前述の「DIYスクウェア」でファンマーケティングを行う中で、生み出される効果には絶大なものがあります。その中で特筆すべきものは三つあります。一つ目は顧客の声「VOC」が見えること、二つ目はファンが作ったコンテンツ「UGC」が多く生み出されること、三つ目は顧客のロイヤリティが高まり、「LTV」が向上することです。
VOCが見える
「DIYスクウェア」が生み出す一つ目の効果は、VOCが見えるようになることです。
顧客の声であるVOCは、マーケティング活動や商品開発において極めて重要なものである一方、収集が困難である場合が多いです。しかし「DIYスクウェア」では、前述のDIYトークや作品投稿など、顧客の声を収集する場が頑強に構築されており、それが着実に蓄積されていきます。
UGCが生まれる
「DIYスクウェア」が生み出す二つ目の効果は、UGCが多く生み出されることです。
昨今、SNSなどの勃興に伴って、消費者は企業発信のプロモーションよりも、口コミなどのUGCを重視する傾向が見られます。「DIYスクエア」では、前述のDIYレシピや作品投稿など、常時UGCが生み出される体制が構築されています。
LTVが上がる
「DIYスクウェア」が生み出す三つ目の効果は、LTVが向上することです。
「DIYスクウェア」を通して、既存顧客のロイヤリティは向上し、多くのロイヤル顧客が育成されていきます。オフラインとオンラインが巧妙に接続されており、それの循環を通して顧客とブランドの末永い関係が醸成されていきます。
以上のことから、「DIYスクウェア」でファンマーケティングを行う中で、VOCが可視化され、UGCが醸成され、更にはLTVが向上していくと言えます。
終わりに
本記事では、「DIYスクエア」というファンコミュニティを通してファンマーケティングを行うカインズの実例を元に、ファンコミュニティの目的や施策を解説しました。
弊社はファンコミュニティの導入や運営のご支援をさせていただいています。弊社のプロダクトであるロイヤル顧客プラットフォームcoorum(コーラム)では、ロイヤル顧客の育成・蓄積・分析でLTV最大化、正確な顧客理解、UGCの醸成を実現します。コミュニティ運営と顧客分析をワンストップで行う機能のほかに、支援企業100社以上のコミュニティの活性化や顧客分析をサポートします。

coorumを通じてファンマーケティングを行い、顧客のロイヤリティをご支援させていただいている、具体的な事例も多く存在しますのでご覧ください。